銭ゲバ 上 (幻冬舎文庫 し 20-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344410282

感想・レビュー・書評

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  • ジョージ秋山による問題作。松山ケンイチにが主人公でドラマ化されましたが、マンガ版のほうが数段エグいです。上巻では貧困で母親を失った蒲郡風太郎があらゆる手段を駆使して成り上がっていくまでが描かれます。

    僕がこの作品を知ったのは、今から5、6年くらい前だと思う。この本を初めて読んだときははっきり言って衝撃的だった。何年か前に松山ケンイチ主演でドラマ化もされたので(原作そのまんまではありませんが)内容はよくご存知なのかもしれませんが、原作となったこのマンガのほうが数段内容はエグいです。あらすじは貧困で母親を病気で失った蒲郡風太郎が『銭ズラ!!』と獣のように吼え狂いながら殺人を皮切りにありとあらゆる犯罪を犯して成り上がっていったその果てにあるものは…?という程度にとどめます。

    ドラマ版では派遣労働者などの問題が絡めて描かれていましたが、マンガ版は公害問題です。最も、蒲郡風太郎は自分の会社の工場から出る排水のせいで水俣病に酷似した公害病を引き起こしても
    『そんなの関係ねぇ!!』
    とある意味すがすがしいまでのふてぶてしい姿に『悪の魅力』を感じるのは僕だけでしょうか?僕が

    あれを読んでここにこうしてあげたのは、やっぱり僕の中にも少なからず『蒲郡風太郎』が棲みついているからなのかもしれません。

  • 昔、松ケンのドラマを見たが、原作はドラマより数段胸を抉る展開だった。個性的な絵とエグい描写。万人に面白いから読んで、と薦めにくい漫画だ。

    銭ゲバのゲバは、ドイツ語のゲバルト、暴力行為を意味するそうだ。
    その言葉通り、主人公の蒲郡風太郎は人を殺して奪った金を暴力的に使い、社会的に成功していく。愛してくれた人も、恋した人も、自分の子も、親も、自分に邪魔なものは全て殺し、金で横面を殴りながら、金のために金を使っていく。その人生の行き着く先は…という話。

    こう書くとよくある物語だ、と思いそうだが、銭ゲバはよくある守銭奴の話ではない。銭に全てを奪われた男が人生の目的を徹底的に金にすえ生きていく話だ。それはもう読者が目を覆いたくなるほど極端に、徹底的に。

    金に加えて、美も一つのテーマとなっている。醜い風太郎は、美しいものが好きで「美しいものの心」を手に入れたいとずっと願っている。同時に人間の心は美しくない、と知っている。心の繋がりを渇望しつつも、銭のために生きていくんだと無理やり鼓舞しながら生きていっているように見える。

    純子は、銭と美以外で風太郎が心を通い合わせた初めての少女だった。彼女が、風太郎が富豪と知り銭のために体を差し出したことで、彼はたった一つの真実を失う。最後の希望を打ち砕いたのだ。

    政治家になってから、風太郎は変わってきている。美しい女を手に入れても、他の美しい女を連れてきて「お前などちょっと美しいだけじゃないか。俺を振り向かせてみろ」と愛を試すようなことをしている。
    この頃の風太郎は年齢的にいくつだったのかわからないが、年齢を経ることの弱さが出たのだろうか。銭ではない価値を自分に見つけたいという心の叫びを感じた。
    そして金を制し、世の中を制した最後『人間の幸福ついて』というテーマの前に彼は自殺する。
    このささやかだが幸せな生活に思い浮かべるのが三枝子、というところに、彼は結局、最初に惚れた三枝子お嬢さんを超える気持ちは感じられなかったんだなあと思った。
    彼はなぜ死んだのか私ははっきり分からなかった。彼が本当に望んでいたものを結局何も手に入れられなかったことに対して悲しみを感じたのか。それらを自分の手で壊してきたことに対する自責の念か。彼が追い求めた美も銭も、心が入っていないと所詮空虚だと気づいだのだろうか。

    私は描かれた当時の世相を知らない世代だが、このテーマは普遍ではないだろうか。やり方がマイルドにはなったが、今も金に支配された時代に見えるのが悲しい。

  • ■あらすじ(ネタバレ注意!結末まで書いてます)

     長野県松本市に生まれた蒲郡風太郎。幼少時代に父は家庭を捨て、女と家を出て行き、残された母と風太郎は極貧生活を送る。母が病気になっても医者に払う金がなく、ついに風太郎をおいて逝ってしまう。銭があれば、母を助けられたと思った風太郎は、金こそが力であり、正義だと思うようになる。
     風太郎は盗みを繰り返し、人を裏切り、大事な人をも殺める。何も失うものがなくなった風太郎は、金を手に入れるために大手会社社長の車に前に飛び出し、社長に取り入っていく。社長には二人の娘がいた。美しい長女に惚れるが、風太郎に想いを寄せる醜い次女と結婚し、社長を殺害してその地位を手に入れる。最終的には、姉妹二人も、自分の子供をも殺し、孤独の蟻地獄から抜けられない。周りにいる者はみな不幸になり、死んでいく。政界に進出し、金も権力も手に入れた風太郎だったが、「幸せとはなにか?」という質問を前に、自殺する。

    ■感想
     
     松ケン主演のドラマを見ていたので、だいたいのストーリーは知っていたが、ドラマとは違う漫画の独特の世界に圧倒された。銭がなければ、まともな生活も送れず、幸せを感じる余裕などないのは、貧乏を一度でも味わったことがある人なら、わかるのではないか。
     風太郎の小学校の担任教師が、遅刻の罰金に五円を持ってくるようにいうシーンがあるが、家庭訪問した教師に母親はこう言う。「その五円がない家もあるんです」(すみません、手元にないので不確か)。このセリフにはいたく共感した。
     だが金だけ追いかけると、心がすさむのもまた真実。相手から金をまきあげる商売などすると、相手からいくら絞れるか、自分にいくらの価値があるのか、損得でしか考えなくなるものだ。今もその後遺症は残る。
     この暗い社会性の漫画が少年サンデーで連載されていたというのが、すごい。当時の少年たちはこの漫画をどう受け止めたのか。人格形成の時期に読みたかった漫画だ(でも、影響を受けすぎて、銭ゲバをかっこいいと思いそうだから、今でよかったかも)。

  •  ドラマはちょっとしか観てないのですが、原作漫画の方を読む機会がありました。思ったより淡々と読めます。読了後なぜこのマンガがいまドラマ化されたのかなと、ちょっと考えさせられました。主人公は今どきの草食系男子とは対極をゆくケダモノ系野獣で、金に対する執着とか、登りつめようとする執念とかハンパないです。「世の中すべて銭ずら」が信念で邪魔者をすべて始末して好んで茨の道を生きているのかと思いきや、最後にこの主人公が実は幸せとは何かを、かなりの具体性を持って思い描き、知っていたところに悲哀を感じました。主人公が愛とか弱さとか残忍さを醸し出す場面で病んでる方の眼の側の横顔を描いていることが多く、それがケダモノというよりはなんだかちょっとこっけいに見えて悲しくなるのがマンガではあったのですが、ドラマではただの傷で、まったく効果的じゃなかったです。それに主人公をしてた松山ケンイチはもとが良すぎて、あんな傷くらいじゃこの主人公のちんくしゃで、手足もめり込んでいておデブで悲しい感じにはほど遠かったです。

  • 感想は下巻に。

  • 40年前と違って、現在では国民医療保険があって、生活保護者の医療は取りはぐれが無いから歓迎されるとまで言われ、かつては高額で治療断念する者もいた腎透析も公費負担となった。弱者の人権=生きる権利回復(あるいは獲得?)には、このマンガにあるような弱者からの反撃が行われる恐怖もある。マルクスの“宗教は阿片だ”という言葉は少々誤解されていて、宗教は気休めぐらいならなる(阿片は鎮痛剤として常用されていた)の意、らしいが、現代は《ドラッグあれば宗教要らない》の思潮と言える。末期患者の苦痛をやわらげるには鎮痛剤

  • 銭形政治

  • これがサンデーで連載されてったって。。。。

    70年代は凄い時代だなぁ。

  • 列車は走る悪への片道キップ…その名は蒲郡風太郎あるいは、銭ゲバ… 長野県松本市で起こった事件だ 水俣病 有機水銀中毒 栃木県足利市を流れる渡良瀬川 この世に真実というものがあれば…命を懸けて追い求めるズラ。 私は銭の奴隷にはならんズラ。銭で奴隷を買う奴隷商人ズラ!

  • ※上下巻セット

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