螢 (幻冬舎文庫 ま 3-2)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 246
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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344410350

作品紹介・あらすじ

オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。

感想・レビュー・書評

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  • 蛍とはなんなのか… 梅雨の山荘に奏でられる恐怖の調べ、過去の凶悪事件が交錯する本格ミステリー #蛍

    オカルト探検サークルの大学生たちが、かつて凄惨な事件が発生したいわくつき山荘を訪れる。怪しい山荘で一晩を過ごすと、過去の事件と同じ殺害状況で死体が発見される。雨は降り続け、街とつながる唯一の橋が崩れてしまい…

    この小説は情景描写が美しい!
    梅雨のじめっとした感じ、山荘の暗澹たる雰囲気、惨殺事件の狂気、怪しく神秘的な音楽と蛍。あー旅行に行きたい。山荘じゃなく、南の島がいいな。

    お話としても有り体な背景ストーリーではありますが、しっかり組み立てられており興味深く読み進められます。登場人物も背景や個性が際立っており、なかなか強烈でGOOD。
    ラストなど、いくつかあえてぼやかしている点もあるのですが、本作の特徴にあっていてこれもまた素敵だと思いました。

    どうもこの小説は、ある点が分かりづらいというか、あえてそうしているのか?と思ってましたが、やはりそういうことですか。なるほどなるほど。
    もう1つのトリックはわかんねーよ。しかし今までに見たことのない仕掛けでした。なお殺人事件の真相はかなり巧妙で、しかも納得性も高い。結局二度三度騙されました。

    少し残念な点としては、序盤に説明や背景描写が多くて没頭度が低い点。このミステリーの設定上、仕方ない点もあるんですがもう少しすっきり整理できるのではと思ってしまいました。ただ中終盤からは、怒涛の展開が待っていますのでご安心を。

    情景豊かなミステリーを読みふけってみたい人には超おすすめです!

  • クローズドサークル系ミステリーって感じやな。
    何が本格か分かってないし、別にこだわりは無いんやけど…
    色んな伏線が仕込んであるけど、気付いてないのが、多数…
    語り手も勘違い…
    読者は性別分かってるけど…
    とか。
    そんなのを前提で読んでると、まっ!謎は解けんわな(~_~;)
    色々、感心しきりで読んでたけど、まぁ、ありがちな気もするな〜って少しテンション下がったけど、最後で⤴︎⤴︎⤴︎

    螢のメロディは人を狂わせ死を誘う、狂気のテーマ

  • 比較的分かりやすいかなと思った叙述トリックが一つ。序盤で気づき、そこからは、なるほどここでうまくミスリードしてるのね、と初読みなのに再読みたいな読み方をして楽しんでいた。
    なので、読みにくくはなかった。
    ところが!
    全然分からなかったもう一つの叙述トリック。濁して言うと「いつもと逆」。なるほどーやられた〜

    ラストはちゃんと知りたかったな…

  • これはすごい叙述トリック。
    いろんなパターンは考えていたけど、全然違う切り口で騙されていないことに騙されていた。

    全体的に視点がフワフワしていたり説明描写が多かったりと、中盤辺りまでは読みにくかった。
    その分ラストの畳み掛けは凄まじく、息継ぎする暇が無かった。

    ミステリーの引き出しがひとつ増えた。

    ☆3.6

  • 人里離れた山荘で起きる連続殺人事件。
    クローズ・ド・サークルもののミステリーだ。
    惨劇の舞台は10年前に大量殺人劇が行なわれたファイアフライ館。
    精神に異常をきたした有名作曲家が、宿泊していた演奏家たち六名を皆殺しにしたのだ。

    密室トリック、あやふやなアリバイ、そしてわからない動機。
    世間をにぎわしている連続殺人との関連。
    閉ざされた空間で増幅していく恐怖と、疑心暗鬼に陥っていくサークルの仲間たち。
    探偵役の島田が中心となって謎を解明していくのだが、島田自身もある事情を隠したまま合宿に参加をしていた。
    彼だけではない。合宿に参加した目的を隠している者が他にもいた。
    事件は確かに解決される。
    犯人も明らかになり、動機もそれなりに説明される。
    だが、生き残ったのはいったい誰なのか?
    読み取れなかった私が悪いのか、それともあえてわからないような終わり方にしたのか。
    麻耶さんの意図が読みきれないまま、もやっとしながら物語を閉じた。

  • 謎解きをしながら、読み進めていき、なんとなくそうだろうなーと思い、結末もこんなものかと思っていたら、いきなり、右回転していたものを無理矢理左回転させられるような瞬間が!
    このパターン、お目にかかったことなくて、「ボク」が気になってしかたなかったのですが、そこだけはスッキリ。ほかは、想像しなおさねば…

  • 蛍が止まらないのセリフがとても気になり、読み進めました。ちゃんと納得のいく理由があってとても満足しました。
    ただ、個人的には少し読みにくい作品でした。
    クローズドサークルのミステリーでした。


    内容(「BOOK」データベースより)
    梅雨。大学のオカルトスポット探検サークルの六人は、京都府の山間部に佇む黒いレンガ屋敷「ファイアフライ館」へ、今年も肝試しに向かっていた。そこは十年前、作曲家でヴァイオリニストの加賀蛍司が演奏家六人を惨殺した現場だった。事件発生と同じ七月十五日から始まる四日間のサークル合宿。昨年とちがうのは半年前、女子メンバーの一人が、未逮捕の殺人鬼“ジョニー”に無残にも殺され、その動揺をまだ引きずっていたことだった。ふざけあう悪趣味な仲間たち。嵐の山荘で第一の殺人は呪われたように、すぐに起こった―。大胆にして繊細。驚きに驚く、あざやかなトリック!本格ミステリNo.1の傑作『鴉』から7年。鬼才が放つ新たなる野望。

  • こういうパターンもあるのかぁ!!
    読者はわかってるのに作中の人物が騙されてる。
    それに気づかず読者が騙される。
    新たなアイディアが見たくてこれからも叙述トリック物読み漁ります!

  • とても読み応えがある作品だった。伏線が張り巡らされて、ひとつずつキレイに回収されて。最後まで犯人がわからず、見事な叙述トリックだった。

  • オカルトスポット探検サークルの学生たちが訪れたファイアフライ館。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が6人の演奏家を惨殺した場所だった。事件と同じ日程で組まれた合宿で、惨劇が巻き起こる!

    嵐の山荘と化したいわくつきの館で起こる殺人と不可解な現象たち。その一方で、殺人鬼・ジョージによって殺された女子メンバーを巡る謎も。雨のように降り注ぐ現実の中で、聞こえない真実を探すメンバーたち。ホラーな雰囲気に、推理対決や館探索のワクワク感も重なって引き込まれる世界観。

    聞こえていない音ほど認識のフィルターをすり抜けて躰を支配しているから危ない、という平戸の言葉が印象深い。巧妙に文章へ隠された音たち。その書く技術にプロの恐ろしさを感じた。そして、現実においても聞こえていない音がたくさんあるのではないか、と耳を澄ませるきっかけにもなった。

    最後に印象に残った文章を引用して終わります。幽霊論的な話はとても興味深く読めてよかった。ここもテーマに重なってくるよね。

    「化物屋敷は無人でも構わないが、幽霊屋敷は人がいなければ成立しない。俺は幽霊というのは救われたいという心が映す幻像だと考えているからな」
    「救われたい……何にですか? 病気や不幸からですか?」
    「いや、むしろもっと根元的な意味だ。人は何かしら救われたいと思っているよ。救われるということは、救われるに値する人間だということだからだ。自分が何の価値も意味もない人間だと烙印を押されたくないからね。自分の価値を認めてくれる救い主を求めているわけさ」

    「幽霊というのは救われない者の象徴だからだよ。不条理な死に方や妄念を残したりして成仏できずに現世を彷徨っている哀れな存在。そこに救われない自分を投影してしまうんだ。果たして自分は大丈夫なのか? 日頃から疑問を抱き、畏れ悩み、不安を感じていればいるほど、幽霊は見えてしまう」

    「だがなホントにヤバイのは聞こえていない音だ。例えば部屋の時計の音がやたらに気になるときと、全く気づかないときがあるだろ。気づかないとき、音は認識のフィルターをすり抜けて、直接脳に働きかけて影響を及ぼしているんだ。だから聞こえていないときほど、実は時計に躰が支配されているんだよ」

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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