給食のおにいさん (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344420892

作品紹介・あらすじ

コンクールで優勝するほどの腕をもちながら、給食調理員として働くことになった料理人の宗。子供嫌いな彼を待っていたのは、保健室登校生や太ってしまった人気子役など問題を抱える生徒ばかり。さらにモンスターペアレントまで現れて。大人になりきれない料理人は給食で子供達を救えるか?笑いと感動そしてスパイスも効いた食育&青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 一流の腕を持ちながら不運が重なり、失業中の料理人・佐々目宗。一年限りのつもりで小学校の給食調理人として働くことになるが…

    スターシェフとして理想の店を開く夢をあきらめきれない一方で、給食調理という特殊な世界での仕事に少しずつやりがいを見出していくお仕事小説。
    プラス、子供たちの問題(食育、アレルギー対応、ネグレクトなどなど)に給食を通してふれあい、何とかして“美味しい”“楽しい”と思わせたいと思うようになる、人としての成長物語。


    遠藤彩見さん、初読。
    なんとなくタイトルだけ知っていて、なんとなく予想していた展開通りではあったけれど、なるほどこれは人気が出るわな。
    だって、部活ものやお勉強ものより、たぶん今の大人全員がもれなく経験していて、ひとつやふたついい思い出も悪い思い出もあるはずだから。
    そして、親になった人なら、子供の給食は遅かれ早かれ、もれなく避けて通れないものだから。
    色々な視点で読める幅の広さ、読みやすい文体、だけど意外と深い現代的なテーマにもふれていて、さじ加減が上手いと感じた。
    なるほど、脚本家さんか。


    ちなみに、私が子供の頃の給食の教えは、『残さず全部食べなさい』であり、『時間内に食べられなければ居残り』であり、『早い者勝ち』だった。
    好き嫌いはないけれど、とにかく食べるのが絶望的に遅かった私にとっては、給食は辛い時間だった。
    これから続く物語の中で、そんな子供が登場したら、ものすごくシンパシーを感じそう。

    佐々目を何かと悩ませる栄養士・毛利が、何となく浮いているというか、一人だけ重い過去を抱えてる風でちょっと違和感があるが、シリーズでこの辺りも良くなっていくかも。
    個人的には手芸男子、家庭科の深津先生がいい味出しててお気に入り。

    そう、給食の「おばさん」ではなく「おにいさん」であること、家庭科の先生が男性である事も、ちょっとした現代的なスパイスですね。

  • 仕事で学校給食の実情は知っているけど、こんな調理さんはまずいない。そして調理さんが子どもと関わる機会もない。そういう人に憧れるなら学校の栄養士さんを目指すべきかな。
    でも、学校給食のリアルな部分は描かれていた。親のネグレクトで給食しかご飯を食べられないとか、そういうのはある。
    型破りな調理さんだなぁという目で見届けた。
    シリーズまとめて貸してもらったので、次も読む。

  • 本屋をパトロールしていて(笑)、そのときにパッと見て
    「あ、面白そう?」
    と、思ったので、図書館でリクエストをかけてみました。

    ちなみに、この本屋パトロールでいろんな本をチェックしているのだけど、なかなか図書館の蔵書にはない・・・。
    基本的には平置きの本ばかりチェックすることになるので、新しすぎてなかなか図書館には入らないのかな・・・?


    閑話休題、さて、この本はありがたくも蔵書にあり、なおかつわりとすぐに手元に回ってきました。
    で、表紙の折り返し部分を見たら、著者にとってこの本は初の小説やったらしく・・・。
    どうも、ドラマの脚本や漫画の原作を書いてこられた方の様子・・・(よくわからんが)?


    イヤイヤびみょうにテンション落ちちゃうよねコレ・・・。 (失礼)


    こういう場合のテンションの落ち方は、内容云々じゃなくて見せ方。
    ドラマにはドラマ、漫画には漫画の見せ方があるように、小説には小説の見せ方があると思います。

    (エラそうですいません)

    なので、ドラマの見せ方を小説でやられても面白くないし、漫画も以下同文。
    今までも、
    「ああ、ネタは面白いのに文章そのものが馴染めないなあ・・・」
    と、いう小説はたくさんあったので、もしかしたらこの本もそういう感じなのかもなあ・・・。

    もしそうだったら、途中で読むのをやめたらエエわ!


    なーんてお気楽なノリで読み始めたところ、



    めっちゃ面白かったんスけど・・・!!



    面白かった!
    これは面白かった。
    なんやのこれ。ドラマ化しはったらええんとちゃいますか。
    その場合、ささめくんはもちろん阿部サダヲ氏でお願いしたい(28才やけど)。


    そもそも、小学校、給食の仕事、と、きて、今の私の身につまされないわけがない。

    大人がよしと思っていることと、子どもがよしと思っていることはたぶんエベレストと宍道湖くらい違っていて(はあ?)、現役子育て中の私ですらそうなんやから、そら、28才独身男性の佐々目くんにしたら理解不可能なことばっかりやろうなあ!

    と、思った。

    でも、若いからか、柔軟性がものすごいあるなー、とも思った。
    「こうあるべき」と、いう概念を、わりとさくっと崩してはったので。それでも、彼が一番譲れない「料理」に、関することだけは概念を崩すのに苦労していたというか、崩していなかった。
    崩さずに、広げていたって感じかな。
    自分のポリシーの根っこの部分は曲げずに、視野を広げたって感じ。
    それがすごい、よかったな。

    先日の「その日まで」も、そうやけど、誰の目から見てもわかるくらいドラマティックな出来事が起こって、周囲も自分も人間的に成長していく・・・、なんてわかりやすいことは日常にはほとんどない。
    そのうえ、人って思うほど簡単には変わらんやろ。

    赤い絵の具の水の中に、青い水をぽたりと落としてもすぐには紫にはならんよ。
    それが、ブワッシャアァァァと青い水を流し込んだらそりゃあ紫にはなるやろうけども、実際は、ぽたりぽたりと青い水を増やしていって、撹拌させながらなんとか紫になっていくのが、現実なのではないかなと思う。

    それが悪いことだとか、じれったいことだと思わなくなる程度には、ほんまに私も年を取った。
    そんなこともある。
    だったら、紫になるまでの間もじっと待とうか、と。
    青い水をぽたりと落とせるようになったことをまず喜ぼうか、と。


    あー消去法で決める癖ついてるわー。
    だから気持ちが続かないのね。

    今年は自分の意志で決めようって目標をたてたんだった。

    佐々目くんの年齢ならまだまだいつだってリスタートできると思うけれど、それはもしかして私もおんなじなのかなー。
    あがく佐々目くんは、料理というよりどころがあるぶん、まだ浅瀬にいられるんじゃないかと思った。
    「きらいになれない」料理だからこそ、つきつめて悩む部分もあるんやろうけれど、きらいになれないものがあるっていうのは充分な強みだとも思う。
    それこそ、自分がどこに満足感を得られるかで変わってくるんかもしれへんくても。

    失ってはいけないものがある、と、思っていそうな毛利さんのほうがよほど危うい。
    彼についてはさらりとしか書かれていなかったけれど、この先もっと掘り下げられるのかな。
    もしかすると彼がメインの話になったりもする? いやいやー、それは、ややこしそうやけど、どう(笑)?
    毛利さんのひねくれ具合は筋金入りやもんな・・・。

    そんな毛利さんが追い込まれているときに、佐々目くんは自分のことをなんとか飲み下して
    「こんなとき自分ならどう言って欲しかった?」
    と、考えるシーンは、ものすごい好きだ。

    なぜなら、私も、佐々目くんが言ったセリフをいわれたいと思うから。
    だから、毛利さんのような人を目の前にしたらあのセリフをいってあげたいと思うから。

    もしかしてそれは私だけで、そんなセリフを私にいうてもうても先方は
    「何いうてはんの?」
    くらいにしか思ってないのかもなあ、と、この一年はすごい思ったけれど、いやいや、そうでもないのかもねと思った。

    私が言われて嬉しいと思うように、もしかしたら、誰かにそうやって言うてもらえたらすこし心が軽くなる人だって、世の中にはいるのかもしれないなあ。
    私のほかに。

    「やらないといけない気がする」
    と、いう追い込みばかり自分にかけて、火加減がまったく整わなくなってしまうときに、

    「火が強すぎる」
    だとか、
    「どうして話を聞かないのか」
    だとか、そんなセリフじゃなくて、

    「あなたは良くやってる」
    「がんばってる」
    「みんな、それをわかっている」

    そんなセリフをもらえたらどんなに嬉しいか。
    私はあまりそういうセリフをいうてもらえないけれど(笑。がんばりが足りんってことか!)、他人の話を聞けないほどこりかたまっている人に

    「そうやなあ」
    「えらいなあ」

    と、ほわーんと返すことは、ほんまに多い。
    それは無責任なのかもしれなくても、誰かが認めてくれたら、人って安心できるよねえ。

    もっともらしい意見が欲しいときと、単に認めてもらいたいときと、人が相談をする理由は、大きくわけると二種類あると思う。



    もちろん、続編もリクエストしましたよ!
    現在我が家には図書館の本が積読状態で最早首が回らなくなりつつあるんやけど(この調子やと読めずに返す本も出るやろうな、これは・・・)、とりあえずリクエストをかけましたよ!
    今回はなかなか手元に回ってこなさそう。ガックリ。^^

    (2015.05.12)

  • お仕事小説。
    有名料理店のシェフをしていた佐々目は、とある理由で小学校の給食調理員に。
    子どもが嫌いな佐々目は、初日から子どもを泣かしてしまい、先行き不安なうえ、これまでのシェフとしての腕前も、給食の大量調理となると活かせず、パートの調理補助から注意されるばかり。
    しかも、シェフだったはずが、「給食のお兄さん」と呼ばれ……。

    物語の面白さはもちろん、食の大切さ、食育なども取り上げられている。
    調理師・栄養士・小学校教諭などを希望する生徒に勧めたい。

  • 今年(2017年)の夏頃、Twitterなどで「横浜市の中学校の昼休みが非常に短く、子どもたちがゆっくり昼食をとれない」という話題を目にし、学校給食のありがたみやあり方について考える機会がありました。
    そう云えばちょっと前に天海祐希さん主演で給食調理員のドラマをやってたっけと思い出し、原作を読んでみようと思い立ったのですが、どうやらそちらは書き下ろし脚本だったそうで……。そんな折、ネットで同モチーフの本書『給食のおにいさん』の存在を知り、即購入した次第。
    読んでいる間に大磯町の給食食べ残し問題(その後、異物混入も発覚)なども起こり、フィクションとノンフィクションがリンクする中で食と安全、子どもと給食について改めて意識するきっかけとなった作品です。

    プロの料理人として挫折を味わい、不承不承ながら給食調理員として働くことになった主人公・佐々目宗。子ども嫌いの彼が初めて目の当たりにした給食室は、レストランの調理場とはまた別次元の戦場だった……!

    栄養バランス、予算、味、楽しさ、そして個々の子どもたちが抱える問題といかに向き合うか、支えるか。
    食べるのは人間。作るのも人間。うまく行かない事もたくさんあるんだけど、だからこそ心を通い合わせられた瞬間がむちゃくちゃ尊い。

    『進級』『卒業』『受験』と、シリーズ通して読みたいと思います。おかわり!

  • コンクールで優勝するほどの腕をもちながら、給食調理員として働くことになった料理人の宗。子供嫌いな彼を待っていたのは、保健室登校生や太ってしまった人気子役など問題を抱える生徒ばかり。さらにモンスターペアレントまで現れて。大人になりきれない料理人は給食で子供達を救えるか?笑いと感動そしてスパイスも効いた食育&青春小説。


    いつだったか、天海祐希さん主演のドラマで

    シェフから給食の調理員をすることになったというのを見たけど、

    それによく似ていた。

    最初はドラマが頭に残ってて
    残像が出てきてしまってたけど、

    途中からは、
    ドラマよりも主人公が素直?なせいか、

    「給食のおにいさん」として読めた。

    とても面白かったです♪

  • 母校の給食は手作りで美味しかったのを思い出して懐かしくなりました。

    名だたる料理コンテストを受賞してきたシェフのささめ。我の強い性格もあり人間関係がうまくいかず有名レストランを転々とし、自分の店をオープンするも火事で全て失い…

    一年限定で就いた給食調理員の仕事は、シェフの自分がするに足らない、独創性のない つまらない仕事だと内心馬鹿にしています。

    そんな彼が美味しいだけでは受け入れられないことや、子どもたちと距離を縮めるなかで気づき、学んでいく。なかなか良書でした。

  • 『給食』って奥が深い。 最初の章を読んで思ったことです。家やお店でご飯を作る時、大事なことって言ったらもちろん第一に味、ですよね。でも給食だとそうではないのです。食べるのは大人ではなく子供。栄養バランス、塩分量、アレルギー。野菜を嫌いな子供にどうやって野菜を食べてもらうか。子供の好きな味。嫌いな味。いろんなことを考えて作られているんですね。
    そのことを、慣れない子供と触れ合っていって、どんどん成長していくお兄さんの姿がとてもよかったです。
    給食の大事さだけではなく今の子供たちが抱える問題にも焦点があてられていて考えさせられました。
    私が小学校の時は、こんな子供いなかったからなぁ…。給食は残さず食べるもの、と教えられてきただけに。現代ではそうじゃないんだなぁ。ちなみに、私の学校の給食はとてもおいしくて言われずとも完食してました。裏ではこのお兄さんたちみたいにいろいろ考えてくれていたのかな、と思うと今さらながら感謝の気持ちがわいてきました。いつもおいしい給食をありがとうございました。

  • 学校の給食を思い出しながら読んでいました。
    レストランのシェフとして腕を振るってきた主人公が、人間関係が上手くいかなく自分のお店も開くことができず、渋々小学校の給食調理人になるのですが、そこは給食に燃える上司とベテランパートがいる主人公にとっては予想外の世界。反発する主人公が子どもたちとのふれあいや年間のイベントを通して、学校給食の魅力と奥深さに魅せられていく。
    学校給食はあんなに考えられていたんだ!と今更気付き、デザートばかりを楽しみにしていた子供時代を思い出し、恥ずかしくなりました。

  • ドタバタな給食室や子どもとの関わりが面白い。
    しかし、給食調理員さんが子どもと関わる事は無い無い

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著者プロフィール

東京生まれ。1996年、脚本家デビュー。1999年、テレビドラマ「入道雲は白 夏の空は青」で第16回ATP賞ドラマ部門最優秀賞を受賞。2013年、『給食のおにいさん』で小説家としてデビュー。同作はシリーズ化されている。他著に、『キッチン・ブルー』『イメコン』『バー極楽』など。

「2020年 『二人がいた食卓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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