うつくしい人 (幻冬舎文庫 に 13-1)

著者 :
  • 幻冬舎
3.51
  • (180)
  • (445)
  • (520)
  • (128)
  • (13)
本棚登録 : 6107
感想 : 521
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344417229

作品紹介・あらすじ

他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。ある夜、三人はホテルの図書室で写真を探すことに。片っ端から本をめくるうち、百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた-。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 一人の女性が、心理的抑圧から解放され、自立に向かっていくお話。
    読み始めたら、少し前の自分のことが書いてある!と思うほどに、自分と重なった。みんなそんなにわたしのことなんて気にしてない。なのに、なんか悪口言われてる感じがする。ちょっとしたやりとりの中にある言葉を被害的に受け取って、勝手に落ち込む。自己肯定感の低さ。人間関係が、うまくいかなくなる。

    人って結構、自分が一番嫌い、というか許せない!と思う人に、一番認めてもらいたかったりするもので。
    そしてそれは、案外近くにいる人だったりする。そして、近いからこそ、言いたいこと言えるから苦しいし、感情もぐわんぐわんと、波打つ。こうした感情の揺れは、なかなかに人を、疲弊させる。わかってもらいたいのに、わかってもらえない。とっく忘れられている許せないことを、忘れられない。
    だから、感情が安定している、坂崎やマティアスのような人に、うっかり喋ってしまう。

    わたしもきっと、自分と正反対の生き方をしているいとこや、正反対の価値観を持った母に、ずっと認められたい。
    けれど、自分で自分を認めてあげたら、なんだかどうでもよくなってしまって。違う人間として理解して、壁をつくって生きてる。
    たぶんこれからも、その諦観のまま、生きていく。
    ほんとは、きちんと「あなたが嫌い」「あなたのことを許せない」「あなたに認めてもらいたい」「あなたに褒めてもらいたかった」そう伝えたいのだけれど。

    • naonaonao16gさん
      大野弘紀さん

      こんにちは!
      この作品を含め、他の作品へもコメントを下さり、ありがとうございます。

      「絶賛」というお言葉をいただ...
      大野弘紀さん

      こんにちは!
      この作品を含め、他の作品へもコメントを下さり、ありがとうございます。

      「絶賛」というお言葉をいただき、非常に嬉しく思っています!
      自分が思っていることを言葉で表現することや、できるだけ素の感情を出せたらと思うのですが、まだまだ語彙力が乏しく、こうして作品をお借りして自分なりの表現をすることがいっぱいいっぱいです。

      読んでいただけて本当に嬉しいです。
      これからもよろしくお願いします^^
      2020/06/21
    • 慶さん
      この本が好きでレビューを見て回っていたら
      あなたのレビューに辿り着きました。

      すごく言葉で表現されるのがお上手ですね。
      貴方のレビューを見...
      この本が好きでレビューを見て回っていたら
      あなたのレビューに辿り着きました。

      すごく言葉で表現されるのがお上手ですね。
      貴方のレビューを見れて良かったです。
      2021/10/30
    • naonaonao16gさん
      慶さん

      こんにちは。
      ありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです^^

      こうして言葉にできたのは、作品そのものの素晴らしさ...
      慶さん

      こんにちは。
      ありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです^^

      こうして言葉にできたのは、作品そのものの素晴らしさと、共感できる部分に溢れていたからだと思います。

      ありがとうございました。
      またよかったら是非遊びにいらしてください!
      2021/10/30
  • 人の苛立ちに敏感な百合は、あるミスをきっかけに会社を辞め、引きこもってしまう。
    そんな自分自身に危機感を覚え、瀬戸内海の島へと旅立つが……。

    ひとつのことに集中すると他に気が回らないし、酒もつくれないバーテンダー・坂崎。
    屋外で長時間寝転がっては心配される、奇妙なドイツ人・マティアス。

    変わり者ふたりと過ごす時間や会話が、心地よかった。

    彼らと過ごしながら、自分と向き合い、少しずつ回復していく百合。
    凝り固まった主人公が解放される物語。

    • KOROPPYさん
      >naonaonao16gさん
      こんばんは。

      マティアス、いいですよね!
      ちょっとずれた会話とか、心の解放感とか、独特の雰囲気があ...
      >naonaonao16gさん
      こんばんは。

      マティアス、いいですよね!
      ちょっとずれた会話とか、心の解放感とか、独特の雰囲気があって。

      主人公が解きほぐされていくのもわかる、って感じでした^^
      2023/03/14
    • naonaonao16gさん
      ですよねー!!

      BARってこういう主人公みたいな出会いもあるよな、と、最近勇気をだして一人でBARに行ってみたのですが、常連さんとの関わり...
      ですよねー!!

      BARってこういう主人公みたいな出会いもあるよな、と、最近勇気をだして一人でBARに行ってみたのですが、常連さんとの関わりを少し面倒に思っている自分がいます爆

      そうそううまくいかないもんですね笑
      2023/03/14
    • KOROPPYさん
      >naonaonao16gさん
      実際に行動に移されてるの、すごいです!
      本で読むと素敵だなって思うんですけど、現実に知らない人や常連さん...
      >naonaonao16gさん
      実際に行動に移されてるの、すごいです!
      本で読むと素敵だなって思うんですけど、現実に知らない人や常連さんとコミュニケーションを始めるのって、敷居が高いです。
      2023/03/16
  • 西加奈子、めっちゃ好きだなって思いました。
    不器用な人間を描ける人間だからこそ、西加奈子自身もきっとすごく不器用で、けれどそれをまるごと自分と捉えて向き合って生きていこうとしているんだろうな、、。

    あとがきにもありましたが、自分以外の人が全員キラキラして見えるときって、誰にでもあると思うんです。
    私もそんなことしょっちゅうで、だけど周りがみんな私よりも優れて見える時期でも、自分最高!ってなってる時期でも、西加奈子の小説は読める、それってすごいことなんじゃないのかなって思いました。

    -------------
    「海も変わるのだ。こんな立派な海が。では、私が変わることくらい、環境によって自分を見失ってしまうことくらい、起こりうることなのではないか。」

    「吸収すること、身につけることだけが、人間にとって尊い行為なのではない。何かをかなぐり捨て、忘れていくことも、大切なのだ。」

    「どこへ行ったって、日常から逃れることはできない、と。それは恐怖を呼び起こすだけのものではない。日常が続いているからこそ、その残酷さがあるからこそ、私たちは生きていける。
    何かを忘れ、思い出し、悲観に暮れ、笑い、怒り、消えてしまいたいと思う。どんなときでも、ふと我に返ると、自分が圧倒的な日常に浸っていることに気付く。」
    -------------

  • 主人公の百合の、旅行で訪れた島での日々と、そこでの心の変化を描いた話。
    量はあまり多くなく、さくっと読めた。
    終始ふわっとした内容で、板崎とマティアスとの出会いが百合にとってそんなに良いものだったのかよく分からない。
    分からない、というのが良いのかもしれないけれど…。
    今まで三十数年生きてきた生き方を、1週間の旅行でいきなり変えることは難しいけれど。重荷になっていた、生きることを難しくしていた部分を軽くすることができた百合は、きっとこれから「美しい人」になっていくだろう。
    人は吸収するだけが尊いのではなく、捨てることも大切な作業なのだという作中の言葉には、思わずはっとした。

    板崎の過去について、もう少し知りたかったな(笑)

  • あらすじは作品紹介のとおりです。

    うつくしく優しい姉を避けてきた気持ちが島のホテルを訪れて次第に解かれていきます。

    適性がない職場に異動させられたり、大切な人を失ってひどく落ち込んだとき。そんなとき自分もソロツーリングのキャンプ旅をしましたね。百合は繊細さんでしょうか。

  • 主人公の考え方、恋愛の基準が自分と重なる部分があり、自分を見つめてるようで少し辛かった。
    他人の目を気にして生きてきた自分のことを認めて、何かが大きく変わることもないけど、そんな自分でもいいと思えることが大事なのかもしれない。

  • 作者の本は、とても合うものととても苦手なものがあって、これは後者。言い換えれば、ぐさぐさくる本。

  • 百合がマティアスと坂崎によって浄化されていく過程がそれこそ美しかった。
    ところでこの3人、メアドくらいは交換したのだろうか?

  • 3、4年前に初めて読んで、西加奈子さんの作品を好きになった記念の本。心がしんどくなったら何度でも読みたい本。久しぶりの再読でした。

    蒔田百合の、周りの人の苛立ちに気付いてしまうところや、周りから自分がどう見られているかを過剰に気にしてしまうところなど、「あぁ、私と同じじゃん」と思う場面が何度もある。鬱々としていた百合が、自分に全く興味を持っていない坂崎とマティアスに出会い、いらないものを置いてラクになっていく様子は私に希望をくれる。
    「自分を見る目」に苦しめられることもあるけれど、私も誰かの「うつくしい人」になっているのだろうか、そうだと信じたいなあ、と思った。

    p. 147
    とにかく、気になるんです。気になるの、人の目?自分が社会的にどういう立場にいるのか。どう思われているのか。自分のことを見ている自分の目が、何重にもありすぎて、自分が自分でいることがとういうことか、分からなくなるんです。分からないんです。だから、誰の目も気にせずに、自由に、行動している人を、私は本当に羨ましいと思うんです。どこかで馬鹿にしてる、というか、どうしてそんな無軌道に行動出来るの、て呆れるところもある、むしろ大嫌いなんですけど、でも、やっぱり、憧れがあるんです、きっと。なんていうか、とてもそういう人って、とても、美しく見えるときって、あるでしょう?

    pp. 206-07
    「うーん、でも、本を置きに来るんです。吸収するだけじゃなくて、置いていくことも必要かもしれない、と思います。」

  • 初めは読むのが重くて辛かったです。人の目を気にして生きて、それができない人に対して蔑んでいるにもかかわらずいじめられていると吐いてしまう矛盾。主人公も本来は姉側の人間なのではと思いました。姉など相手の気持ちややな部分が理解でき過ぎて苦しむというか、自分を見ている様な感覚があるのかなと思いました。
    2人との交流は飾らずに済む分読む方も心地よく軽はずみな男女にならないところも良いし、
    家族の誰よりも理解してくれて誰よりも優しく美しかった姉を思い出し和解に向けていくところも希望が見えて良かったです。
    あの2人とは今後交流をもつのかはわからないけど
    ココロが満タンになった時に再会してほしいです。

全521件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

西加奈子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
瀬尾まいこ
西 加奈子
伊坂 幸太郎
村上 春樹
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×