- Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344407015
感想・レビュー・書評
-
初版が出て20年ほどが経とうとしています。日本の自殺率は緩やかに減少しているようですが、世界的に見ても悪い意味でトップレベルの数値を維持しており、「生きにくさ」を感じる人はまだまだ多いようです。
本作は悩める読者からの手紙に対し五木氏が考え、寄り添い、答えのヒントとなるであろう思いを語った書簡形式で展開しています。
「自殺」「職業」「悲しみ」「健康」「生きる意味」「死」「覚悟」など、きっと誰もが一度は考えた、あるいはこの先考えることになる現実的で身近な問題ばかり。
そんな中、特に印象的だったのは「どのような人が生き延びるか」という内容です。五木氏はフランクルの『夜と霧』を例に挙げています。補足するまでもないかもしれませんが、『夜と霧』は端的に言うとホロコーストの記録です。アウシュビッツに建設された強制収容所での想像を絶する労働環境と、ユダヤ人大量虐殺を目の当たりにした過酷な体験を綴ったノンフィクションとなっています。
『夜と霧』はその負の歴史に目が向かいがちですが、フランクルは極限の状況のなかでどのような人が比較的自我をもって生き延びたかに触れています。それは「毎日の、何気ない出来事に感動する心を持った人」だそうです。過酷な労働下でも、足元の水溜まりに映った美しい夕日に「きれいだなぁ」と感じられる心。例の状況は極端ですが、それぞれにとって苦しい状況、そしてその程度は個人にしか分かりません。苦しい時でも広い視野をもつこと。素直に物事を見れる広く豊かな心をもつこと。そういった心意気はどんな時も忘れてはいけないように思いました。
「あれ、なんか色々とうまくいってないなぁ」
という時に、広い視点や考え方を読者に投げ掛けて、そっと寄り添ってくれる本です。皆色々と悩みながら生きている。だからこそ、人生のその一時をまるごと受け入れる。いつか前を向いて一歩が踏み出せるように。まるでカウンセリングを受けている気分に。
『夜明けを待ちながら』というタイトルは厳かでとても温かです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
心がいやされる。
-
2005/11/3