金印偽造事件—「漢委奴國王」のまぼろし

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980143

感想・レビュー・書評

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  • 学者亀井南冥の漢委奴国王の金印を偽造した疑惑

    1784、志賀島農民甚兵衛が田んぼの水路を治す
    小石をよけて二人でよけた大石の下から金印発見
    それは亀井南冥が町医者から成り上がり、藩校を
    開いた2月1日から3週間後の2月23日であった
    そして役人へ届けられたのは3月16日

    南冥は儒学者として「鑑定書2通」と藩に提出し
    た「金印弁」を3月中に提出している
    タイミングが早い、なんと京都の考証学者である
    藤原貞幹は4月2日には印影をおしている
    南冥は実弟の京都崇福寺住職曇栄に印影を送って
    いるし、瞬く間に多くの知識人・学者へ知れ渡る
    ところから配布したものと思える

    多くの金印に係る著述
    1784 村山広「漢封金印記」国島観「金印記」
    1785 華亭釈挺「金印考」田敬之「後漢金印図章」
        太田南浦「一話一言」
    1786 本居宣長「委奴国印考」細井金吾「金印考」
    1787 皆川淇園「漢委奴王印図記」
    1802 山片蟠桃「夢之代」
    1803 梶原景輔「金印考文」
    1805 伴信友「中外経緯伝草稿」
    1836 松浦道輔「漢倭奴国王金印偽作弁」
    その他調べたら
    1807 村瀬之煕「秇芄日渉」
    1812 青柳種信「後漢金印略考」
    1824 亀井昭陽「題金印紙後」
    と、一大ブームが湧いていた

    作者の描くストーリー
    京の篆刻家高芙蓉は考証学者の藤原貞幹と親しい
    また南冥の実弟である京都崇福寺住職曇栄の禅の
    師は相国寺住職顕常であるが高不要と交流面識が
    あったと思われる
    藤原提幹は古書を偽作し、それを根拠に論考した
    「衝口発」という本のまやかしを本居宣長に暴か
    れている
    もっとも、藤原貞幹の「南朝公卿補任」という本
    も偽作しているが本居宣長は気が付かなかったw

    南冥の野望と偽書でも造る山っ気ある学者と篆刻
    家が組めば、金印をでっち上げ、藩校内で宣伝的
    な扱いが可能になる

    南冥は8年程で廃黜(役職を解かれた)となった
    「小生義、三ヶ年前より相恐居申候」
    恐れてたんだ(/・ω・)/

  • 本書のタイトルに関して、本書の記載からだけでは、否定も肯定もできない、言い換えれば、その結論を出すには材料不足の感。ただし、問題提起の心意気はよし。

  •  18世紀に志賀島の農民が発見し、国宝として福岡市博物館に所蔵されている「漢委奴國王」の金印は、発見直後に鑑定書を書いた儒学者の亀井南冥によって偽造されたニセモノである――。これが著者の主張だ。


     この金印については、1世紀に後漢の光武帝が倭国の王に贈った「ホンモノ」ということで、学会の意見は一致している。一般人としては、専門家たちが「ホンモノだ」と言っているのだから、とりあえず信じるしかない。


     ただ、過去にも一部で偽造説が主張されたことがあったらしいし、新たな発見や研究・調査結果によって、歴史の教科書が書き換えられることは、時々あること。だから、この本にも、それなりの説得力のある論証を期待したのだが――。期待外れだった。


     発見の経緯を福岡藩主に提出した口上書や、亀井南冥が書いた鑑定書などの「不自然さ」を指摘し、藩主や鑑定人ら、この問題にかかわった人たちの人間関係、当時の状況などをもとに「論証」を進めているのだが……推論の上に推論を重ね、憶測の上に憶測を重ねるという論法のオンパレード。この著者、考古学や歴史の専門家ではないとはいえ、それでも古代文学を専攻しているれっきとした千葉大学教授なのだが…。


     大胆な主張を次々と展開した後、最後の方になって、「振り返ってみて思うのだが、金印が偽造されたものであるということを証明するのは、なかなか困難なことである。わたしの文章が稚拙で、論理的な文体をもっていないということにも原因はあろうが、いくら言葉だけを費やしてみても、金印の偽造は明らかにできない」(第8章)、「贋作だと大ぼらを吹きながらキーボードを打っているのに、小心者のわたしは、お詫びのことばを考えていたりする」(あとがき)などと、急に弱気になってくるのには、かなり笑えた。


     素人の私でも突っ込みどころ満載の論理だったが、なかでも最も単純な疑問が一つ。著者は、亀井南冥が「発見者の農民・甚兵衛」という架空の存在をでっち上げたとしているが、現場は江戸時代の小さな志賀島である。架空の人物をでっち上げても、村人たちから「うちの村に、そんな男はいないぞー」という声が上がるはずだと思うのだが…。


     ただ、この本を読んで金印発見の背景事情を知ることはできたし、読み物としては、まあまあ面白かったと言えるかも。

    (2007年5月7日読了)

  • 著者は古事記の専門家であり、作家・三浦しをんさんのお父様でもあります。
    金印が偽造か真印かを解き明かそうとする内容だけど、金印は偽造であるという根拠に関しては、その通り!とは思いにくい。でもやっぱり、金印発見については疑惑がつきまとうなぁという気がします。どちらかというと、金印が偽印か真印かということそのものより、大きな発見に対してなんの疑問も呈しない、日本の学術研究の世界に対する批判のような感じです。
    なぜ金印が志賀島でみつかったのか、という疑問にひとつの仮説を与えたのが帚木蓬生さんの『日御子』(http://booklog.jp/users/junjinnyan/archives/1/4062176777)ですが、この小説はさもありなんという感じでとても面白かった。

  • 憶測ばかりで説得力が今ひとつかもしれないけれど、決してトンデモ本の類ではなく、じゅうぶん楽しめたので満足。 金印のレプリカが欲しくなった。

  • 平成24年5月29日読了。

  • [ 内容 ]
    一七八四年、志賀島(現在、福岡県)の農民・甚兵衛が田んぼの脇の水路から発見したとされ、日本史の教科書にも掲載されているあまりに有名な「金印」。
    これは、建武中元二年(五七年)に後漢の光武帝が同地にあった小国家の君主に与えた「漢委奴國王印」と同定されたが、じつは江戸時代の半ばに偽造された真っ赤な偽物だった。
    では、誰が、何の目的で造ったのか?鑑定人・亀井南冥を中心に、本居宣長、上田秋成など多くの歴史上の文化人の動向を検証し、スリリングに謎を解き明かす。

    [ 目次 ]
    第1章 金印発光す
    第2章 金印を鑑定する
    第3章 亀井南冥の活躍
    第4章 金印の解読 鈕と印文
    第5章 真贋論争と中国の金印
    第6章 亀井南冥の失脚
    第7章 金印を発光させる
    第8章 だれが金印を作ったのか

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    [ 参考となる書評 ]

  • 言われてみればそうだよねと思いますね。

  • 金印は偽造された気がしてきています(笑)


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著者プロフィール

千葉大学名誉教授。1946 年、三重県生まれ。『古事記』を中心に古代文学・伝承文学に新たな読解の可能性をさぐり続けている。共立女子短期大学・千葉大学・立正大学等の教員を歴任し、2017年3月定年退職。著書に『浦島太郎の文学史』『神話と歴史叙述』『口語訳古事記』(第1回角川財団学芸賞受賞)『古事記を読みなおす』(第1回古代歴史文化みやざき賞受賞)『古代研究』『風土記の世界』『コジオタ(古事記学者)ノート』など多数。研究を兼ねた趣味は祭祀見学や遺跡めぐり。当社より『NHK「100分de名著」ブックス 古事記』を2014年8月に刊行。

「2022年 『こころをよむ 『古事記』神話から読む古代人の心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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