ぼくたちの家族 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344420076

作品紹介・あらすじ

家族の気持ちがバラバラな若菜家。その仲を取り持ってきた母の玲子の脳にガンが見つかった。突然の出来事に狼狽しつつも玲子のために動き出す父と息子たち。だがそんなとき、父が借金まみれだったことや、息子たちが抱いてきた家族への不満が露になる…。近くにいながら最悪の事態でも救ってくれない人って何?家族の存在意義を問う傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 家族が病気になった。
    それは今までバラバラだった家族を、唯一つないでいた母親。
    それを機に、少しずつ何かが変わっていく───

    それまで好き勝手にしていた家族が、その存在の大きさに改めて気づき、
    自分にできることを模索し、力を合わせるようになる。

    ラストにかけて、こんなにうまくいくことってあるのかと思ったりしたけれど、良かったです。
    (著者の実体験を元に書かれているとのこと。)
    安西監督ではないけれど、「あきらめたらそこで終わり。」なんだものね。
    最悪の状況を嘆くばかりではなく、信じて支え合うことの大切さを痛感した。

    読み始めてすぐ、改題前の『砂上のファンファーレ』を数年前に読んでいたことに気づいた。
    この数年の間に、自分と家族の中でも様々な変化があって、いろんな思いがよぎりました。
    病気になるのは辛いことだけれど、それが誰であっても、そのことで見えてくるものってあると思う。

    家族ってなんだろう…親と子、夫と妻、
    いつもそばにいてくれる人?守り、守ってくれる人?
    その関係も、決していいことばかりではないと思う。
    近くにいる分、不平不満もある。
    でも、血のつながりがあってもなくても、一緒に過ごした時間はかけがえのないものなのだと信じたい。

  • 弟ー!!
    ちょっと頼りない感じだったけど、よくやった!
    お母さんの病気がきっかけで、家族の団結力がすごく素敵なお話でした。

  • 母親の病気発覚から様々な家族の裏側が明らかになっていく。家族とは何か、を真正面から捉えた本作。誰もがいずれ当事者になる可能性のある物語。その時、何を考え、どう行動するのか。
    10数年前の自分に起きたことが苦々しく思い起こされる。浩介のようにも俊平のようにもできなかった自分...。ただ、後悔だけはなかった。なんの説得力もないものに寄りかかって今日も生きていくだけ。

  • 家族の物語、自分の身に置き換えながら読んでしまう。母親に癌が見つかり壊れていく中で家族それぞれの思いが語られる。現実に起こりうる展開は先が気になり一気読みしてしまう。イノセントに続いて読んだ著者の作風は好きかもしれない。

  • 母の物忘れからはじまり、どたばたと家族が追い込まれていく。
    なんだかすごくリアルで読みすすめながら怖くなったけど、家族のありかたを考えさせられた。
    俊平の明るさにだいぶ救われた!

  • 先日読んだ映画紹介の本の中に、この作品が映画化されており、妻夫木聡が長男役をやっていたというのを知って読みました。もとは「砂上のファンファーレ」というタイトルの作品だったのを映画化に合わせタイトルを変えたということです。映画は今後機会があれば見たいのですが(もしかしたら観ているかもしれない)、母親の脳腫瘍発覚をきっかけに、父親、まじめで引きこもり経験もある長男、お調子者の次男が自分たちにできることは何かを考え、絆を深めていく話。結局、みんながお母さんのことを本当に大好きで、何とかしたいと思っている気持ちが、ビンビン伝わってきて、つらい部分もあるけれど、精一杯を家族のためにやっていく過程が泣けてきました。壊れかけた家族がまた再生していくというのは良くある話かもしれないけれど、とてもリアリティがあってよかったです。それぞれ守りたいものがあるし、自分を誰かに置き換えることもできて、一気に読み終えられる作品でした。

  • ちゃんとしてて当たり前の母親が壊れてそれに奔走する家族の話。

    こういうシチュエーションは娘の立場から見たものが多いと思うが 2人とも息子。

    夫があまりいいところがなかったが、お兄と弟がそれぞれのキャラで気持ちを切り替えていくのが興味深かった

    「幸せかどうかは、いつか死ぬときにしかわからないんだと思う  (中略) 一つ一つ積み重ねて、たとえそれが何歳のときだったとしても、私は最期に笑って死んでいきたいな」

    好きな作品。

  • こんなエンディングになるとは当初は全然思わなかった。良い医者に罹るかどうかが生死を分ける。その前に病気になりたくないけど。

  • 序盤、あまりにも怖くて(年齢からリアル)読み飛ばしたくなりました。
    家族の温かさ…のような平和な着地でしたが、なんとなくザワザワした読後感です。

  • 物忘れから始まった母親の不調、そこから上辺だけで繋がっていた家族が、ぶつかり合って苦しみながら団結していく。そこでもがいて素直に前を向けるのは、やっぱり家族としての基盤がちゃんとあったからなんだと思う。すごく心に刺さる内容だった。

  • 同作者の著作を読むのは3冊目ですが、どれもぐいぐい引き込まれますね
    今作は特に、1章の母がおかしくなっていく描写の怖さに釘付けに…
    どんよりめの前半から、爽やかな後半のギャップはなかなかで、
    少々トントン拍子に上手くいきすぎじゃないか?とも思うものの、
    人を美化しすぎないラストはほっこり
    とても面白かったです

  • 2018.08.09.読了
    浅い。ツメが甘い。なんでこんな作品書いたんだろう?
    そんでもって映画化って帯ついてるけど、この作品から果たしてどういう映画が出来ると言うのでしょうか?

    ほんと、こういう作品読むといつも思うんですけど、サザエさんじゃないんだから。困難が家族を襲って、バラバラだった一人一人がチカラを合わせて最後はハッピーエンドとか。もう、それこそアンパンマンレベルじゃないですか。
    家族とは、人生とは、って本当はこんなに簡単に語り尽くせませんしね。
    家族なんてもっとずっと複雑で他人なんかよりよっぽど難しい関係ですし。親の借金のことだって、長男がサラッと支払っちゃったりして。ンなこと、ありえませんよ。
    サラリーマンの長男が父ちゃんを破産させて保証人として借金1200万円肩代わりしてましたけど、そもそも年収500万のサラリーマンがお母さんがガンになったことをキッカケにチャラっと外資系に軽々転職して年収900万になるなんて、夢物語ですから!!!!
    お母さんのガンが発覚してからトントン拍子で名医に当たり!築地の癌センターにすぐ転院するなんざ、至難の技ですよ、まぢで。
    早見先生、もっと世の中、勉強してくださいまし。
    本棚の中で、イノセントデイズが同先生の作品であることを知ってショックでした。
    わたくし、イノセントデイズには星5つつけておりましたから。
    もーーーー、無駄な時間かえせーーーーー。

  • 死と向き合ったときに逆説的に「生」に本当の意味で向き合えるのでしょう。最後はほっとするラストでよかった。

  • 映画化してたんやねぇ。全然知らんかった。

    記憶障害を発症させた母親の脳に悪性腫瘍が見つかり、家族がその病気と闘おうという話。
    作者の実体験を踏まえているとはいえ、ノンフィクションではないので、ご都合主義的に上手くいく部分も多々あるのだが、それでも登場人物たちの、崩壊していた家族像に直面して放心脱力していくさまは痛々しい。

    高度成長期、バブル期と日本が一番元気だった時を実体験してきた俺たちには、耳の痛い話も多い。
    今の子らにしたら「良い時代の恩恵を味わったなら、その後始末まできちんと引き受けろよ」って、そら思うわな。世代の責任などよう取らんが、せめて自分の子供にくらいは「良い時代の恩恵を味わった」ものとして何かしてやらんとなぁ、と思う。

    時代は変わっている。「昔は良かった」とか「あの時こうしてたら」とかノスタルジーに浸る時もある。でも、今の若い子らが歳をとった時浸れるノスタルジーを俺らは作れているんだろうか?自分らが味わった幸せとは違うかたちになってしまってでも、次の世代に幸せを残してやる。それは歳をとったものの仕事じゃないんだろうか?

    この本読んだら親の顔観に実家帰った、ほんで自分の家もどって、娘と一緒に酒飲んだ。そういう行動をしたくなる小説である。

  • リアルタイムで見ていた桜井翔君の「家族ゲーム」と少しかぶる内容でした。念願のマイホーム。借金。家族がそれぞれバラバラ等など。崩壊しそうな家族、それをどうすればいいのか変わろうとする家族。この本の内容はどの家族にも起こりうること。一見一番役に立ちそうにない俊平くんが一番力を発揮していて彼の性格は良かった!読み終わって気持ちがすっきりした本でした。

  • 全然知らない作者の、知らない本だったけど、妻夫木くん主演で石井裕也監督で映画化というコピーに惹かれて読んでみた。
    ハッピーエンドはややできすぎているように感じてしまったけれど、登場人物がリアルだったり、お金に関するエピソードがあったりで、なかなか読めた。
    これから家族を築いていく自分にとっては、家族について、幸せについて、少しだけなにかを教えてもらえた気がした。

  • 大学で借りた。
    一見ありふれた家族だったが、様々な視点から、それぞれが家族に思うことが書かれており、成長していく姿が良かった

  • 人間臭さが感じられて面白かった。
    次男が思ったより良い男だった。

  • ローン月25万はキツい、年に300万?
    おそらく金利も高かったんだろうから元本もあまり減ってないとか、嫌すぎる
    バブル期にローン組んだらそうなってたらしい
    一人の視点じゃなくて、家族それぞれの視点が切り替わって進む
    どう決着つけるかわからなかったけど、最終的に収まるところに収まった感じ
    安心して読めた

  • こんな、ある意味「ベタな話」で泣かされるとは(^ ^;

    物忘れが酷くなってきたな...と思ってたら、見る間に言動が怪しくなる母親。医者に行ったら脳に腫瘍が見つかり「あと一週間」などと宣告され... この大事件をきっかけに、バラバラだった家族が協力し合うようになり...と、あらすじを書くとホンマにベタやな(^ ^;

    ドラマや小説などでは、何十年も前から繰り返し取り上げられてきたであろう題材で、敢えてバラしてしまうがハッピーエンドなストーリー展開。だが本書には、そんじょそこらの薄っぺらなドキュメンタリーを凌駕するような、圧倒的なリアリティがある。

    誰一人スーパーヒーローは出て来ない。むしろ問題から目を背けてばかりいる、欠点だらけの人間しか出て来ない。家族の中だけではなく、社会的にも「成功者」とはとても言えない面々だし、斜に構えてたり嫌味ったらしかったり、人間的にだって魅力的だとは言いがたい。

    それでも、一つの目標に向かってそれぞれがそれぞれの道で、方法で、解決に向けて足掻き始める。ある種「都合のいい」奇跡に助けられたりするも、その「奇跡を運んでくる人々」にもそれぞれの歴史とストーリーがあり... そう、本作は主役の一家「以外の」人々がとても魅力的である。

    文庫版巻末の解説が秀逸だが、「昭和的な家族観」などとっくの昔に崩壊している...ということを、若い作者が見せつけてくる一冊。それでも、家族ってのはやはり、良くも悪くも「特別な」存在で。そして決して「安定した」ものではなく、だから今を笑って生きなければ、という力強いメッセージが底に流れている。

    病気になった母親の、若い頃の台詞に「幸せかどうかなんて、死ぬ瞬間にならないと分からない」という一節が出てくる。若い女性が口にするには、何か達観したような、らしくない言葉に見える。が、この台詞が、この考え方が、実は後からじわじわと効いてくる。

    私自身、身近に「壊れた人」を見たことがあるからか、「他人事」として読むのは難しかった。私自身「最近物忘れが激しい」し(^ ^; 

    本書は、誤解を恐れずに言えば「ある意味『宗教が与えてくれる救い』を得られる」一冊である。ホントに、人生変わる読者が出て来ても不思議ではない。それだけの「力」がある話である。

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著者プロフィール

1977年神奈川県生まれ。2016~2022年に愛媛県松山市で執筆活動に取り組む。現在は東京都在住。2008年に『ひゃくはち』でデビュー。2015年に『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞とJRA馬事文化賞を受賞。その他の著作に『95』『あの夏の正解』『店長がバカすぎて』『八月の母』などがある。

「2023年 『かなしきデブ猫ちゃん兵庫編  マルのはじまりの鐘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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