永遠の仔(一)再会 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344405714

作品紹介・あらすじ

霊峰の頂上で神に救われると信じた少女・久坂優希と二人の少年は、下山途中優希の父を憑かれたように殺害する。十七年後、再会した三人を待つのは……。

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃、児童精神科のある病院に入院していた3人、優希、梁平、笙一郎は一緒に石鎚山に登り、その下山途中で優希の父親を殺害する。
    その後、それぞれの道を歩んでいたが、17年後に再会する。

    親からの虐待やネグレクトを受けた子どもは、大人になってもまだその心の傷を負っていて、その辛さを知っているにも関わらず、いじめや虐待の連鎖を起こしてしまう。
    痛ましい記述も多く、苦しくなりつつも、現在の話と子供の頃の話が織り混ぜられたストーリー展開に、どんどん引き込まれて読み進んでしまった。

  • 親の身勝手な仕打ちを受け、歪んでしまった仔の心。
    親に翻弄され続けた仔の運命を描く作品。

    親は仔を捨てることができてしまうけれど、仔は親を選べない。
    一人しかいない親だから、完全に憎みきることもできない。
    酷い虐待を受けていても、見捨てられたと分かっても、仔はその運命を受け入れるしかない。その理不尽さに胸が痛みます。

    都合の良い展開など起きはしません。読んでいることが辛くなるときもありました。
    それでもこの本には、最後まで読む意味があると思いました。

  • 決意し読みました。
    とはいえ、即2部作目に行こうかとは思わないかなぁ
    凄く長そうで躊躇しちゃいました
    大傑作…という事ですので、コレから盛り上がるのかなぁと思うので積読します。

  • だいぶ前に読んだ幻冬社社長見城徹氏の自伝で、この作品が激賞されていたので、この冬休みの間にまず文庫本5冊中2、3冊位読んでみよう、と読み始めた。
    幼児虐待系のトラウマを抱える少女と二人の少年の物語り。再生に向かうのか破滅に向かうのか、予備知識なしで読み始めたで、この後の展開がすごく気になるが、一気読みするのは勿体無い気がしてきたので、いつものように4、5冊位の並行読みで、ゆっくり読んでみよう。

  • 最初に読んだのは中学生の時。もう一度読みたくて買ってしまった。かすかな記憶でかろうじて物語の大筋は覚えているんだけど、細かい描写を楽しむことができるのは、天童荒太の丁寧さに気付ける読み方が歳を経てできるようになったからかな。中学生の時から成長してなかったら、それはそれは悲しいしね。時間軸が飛び飛びでも、物語の中にどっぷり読者を浸からせておけるって、どんなテクニックなんだと驚いてしまう。二巻が楽しみ。

  • 西日本の最高峰、霊山・石鎚山。その頂上に登れば「神に清められ自分たちは救われる」と信じた少女・久坂優希と二人の少年は、その下山途中、同行していた優希の父親を憑かれたように殺害する。三人は秘密を抱えたまま別れ、それぞれの人生を歩んでいたが、十七年後運命に導かれたように再会を果たす…。文学界を震撼させた大傑作、文庫化!

  • 天童荒太は初めて読んだと思うが、かなり作家として気に入った。
    彼自身、この本(ストーリー)には相当なチカラが入っているようで、後書きの量もかなりある。
    幼児虐待が根底に流れており、参考にしたという本も謝辞を含めて列挙してあるのだが膨大な量だ。その中に「おたんこナース」も含まれているのが笑えるが。
    単行本で五冊にも別れているぐらい長編小説であるが、一気に読み終えてしまう。
    それほど、ストーリーにグイグイ引っ張られる。続きが読みたくてしかたがなくなる。ある時は午前四時まで読み耽けてしまったぐらいだ。
    そうとう内容が深いので、どういう本とかうまく表現できないのが残念なのだが、是非とも皆さんに読んでいただき、その感動をわかちあいたい。(かなり大袈裟)

    さて、昨夜、夕飯を食いながらTVを見ていたんだが、所ジョージが司会で「あらすじで楽しむ 世界名作劇場」というのをやっていた。
    文学とか名作とか、私にはほとんど解らない。
    昨夜は太宰の「人間失格」を取り上げていた。確か中学ぐらいの時に読んだかもしれない。なんとなくストーリーは解っていたから。
    ただ、改めて昨日の番組を見て思ったんだが、これ、カミュの「異邦人」に似てないか?どちらも主人公はマイノリティで、ストーリーは淡々とすすむ。。。のみ。それだけ。
    番組で取り上げられていた綿矢りさの「蹴りたい背中」も「インストール」もストーリーは淡々と進む、面白い展開など何もない。そもそも芥川賞って、芥川の本もなんか面白いと思った事がないからなぁ。
    文学とか名作とか言われている本で、面白い、感激した・・・とかそう言う感覚を持ったことがない。今回読み終えた「永遠の仔」などと比べたら雲泥の差だ。池波正太郎とか山崎豊子とか次も次もと読みたくなる作家、内容とはまったく違う。
    文学とか名作って、それほど深い物なのか、その深さが理解できないのはダメなことなのか、理解できる事が国語力なのか、、、
    わからない、悩むなぁ。

    さて、次は何を読もうかな

  • 【いちぶん】
    そんなふうに悩むのを、おまえならわかるだろう?自分では怒れない子どもや、自分を責めてしまう被害者に代わり、社会がどれだけ本気で怒ってくれるのか……そのことが、大事なんだ。家族や身近な人間が怒ってくれることも大事だが、それができない家族もいる。家族が加害者の場合もある……。だからこそ、まず社会ってものに、おまえは悪くない、もっと怒ってもいいんだと、認めてもらえることで、傷から立ち直っていける場合もあるんじゃないのか。
    (p.254)

  • 1巻を読み終えたが、全5巻なのでまだまだ謎が多い。17年前に何が起きたのか、そして彼らはなぜ精神を止むことになったのか。ぼんやりとは分かるがまだ先が読めない感じだ。ともすれば暗く沈み投げ出してしまっても不思議のない内容だが、天童荒太の見事な描写で続きを良いたいと思わせるのは左さすがだ。

  • 瀬戸内海に浮かぶ離島にある病院には、心に問題を抱えて、周囲の人間と共に社会生活を送ることが困難になった子供達が入院する病棟があった。幼少期の一時期をそこで共に過ごした優希、笙一郎、梁平の3人は、ある共通の秘密を抱えながらも、退院後は別々の道を歩んでいた。
    しかし別離から18年後、3人は運命のように再会する。そしてそれは、新たな悲劇の幕開けに過ぎないのだった……。

    ***

    日本推理作家協会賞受賞作品だそうです。
    テーマは「救い」でいいんでしょうか。

    とにかく重い内容です。しかも全5巻。読むのには結構気力が要りました。
    主人公達が子供の頃の過去の章と大人になった現在の章が交互に描かれているので、物語の運びは比較的ゆっくりとした印象でした。

    どんな家庭にも他人には見えない何かや問題があると思いますが、ここまで酷く心身を追いつめられたら、まだ成長途中の子供は一体どうしたらいいんだろうと思わずにはいられません。

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著者プロフィール

天童 荒太(てんどう・あらた):1960(昭和35)年、愛媛県生まれ。1986年「白の家族」で野性時代新人文学賞受賞。1996年『家族狩り』で山本周五郎賞受賞。2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞受賞。2009年『悼む人』で直木賞を受賞。2013年『歓喜の仔』で毎日出版文化賞を受賞する。他に『あふれた愛』『包帯クラブ』『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』『静人日記』『ムーンナイト・ダイバー』『ペインレス』『巡礼の家』などがある。

「2022年 『君たちが生き延びるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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