てるてるあした (幻冬舎文庫 か 11-2)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344410794

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  • 15歳の照代は、父母の散財によって入学金が払えず努力して合格した高校に入学できなくなる。それをひとつの契機として、家は一家離散(親に捨てられる)することとなる。・・・かなり悲惨な家庭環境。
    しかも、照代は、母のツテで転がり込んだ家で子どもたちに宝物のオルゴールを壊され賞状を破られ、幽霊に(!)卒業アルバムを引きちぎられ・・・もっと怒って良いよ照代ちゃん、と思ってしまう。

    終盤が泣ける。
    何も準備ができないまま、本人の口から直接聞けないまま、お別れになってしまう。後悔が残ってしまう、綺麗事じゃない、という感じも良いなと思った。もちろんつらいんだけど、世の中そうすっきりと後悔なく生きられるものじゃないし。
    「本はいいよ。特に、どうしようもなく哀しくて泣きたくなったようなとき、本の中で登場人物の誰かが泣いていたりすると、ほっとするんだ。ああ、ここにも哀しみを抱えた人がいるってね。」
    という久代さんの言葉が、そのとおりだなと思った。

    加納朋子さんの作品は初めて読んだけど、良かったなぁ。
    つらい中でも頑張ろうと強く生きる主人公照代の姿とか、周りの人も極端にわかりやすく優しいわけではないところとか、なんだか素直に読めた。


    「壊れた時計は松ちゃんが修理してくれた。ゾンビ自転車だって、見事に甦った。ガラスのリンゴは今頃金魚鉢になって、真っ赤な金魚を泳がせているかもしれない。だから、壊れてしまった家族だって、いつかは生まれ変われるかもしれない。同じものでなくても、もっと別な、いいものに。けっこう楽観的に、そんなことを考えている」

  • 星星峡2003年7,8月号春の嵐、12月号,2004年1月号壊れた時計、3,4月号幽霊とガラスのリンゴ、6,7月号ゾンビ自転車に乗って、9,10月号ぺったんゴリラ、11,12月号花が咲いたら、2005年1,2,3月号実りと終わりの季節、の7つの連作短編を2005年5月幻冬舎から刊行。2008年2月幻冬舎文庫化。ささらシリーズ2作目。中学卒業直後に佐々良町に逃げてきた照代が主人公。さやをはじめとする前作の人たちも登場して脇を固めます。照代の再生と現れる幽霊少女の謎解きの展開がドキドキで楽しい。素直じゃない照代が可愛い。ゾンビ自転車、ぺったんゴリラの表現が面白い。ラストで明かされた幽霊少女の正体にはびっくりでした。

  • 評価は5.

    内容(ブックデーターより)
    親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。そこで彼女が一緒に暮らすことになったのは、おせっかいなお婆さん、久代だった。久代は口うるさく家事や作法を教えるが、わがまま放題の照代は心を開かない。そんなある日、彼女の元に差出人不明のメールが届き始める。その謎が解ける時、照代を包む温かい真実が明らかになる。

    このシリーズはおばあちゃんの言葉が心に染みる。勉強しなさい!自分のために。
    最後まで照代のお母さんの考え方や行動は理解の域を超えたが…幼児虐待ってその位深い傷を負うものなんだろう。ファンタジーだけど心ほっこりで良い話だった。

  • 「勉強しなさい、誰のためでなく自分のために」

    てるてる あした。 きょうはないても あしたはわらう。

    • 円軌道の外さん

      加納 朋子さんは
      『モノレールねこ』を読んで
      まんまとハマっちゃいました(笑)(^O^)

      文章うまいし
      あったかい読後感です...

      加納 朋子さんは
      『モノレールねこ』を読んで
      まんまとハマっちゃいました(笑)(^O^)

      文章うまいし
      あったかい読後感ですよね。


      この作品も読んでみたいなぁ♪


      2012/12/01
  • 内容(「BOOK」データベースより)
    親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。そこで彼女が一緒に暮らすことになったのは、おせっかいなお婆さん、久代だった。久代は口うるさく家事や作法を教えるが、わがまま放題の照代は心を開かない。そんなある日、彼女の元に差出人不明のメールが届き始める。その謎が解ける時、照代を包む温かい真実が明らかになる。

    ささらさやの続編で、前回の主人公さやも登場します。久代のくちうるささは半端無いですが、きっちりとして実は心優しい老婆をみんな大好きになること請け合いです。親の愛を求めて得られ無いのは不幸なことですね。

  •  親の夜逃げのため,ひとりで「佐々良」という町を訪れ,母親から,「遠い親戚」だと紹介されていた鈴木久代さんの家で居候を始めた「雨宮照代」の話。読んでいる最中は,全体的な構成は米澤穂信の「リカーシブル」に似ているような印象を持った作品である。
     「雨宮照代」の境遇などを考えると,とても楽しい話にはならないはずだが,田舎ならではの付き合いの在り方などがあって,そこまでじめじめした作品にはなっていない。むしろ,爽やかに感じる部分がある。とはいえ,あえてハッピーエンドにせず,鈴木久代が,病死してしまうという終わり方にしたのは見事。とても心に残る作品になった。
     登場人物のキャラクターがとても秀逸。夏さんや珠さんというお婆さんたち,サヤさんやエリカさんという女性陣,照代がバイトをしている鈴木久代の教え子たち,山田偉子という女子高生,子ども達など,どの登場人物も,存在感がある上にきちんと描かれている。
     個々の短編も,「日常の謎」すらない作品ばかりだが,個々のキャラクターの造形がうまく,じんわりくる良さがある短編ばかりである。
    親から愛されない子ども,親に愛されたい子どもの,子どもとしての悩みなどが描かれているのは共感が持てた。ごく普通の家庭にいても,兄弟で自分だけ愛されていないと感じるなど,些細な悩みではありながら,こういった悩みを持っていた子どもは多いのではないだろうか。
     ミステリ的な謎解き要素は皆無だが,ハッピーエンドで終わらない終わり方,主人公のキャラクター,鈴木久代のキャラクターなど,非常に好みの作品だった。なかなか忘れられない作品になりそうである。★4で。

  • ささら、さや の続編で、ささらに住んでいる登場人物は
    そのまま登場してますが、
    今度の主役は、中学出たての照代なので、前作とは雰囲気が違いました。
    加納さんの小説の、ほんわかした謎解き小説が好きですが、
    この作品は、母・娘の確執が強くて、照代が可哀想で。
    後に、その母も可哀想だったとわかりますが。

  • 大好きな佐佐良という町を舞台にした、シリーズ2作目。
    1作目の「ささら さや」よりも泣けた。
    おばあさんと女の子という組み合わせは、それだけであたたかくせつない。

    人生はうまくいかない時というのがたくさんあって、「どうして私だけが!」と思ってしまうことばかりで。
    でも読み進めていくうちに、照代の心がほぐれていくのと同じように、自分の心も柔らかくなっていくことに気づく。
    それはきっと、あたたかさが伝わるからだ。
    言葉から、行動から、表情から、存在から、あたたかさが伝わってくるからだ。

    所々ファンタジーの要素が含まれているけれど、それが物語にとても良い影響を与えていると思う。
    加納朋子さんの小説は、包み込まれるような世界観が本当に好きだ。

  • 両親の散財の結果、一人で夜逃げすることになってしまった
    15才の照代の成長の話。

    照代はいろいろなものをなくして、大きく成長したっていうのがよくわかるお話でした。

    久代さんは照代がなくしたものの中で一番大きなものだったのではないかと思う。
    実は親戚でもない久代さんの、
    「勉強なさい。誰のためでもない、自分のためにね」
    という思いやりのある言葉も、照代のために病気の治療を伸ばしてまで
    やってくれたこともすべて自分の中に得て1年分大きく成長したのだと思う。

    三婆が三婆でなくなってしまった…

    自分が成長できたと感じることができたら、
    また読みたい作品でした。

  • ああ、素敵!
    解説で"作者が意図的に泣かせる作品は大嫌いだが、この作品のように自然と泣ける物語は好きだ"というような事が書かれていて、まさにその通りだ!と思いました。激しく号泣はしませんが所々で目を潤ませずにはいられないんです(特に後半はずっと視界が水の中)。
    良い意味でも悪い意味でも人間らしい主人公が辛い境遇に突っぱねながらも、徐々に成長して、強く素直になってゆく姿が素敵です。
    加納作品はまだ五作目ですが、どれもただ温かいだけでは終わらなくて、必ずもう一、二段階上の温かさと優しさを与えてくれる所が大好きです。

  • てるてる あした。 きょうはないても あしたはわらう。

    こんな親も居るのだろう。
    負けず嫌いで強がりで、誰かを愛して、愛されたくて仕方ない女の子の話だ。

    親も間違いなく人間であり、大人ではなく、子どもが成長した姿である。
    最後、母親に向けて言った台詞に、母親までも救ってしまう成長が見える。

    『ささらさや』の姉妹編の話である。
    サヤさんはじめ、おなじみの顔ぶれも、新たな佐々良の町の人々も登場する。

    不思議なことが起きても不思議ではない町。
    この町で暮らしたらきっと、お姫様みたいなオルゴールの中に入れるモノが見つかるのだろう。

    てるてるあした。きょうはないても…

  • 久代さんの言葉「本はいいよ。特に、どうしようもなく哀しくて泣きたくなったようなとき、本の中で登場人物の誰かが泣いてたりすると、ほっとするんだ。ああ、ここにも哀しみを抱えた人がいるってね。・・・・・・・・泣きたくなるようなことがあったら試してごらんよ。長い人生、そんな気分になることだっていっぱいあるだろうからね。」
    私が読書したくなる時ってこういう理由からなのかも・・とハッとした言葉でした。

    「親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。そこで彼女が一緒に暮らすことになったのは、おせっかいなお婆さん久代だった。久代は口うるさく家事や作法を教えるが、わがまま放題の照代は心を開かない。そんなある日、彼女の元に差出人不明のメールが届き始める。その謎が解ける時、照代を包む温かい真実が明らかになる。

  • 「いつだって私は、人や物事の、ほんの一面しか見ていなかった。どんな人間にだってー自分自身にだって、思いもよらない部分が隠されているのかもしれない。」
    最後の照代の言葉が胸に響いた。

  • 「ささらさや」の続編というか姉妹編かな。
    ご主人の幽霊がいなくなってもサヤさんとユウ坊はささらの町で無事に暮らしているみたいね。
    そこへ3婆のひとり・久代さんの家に遠い親類の子という照代が転がり込んだところから始まるお話。
    相変わらずささらでは女の子の幽霊が出たり差出人不明のメールが届いたり不思議な出来事が起こる中、ダメな親のせいでささくれ立っていた照代が、町の人たちのお陰で素直さを取り戻すいい話。
    ただ、照代の母親がどうしてダメになったのかは分かったが、どうして今もああなのかが分からず。
    死ぬ時は久代さんのように人に迷惑を掛けないようにして死にたい。

  • 心に残るフレーズが散りばめられてた。
    ハッとすることも多く、自分の性格に落ち込みながらも、素直にまっすぐ成長していく照ちゃんと、厳格に一本太い柱を持った久代さんとそれを取り巻く人々。
    正直、両親にはイライラさせられること然りだけど、それも受け入れて、ちょっと達観していて、凄く面白かった。
    ので、残り2冊も一気買いです。

  • ささらさやの続編。
    さやがちゃんとお母さんやっててよかったって思っちゃった。
    今回もやっぱり、ほっこりあったかくなるような話。
    てるちゃん、幸せになってほしいなって、、
    で、てるちゃんが結婚してちゃんとお母さんになってるって続編書いてほしいな~♪

  • ささらさやの続編。主人公は不幸な星の下に生まれ育った15歳の照代。夜逃げ同然で久代さん宅に身を寄せて、たくましく生き抜く話。もちろんサヤにユウ坊、エリカにダイヤ、おばあちゃんズも再登場。でもスポットは久代、照代の2大ヒロイン。

  • 後書きにも書かれている通り、泣ける小説でした。加納朋子さんの作品は初めてでしたがふんわりと泣ける、人情深いファンタジーでした。最近はなかなかなく機会も少なくなっているので久しぶりにじんわり泣きたい人にもおすすめです。他の作品も読んでみたくなりました。

  • 「ささらさや」に続く「ささらシリーズ」第2作目で、2006年に黒川智花×木村多江でドラマ化されてます。私的には前作の、優しく温かいささらの雰囲気をまた楽しめると期待して手に取りました。でも両親の借金による夜逃げでささら村に来る事になった今作の主人公照代の境遇のせいで、棘のある世界観になっていました。感動する場面もありますが、序盤から中盤にかけて照代の自己中の荒波に圧倒され、心温まったのは最後のほんの一瞬でした。もっと違う目線でサヤさん達に会いたかったな。

  • あたたかくて少し笑える話が読みたかったので、ぴったりでした。むくれていた照代ちゃんが働きはじめて成長する姿に、千と千尋の神隠しを思い出したような。コンプレックスだらけの照代ちゃんが周りのひと全てに嫉妬するような気持ち、すごく共感できた。カツ丼がほんとうにおいしそうで泣けた。

  • 浪費家の両親の借金でせっかく受かった高校にも行けず
    夜逃げをすることになった照代。

    遠い親戚の久代おばあちゃんのいるこの街「佐々良」にやってきます。

    ささらシリーズの続編

    前作のメンバーももちろん出てくるけれど中心はこの
    照代の成長物語かな?
    とにかく最初は嫌な女の子です。
    久代おばあちゃんも厳しいし、なかなかお互いの距離が縮まらない。

    照代とユウ坊にだけ見える少女の幽霊
    今回も日常の中のちょっとしたミステリーを交えながら
    そっと包み込むような優しさを散りばめたとっても
    読後感よし!の作品です。
    やっぱりこのシリーズよいわ。

    久代おばあちゃんグッドです。

  • 懐かしい、ささらのサヤさんが登場。主人公は中学を卒業したばかりの照代なんだけど。照代は大変な状況なんだから自分の事しか考えられなくて当然。だけど、そんな状況だからこそ色々な人の気遣いにも気づくようになったのかも。

  • ささらの町を舞台にした、連作短篇集の第2作。といっても、自分は3→1→2って順番できたので、現行ラインナップ中ではこれがラスト。これまで同様、ちょっと不思議な町における、自分発見が主なテーマ。共通する登場人物を上手い具合に配しつつ、本作だけでも成り立つように物語が組み立てられていく。ミステリの要素だけを考えると物足りないと思うし、正直途中で微妙に中弛み感を覚えてはしまうんだけど、そんなこんなは、最終章で雲散霧消します。この感動を味わえるだけで、一冊読み切る価値は十二分にあると思えちゃう。シリーズを通して素晴らしい読書体験になりました。ありがとうございます。

  • 面白かった。泣かされた。素直じゃない女子高生(になるはずの子)がいろんな優しさの形で接してくる人々に囲まれて成長していく姿が微笑ましかった。その後も知りたい。「ささらさや」も読んでみたい。

  • ササラシリーズ第二弾。今回は不実な親のせいで高校進学を断念せざる負えなくなった照代の話。安易に慰めるのではなく、自ら強く生きることでしか本当の幸せを掴むことができないのだと語りかけてくる。皆、傷を負いそれでも懸命に生きている逞しい姿が心に残る。
    あらすじ(背表紙より)
    親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。そこで彼女が一緒に暮らすことになったのは、おせっかいなお婆さん、久代だった。久代は口うるさく家事や作法を教えるが、わがまま放題の照代は心を開かない。そんなある日、彼女の元に差出人不明のメールが届き始める。その謎が解ける時、照代を包む温かい真実が明らかになる。

  • 加納さん。これはいいな。
    ちょっと寝不足の頭で読んじゃったけど。
    がんばれ。
    前の本も読みたいな。

  • ちょっと強引だったかなぁという気もするけど、まぁ良かった。

  • ささら、好きなシリーズ。泣いてしまうので、電車では読めない。せつなくも良い話。悲しい涙ではない。

  • 前作「ささらさや」とは登場人物、幽霊という共通点はあるものの、主人公が初登場の人物の視点なので、こちらを読んでから前作を読んでも問題ない感じ。
    しかし、久代さんの照代に対する言葉に暗示されてるとはいえ残念…

    追記
    解説が成井さん(キャラメルボックス)。

  • 勉強ができていたにも関わらず、
    親の借金のせいで、高校に進学できず、
    ひとり遠い親戚に預けられることになった照代。

    そこで魔女と恐れられる久代さんの家にやっかいになるのですが・・・。

    姉妹作『ささらさや』を未読のまま購読。
    読む順番を間違えたと思いましたが、それでも十分楽しめました。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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