小野寺の弟・小野寺の姉 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.74
  • (50)
  • (86)
  • (68)
  • (12)
  • (5)
本棚登録 : 732
感想 : 87
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344422513

作品紹介・あらすじ

早くに両親を亡くし一軒家でずっと一緒に暮らす、小野寺進(33)と小野寺より子(40)。お互いのことを心から思いやるあまり、不器用な言動ばかり出てしまう。ある日、そんな二人の元に誤配送の郵便が届く。その手紙を契機に弟と姉それぞれの恋と人生が動き始める。最注目のクリエイターが描き出す"ありがとうの香り"に包まれた、笑顔と涙の"姉弟の物語"。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 小野寺姉弟にズッキュゥゥゥゥウン!

    これまたブクログからのおすすめに挙がってきた作品。書店で取り寄せ注文したら実写映画告知の二重カバーが巻かれたものが到着。普段、こういったメディア化に合わせた広告オビとか嫌いであえて避けてきたクチなのですが、本作の場合はなんか許せてしまった。というか、向井理さんと片桐はいりさんピッタリじゃないですか!いや、むしろ片桐はいりさんの印象が強烈過ぎて〈小野寺より子〉はこのビジュアルを思い浮かべずには読めない感じになってしまった。

    交互に姉と弟の視点が切り替わる連作小説。読み進むにつれて互いの本心やエピソードの真相が読者には明らかになっていく構成。

    小野寺姉弟はおそらくは’世間一般のイメージ’からすればちょっと変わった人サイドの方に見られがちなタイプの人たち。いや、何も自分を棚に上げているつもりも主流化するつもりも毛頭無いのだが、こういう’自分達の暮らし’をきちんと大切にしている人って、えてして変わり者扱いというか要領悪いというか、部外者からはなんか違うと判定されがちな人たちであると思うのであります。

    例えば姉・より子は「自分のものに名前を縫い込むという癖があるのだ。」(p11)とあるように自分のエプロンや持ち物やらに名前を縫い付けるのも、風水を熱心に実践しているのも、全ては’よい暮らし’に重きを置いているからだと思う(金銭的な意味でなく)。彼女が大切に育てている「ワイルドストロベリー」の花言葉は’尊重と愛情’’幸福な家庭’’無邪気’と彼女の人となりそのもの。「花が咲くその日を期待し、」(p36)「痛みを隠して生きるのが上手」(p209)で「前を向いては行く手に何かあるたびに回れ右をして同じ場所をくるくる回ってばかりいる」(p235)彼女はそれでも「小野寺の姉ちゃん」(p236)であり、そうあり続けるのだと思う。

    「出来の悪い弟」(p236)である〈小野寺進〉もただの愚鈍ではない。姉も含めた「人に話しかけるのが下手」(p39)で「内弁慶」(p42)の気がある彼だが、より子以上に繊細で他人に対する観察眼に優れている。一方で「姉ちゃんが幸せになる前に自分が幸せになろうなんて思わない。そんなものは、俺にとって幸せでも何でもない。」(p199)と断じる事が出来るくらいの確かな愛をより子に抱いており、やっぱり不器用なのである。


    そんな姉弟が織りなす、ささやかな日々に思わずクスリと笑いがこぼれてしまう本作。私自身は一人っ子なので一層羨ましく眩しく映ったのかもしれません。
    ギスギスしがちな現代社会、家族同士だけでもお節介を許せるようにありたいものだと思いました。


    5刷
    2023.8.23

  • 40代に突入した姉と、30代半ばの弟の二人暮らし。正反対の性格の二人だが、不思議と同じ行動をとっていたりして、姉弟だなぁと微笑ましく思う。言葉に出さないけれど何気にお互いを思いやる姿がとても良かった。私は弟に対して、こんな優しい姉であった事がないな(^_^;)
    映画は見ていないが、片桐はいりさんと向井理くんにぴったり!(ミッチーの浅野さんも!)特にはいりさんは適役すぎて、読みながら頭の中をはいりさんが駆け巡り思わず声に出して笑ってしまった。映画見たかったな~

  • 両親を早くに亡くして親代わりとしても弟を育ててきた40代の姉と、そんな姉に悪態をつきながらも本当は感謝しているちょっと変わり者である30代の弟。
    お互いへの愛情がさらりとしていて可愛らしくて、二人で暮らす生活ぶりはとてもほのぼのしている。
    「給料前だからすき焼きなんて贅沢!水炊きよ!」とか、クリスマスの雰囲気が苦手で避け合うところとか、畳の下貯金の理由とか。
    何となく負い目があって二人揃って婚期を逃していたり、恋愛に臆病になっているところは切ないけれど、何てことない日々の中にちょっとした出逢いやときめきがあったり、その陰に涙があったりする少しの痛みの加減が、個人的にはすごく好きな感じだった。
    二人の周りにいる人々もものすごく普通なのに面白くて、自分の知り合いにもいそうなリアリティーが。

    いい歳した姉弟がずっと二人で暮らしてていいの?大丈夫?
    と、周りは言いそうな気がするけれど、この二人を見ていると、まぁそれもけっこう幸せなんじゃない?と思えてしまう。
    この暮らしが変わるのはもしかしたら二人が同時に変わる瞬間なのかも。

    映画の方の弟役が向井理ってイケメン過ぎじゃ?と最初思ったけど、読んでいくうちそんなに悪くないかも、と思った。
    よーく見るとけっこうイケメンなのになぜかイケてなくて冴えない、みたいな感じならなかなかはまってそう。笑
    そんなわけで映画も観てみたくなった。

    不器用なのが見ていてもどかしいけれど変わって欲しくないとも思う感じ、現実の日々でもあったりする、と思った。

  • この本は今まで読んだ中で1番好きな本。
    なにげない日常を上手に描いていて、姉と弟のほっこりした物語。たわいもない言い合いが笑えたり、でも切ない部分もあって。お互いが思いやってることがよくわかるし、読んでてあたたかい気持ちになれる作品。

    私にも弟がいるのでこんな関係がすごく羨ましくなったし、映画も片桐はいりさんと向井理さんの配役がぴったりだと思った。

  • とても好きで、たまに読み返してる。さっくり読める文量なのに、姉弟は勿論、周りの人達の空気感も感じられるくらい伝わってくる。ほっこりしつつ、切ない気持ちにもなりつつ、ずっと日常が続いて欲しいと思う。

  • 2人それぞれの目線から読めるから、
    どれだけ相手のことを大切に思っているかが
    伝わってきてあったかい気持ちになる。
    不器用な2人が愛おしい(笑)

    季節は春に近づいてきたけど、
    そんな今にぴったりな1冊でした。

  • 映画化されているとあって、より子=片桐はいりさん、進=向井理さんで脳内変換して読みました。当て書きしたの?と思うぐらいどちらもぴったりで…。向井さんのイケメンなのにぱっとしない感じが素敵。(映画は観てません、脳内でイメージして素敵でした)

    恋愛は人生において大切だけど、今ある家族に優先するかといわれるとそれは分からないな。
    年をとって姉弟で住むなんて、と偏見もありそうだけど気にしない二人がいい。
    閉鎖的に見えてそんなことない二人だから、これからもそうやって暮らしてほしい。

  • 著者・西田征史氏の描き出す世界観がとても好き
    ドラマ『石子と羽男』もEテレ『あおきいろ』もすべてのものを視る眼差しがとてもやさしい、あたたかい。『小野寺の弟・小野寺の姉』もなんでもない毎日のようで、こんなお話、他の誰にも描けないよ、きっと。

  • 適齢期を過ぎた姉と弟の日常と葛藤、2人の何とも言えないやりとりが微笑ましいけど、せつなくなる箇所もあり感情移入すると気持ちの移り変わりが忙しい。章立てで読みやすくサクッと読了。片桐はいりと向井理で映画、舞台にもなっているようで読みながら映像が頭の中で流れた。

  • 平凡な日常を気持ちよく描いたお話。
    姉と弟のお互いを思いやる気持ちにほのぼのとした。40代の姉と30代の弟、ともに独身、と聞いて勝手にかわいそうだと思ってしまったけれど、多数派が決めた「しあわせの形」に当てはまっていなくたって、幸せならいいじゃないか。大切なものはすぐそばにある。最近忘れていたかもしれない。大事なことに気付かされた。

全87件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1975年東京生まれ。学習院大学法学部法律学科卒業。脚本家。演出家。映画・ドラマ・舞台など幅広く脚本を執筆。主な作品に映画「ガチ☆ボーイズ」「信長協奏曲」ドラマ「とと姉ちゃん」「怪物くん」「魔王」「妖怪人間ベム」などがある。

「2022年 『ひまわりがっきゅうって どんなとこ? ~特別支援学級~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西田征史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×