調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)
- 幻冬舎 (2006年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344407718
作品紹介・あらすじ
大志を抱き、二十三歳で単身フランスに渡った著者が、夢に体当たりして掴み取ったものとは?「早くゴールしないほうがいい」「効率のいい生き方をしていると、すり切れていってしまう」。激流のように過ぎゆく日々をくぐり抜けたからこそ出てくる、熱い言葉の数々。料理人にとどまらず、働く全ての人に勇気を与えたロングセラー、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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『感想』
〇職人の世界が描かれているな。自分がレベルアップするために一つの場所にとどまらない。いろんな経験をして自分をトップとした自分の理想の店を作る。
〇一つの職場で上り詰めていくわけではない道は、自分には想像がつかない。でも経験の貴重さとか、挑戦の大切さとかはよくわかる。
〇労働環境を整えることや仕事だけを生きがいにしないことなど考え方は色々ある。でも自分で選んでいるのなら、そんなものがない世界でもいい。これを部下に強要していると思われると厄介だが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「コート・ドール」のオーナーシェフ、斉須政雄氏のフランス体験記でもあり、仕事論、人生訓でもある一冊。読者に語りかけるような文体で難解な言葉はなく、読みやすかった。料理人としての生き様が血肉化した言葉となり、料理にかかわらず働く上でヒントとなる内容が多かった。
[特に刺さった言葉]
・自分の常識を通すためには、さまざまな軋轢を打破して、時には争いごとだって経験しないと、やりたいことをやれない。
・便利すぎると人は動かなくなる。便利を目指したのに、結局道具に使われる現実が出てくる。
・掃除ができない人は、何もできないと思います。
・清潔度は毎日やらないと保たれないものだから、貯金しておけない。愛情や信頼と同じですね。
・続けると、いろいろわかってくる。だから頑張れる。
「どんなことでも完全に思い通りにはならない」ということも、わかってくる。
・人生に近道はない。まわり道をした人ほど多くのものを得て、滋養を含んだ人間性にたどりつく。
印象に残ったのは、フランス3店目の章。ここに出てくるオーナーのペイロー氏とリーダーのベルナール氏が斉須氏にとってロールモデルであり、よき仲間であったことが分かる。こうした人との出会いは人生の宝だなとしみじみ思った。
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オンライン書店の本ガチャ「エッセイ 前向きな気分になる」で手許にやってきました。
一流のひとの仕事論として敬意をもって読み通した。
内容にまったく心がそわないのは、まぁ私が一流の仕事人ではないし一流の仕事に憧れもしないからなのだろう。著者のように人生を捧げて悔いない職をもつのは素晴らしいと思う。所謂充実した人生なのだろう。
でもそこに感情が動かないのよね…生計をたてられる最低限だけ働いて、あとはのんびりしたいかな。ダメ人間といえばそうなんだけど。
仕事に全振りしちゃうと、そこを退かざるを得なくなったときにすべてを失ってしまいそう。何が起こるかわからないのも人生。いや、一番の理由は私が基本めんどくさがりの怠け者だからです。わかってます。
暴力を正当化するひとは苦手。
著者の行動力にも精神力にも感服するけど、そうであっても暴力は肯定できない。
いついかなるときも暴力をふるうな、と言ってるんじゃない。暴力を行使する場面は人生にあるかもしれない。そんなときに否応なしに(あるいは考え抜いて覚悟のうえで)暴力を用いたとしても、暴力という手段を正当化することにものすごい拒否感がある。
234ページ
「ぼくはすごい軽薄で、お調子者の子どもでしたから」
失礼だが、納得感はあった。
261ページ
「情熱と努力で、いつかそこまで駆けあがってくるであろう未来のあなたに出すのです。これを糧に本当の意味の三つ星になってほしい」
ミシュランはやっぱり鼻持ちならないなぁ…としみじみしました。
余談。
これ、たぶん斉須氏のインタビューか何かを文字に起こしてエッセイとしてまとめたのだろうと思うんですが、文章としてまとめたかたの筆力が些か残念な気がします。すっきりと読みやすくはあるんだけど、句読点もうちょっとどうにかできなかったのかとか、用言を修飾するなら「すごい」ではなく「すごく」だろうとか、言いたいことがたくさんあるよ…。 -
これから大切にしていこうという言葉を見つけたら、そのページの角を折るのだけれど、この本はたくさん折った。授業が独りよがりになっていないか、慣れで仕事をしていないか、毎日試しているか、自分の仕事を振り返った。
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白金高輪のフレンチの名店コートドールのオーナーシェフであり、日本のフランス料理の匠である著者が23歳の若さで飛び込んだフランスでの6つの店での武者修行と日本に戻ってきてからのコートドールでの経験を振り返る仕事論。
フランスでの6つの店での修行をそれぞれの店ごとに章立てて叙述されており、その店で何を学んだのか、という点がクリアにわかる点が面白い。
一番印象的だったのは3店目でのリーダーシェフの厨房掃除を大事にする振る舞いの話であった。著者自身がコートドールの厨房において何よりも掃除を大事にしており、そのステンレスが徹底的に磨かれた厨房の美しさとさながら戦闘機のコックピットのような整然さは口絵のカラー写真でよく理解できる。そのベースがこの3店目での経験であり、シェフが”掃除をしろ”ということを口うるさく指示するのではなく、自らも掃除をしながら”常に厨房は綺麗なのが当然”という環境を率先して作り出したこと、このような行動を起こさせるための環境整備こそリーダーの振る舞いである、という点は自身にも非常に刺さるところがあった。
コートドールはずっと行きたいと思いながらいけていない店の一つ。近いうちに本書を片手に訪れてみたい。 -
斉須シェフの、料理というよりも生き様の本。
実直に、当たり前を究極まで突き詰めると、誰にも到達できないレベルに達するのだと、感じます。
コート・ドールの斉須シェフのフレンチを頂くと、本書でのシェフの一言ひとことがしみ入ります。 -
上司のFBプロフィールに好きな本として載っていたから、こっそり読了。フランス修行の描写が、初心で働き始めた今にぴったりだった。胸が熱くなりましたわ…(アスパラガス投げつけちゃうとことか笑ったw)
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【刺さった内容】
掃除を第一にしている。掃除の出来ない人は何もできない。整理整頓がなされていることは、仕事がきちんとなされているための基本
【糧になったこと】
著者の斉須さんの言う掃除は徹底していました。汚れやすい場所にマットを敷くと言ったやっつけ仕事ではありませんでした。その様な事をすると気持ちが緩むとあります。
やっつけ仕事をやめて丁寧に仕事をしたいと思いました。 -
2014.9/20 フランス修行時代からの料理を通しての哲学が存分に語られています。「(素材が)作為に満ちたものが市場に入ってくるようになっている。〜〜『笑顔で麻薬を注入し続けているような食品』が増えてきている現実」かぁ。掃除に対する哲学は学ぶところ多し。