第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

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著者 : 又吉直樹
  • 幻冬舎 (2011年11月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344417694

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第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)の感想・レビュー・書評

  • 「容姿にも体力にも自身がない奴がモテるための最後の手段を教えます。本を読むことです。騙されたと思ってやってごらんなさい」
    高校生の頃、英語担当のおじいちゃん先生がこう言いました。単純な僕は、勧められたディケンズの『クリスマス・カロル』を皮切りに本を読むようになりました。その後、少しはモテるようになった...気がします。

    おそらく今、日本で『モテる男、裏ランキング』を採ったらかなり上位に食い込むであろう男、ピース又吉がナビゲートするブックガイド。
    ネタバレせずに本を読みたくさせるその文才に驚きます。
    面白可笑しく、時に切なく。特に、古井由吉の『杳子』の紹介では不覚にも涙をこぼしてしまいました。もしこれが実話ならば名エッセイスト、虚構であったとしても短編小説の名手です。

    映画や音楽に比べて、ともすれば偉そうになりがちな文芸の世界。それを偉ぶらず謙虚な姿勢で、まさに『第2図書係補佐』というスタンスで案内してくれる又吉氏は最高にカッコイイ。

    そういえば、おじいちゃん先生はこうも言っていました。
    「でも、本で得た知識はけっしてひけらかしてはいけません。そういう奴が一番嫌われます」

  • 数年前のキングオブコント決勝でピースが演じたコント、「ハンサム男爵と化け物」。

    なんとも言えず頼りなくて、全身から「生まれてきてすみません」オーラを放っていた
    化け物役の又吉さんに、娘と一緒に大笑いしたのですが、あの「すみません」オーラが
    図書係なのに「第2」で、しかも「補佐」というタイトルにも漂っているのが素敵♪

    いつもブクログのレビューを書きながら
    あ~あ、もしかしたら、まだこの本を読んでない人も読むかもしれないのに
    また結末が予想できるような書き方をしちゃった。。。
    と、罪の意識に打ちひしがれるのですが

    あらすじや細部に一切触れず、自分の思い出話や失敗談を綴ることで
    その本の印象を鮮やかに描き出す、又吉さんの手腕の見事なこと!
    なんとまあ、うらやましい♪

    私とは読書傾向がかなり違うのだけれど、魅力的なエッセイにつられて
    ついつい読んでみたくなってしまいます。

    教科書の後ろの便覧から読書の幅を拡げたという
    ユニークな文学青年、又吉さん。
    エッセイとしても、ブックガイドとしても存分に楽しめる、
    さすがたくさんのブクログ仲間さんが「おすすめ!」と断言する本でした。

  •  ピース又吉さんといえば、本。相当な読書家として知られる又吉さんが、生活の傍らにある本と、自分の回想をつらねた作品。
     書評かなと思って読んでみたけど、ただの書評ではありませんでした。さすが、そこはお笑い芸人さん。自分の過去の出来事、吉本の芸人さんとのできごとなどを、本を絡めて描いている作品でした。
     パンサー向井とのやり取りとか、もう大爆笑。「ドラゴンボールで言うところの天津飯の横で浮いてる餃子(チャオズ)レベルや」というせりふを、
    向井は全力で「「テンシンハンの横で浮いてるギョウザリョウリや」とよむ。やー笑った。

     しかし、笑だけではすまないのがこの作品。本読みの又吉さんの、本を読む描写は、本当に共感。もってくれもっとくれと指はページをめくる。私も一緒だ。
     日常を生きていて、こんなにドキドキしたりワクワクしたり、泣いたり笑ったりしないもの。生きているだけではそうそう簡単に得られない情動を、本はいとも簡単に私に与える。私が欲しいといえば、欲しいだけ、本は私に与えてくれる。

     「読書という趣味を見つけたことにより、僕の人生から退屈という概念が消えました」
     ああ、又吉さん。本当にそのとおり。本が好きな限り、私にも退屈、ヒマなんてものは存在しない。
     作家の皆様、書店員の皆様、本当にありがとうございます!!!

  • 面白かったぁ!
    職場でお昼休みに読んでいて、久しぶりに笑ってしまった。
    あぁ…あやしい人だ。

    又吉さんを全く知らなかったら、この本から私はいったいどんな人を想像しただろう?
    ものすごく魅力的な人だと興奮していたような気がしている。
    ちょっと惜しかったなと思うのは失礼なことだろうか。
    もちろん又吉さんがとても魅力的な人なのは間違いないのたけど。

    本を読んでいる時、突然過去の自分が思い出されたり、逆にやたら感動した時に以前に読んだ本の一場面や一節が浮かんできたりする瞬間がある。
    この本には又吉さんのそんな瞬間が書かれている。
    あの本とこの記憶が結びつくのかぁ…ととても興味深かった。
    すごく個人的な感覚なんだな…と改めて思う。
    本当に面白い。

    そして、何よりも文章がすごく心地良い。
    痛かったり恥ずかしかったりする記憶も、「痛かった」「恥ずかしかった」と力まず言ってしまえば、もう痛くないし恥ずかしくない。
    それがこの本の心地よさの理由じゃないかな。

  • 普段は眼鏡をかけず、裸眼でいますが若干乱視です。「ピース」のことはしばらくの間、犬吉さんと綾部さんのコンビだと思い込んでいました。犬吉、変わった苗字だなぁ…とよくよく見直したら又吉さんでした。

    そんな又吉さんの、本への想いがたくさん詰まった本紹介エッセイ。
    国文学専攻だったので純文学は講義で仕方なく読まされたものの、いまいち合わずにしまい込んでいたのですが、この機に読み直そうかな。

    その風貌から殺し屋だの死神だの、陰気なキャラ付けをされる又吉さんですが、エピソードがいちいちシュールで不器用で励ましたくなりました。寝屋川出身だし。頑張れ、マッタン!

    尾崎放哉全句集、昔日の客、杏子、炎上する君、万延元年のフットボール、赤目四十八瀧心中未遂、サッカーという名の神様、何もかも憂鬱な夜に、世界音痴、エロ事師たち、親友交歓、月の砂漠をさばさばと、高円寺純情商店街、巷説百物語、告白、江戸川乱歩傑作選、蛍川・泥の川、中陰の花、香水、イチシエーション・ラブ、山月記、コインロッカー・ベイビーズ、銃、あらゆる場所に花束が…、人間コク宝、アラビアの夜の種族、世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド、銀河鉄道の夜、逃亡くそたわけ、四十日と四十夜のメルヘン、人間失格、異邦の騎士、リンダリンダラバーソール、変身、笙野頼子三冠小説集、ジョン・レノン対火星人、夜は短し歩けよ乙女、袋小路の男、パンク侍 斬られて候、異邦人、深い河、キッチン、わたしたちに許された特別な時間の終わり、友達、渋谷ルシファー、宇田川心中。

    中村文則さんとの対談も収録されています。

  • 面白かった~。
    真夜中に吹き出しながら読んだり、「あ、この本読みたい!」と感じたり読んで良かったと思いました。

    人柄っていうのかな・・・本当に本、読書が好きなんだなぁ~と愛情がじんじんと伝わってきました♪

    レビューは優しい思いやりにあふれていてますます又吉さんが好きになった。

    真夜中に京極さんのレビューにさしかかりちょっとビビりながら読んだら金縛り→巨大●●ちゃんが本棚に…で、1分くらい布団の中で悶えてしました~。腹筋が攣る。
    久しぶりに笑った気がした。かなり救われた。

    ある意味本当に怖いけど、こんな金縛りなら私も金縛り中に好奇心に負けて目を開けて見れば良かったかな、と思ったりしました。

    私も同じく、暗黒をノートに書きなぐっていたし今だって決して明るい人間とは言えない。又吉さんは本に救われたと書いていた、私もたくさんの本に癒されて救われてきた。今は又吉さんの、この本に救われているような気がする。。。心の支えかも。これはお気に入り本棚に仲間入りの一冊です♪


    ・何もかも憂鬱な夜に
    ・ヴィヨンの妻
    ・巷説百物語
    ・リンダリンダラバーソウル
    ・宇田川心中

    ↑読んでみたい。

  • ずっと読みたかった本。
    でも近所の図書館になくって、買いました。古本屋で。
    又吉さん、ごめんなさい。
    でもきっと古本屋好きの又吉さんなら許してくれるでしょう。
    どの本も、又吉さんの人生や環境なんかをもじって紹介されてて、
    凄く面白かった。
    読みたい本も増えました。

  • 『まさかジープで来るとは』のタイトルが結構好きだったけど、読んだことはなかった、ピース又吉さんのご本。

    ぱっと開いて目次に並べられた本のタイトルを見て、「ああ、この人は本を読むのに慣れているかただ」というのが第一印象。通ぶってるわけでもないし、「お笑い芸人さんに、易しい本からムズカシー本まで、新旧とり混ぜて読んでもらいました」と、企画で押しつけられた、作りものくささがにおうわけでもない。本屋さんの棚やワゴンの、その本にすっと手を伸ばし、ためつすがめつ選んだときの感触が、なぜか目に見えるような気がするラインナップ。

    本編を開いて、次に思ったのは、「原作の空気を文章に落とし込むのが、ものすごく上手い!」ということ。作品の筋に文中で触れている章はあまりなくて、他のかたの感想・レビューにもあるとおり、ご自分の周りのことを書かれている章がほとんど。でも、文章は流れるごとく巧みだし、何よりも、『夫婦善哉』の章では、知人の男女の間にまごうかたなき『夫婦善哉』の空気が流れ、『山月記』の章では、李徴の思い上がりが暴走していくテンションで、ご自身のサッカー経験が語られるの(ほんとだよ)!これだけの空気を短い文章でかもし出せるってことは、それだけ自然に、読んだ本にシンクロでき、しかも自然に書けるということなのかもしれないし、その本の中のキーワードに合わせて、的確にコントロールした文章を書けるということなのかもしれない。どっちかは又吉さんにお聞きしないとわからない(お聞きしてもわからないかもしれない)けど、これは相当に、すごいことなのではないだろうか。

    『体育会TV』などを観ていて、フィジカルの強いお笑い芸人さんは、その凄さがぱっと見でわかるんだけど、「本が好きです、よく読んでます」というのは、ほとんど画面からはわからない。せいぜいコント・漫才のネタの語彙から推しはかられる程度で、テレビ的アピールポイントにはなりにくい…損な趣味・経験なのかもしれないね、読書(涙)。でも、この本はこのお値段で、拾いものといっては失礼だけど、読んで絶対損はしないと思うの!

  • なぜか職務質問をよく受けたという又吉さん。そんな彼が体験した悲しくて切ない(だけどどこか面白い)エピソードを、本の紹介を交えながら綴っていく。
    気になったのは、「何もかも憂鬱な夜に」「親友交歓」「月の砂漠をさばさばと」「山月記」「銃」「夫婦善哉」ちょっとずつ読んでいこう。
    巻末には又吉さんと中村文則さんの対談も収録されている。お笑いと本の関係について語っていて、お笑いを見ない私も少しは見てみようと思った。
    又吉直樹に凄く興味と好感を持った。

  • 「第2図書係補佐」
    又吉直樹と本。


    又吉直樹。私は彼のファンだ。芸人の中で5指に入るほど好きだ。単純に話して見たいと思う。


    彼はとんでもない読書家だ。以前、彼が神保町での古本探しが好きだと言っていたのを番組で見たが、凄まじい本への愛情だった。因みに、彼を見習って私も神保町に繰り出しましたが、呆気なく挫折。普通の買い物になってしまった。そんなとんでもない読書家・又吉直樹が本を出すのだ。見たくない筈が無い。


    本書では、自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思ったらしい。だから彼が書いているのは、書評では無い。しかし、書評としても十分だと思います。作家の中でも、このような構成の書評を書く人がいるけど、彼等の書評に混じってもどれがお笑い芸人又吉直樹が書いたものか分からない可能性が高い。


    それだけ構成が上手いし(素人の私が言うのもなんですが)、使っている言葉も秀逸で、何より本が彼の生活に本当に常にあったんだなと思わせるエピソードが良いです。


    ちょっと可哀想なエピソードがたくさん出てくるのは意外で、又吉少年が気の毒でしたが、その他のエピソードは、印象に残るものが多かったです。太宰治が昔住んでいた住所のアパートに知らず知らず住んでいた事は知っていたけど、彼の祖母が住む沖縄の家が飲料水CMに使われているとは知りませんでした。


    メロスに扮した男性タレントが学校に遅刻しそうになり慌てて走る設定と言う事だから、多分手越祐也が出演していたマッチのCMでしょうか。家の表札が又吉から太宰に変わっていて、CM作成側も又吉の実家とは知らずに、その家をチョイスしたと言うから、奇妙な偶然だ。


    「螢川・泥の河」に添えられるエピソードも面白いです。小説の一節ではないかと言うくらいの意外性。無口で大柄の父親の同級生が突然家にやってきて同棲を始めるだけでも突拍子もない話だけど、そこに謎の言葉「ワッサイビーン!」とヌンチャクと言う組み合わせまで盛り込まれたんじゃあ興味も惹かれます。これが実話なんてねw


    他にも「コインロッカー・ベイビーズ」には笑いが、「山月記」には、若き又吉直樹のサッカー人生が、「カフカ」には日常に潜む違和感が詰め込まれています。


    でも、一番好きなのは「この家に入ってくる虫は父ちゃんの分身や」と又吉少年に言いながら、次の日、ゴキブリを潰していた祖母のエピソードかな。


    どれもとてもよく出来ている。本をたくさん読めば出来るもんではないだろう。やるな、又吉直樹。

  • ブクログのお仲間さんのレビューがあまりに楽しそうだったので、遅ればせながら読んでみた。
    しかし、レビュー数が615とは驚きだ。
    この数の前でひれ伏して、そのまま寝たふりをしたいところだが、ここは少しだけ頑張ってみよう。

    お笑いコンビ「ピース」の地味な方の又吉さん。(またきちさんじゃないですよ。)
    東京・渋谷のヨシモトで配布されるフリーペーパーに連載してた読書コラムを集めたものが、この一冊。
    約50冊近い本を取り上げてあるが、いわゆる書評ではなく、自身のこれまでを随想風に綴るという形をとっている。
    しかしこれが大変クオリティの高いものになっていて、軽い自虐にしてやられてつい吹き出したり、ほろりと涙させられたりしているうちに、ラストの数行で見事にゴールを決められてしまうのである。
    それはたとえば、オールマイティのフィールドプレイヤーのようであり、柔らかなドリブルで青春時代を掘り起こしたかと思うと、いきなり鋭角のシュートを入れてくるのだ。
    つまり、ラスト数行でようやく本の紹介らしき文章が登場する仕組み。
    そこまで持ってくるリークの仕方がとても鮮やかで、しかも自然体なのだ。
    そして、不思議なほど、その本を読まずにいられない気分にさせる。
    印象に残った箇所がいくつもいくつもあり、【沓子】では不覚にも本当に泣いてしまった。

    巻末には、実に30ページにも及ぶ、作家・中村文則氏との対談が載っていて、その中で中村氏のこんな言葉がある。
    【純文学っていうものをたくさん読んだ人っていうのは、自分の内面に自然と海みたいなものが出来上がるんです】
    思うに【書籍の中に自分の姿を探り当てることが出来るという発見】を経て、又吉さんの心の海は深く静かに水をたたえるまでになったのかもしれない。
    【元来持っている才能は、その海を通過していく】とあるけれど、私などは浮遊物が多すぎてさぞかし淀んでいるのだろう。
    それを寂しく思いながら本を閉じた。
    ブクログのお仲間さん、素敵な一冊を教えてくれて、ありがとう。

  • この人の文章、好きだなー、と読み進むにつれ強く思った。

    『尾崎放哉全句集』から『何もかも憂鬱な夜に』までは
    思い出話なのか作り話なのか曖昧な語り口に引き込まれるのだが
    『世界音痴』から後は割と普通に日常を語りつつお勧め本の紹介という体裁になる。
    この印象の差は何なのだろうと思って初出を見たら
    最初の方は書き下ろしだと判って至極納得した。

    10代の頃に読んだかな?というくらいの記憶しかない(しかも内容は覚えてない)
    『異邦人』と『キッチン』、
    映画化されたのを見に行ったはずなのにあまり記憶にない『香水』、
    作者からして絶対読んでるはずなのに覚えてない『リンダリンダラバーソール』、
    買ったはいいが積んだまんまの『イニシエーション・ラブ』。
    …本書の中で紹介された本で知ってるのはこんなところか。
    ブクログでレビューを書くようになって思ったのは
    10代から20代にかけてハマっていた作家さんの傾向と
    今読んでいる本の傾向が明らかに違っているということ。
    この『第2図書係補佐』の中で紹介されているのは
    恐らく10代の自分だったら貪るように読んでいただろう本たちだと思う。
    でもって、どうして自分の読書傾向が変わったのかという理由も
    紹介された本のみならず、又吉氏ご本人の文体の中に
    なんとなく見つけてしまった。
    たぶん、印象的過ぎる文体に出逢ってしまうと
    文章だけに引きずられてストーリーを追えなくなるのだ。

    読書家が必ずしもいい文筆家になるとは限らないのだが
    粗筋に全く触れずに読みたいと思わせる又吉氏の文章力には感服した。
    というか羨ましい。自分でもこういうレビューが書ければいいのに。
    もし又吉氏が小説を書いたら、間違いなくおもしろいと思う。
    笑える、という意味だけではなく、深く心を抉る話になるはず。
    もし出版されたら絶対読むんだけどなぁ。

  • 読書好きのお笑い芸人として有名な、ピースの又吉が語る「本」。う~~ん、又吉!!!只者じゃないとは思ってたけど、ここまでとは!


    そもそも、私が又吉を知ったのは、太宰治を好きな芸人がいる、というテレビ番組の企画から。
    なんか凄く異様な風体で、いかに自分が世間に受け入れられないかを淡々と語る彼を見て、これは面白い~~!と思ったんでした。

    太宰治は、私も10代のころ、自分の代弁者のように感じてどっぷり浸ったものだし、今では読み返すこともないけど、それでも私の根底には密かに生息しているんだろうな、と思う。

    この本では、彼は図書係の第2、しかも補佐、という位置にいるらしく、熱く本の内容を語るという姿勢を敢えて排除し、自分の恵まれない&だからこそ笑えたりもする子ども時代、青春時代、そして芸人としての今、を、読者に向かって提示し、お終いのほんの三行ほどで、その本の根幹にその体験談を結びつけるという荒業を見せつけ、それがまた実に面白い。
    こんな「本」に関する本の書き方は初めて見たぞぉ~~~!

    太宰が好きだ、という人はそれだけで私の同類、という思いがあるから、(同族嫌悪の感情が強く出てしまう場合もあるのだけど)たぶん、のっけから私は又吉の味方だったのだと思う。(*^_^*)

    そして、又吉と私の本の読み方がこんなに違うとは、とこの「第2…」で知らされたことが、一番面白かったことかもしれない。
    又吉は、太宰でも、カフカ「変身」でも、笑いながら読んでいるという…。
    実は私、そんな風に読めたら、とずっと願ってきたんだった、となんか、ここですとんと気がついたんだよね。
    太宰は、ただただ、彼の自意識過剰が痛くて、情けなくて、「変身」は最初の驚きのあとは哀れと無情。読んでいて辛くてたまらなかったのに、又吉は“(「変身」)の不条理だが緻密な状況描写と、冷静で現実的なザムザの心理描写のギャップが面白くて、思わず笑ってしまった。”ですと!!

    確かに、太宰はよくもっと生きていれば良質のユーモア作家になっただろう、と言われているし、カフカも友だちに自作を読み聞かせる時は爆笑していたららしい、とこちらは又吉の文章から知ったんだけど。

    又吉の敬愛する小説家・中村文則との対談も収録されていて、それもまたとても面白かった。
    中村文則が、又吉のお笑いをとても高く買っていて、

    「本を大量に読むと人間の中に、変な海みたいなものが出来上がる。」と。
    いろんな角度からものごとを見れるようになるのがその海の効用らしいのだけど、中村文則曰く、その海を持っている人は、芸人に限らず面白い、とのことで、そこにとても慰められた。
    私はこんなに本を読んでばかりの一家の主婦ってどうよ?という思いがあるので、なかなか、リアルでは本が好き、とは言いにくいのだけど、そっか、私にももしかしたら、私なりの海があるのかな、なんてね。

    又吉のお笑いも、ちょっとしたトークの際の受け答えも、とても好きです。
    それも、彼の海のおかげなんだとしたら、読書って役に立つこともあるんだ・・と嬉しくなっちゃいました。

  • ほとんど感動してしまった。これは素晴らしい本だと思う。

    お笑いコンビ「ピース」の又吉さんによるパーソナル・エッセイと称された文章群。何の変哲もないようだが、これはよく本を読んでいる人が書いている文章だと思った。文章がとにかく上手い。

    巻末の中村文則さんとの対談がまたいい。中村さんの小説もいくつか読んでいるが、岩波文庫(だったと思う)に入っている、読書について語るエッセイか何かで中村さんの文章を目にした時「今の時代に何て真摯に文学に向き合う人なんだろう」と、少し前の時代の文学青年のような印象を持っていた。なので、対談の中での明るい雰囲気の中村さんにとても驚いた。これは又吉さんという語り合うことのできる素晴らしい同志を得たためなのかなととても感慨深いものがあった。中村さんが実に楽しそうなのです! 中村さんが言う「変な海」って表現もいい。

    そして対談の中で又吉さんから語られる言葉。「暗い自分をそのまま肯定してくれるような本」が自分にとって糧だったという。生活していく上で本当に本が必要だったんだと思わせる。本書の中で「万延元年のフットボール」や「杳子」のような難しめの本格派(?)もおさえつつ、太宰の良さについて語る又吉さん。少し斜にかまえた読書人なら青春時代にかかるはしかのようなものである太宰をおおっぴらに「好きだ」と公言するのはどこか恥ずかしさが伴うかもしれない。でもそんな構えた感じはここにはない。多少背伸びしてなんだか小難しいものを「面白い」と思ってしまうこともないとはいえない自分は少し反省した。又吉さんが感じる本への畏敬のようなものを昔自分も抱いていたような気がするが、生活していく中で少し忘れていっていたような気がする。「自分には本がある」という気分を思い出させてくれて本当に嬉しい。

    内容に戻ると、出だしに収められている尾崎放哉(もっと言えば自由律俳句かな?)によって自分の思いの行き場所を与えられた文章は象徴的で、又吉さんがこれまで経験してきたこと、感じてきたことが、読んできた文学に見られるような表現によってきっちり輪郭(居場所)を与えられていると思った。「杳子」に寄せる文章などは、それなりに本読んでないと出てこないと思う。「僕の役割は本の解説や批評ではありません。自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました。」と一歩引き気味のスタンスでも、その文は「小説を書くことが他の小説に対する批評になっている」という高橋源一郎さんの言葉を思い出さずにはいられない。挙げられている本たちと又吉さんの文章が見事に相聞歌になっている。

    これはもっと読みたい。続刊は出ないのだろうか。

  • 面白かった!取り上げられてる本を片っ端から読みたくなる。その本の内容なんてあまり(ほとんど)書かれていないのに。

    芸能人の本談義ってどうもね…と思っていたのだけど、ここでフォローしている方たちの評判がいいので読んでみる気になった。わたしはテレビをあまり見ないので(きっと高校生までで一生分見たに違いない)、どんな芸人さんか知らないが、なんとなくテレビ画面におさまりのいいタイプじゃあないような気がする。

    一般に芸能関係の人が本について書いたりしゃべったりすると、本のことを語っているようで「本が好きなワタシ」について語っていることが多いように思う。この人はその反対だ。自分のことばかり書いているのに、きちんと本の紹介になっている。

    ここには、本との関わりが骨身に絡んでいる濃厚さがある。誰だって気晴らしの読書もするし、自分を知的に見せる小道具として本を使ったりするだろうが、「本好き」というのはのっぴきならない切実さで本を読む気持ちを知っている人のことだと思う。この人はまさにそういう人なのだろう。

  • この本を読んで、又吉さんのファンになりました!!
    皆さん仰る様に、書評ではなく本にまつわるエッセイ。本にまつわるエピソード、その本を読んだ時の状況や読んだ事でよみがえった思い出、本を読んで感じた事、妄想した事、珍事が起きて思い出した本など、内容はさまざまで、テレビでは根暗キャラが押し出されがちですが、こんなにおもろいのか又吉よ!という感じです。彼の身に起こる珍事は神懸かっています。それはもう子供時代から。本の紹介はエピソードの最後の数行だけなのですが…たった数行なのに俄然本に興味が湧きます!彼をこんな風にした本はどんなだ!?と。

    どのエピソードも、あるある!というより、「え、そんな事ある!?」というような事ばかりでおもわず噴き出してしまう事必至です。電車の中などでは読まれない事をお薦めします。

    又吉さんは純文学が特にお好きなようです。私は純文学、特に無頼派なんてあまり読んでこなかったので、この本を読みながら、やっぱ読まなきゃいかんな…という気にさせられました。太宰好きな彼と太宰さんの不思議な縁について、作中でしきりに “ 自意識過剰 ” とご自身の事をおっしゃってましたが、私も何か運命的な物を感じましたよ!それを感じさせる文章も素敵です。

    又吉さんはとても賢い人だなと思います。文章の構成や言葉の選び方、ユーモア。とてもバランスが良いです。笑える、でも文学的。不思議な方です。作品の中からは本に対する熱く深い愛情はもちろん、優しさ、思慮深さや空気読める奴やで〜って雰囲気が感じられます。視野が広く、多角的に物事を捉えられるのです。

    とにかく、ファンになります。

  • 本の紹介と共に自身の事を綴ったエッセイです。ここの所、感性の合うエッセイ本が見つからなかったので、冷やかしで手に取った部分が大きかったのですが大収穫がありました。時に笑い、時にはグッときて泣きそうにもなり、偶然や巡り合わせに驚き、自分の好きな本、嫌いな本もあり、こんな風なエピソードが又吉さんにはあったんだなあと大変たのしめました。
    読書感想文と同じで、求められているのは本に対しての評価ではなく、それを読んでの自分の経験や背景であり。想いを深める。泣く笑う。納得する。受け留める。発見する。思い起こす。というように読書って一連の精神鍛錬なんだよなあとしみじみ。
    対談は芥川賞作家の中村文則さん。太宰好きなら如何にも好きそうだよなあと思いました。親戚です。私は暗いのは苦手で太宰も苦手だ(^_^;)
    ちなみに小学生の娘は大爆笑して読んでました。そんなに単純に笑っちゃうんだなと子供の無邪気さにはビックリ。自分も苦しみを笑いとばせる日が早く来るといいなあ。難しい事を考えなくても読める本ですね。美しい文章でした。

  • 関係ないけど、又吉は美男子だと思う。
    雰囲気があって、実はけっこう好きだなぁと思っていたんだけど
    もしかしたら、文学的な雰囲気を感じ取っていたのかもしれない。

    又吉の書籍への愛情が溢れた1冊。
    書評ではなく、作品に纏わるような纏わらないようなエッセイなんだけど、書籍に対してだけでなく、読者への控えめな優しさを感じる。
    読書ってこんなにステキなんだから、みんなも気づいてくれたらいいなぁって気持ちに共感する本好きはめっちゃ多いと思う。
    紹介されている47冊中、既読は7冊。
    他の作品も読んでみたいし、既読作品も読み返したくなってしまった。

  • 『冬の本』に掲載されていた又吉さんの文章がよかったので、本書を読んでみたのですが、予想以上におもしろかった!

    「自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました」という又吉さんの言葉どおり、本の紹介ではなくエッセイといった感。
    ですが、どれだけ本が又吉さんの近くにあるのかがよくわかります。
    笑いの要素を散りばめつつ、時に切なくさせる文章に夢中になってしまいます。

    巻末には作家の中村文則さんと又吉さんの対談が掲載されています。
    「本をたくさん読んでいる人の中には変な海みたいなものが出来上がる」という話はとてもおもしろかったです。
    本を通じていろんな考え方を自分の中に放り込む…そうやって混じり合い深みを増した海をから生まれるものに、中村さんの小説があり、ピースのコントがあるのですね。

    これからも自分の中の海を育てていきたいな…なんて考えながら読了。

    『尾崎放哉全句集』は絶対読もうと決意しました!

  • この本に出会うちょっと前に、彼の性格を検証するような企画を、テレビのバラエティーで見たことがあった。

    その後、わたしがブックマスターと仰ぐkamoshigiさんが彼のこの著書をいち早く読了していて、ちょっとした運命を感じつつ、ようやく手にしたこの1冊。

    読了して、なにもなかったところからの、親近感と尊敬をおぼえた。

    わたしは太宰治には感動してこなかったし、
    芥川龍之介も語るに及ばず。

    でもひとつだけ。

    国語便覧大好きでした(笑)

    たとえば自分のルーツとか、育ってきた生活環境とか、
    その都度通らなければならない幾度の時代とか、
    全く違うところで、違う感覚で過ごしてきたはずなのに(歳も若干若いし)
    すごく共感できてしまって、むしろわたしは今このタイミングで、なんとなく彼の文章でほっとさせられたというか。救われたというか。

    この本はあくまで作品の紹介だと思うけど、その作品ひとつひとつに彼が過ごしてきた時間、そのとき感じていた思いが、その辺の下手な物書きよりよっぽどいい言葉で書かれていて(使う語彙がいいと思う。言葉をよく知ってる印象)、書物や相手に対する謙虚さとか、あらゆるものをあくまで客観的に見つめている姿、とか、「ピース」としてはほとんど知識のないわたしですが、お笑い芸人をしているらしい彼の持っている知識と内面からあふれる感受性に、ただただ尊敬の念を抱きます。

    そしてあのときみたバラエティで見せた、彼の姿が、これを読んでしっくりいきました。だって本に書かれていたから。

    またこの手のかたちでいいから読みたいです。
    それから、そのほとんどを読んだことがなかったので、
    この本に出てくる作品も、おいおい読んでみたいと思う。
    もっというと、今でもうちの本棚に入っている便覧、ひさしぶりに読みたくなった。

    kamoshigiさんありがとうございました。
    読了後感が半端なくいい♪

  • 著者の又吉さんを良く知らない。お笑いのピース、顔は分かるのだが。
    最期の対談のところまで読んで、選んだ本の理由が分かる&やさしさが伝わる。しかし、本文を読んでも、紹介された本の内容が伝わるものは少ないと感じた。エッセイのようだが、わざわざ「本」を取り上げ紹介するという形を取らなくても、と思うのだが。本とは全然関係ない、エッセイの内容であったりするもの。「本の紹介」という形を取っているのは、ラベリングか?よしもとのフリーペーパーの記事という性格もあるだろう。

    又吉さんの独自の感覚、読書観は好ましく思える。

    良かった話は、
    サッカーというなの神様、サッカーの上達までの道徳がわかり紹介も良かった。


    respect   まろんさん

  • 前々から読みたいと思っていた又吉の本をやっと読んだ。もう、大爆笑。特に「炎上する君」「エロ事師たち」「巷説百物語」「笙野頼子三冠小説集」声に出して笑った。流石、本をたくさん読んでいるだけあって、表現が豊かで文章の流れが非常に上手い。

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第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)の作品紹介

お笑い界きっての本読み、ピース又吉が尾崎放哉、太宰治、江戸川乱歩などの作品紹介を通して自身を綴る、胸を揺さぶられるパーソナル・エッセイ集。巻末には芥川賞作家・中村文則氏との対談も収載。

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