空飛ぶ広報室 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (558ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344424548

感想・レビュー・書評

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  • 不慮の事故で夢を断たれた元・戦闘機パイロット・空井大祐。異動した先、航空幕僚監部広報室で待ち受けていたのは、ミーハー室長の鷺坂、ベテラン広報官の比嘉をはじめ、ひと癖もふた癖もある先輩たちだった。そして美人TVディレクターと出会い……。

    戦闘機を降りた元パイロットが広報に配属されて苦悩・葛藤・奮闘する話。 あれこれ考える必要がない。文章を読めばいとも簡単にその場面が浮かんでくるからだ。 この作家の小説を映像メディアが喜んで映画化やドラマ化したがるのも頷ける。 個人的には面白いと感じたのは最後の最後だけだった。 映画化されているそうなので機会があれば見てみたい。

  •  本棚の整理をして、有川浩の文庫を著作順に並べ直した。デビュー作の「塩の街」から文庫版では最新の「アンマーとぼくら」まで全29冊、途中から歯が欠けたように買うだけで読まなかった本が混じっている。その中の一冊がこの「空飛ぶ広報室」だった。
     「三匹のおっさん」と「シアター!」は読んでいる途中で飽きたことを覚えているのだが、「空飛ぶ広報室」はなぜ読まなかったのだろうかと考えた。おそらく、自衛隊が絡んだ時の作者の熱量がちょっと苦手で、しかも前後して読んだ「県庁おもてなし課」が説教くさくて読んでいるうちにめんどくさくなった印象が強かったために、同じ広報物でしかも自衛隊かあ、とがっつり腰が引けたんだろうなとぼんやり思い出した。でもドラマにもなっていたし、ドラマ見るなら原作も一応読んでおくかと手に取ったもののどうにも弾みがつかない。しょうがないので、いわゆる自衛隊三部作の読み返しから始めた。(そこまでして読まなくてもよいのでは、というのは禁句である。)
     自衛隊三部作(「塩の街」「空の中」「海の底」)はほどよく記憶が薄れていて、痒いところエグいところは適宜飛ばしつつ怪獣映画的にそこそこ楽しく読めたので、勢いを失わないうちにそのまま「空飛ぶ広報室」へ突入。そしてあっという間に読了。
     うーんびっくりするほど何も残らない。どうしたんだろうと思うほど散漫な印象である。
     「クジラの彼」「ラブコメ今昔」に入っている各短編のほうがよほど出来が良かった。いや、ここに入っているような短編の分しかアイディアがないのに無理やり長編にしてしまったからこのスカスカ感なのか。
     この作品で唯一評価できるのは、主人公二人を明示的にはくっつけなかったことだろう。それをやってしまったらあまりの御都合主義である。しかし逆に、それをしなかったことでラブコメとしてすら成立しなくなった本作は、本当に自衛隊の提灯持ちラノベとしてしか存在しなくなってしまったのである。そりゃ何も残らないわ。
     有川浩は大人のラノベを書きたい人らしいので(図書館戦争を書いていた頃のコメントなので今は違うのかもしれない)、ラノベとかジュブナイルとかを書くのは需要と供給がマッチしていていいのだろう。しかし、自衛隊は怪獣映画系ラノベの舞台装置とかラブコメのスパイスにするにはいいけれど、ラノベの題材として正面から取り組むにはちょっと大人の事情が絡みすぎている組織だと思う。日本になぜ軍隊ではなく自衛隊があって専守防衛という言葉を守っているのか、そういう背景も込みで物語にするのでなければ、そこで国防をやっている人は一生懸命なんだよ、ということだけ広報されても片手落ちである。ラノベの中でそこまでやってくれるならいいんだけど、とりあえず本作はやってない。
     奇しくも、文庫用の書き下ろしエピソードと重なる東日本大震災に象徴される大規模自然災害への災害出動を契機に、自衛隊に対するマスの国民感情はだいぶ変わってきたと思う。でもそれは論理的な認識の更新ではなく、なんとなく、自衛隊の人頑張ってくれててありがたいよね、みたいな空気感の醸成に過ぎないのであるが、有川浩はその増進に明らかに一役買った。しかし今の政治ではその先にあるのは自衛隊の合憲化だけではなく、軍隊化である。それはきっと、有川浩の作品に出てくるような国防に取り組む現場の自衛官たちの望んでいることではないはずだ。そこんところ、有川浩は認識していただろうか。
     ちなみに本作も含め、有川浩の書いているものは出版業界的には小説と位置付けられているようである。これは有川浩の問題ではなく出版業界の問題だと思うのが、それでいいのだろうか? 売れればいいのか? 有川浩自身はラノベを書いていることに自負を持っていると思うので、堂々とラノベのレーベルで売ればよいと思うのだが。初期の作品はやはり今読んでも出来が良いと思うので、残念である。ラノベでいいじゃない。少女小説万歳ですよ。
     ……等々、なんともいえない後味を抱えたまま、一応ドラマもチェックするかあとHuluで見てみた。主演が綾野剛と新垣結衣だし、ドラマはまた違うかもーとかちょっと期待しつつ一話目を見始めたのだが……ごめん、やっぱり無理だった。それこそ空自全面協力であろう、トップガンをバリバリ意識しているかのような戦闘機のシーンから始まったものの、いろんなものが安い。綾野剛が「人を殺したいと思ったことなんて……!」と叫ぶシーンでリタイアさせていただきました。綾野剛、演技うまいと思うんだけどなー、なぜああなった。ちなみにドラマでは主役二人は最後くっつくらしい。そりゃだめだ。

  • 先輩のおすすめだったけどまあまあ

著者プロフィール

高知県生まれ。2004年『塩の街』で「電撃小説大賞」大賞を受賞し、デビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊』3部作、その他、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』等がある。

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