モンスター (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 1658
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  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344418509

作品紹介・あらすじ

町で一番の美女・未帆はかつてバケモノと呼ばれていた。醜い女が完全なる美を獲得した先にあるのは誰もが羨む幸せか、それとも破滅か。

感想・レビュー・書評

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  • 整形外科の先生が好き。
    恋の終わり方に鳥肌が立った。知らぬが仏、とても人間らしい後味の悪いラストでした。百田尚樹、恐ろしいお方...

  • 「モンスター」

    親戚からいただいた本の一冊です。
    そのため、前情報もない状態で読み始めました。

    1.あらすじ
    東京から外れた街の物語。
    外見が決してよろしくない女性が主人公です。
    そのため、友達ができないだけではなく、執拗ないじめにあいます。
    ほどなくして、事件を起こしてしまい、家族は離散、彼女は罪を償ったあと、東京に出ます。
    身寄りのない都市で働き、生きるのです。

    2.整形外科との世界
    綺麗になりたい。
    私を酷くあしらってきた人間を見返したい。
    その気持ちから、彼女は整形外科に出会い、施術を重ねます。
    その金額はトータル1,000万円を超えます。
    二重から始まり、最終的には周囲が同一人物とは判断できないほどの美貌を手にいれます。

    3.いざ故郷へ。
    彼女は、故郷にレストランをオープンさせます。
    美人オーナーのレストラン。
    味も雰囲気もよいため、評判は◎です。
    彼女は、この店で唯一出会いたい人物、それが実らなかった初恋の相手です。

    彼女は、初恋の相手に出会えるのか?
    そして、そのとき、彼女は、どんな言葉を口にするのか?

    4.読み終えて
    美に執着した一人の女性。
    誰にも心をほどくことが許されなかった一人の女性。

    モンスターのタイトル。実は、彼女をさすのではなく、彼女を受けいれることをしなかった世界のことなのかも、、、と思えてきました。

  • ❇︎
    醜いと言われ虐められ続けた主人公。

    たった一つの拠り所にしていた、
    幼い記憶に残る王子様との再会。

    王子様の目に彼女は映らず、
    膨らみ続ける恋心は歪んで暴走を始める。

    事件を起こして家族からも絶縁され、
    たった一人の生活が始めるが、
    醜い顔を抱えて老いて一人で死んでゆく
    んだと諦めていた時、雑誌で美容整形を知り
    目から始まって、どんどん加速していく。

    美しさに固執し続けた願いの根底には、
    幼い頃の淡い恋心が原動力になっていた。

    容姿が醜くブルドッグと虐められた主人公は、
    事件を起こしたことでモンスターと呼ばれ。

    いつしか、美しさと幼い王子様を求め続ける
    狂気に満ちた本物のモンスターに変わっていく。

    狂気と正気、美醜、対になる二つは、
    正反対であるが故に、見えないところで
    深く重なり合っていて、紙一重でオセロの
    ように反転する。

    生涯をかけた主人公の執念はあまり歪んで
    いたけど、同時にとても哀しいものでした。







  • 美しくなりたい...。幼少期からモンスターと言われ続け、並々ならぬコンプレックスを抱えていた和子。整形して誰よりも美しくなると、男達の態度は一変した。幼少期からずっと思い続けてきた英介との再開で、つかの間の幸せを味わったと思った矢先、物語は衝撃的な結末を迎える。英介は美しい未帆ではなく、醜い顔の和子を好きだと言ってくれた。そのことが唯一和子への救いだった。衝撃的なエピローグを知らないまま死んでしまった和子には、ハッピーエンドを迎えられたように見えたのが秀逸だった。

  • 醜さゆえに虐げられ、故郷を出て行った『和子』が、金や男を得る手段としてではなく、美しくなることを目的として、金を得て、整形を繰り返していく。美しくなる自分に喜びを感じ、美しくなるにつれて強くなる周囲の嫉妬と羨望をも喜びと変えて。
    そして、自分の中にある英介への恋のため、『未帆』として故郷に戻る。かつて、醜いことで『和子』を蔑んでいた人々が、『未帆』の美しさに吸い寄せられ、称賛する。『未帆』はその人々に復讐していく。
    ついには、その美しさで英介をも虜にしてしまう。幸せの絶頂にあるはずの『未帆』の中で『和子』が動き出す。『和子』として愛されていないと。

    今の時代では美しさの解釈は少し変わってきているよなぁとは思いつつ、人々の根底にある美しさに対する憧れや嫉妬、光背効果などは変わらないように感じました。同じように醜さに対する嫌悪感や嘲笑、劣等感も。
    過去や環境のせいで、美しさに取り憑かれざるを得ない和子に悲しさと共感を感じました。

  • (殺したくないなぁ。
     でも、
     彼らと同じ空間には絶対いたくないし。)

    私はテッシュをざざざっと、まとめて抜き取りながら、心でいつも葛藤する。

    …こんな小さな蜘蛛なのに。

    人に攻撃する事もなく、
    ただ家の片隅にひっそりと巣をはり、
    懸命に生きているだけ。

    それなのに
    (気味が悪い。)
    それだけの理由で
    私は彼らの命を簡単に奪うのだ。

    外見が醜い、って一体どういう事なんだろう。

    彼女だって、
    モンスターなんかじゃなかった。
    ただ普通に
    普通の女の子と同じ様に、
    恋したり
    お洒落したり
    友達とおしゃべりしたいだけだった。

    でも、彼女の醜さは、それを許さなかった。

    哀しいのは、家族でさえ
    彼女を認めていなかった(彼女自身がそう思い込んでしまうような扱いをしていた。)事。

    ただ独りの味方もいない彼女に
    孤独は重く圧し掛かかる。

    絶望の淵に追い詰められた者は
    諦めるか
    歯向かうか、
    どちらか、であるというが

    そんな彼女の元に
    整形美容、という剣が降りてきた。
    最強の武器を手にした彼女は
    人生に立ち向かう事に決めたのだが…。

    読書中はずっと、
    薄暗い彼女の心の中に監禁されている気分だった。
    (綺麗になれ。
     綺麗になれ。)

    内側から願う様に必死で
    磨いてはみたものの
    心についた
    傷や汚れは簡単に落ちてはくれなかった。

  • リアルだ。

    もちろんフィクションではあるが、登場人物の心はリアルであり、醜い。

    人間の心は醜い。

    私は美しくありたいと思っているが、醜い。

    百田作品、永遠の零に続いて二作目の読書。
    ちまたでは海賊と呼ばれた男が流行っているのでしょう。

    百田作品を評してわかりやすいが資料的だと。
    私は構わないと考える。

    40になろうとする私はいくぶん先入観というものを排除できるようになってきた。
    解説を面白いと思ったことは少ないのだが、
    中村うさぎ、うまいこと言う。

    小説は面白ければ良い、
    作者が何をいいたいのか考えることもない。
    何か身につけなければいけないこともない。

    それでも何かを感じられたときには、嬉しいものですよね。

    人生なるようになる。
    プラスがあっても、マイナスがあっても、落ち着くところに落ち着く。
    この気持ちがあれプラスを楽しめる。
    マイナスを意識しすぎることもない。

  •  とにかく面白かった。男性の著者がどれ程女性主人公の美醜に関する心情を描写出来るか見物だと思っていたが大方的を射ているように思う。
     また、人の奢りや虚飾、自己顕示欲、僻み妬み嫉み等等の人間の弱さに対する著者のシニカルな目線が小気味良い。その格好悪さに気付いていない知性の低さをえぐり出している。ね?こんな奴等、格好悪いでしょう?と。
     崎村さんの言葉、「男は目でセックスする」という件。今までの色々な経験が脳裏をよぎり膝を打つ。全てが腑に落ちる。男達のあからさまな美人を巡るご贔屓言動が蘇える。だからか!納得。
     そりゃ、不器量な女性陣は美人ばかりチヤホヤされたら面白くないだろう。ここが多くの女性陣の苦悩するところ。
     男が女の容姿に評価を下す傾向には幼い頃から気付いており、心中「お前が人の顔蔑む権利はどこに?自分の顔鏡で見てから出直してこい!」と思っていた。何様なんだろう。
     こういう事もあった。「俺は、俺の嫁の顔のレベルはあの程度で我慢したんだぞ!」この発言にも開いた口が塞がらなかった。内心思っていたとしてもそれを公言してしまう品性の無さ。圧巻です。
     整形を否定はしないが時代によって流行りの顔があるし、それに振り回されていたら美という牢獄の中で終わらない舞踏会に参加し続けることになる。(中村うさぎ解説より引用)基本的には化粧、髪型、服装、言動のセンスを磨いて時代時代によって変化していけば乗り越えられるケースが殆どではないか。梅沢富美男の変身をご覧下さい。あそこまで変身できるのです!そして言わずにはいられないのが印象、雰囲気、品性も含めて顔です。顔が原因で生きていくのが本当に大変なこの主人公のような場合は整形して前向きに明るく人生を送って欲しいとは願っています。
     風俗での大阪の客の言葉。「恋や愛や言うても、そんなもん全部綺麗事や。要するに男も女もおめこしたいだけのことや」「鳥はメスがオスを選ぶからオスが綺麗。人間は逆」という件。
     過去にデビ夫人が言っていました。「男性から選ばれるんじゃなくてあなたが選べるようになりなさい」…この発言はそのままストレートに受け止めてしまうと、何という上から目線!と思うかも知れませんが、彼女の真意はきっとこうだったのではないだろうか。人間社会は従来男が女を選ぶのがステレオタイプだが、女性だって男性を選ぶことが出来る。美も人間性も経済力も手に入れて、生きていくのに何不自由無い状態を女性自身が作っていけばそれは叶う、と。デビ夫人のこの発言に好感が持てるのは勝負してるな、と感じるところだ。勝負しない生き方だってある。男性に取り入って気に入られ庇護して貰うやり方もある。でもそれだといつまで経ってもいつも男から施して貰う側。選ばれるのを待っていろ、その為には小さくかわいく纏まって男が管理しやすいように従順でいなさいよ、と言われているようなものだ。そこに真の自由は無い。愛玩犬と同じ境遇。彼らも円らな瞳で目を潤ませいつも物欲しげだ。同じく自由がなく首輪に繋がれている。
     常に女性が選ばれる側という所に釈然としない。腹が立つ。何かねっとりと物欲しそうにしている感じがする。だから女どもの僻み妬み嫉みは凄まじいのだ。施されるのを待つしか無い、自分で人生をコントロール出来ないから余計にフラストレーションが溜まる。これで自分の人生を歩んでいると言えるのだろうか。そして男の上から目線を感じる。舐めんなよ!と言いたくなる。
     未帆の数々の仕返しにスッキリするのはこういう社会へのアンチテーゼがあるからかもしれない。
     村上シェフが未帆のレストランに来る前の自宅をレストランにしていた表現は人間は中身だ、と主張する人に対して気付きを与えているのか。自宅レストランは立地も悪く建物も冴えない、味だけ良くても客は来ない、雰囲気も大事なのだ、と示唆している。人も同じですよね、と著者は言いたいのだと思う。解説の中村うさぎ氏も同じ主張をしている。私も共感する。
     とにかく崎村さん以外の男は全員クズだった。英介は一回も妻に離婚を切り出していないに違いない。女性陣の男性への期待が完全に崩れ去った。本当に男性ってそうなの?と男性に直接聞いたところで本当の事は言わないでしょうね。
     ただ世の中には素敵な男性もいる。宮城県石巻市の医師で小さい頃に自分の母親が毎日魚屋の前で財布から出した小銭を数えている丸まった後ろ姿を見て、女性にこういう思いをさせてはいけない、と胸に誓った。また彼は家の近くに女郎屋がありそこで養われている私生児達と交流があり、医師になってから養子縁組の制度化に寄与した、という記事を見たことがある。
     こういう感受性が育つにはあまりにも幸せでぬるま湯に浸かっていたらそれは育たないのだろうな、と思った。
     

  • 凄く深く考えさせられる作品。

    自分がもし主人公の女性だったら?
    自分がもし主人公の家族だったら?
    自分がもしその周りの人間だったら?
    自分がもし主人公に愛される人間だったら?

    その感覚を年代年代の自分の傾向なんかものせながらこのストーリーと平行させて考えて読み進めると過去に現実感が増してくるようで突き刺さる物ありすぎ。

    自分の言葉や態度で起きた事々、逆も然りで、それらを踏まえた上で「人間の言動行動」とは?と考えさせられる。

    「美」への追及して行く過程も凄く考えさせられた。
    対自分
    対他人
    この2つの中に共存するような美と醜、そのバランスが生きていく上でどれだけのパーセンテージを占めるのかと感じた。
    両極にあるように見える美と醜は意外と隣あわせのような気もするし、逆に取り込まれるようにお互いの中で生まれて生きているそれこそがモンスターなのかとも思わされた。

    誰しもが抱くテーマだからこそ特に対人関係においては各々の「美」と「醜」の関係性のバランスを考慮した接し方が必要かと感じ、これからの自分自身も改めて見つめていかなければと感じた。

  • 内容的にはサクサク読めたが、物凄い執着心だったので
    さほど執着心がない私には、共感できかねる場面も多々あった。
    結局顔だということはある程度生きていれば
    皆直面すると思うしそれは共感できた。
    復讐の人生だったけど、最後幸せな死を迎えられたのかな…

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著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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