トリプルA 小説 格付会社 下 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.83
  • (20)
  • (31)
  • (22)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 273
感想 : 20
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344419018

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • (上下巻合わせてのレビューです。)

    骨太小説。
    こういう小説は、読む前に少しためらいがありますが、
    いざ読んでみると面白すぎてあっという間に読んでしまいました。

    この小説は、格付け会社を中心に日本の(そして世界の)マーケットの歴史をざっと振り返ることができる本。
    それが小説になっているのだから、いわゆる経済系の本より数段読みやすい構成になっています。
    (一部、本名をぼかしてあります。)

    ちょうど、山一證券破綻のドラマを見ていたので、
    色々な方向から日本経済を見るきっかけになりました。

    今、ちょうど高い理想(社会を)と

    こんなに面白い小説なら、もっと早くに読んでおくべきでした。

  • 山一証券の破綻、エンロン事件、リーマンショックなどの現実に起きた事件を、格付け会社の目線で描いた、事実に基づいた物語。
    「依頼格付け」と「勝手格付け」、発行体の信用力が国の信用力にキャップされてしまう「カントリーシーリング」、MBSやCDOなどの証券化商品など、分かりやすく説明されているので知識がつきます。
    そして、臨場感ある格付け委員会の描写、なるべく低利で資金調達したい発行体と、なるべく高利で金を貸したい投資銀行、その間に立たされる格付け会社の立場、格下げをすると発行体から容赦なく非難される、他の格付け会社よりも高い格付けをすると営業上有利になる投資家を無視した格付け会社の利益相反な行動原理など、格付け会社のリアルも色々知ることができます。
    「格付けの深層」もよかったけど、小説で知識を得られるという意味では、こっちもおすすめです。
    著者の本は、実名とそうじゃないのが混じっていて、ちょっと分かりづらいのが難点ですが。

  • 格付会社を題材にしている経済小説。

    ニッチなテーマではあるけど、今の私にとってはどんぴしゃのテーマで、
    日本に格付会社がやってきた1985年ごろからリーマンショックまでの金融史と一緒に学べて非常に面白かった!!
    これぞ小説の力。

  • 作品中ではマーシャルズと言われているが、要はムーディーズがどのように業容を拡大していき、その過程でいかに格付が歪み、サブプライムを集めたCDOや更にそれを集めたCDOスクウェアードのような商品にAAAが連発されたか、格付モデルの変更によりいかに日本の格付が歪んだか、が描かれている。
    作中では格付は投資家のためにあるべき、という理想論が何度も暗に主張されているものの、発行体から手数料を取るビジネスモデルである限りは発行体にもいい格好をしないといけない格付会社のジレンマが様々な形で描かれ、それに翻弄される正義感溢れる登場人物達の苦悩を通して、歪みが手に取るように分かる。
    格付会社の格付やモデルには学ぶところが多いんだけど、この前読んだ小説エンロンで確かカルパースの運用担当の人がリスクを見抜いてエンロンのSPVのエクイティに投資しなかったように、結局リスクを見抜く力って自分で磨かないといけないんだと思う。やっぱりサブプライムとかって普通じゃないしね。
    今はアメリカでオートローンのサブプライムが過熱気味とのこと。根本的なジレンマは、変わっていないのかもしれない。

  • 証券化や金融機関に対する規制等に焦点を当てた作品。
    巨大投資銀行のようなダイナミズムはないが、企画セクションの奮闘を見ることができる。
    格付け、BISは仕事で携わっていたので、個人的には楽しめた作品。

  • 小説仕立てだけど専門的で、バブル~リーマンショックへの系譜が格付け会社の功罪、日系企業や銀行の放蕩傲慢、その時代を生きる主人公を通じて描かれている。時代をつくるのはその時代を生きる人。誰もが皆主人公である。知らず知らず大なり小なりの影響力を持つ。
    リスクを負う投資家を守るべしとは一貫した著者の立場。人材紹介や不動産仲介もモノを持たないビジネス。他人のふんどしで相撲をとるアドバイザリー、コンサルティング。
    真摯な姿勢で臨まないと。

    やっと読み終わった。不動産屋時代を思い出した。

    格付けも性質的には不動産の査定にも似てる。査定価格で売れなきゃ査定が間違ってたことになるし。
    ちょうどリーマンショック前後、値上がり当て込んで強気で買取推進して、結果不良在庫抱え込んでた時期もあったな。全社的に。大京はバブル期の放蕩経営で再生機構入りしオリックス傘下に入った。リーマンショック後は含み損を早々に公表し大規模リストラなど早めに対処した。株価もものすごく下がってのちに少し上がってたっけ。

    人材紹介でも、無理に押し込んだりしてもうまくいかないし。

    自分の目先の利益しか考えないでは中長期的にはだめなんだ。理念や理想が歯止めになる。

    共通する部分は多い。

    目先の利益ばかり追い求めてはダメだね。
    理念と理想を胸に、現実をみつめて「いい仕事」をしよう。

著者プロフィール

黒木 亮:1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社を経て2000年、大型シンジケートローンを巡る攻防を描いた『トップ・レフト』でデビュー。著書に『巨大投資銀行』『エネルギー』『鉄のあけぼの』『法服の王国』『冬の喝采』『貸し込み』『カラ売り屋』など。英国在住。

「2021年 『カラ売り屋vs仮想通貨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

黒木亮の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×