まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344421578

作品紹介・あらすじ

東京・神楽坂の老舗料亭「吟遊」で修業をしていた紫紋は、料亭で起こった偽装事件を機にすべてを失った。料理人としての夢、大切な仲間。そして、後輩・悠太の自殺。逃げ出した紫紋は、人生の終わりの地を求めて彷徨い、尽果というバス停に降り立った…。過去に傷がある優しい人々、心が喜ぶ料理に癒され、紫紋はどん底から生き直す勇気を得る。

感想・レビュー・書評

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  • 何か全てに疲れ果て、行き着いた先に、一つの食堂…
    読んでると美味しそうなんやけど、私自身は、味音痴で何食べても、あんまり変わらんかも(^◇^;)
    でも、味というより、こういう居場所があるのは心が安らぐな。

    故郷って、ええよなぁ〜。うちは、もう両方ともおらんし、実家の家もないから、そういう落ち着ける場所はないな…
    自分の家はあるけど、それ以外に帰るところっていうヤツ。
    まぁ、地理的にも、そんな大自然とかあるような出身地ではないから、故郷って感じでは、元々ないのかもしれんけど。

    こういう、第二の故郷が欲しい〜
    基本、落ち着きない性格やけど、落ち着ける場所は欲しいなぁ〜(^_^;)

  • 帰れる場所って当たり前の場所なので改めて思わないと気づけませんよね。日常を大切にしようと思いました。名著です。

  • 美味しいごはんって本当に人を幸せにするし、時には生きる活力にさえなる。ってのを改めて感じさせてくれる小説でした。

    影のありそうな登場人物たちだけど、町のみんな詮索しない優しい人の集まりだからどんな過去を持ってるのか知らずに物語が進んでいきます。でもそれぞれの抱えるものが大きすぎて…

    そんな中、「待っててくれる人」、「他人だけど家族のような人」、「ふるさと」にそれぞれが支えられながら生きていました。家族じゃないけど、心の支えになってくれる人って貴重だよね。
    携帯電話起動してからは、泣ける泣ける。メールや留守電に泣かされるとは思ってなかった。笑

    そして所々出てくる美味しそうで心が温まる料理の数々。ほんと近所にまぐだら屋できて欲しい。絶対通う!

    余談ですが、最近仕事で疲れ果てて元気なかったのですが、近所の定食屋さんで美味しすぎる料理を食べたらすっかり元気になれました。塩味もちょうどよくて、野菜たっぷりで、デザートなんて美味しすぎておかわりするところでした。インスタントラーメンやジャンクフード食べてた時より何倍も幸せになりました。美味しいご飯はほんと大事。

  • 明るく楽しいレストランのお話かと思いきや、マハさんのお話にしては、めずらしく全編が暗いトーンの話でしたが引き込まれました。

    尽果(さいはて)というこの世で一番寂しい名前のバス停に降り立った及川紫紋(しもん)25歳は板前修業で勤めていた老舗料亭が、起こした食品偽装・使いまわし事件の渦中から逃れてきていました。後輩の板前、悠太が事件の犠牲になり自殺しています。

    そしてたどりついた漁村の定食屋の「まぐだら屋」。そこではマリアと呼ばれる、左手の薬指がない34歳の女性がひとりで切り盛りしていて、紫紋は店を手伝い、近くのアパートから通うことになります。
    その店の経営者の女将は臥せって床についていますが、紫紋は店で働く条件として「あれにー決して惚れぬこと」と、マリアとの恋愛を止められますが、働いていくうちに、紫紋の気持ちは高まっていきます。マリアはまるで、実の母親に接するように女将を大切にしていますが、女将はマリアを酷く憎み許していません。

    マリアと女将の間の秘密は、町にやってきたやはり左手の薬指のない男、与羽(よはね)が来たことにより、紫紋の知ることになりますが…。

    苦しい過去を抱えた人々が、希望と再生を見出していくまでの物語です。
    「まぐだら屋」のまぐだらとは、マグロとタラをかけ合わせたような世にも美味な魚の意味を持つそうですが、聖書に出てくる「マグダラのマリア」をかけたものだと思いました。他にも女将が桐江(キリエ)丸孤(マルコ)与羽(ヨハネ)など、聖書関連の人名をもじった名前が目立ちました。「まぐだら屋」のマリアは「マグダラのマリア」であり「誰も彼女をとがめることはできない」という聖書と同じ意味合いかと思いました。

  • 図書館本

    安定の読みやすさとストーリー。
    尽果という場所にある食堂。そこに流れ着いた料理人。マリアの過去。
    食べることの大切さを思う。料理して、食べて、食べてもらって。そうすることで時を過ごし、心癒される。

  • マグダラのマリアを意識して作られていると思うけれど、詳しくないので浅い知識で読んだ。登場人物の名前も、有馬りあ(マリア)をはじめとして、紫紋(シモン)、丸弧(マルコ)、与羽(ヨハネ)って・・・!

    紫紋がマグダラ屋に流れ着くきっかけとなった事件とか、マリアと女将の過去とか、小出しにされているから、何があったのかなと思いながら飽きずに読めた。やっぱりこういうふうに徐々に明らかになる感じだと楽しいなぁ。

    登場人物それぞれが寂しくて暗い過去をもっているけれど、マグダラ屋のみんなは優しくてあたたかい。「けれど」じゃなくて、「だから」なのかな?こういう雰囲気好き。
    それでもマリアが与羽と町を出ていってしまうのはそれまでのイメージと違いすぎてびっくりだった。マグダラのマリアを重ねているからこういうことをさせないといけなかったのか?

    紫紋を待っているお母さんからのたくさんのメッセージに感動。


    「あなたが生き続ける限り、救われる人がたくさんいる。私も、そのひとりです。」

  • 人は罪深い。それ故、自分の命を絶とうとする人もいる。でも、運命的な出会いが人の人生を変えることもある。
    すべてを許す抱擁と涙に大いなる感動をおぼえる。
    辛苦の先にある希望。信じるものだけが強い意志を持ち、救われれのかもしれない。
    いい本にめぐり逢えた。感謝して。

  • 話の設定も紫紋やマリア、登場人物も良くて好きな話だと思いながら読んでいたのだが、後半マリアの過去が明らかになってきた辺りから、ちょっと残念。
    女将さんに仕えるマリア、ラストで明かされる2人の関係を知った時、マリアが仕えることが女将さんを更に辛くしているのでは?マリアが側にいることで辛い過去に縛られてしまうのではないか。
    マリアの償いって、マリア自身が生き続けるためなのだろうか。
    マリアが紫紋に故郷へ帰ることを勧めるのも、なんだか‥。
    前半良かっただけに残念。

  • 美味しそうな料理と穏やかな地元の人に囲まれた今と、その裏に隠された凄絶な過去の描写の対比が凄い。
    現在と過去が交互に出て来るところもその対比を際立たせ、解説にあるように何か寓話的なところとリアルがうまいバランスで両立していて、とても引き込まれて一気に読んでしまった。

    どんなに辛いことがあっても、逃げていては何も始まらない。自分のペースで良いから前を向いて食いしばりながらも出来ることをしていくしかないし、そうすることが償いにもなるということ。

    事情を聞かずに全てを受け入れるということと、美味しくあたたまる料理の存在は、弱っている人には一番の薬だな。そういう人が突然目の前に現れたら、自分も同じようにしてあげられるだろうか…そんなことも考えた。

  • 題名は、福音書のマグダラのマリアからとか。
    登場人物の名前も、マリア、シモン、ヨハネ、マルコ等々、聖書がらみに。
    一方で、小説の舞台となる店の名は、尽果(つきはて)の海にいるという怪魚(マグロとタラをかけあわせたような)からつけたとしている。さらに、漁師の名はカツオ。「貝類を扱っているサザエさんという業者はいないでしょうね」と、登場人物に言わせるのは、著者の遊び心か(笑)。
    名前から由来するように、各登場人物は「過去の秘密」を持ち、ミステリータッチに話が展開する。
    そんな彼らの贖罪と再生を描く希望の物語となっており、読み心を温かくしてくれる。
    そして、花を添えるのが、老舗料亭で修業した紫紋が作り出す料理の数々。こんな定食屋があれば、誰でも行ってみたくなるだろう。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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