37日間漂流船長: あきらめたから、生きられた (幻冬舎文庫 い 40-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 58
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344415416

感想・レビュー・書評

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  • 船のエンジンの停止から、発見されるまでの37日間の漂流の記録です。

    よくある漂流記と少し違うのは、この本が漂流を体験しない人にとっても、とてもメッセージ性を感じ取れるものだってこと。
    メッセージ性といっても、説教は一切ない、私たちに警告することもない、ただ生き残った武智さんの心の在り方に、たくさんの学びを、私は感じ取りました。

    いかに生きるための行動をしたか、奇跡を呼び寄せたか、そんな過酷な体験記ではなく、むしろ、生きることに対する諦めが、肩の力を抜いて、ありのままの今を受け止めさせて、心に落ち着きをもたらした。

    頑張らなかったから、生きるためのいろんなことを諦めたから生き残れたという、どこか逆説めいた言葉が、この本を読み終えた私たちの生活のいろいろな場面で活きてくるように思います。

    いろんなことに対して、私たちは頑張りすぎていて、あまりにも結果に執着しているのかもしれません。
    結果を諦めて目の前のできることをとりあえずしてみる、そうすると心は平穏に保たれて、いろんなことが明らかになるのかも。

    もちろん、漂流記としても大変興味深い内容です。
    何度か生命の危機を感じさせる場面があるものの、生きることをあきらめている武智さんは、どうせ死ぬからできることをしよう、そんな精神の中で、不思議と命を伸ばしていきます。

    台風や発見時の描写は、筆者の文章力が発揮されていて、とても臨場感がありました。

  • 2016年7月17日、読了。

  • 9784344415416 212p 2010・10・10. 初版

  • 生きるという意志をもっていないと、人って案外あっさりいっちゃけど、生きる事に貪欲で執着をもっていればサバイバルで生き残る確立は高くなる!だろうな。

  • 「あきらめたから、生きられた」本書のサブタイトルであるこの文言は矛盾しているように感じるが、故郷の長崎から潮に流され遭難して37日間も生き永らえた武智三繁さんの心理の動きを巧みに言い表している。
    最初はエンジンを、次いで食糧、さらに水と、徐々に生命の糧を失いながら、彼はそれらに未練がましく執着することで精神をすり減らしたりしなかった。なぜか淡々とあきらめ、ただ残されたもので現在をやり過ごしてゆく。
    この遭難には本人の判断ミスや事前の準備不足もある。自然の猛威も襲う。しかし、救出という大きな幸運をつかんだのは、そこに至るまでの毎日、ただ目の前の問題にだけ取り組み、絶望に身を任せなかった武智さんの心のありようゆえだったと思う。

  • 幾度も肌に来ました。
    本質を突く言葉は、確実に身体に何かしらの反応を来すもので、
    彼の37日間の漂流生活の中での内面生活、またその変化を言語化したそれは、(今作ではライターが編集を手を加えてはいるものの)、
    他言の余地なくそれに達していると感じた。

    もうそこでしか生きることが出来ないという状況において、それはまさしく生死の境、そこでのあきらめこそが人間に知恵を生ませる。
    今作を読む限り、人間に課せられた最たる課題、それは「生きる」ことなのではないかと感じる。いきること、それ自体が生の目的なのであると。しかしながら、それは決して【生きているだけ】で良いということを述べたいのではなく、生きようとする【意志】であるとか、それに随する【能動性】のようなものこそが、生を輝かせ、それを担保するのではないか。そしてその場所は限りなく原始的な、自然であるべきである、人間の感情がまっとうに反応し、作用する場所。決して組織ではなく、規範などあってはならない。
    生きるとういうことは【あがく】ことなのではないか。今の発明は利便である。利便的なものはあると便利だが、なくてもよい。

  • 実体験者のことばは本当に大きく心に響く。「あきらめる」ということの本当の意味を教えられた気がします。

    心の中のなにかが融けていくような、許されるような、そんな本。

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