Under the Rose 6: 春の賛歌 (バーズコミックスデラックス)
- 幻冬舎コミックス (2009年5月23日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344816480
感想・レビュー・書評
-
つづき は まだか
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
背徳なはずの家族に理想の幸せな家族の姿を見たレイチェルの考えが少しずつ柔らかくなってきた。
レイチェルを傷付けるだけだったウィリアムが次第にレイチェルを意識し出したのにちょっとにんまり。
完璧すぎるウィリアムが兄弟以外にも人間味のある付き合いができるような発露のような気がする。
伯爵がついに本音を言ってしまった!
微妙なバランスで保たれていた家族や夫婦がばらばらになっていくのかな。
どうなるんだか先が読めず、続きが気になる。 -
登場人物ひとりひとりの心が丁寧に描かれており、どの立場に立っても共感してしまうし、別の立場に立つとやはりそのキャラの振舞に反感を感じてしまったり。本当にすばらしい漫画だと思います。
子供たちが健やかに自然体で育ってほしいと祈らずにはいられない。 -
19世紀イギリス。
愛人二人との間にも子供がいる貴族の複雑な家庭に育つ少年達。
精緻な絵と濃い描き込みっぷりを堪能しました。
真面目な熱血?家庭教師の女性が生徒に翻弄されてちょっと気の毒だったが、ここに至って~いろいろなことの意味が大きく変わってくる。
毒をはらんだストーリーにも、しだいに説得力が。 -
眼鏡大好きなのでデレ期がきて幸せになれます。レイチェルのえむっぷりがいっそ清々しい。
あー早く続き読みたいです(*'-'*) -
母親の死の真相を求めて、ライナスが
ロウランド家へ赴く「冬の物語」、
家庭教師レイチェルがロウランド家に見る
「理想の家族」の真実を描く「春の讃歌」
おおきく2つのシリーズにわかれる。
相当面白く、何度も読んでしまった。
緻密な時代背景を描く画力、真に迫る心理描写。
最近はかなり個々人の行動原理が明らかにされてきた。
真実が晒される、その下りはゾクゾクする。
薔薇の下に埋まっているのは、人々の心。 -
ようやく最新刊まで読み終わったので、シリーズ全体の感想をこちらに。
とにかく、素晴らしいの一言に尽きると思う。星だって、五つどころではなく、十や二十でも差し上げたい気分だ。
実は以前人に読むように勧められて、2巻の初めまではなんとかいったのだけれど、当時はこの何とも言えない陰惨な雰囲気に当てられてしまって、なかなか続きを読もうと言う気にはなれなかった。今回もやはり1巻、2巻辺りで挫折しそうになったのだけれど、同じだと言う人は我慢してなんとか2巻の中盤…せめて、「冬の物語」の最終話までは読み進めて欲しい。そうすれば、この悪意と陰謀に満ちた物語が、一方でただ絶望にのみ彩られたものでないことが分かる。そこでようやく、一つの希望の形のようなものに到達することができるのだ。
とは言うものの、ストーリーとしてはやはりかなりえげつない要素も含むので、親族のどろどろとか、虐待やレイプ、むきだしの敵意や心理戦に弱いという人はやめておいた方が良いかもしれない。言うまでもなく、15歳以下にはちょっとお薦めしづらい。それでも、並いる不快要素を補ってあまりあるほど、全編通じてとにかく細やかに描かれる詳細な心理描写を堪能してもらいたいという気持ちは強い。
この作品において、キャラクターたちは単に絵として描かれているだけではない。その内に、それぞれの生きた怒りや憎しみの炎を秘めている。それが、各人のシルエットの中に透けて見える。とりわけ序盤の「冬の物語」主人公のライナスの孤高ぶりときたら、見ていて痛々しく感じられるほどだ。肉を切らせて骨を断つという訳でもないけれど、自らを庇うより先にまず相手を傷つけることを選択する彼の無防備な感情の行く先は、空しくただひたすらに果てがないように思われる。
また、ローランド家の面々、後の「春の讃歌」から主人公を務めるレイチェルも、残酷な屋敷の運命にただ身を任せるだけではなく、そこに一つの活路を見出そうと懸命にもがく。絶望の淵にたたき落とされながらも、諦めずそれぞれの光を掲げようとする。その姿はただただ無様で、それがゆえに胸が詰まるほど美しい。この物語を読んでいると、「キャラクターが生きている」とはこういうことを言うのだなとつくづく実感する。まるで一つの立体的な社会を目の前にしているような感覚を覚えさせられる。
個人的には、ちょうどこれを読む前に同じ19世紀イギリスの貴族文化を描いた『エマ』を読み終わっていたところだったので、「同じヴィクトリア朝ものでもここまで違うものか」と初め読み始めた時にはかなりの衝撃を受けた。
基本的に救いがあらかじめ用意されている(しかも、そのことが雰囲気としてなんとなく察知できる)『エマ』とは違って、この物語は上げられたと思うまでもなく、ただ延々と暗闇に落とされ続ける。けれども、その陰鬱な現実があるからこそ、些細な喜びが本当に尊いもののように感じられる。子どもたちの笑顔、つぼみのほころぶ花々、美しい憧憬と明るい自然は読者の心に束の間の休息を与えてくれる。
とは言え、どれほど幸福なワニスで表を塗り固めようとも、ローランド家の実情は異様のそれだ。複数の「公認の愛人」を持つ屋敷の主に、薬漬けの情婦、世を捨てた虚弱な正妻と、かしましい使用人たちの噂話…それでも、なんとか意図されてきた予定調和の中に、レイチェルとウィリアムの関係は一つの齟齬を来たし始めている。二人の行く末はローランドに新たな道を指し示すものとなるのだろうか。それとも、それは彼らの破滅を意味するものとなるのだろうか。
実はこれで作者に興味を持って、挿絵を担当しているという『流血女神伝』まで読み始めてしまった。相も変わらず繊細優美な画風を目にして、本当にこの方の才能はとどまるところを知らないなぁという感慨を新たにしている。