さみしくなったら名前を呼んで (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344425774

作品紹介・あらすじ

さみしいとか悲しいとか切ないとか、そんなのを感じる心のひだが、全部なくなればいいのに-。ブスと呼ばれ続けた女、年上男に翻弄される女子高生、未来を夢見て踊り続ける14歳、田舎に帰省して親友と再会した女。「何者でもない」ことに懊悩しながらも「何者にもなれる」と思って、ひたむきにあがき続ける女性を描いた、胸が締め付けられる短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 女性の、特に少女時代の感性や生きづらさもどかしさを描いている短編集。
    何者でもない私たちが必死に生きるさまを見せつけられて何者でもない、何者にもなれなかった、でも何者にもなれなくてよかったかもしれない、と読みながら思った。
    あなたは大丈夫、そう抱きしめたくなる作品。

  • 人の思い出を盗むな
    タイトルの意味が最後わかった時すごいなって思った

    遊びの時間はすぐ終わる?
    言葉選びが好き

  • 12編の短編集。
    カズオ、青木夫妻、小松さんの話が好きだった。
    青木夫妻は謎に包まれた夫妻で、ミステリーを読んでいるようだった。

  • 「昔の話を聞かせてよ」「孤高のギャル小松さん」「人の思い出を盗むな」らへんが好き。「遊びの時間はすぐおわる」は特に良かった。
    「ここは退屈むかえにきて」といい「可愛い結婚」といい田舎に対する思いは山内さんの書く女の子たちと通ずるものがある。山内さんは富山県出身、大学で大阪に進学したらしい。やっぱり。

    だからなんとなく読んでしまうのかも。自分がこうなるかもしれなかった人たち、地元の友人たちがいるようだから。

    ありさのように自分がたぶらかしてるつもりで相手から軽んじられていたこと、その人が自分を特別なものにしてくれてここから連れ出してくれると思っていたこと、さよちゃんのように自分は可愛いと自分を許すために恋愛をしたことが、誰にだってあるでしょう。誰にももうあまり言いたくない過去のことがあるでしょう。



    いろんなものが、そんなふうにして消えていった。引越しのたびに減っていった靴や洋服。自分が何を持っていて、いつなにを失くして今に至るのか、どんどん忘れていく。記憶は曖昧になって、なにが本当に起こったことなのかもわからなくなる。(「遊びの時間はもう終わり」)

    いつか好きだった人とのこと、いつか心を通わせた人とのこと、もうあまり連絡をしなくなった友人のこと、地元を出たいとここには何もないと、言い切っていた私のことを思い出した。

  • ・さよちゃんはブスなんかじゃないよ
    一度でいいからお互いが本当の自分でいられて心の底から愛し愛される恋愛をしたいと思うもの。
    可愛いとかブスとかそんなこと誰が決めるの?
    外見でしか人を測れないなんてつらい。
    でも悲しいことながら世の中ってそんなもんだよね。

    ・昔の話を聴かせてよ
    年を重ねれば重ねるほど年を取るのははやくなる。
    周りも訃報が増え、寂しくなる。
    何もかもわからなくなって、思い出だけで生きていけるのだろうか。
    昔好きだったものを懐かしみながら時を過ごせるのだろうか。わからなかった。

    ・大人になる方法
    学生の頃は少しでも周りより何か違うものを手に入れたくて、それによって輝く自分が誇らしくて。
    その時には気付けない、のちに青春だなと思う。
    欲しいものは自分自身で掴みにいかないといけなくて、でもそういう思い出も必要なの。
    人生で何が大切かなんて、何もわかっていなくて、わからないからこそがむしゃらに生きれて、どんなことでもできる。
    10代の危うさと輝きがとても眩しかった。

    ・ケイコは都会の女
    短くて一瞬で読んだ。
    見た目で東京ぽいとか横浜ぽいとかなんなんだろうな〜と思いつつ、あるな〜と思った。
    都会っぽいとか田舎くさいとか、オシャレかダサいかを言い換えただけだよね。
    そういうマウンティング、ある。ある。

    ・ボーイフレンドのナンバーワン
    彼好みの私になるのではなくて、私好みの彼と付き合いたい。
    でも、いつだって彼氏はナンバーワン、なのかな。
    男の子たちみんな、キャーッてほんとに言ってたよ。

    ・人の思い出を盗むな
    最後の最後でそういうことかとタイトルの意味がわかった。
    何が好きで何に惹かれて何が良かったのかさえわからなくても。
    感覚的にビビッとくることってあるのかな。
    好きってなんだろう。

    ・走っても走ってもあたしまだ十四歳
    「大丈夫だよ、マユコ。いま嫌いだなって思ってる人たちが、そのうちみんな、一人残らず周りから消えて、むしろ恋しくなる日が来るんだから。ほんとだよ」
    自分の居場所ってどこにあるんだろうね。

    ・八月三十二日がはじまっちゃった
    親戚付き合いって何かしらのイベントがないと集まらない。
    小さい頃は長期休暇の度に会っていても、大人になるにつれて疎遠になっていくこともある。
    親戚って不思議な存在だなと思う。
    家族だけれどどこか遠い存在。

    ・Mr.and Mrs.Aoki, R.I.P.
    "彼らのことなんて、彼ら以外の誰にわかるんだ?誰にも。誰にもわからない。そしてわからないことを知っているかのように語ってはいけない。"
    心に留めておかなければと思った。
    本当のことはその人自身しか知らない。憶測はダメ。

    ・孤高のギャル小松さん
    人ってやっぱり見た目で判断する生き物。
    昔好きだった男子の変わりようも、流れに身を任せてしまうのも、鳴らない携帯を恨めしく眺めることも。ある、ある。
    一人一人の内面をちゃんと見極められるようになれたらいいな。

    ・遊びの時間はすぐ終わる
    地元の安心感と都心への憧れ。
    誰もが一度は抱いたことあるだろうな。
    いくつ歳を取っても環境が変わっても、友情は変わらないと信じたい。あのとき買ったお揃いのもの、今でも大切にしてくれてたら嬉しいね。

    ・AIBO大好きだよ
    学生の頃は社会人になったらバリバリ働いて家庭を築くという理想を漠然と抱いていた。
    けど何が起こるかわからない人生の中でくすぶった時間や休暇も悪くないと思うようになった。
    AIBOこそいなかったけれど私もこんな時期あったな。


    この本はジャケットがお気に入り。
    可愛い女の子が闇を抱えているような未来に希望を持っていないような描写に惹かれて購入。
    物語のどこかに共感できるところがあって、私の話のようだと心掴まれた。
    子どもの頃の世界は視野が狭くてわからないことが多くて不安になったり悲しくなったりしやすかったな。
    その頃に描いていた未来が今現状実現しているかというとぜんぜんそんなことないけれど、大人の世界もそれはそれで楽しいと思う。
    昔持ち合わせていた純粋さや健気さ、ひたむきさはいつのまにか自分の中からなくなってしまっているかもしれない。
    生きていくうえで必要なことを身につけて、いらないものを削ぎ落として、生きやすく生きていいんだ、と教えてくれた気がする。

  • 山内マリコが描く女の子が大好きです。
    強くて繊細で、自分の中の葛藤と一生懸命戦っている。

  • 遊びの時間はすぐ終わる
    が印象的だった
    妙にリアルでひきこまれる

  • はっとする文章がいくつもあった。
    山内マリコの描く田舎の若者が好きだ。
    じたばたしてるのはみんな同じ。
    こんなことまで書かないでよ とさえ思うし、わたしだけじゃないんだ と安心する。
    「ここは退屈迎えに来て」が好きな人は好きな本だと思う。

    *

    「みんな自分に似合わないものばかり、手の届かないものばかり欲しがってる。」
    「自分がなにを持っていて、いつなにを失くしていまに至るのか、どんどん忘れていく。」
    「ささやかでもいいから思い出を作るか、とびきりいいものを手に入れるまでは、帰りたくても帰れない。」

  • 【昔の話を聞かせてよ】
    年を取るって、なんて悲しいことだろう。懐かしいかとがたくさんあるって、なんて胸が痛いことだろう。あたしはこの先、どんどん鈍感になって、図太くなって、何を見ても心がぴくりとも動かない、石のような老人になりたいと思った。さびしいとかせつないとか侘しいとか、そんなのを感じる心のひだが、全部なくなればいいと思った。

    【大人になる方法】
    あたしは、いつになったら自分が思い描く女の子になれるんだろう。いつになったら完成するんだろう。それまでに、あとどのくらいの時間がかかるんだろう。あたしがなりたいのは、きれいで、頭が良くて、おしゃれで、おもしろいことが言える人。いつも堂々としていて、自信があって、人に媚びたりしないし、後で自己嫌悪に陥るようなダサいリアクションもしない。そういう女の人になれるまで、あとどのくらいかかるんだろう。
    気が遠くなりそうな膨大な時間と、無駄打ちだらけの破れかぶれな経験。
    そういったものの果てにあたしはちゃんと、自分で自分に及第点を出せるような人間に、なれるんだろうか。

    【遊びの時間はすぐ終わる】
    とにかくもうちょっと、時間が必要なのだ。自分にはなにが出来て、なにが向いていて、なにをするために生まれてきたのかを、ひと通り試してみる時間が。そういう試みは、もう若くはないと思えるようになるまで、つづけなくちゃいけない。へとへとに疲れて、飽き飽きして、自分の中の無尽蔵に思えたエネルギーが、実はただ若かっただけってことに気がつくまで、やってみなくちゃいけない。身の丈を知り、何度も何度も不安な夜をくぐり抜け、もうなにもしたくないと、心の底から思えるようになるまで。

  • あんなに毒いちごみたいな毎日を送っていたのに、今じゃ丁寧な暮らしをしている。こんなの馬鹿みたいだ、って思うのは昔から変わらない。
    あの頃の空気を忘れちゃっても、山内マリコを読めばヒリヒリ感まで思い出せる。孤高のギャル小松さんが好きだった。

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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