因果鉄道の旅 (幻冬舎文庫 ね 1-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344414648

感想・レビュー・書評

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  • 思わず電車の中でクスクスしちゃいました。これは面白い本に出会いました!!

  • 松尾スズキが言う「突飛な人」、大槻ケンヂが言う「文学な人」のルポタージュかな?

    身の回りのとんでもない人から、勝新太郎、蛭子能収、奥崎謙三と有名人も取り上げている。

    俺が一番ウケたのは、千葉の山奥で、捨てられた犬や飼い主が飼えなくなった犬を引き取り、飼っている「しおさいの里」のルポタージュ。

    この「しおさいの里」、なんと500匹の犬を飼っている。

    この「しおさいの里」の情景が描かれた部分を以下に引用する。

    「 何もない野原で寒い風はピューピュー吹き放題で、1頭吠えりゃ残りの499頭も一斉に吠えるわけで、想像を絶するうるささなんだけど、日が沈むと辺りは真っ暗になるし。それで、古タイヤに灯油をかけて燃やすわけ。そうすると、ススが凄いんだよ。真っ黒な煙がモクモクと出るから、みんな真っ黒になっちゃって。殆ど戦場って云うくらいに壮絶な現場でしたよ。」

    一見良い事をやっていそうだが、なんだろう、このガサツで、汚そうで、貧乏臭そうな感じは。で、「しおさいの里」で犬の世話をするボランティアと作者の根本敬の会話が、かなりトんでいる。以下に引用する。

    「『いいか、俺はね、毎日1日に2回エサやるけど、エサが終わると全部いちいちこうやって洗ってるだよ、ぴかぴかに。でもわざわざこんなの洗剤使ってゴシゴシ擦る必要ないんだよ。水でちゃっちゃっちゃっとやりゃあ、それでいいんだよ。な、こんな事無駄な事だと思うだろう』
    『え、いやまあ』
    『そうだよ、無駄な事なんだよ』
    で、次にドスの利いた大きな声で、
    『でもやるんだよ!』 」
    なんだろう?活字だけ読めば、やり取りとしては成立してるのに、会話としては、成立してない、一方的にトんじゃってる感じ、けどたまらん。
    で、「しおさいの里」の主催者、本多さんは、ボランティアの人を超えたトびっぷりである。また、以下に引用。

    「『私は今、全国キャンペーンをやっていて、年に何回かバスで日本の各地を廻ってるんだけど、それは犬や猫を捨てるのを止めようとか、避妊手術の法制化を訴えたり、そういう目的もあるんだけど、もうひとつ、良い場所を探すっていう目的もあるんですよ』
    『あ、それは』
    『山を買って、そこに全国の捨て犬や捨て猫を引き取るんです。出来れば温泉の出る所がいいね。病気の犬を治療できるからね。そこに、犬の宿舎、猫の宿舎、そして、ボランティアの人達とその家族が住める様な大きな宿舎も建てます。それから孤児院も建てて、全国の孤児もそこに引き取る。で、私が教育して、国のお役に立てる様な立派な人間を育てるんです』『お役に立てるといいますと・・・・・・』
    『獣医などの立派な人間です』」

    本多さんは、とてつもなくデカい人間だ。確かに、実現したら素敵な事だが。うーん、あまりにデカ過ぎる。

    「しおさいの里」は、いつしかマスコミに批判される様になる。
    マスコミが批判した内容は、
    ・狂犬病などの、伝染病の予防注射を全然していない。
    ・皮膚病やジステンパーにかかった犬を普通の犬と隔離せず一緒に飼育している。
    ・本当の犬好きならあんな飼い方しない。
    ・寄付金の使途に不信な点が多い。

    本多さんが我々一般社会人の常識では測れない大きな器である事がよくわかる。

    と、まあ「しおさいの里」の本多さんの話ばかりになってしまったが、他の章でも本多さんに勝るとも劣らない、トんでる人達が沢山登場する。初期の「クイックジャパン」が好きな人とか、結構ハマると思う。

  • 文庫版の吉田豪の解説目当てで買ったけど結局再読。
    実生活ではどうしても切り捨てざるを得ない無駄なものをこんなにも丹念にすくいあげて開陳してくれる根本先生には感謝してもしきれない。個人的には『でもやるんだよ!』の誤用が目立つようになったと思っていて、ちゃんと本書を読めよと。
    吉田豪の解説は半分は蛭子能収解説という全くの無駄っぷり。素晴らしい。

  • 根本敬の本は初めて。
    みうらじゅんと並びサブカル界の大御所だけあって、着眼点が面白い。
    奇人・変人を研究対象としておもしろがって観察してはいるが、
    けっしてバカにしたり、相手を不愉快にさせたりしているようではなく(この本を読んだだけの感想だが)
    それらの人たちとの付き合いを純粋に楽しんでいるあたりが
    常人にはまねできないと感じた。


    この本を読んだ後に家に帰ったら健康診断の通知がきており、
    人生初の再検査となったことが判明したときに、
    これが自分のホシか、と納得してしまった。

  • KKベストセラーズから出た単行本よりイラスト、図版を削って、吉田豪の解説を加えたもの。

  • 以前から読んでみたいと思っていた本。
    多くのサブカル人に強い影響を及ぼしたと言われるほどの名作らしいので。
    この度安価で手頃な文庫版が出たので手に取ってみた。
    うん、思ったより普通だった。
    もう多くの人がこの手のエッセイ書いているからね。
    先駆者といえばそうには違いないのだろうが、21世紀も10年経っていればさすがに斬新さはない。
    勝新とか蛭子さんなんてとっくに手垢のついた観察対象であって。
    韓国の怪しげなおっさんもどこかで聞いたことのあるような話だ。
    ただやはりこの本の核となっている「内田研究とビッグバン」だけは必読だろう。
    著者は学生時代をこの内田なる友人(素人)の研究にそのほとんどの熱情を注ぎ込んだようだ。
    確かに内田の凄さは伝わった。
    端的にいえば大衆食堂のババアを不幸にする話。
    周りの人間をどん底に叩き込んでおきながら「俺って幸せ者だなー」と言い切ってしまうその神経。
    まあババアも大概だったけど。
    「オデート」って(笑)。
    単純にこの内田が現在どうなったのか知りたい。
    松尾スズキとの対談では普通に働いていて、この本のことも知らず根本敬のこともフリーターか何かだと思っている、って話だったのだが(その本で根本敬のことを知ったんだよな、そういえば。どれだけニワカなんだか)。
    研究対象となる素人、この世にどれだけいるだろうか。
    奇人も最近は養殖モノが多くて嫌になるのだ。
    変わっているアピールには心底うんざりする。
    まずは内田のようにそこらのババアとやってからにしろ、と文句の一つも言いたくなるのだ。

  • 単行本で既読。
    本文イラストのほとんどがなくなってしまい、じつにもったいない。

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著者プロフィール

上智大学教授

「2019年 『東南アジアの歴史〔新版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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