これから食えなくなる魚 (幻冬舎新書 こ 4-1)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980365

作品紹介・あらすじ

マグロが回転寿司やスーパーからなくなる、世界的シーフード・ブームで日本の業者が魚を買いつけられなくなる等、連日報じられる魚をめぐる危機。しかし事態はもっと深刻だ。このまま手をこまねいていれば、多くの魚が日本人の口に入らなくなる日は遠くない。国際捕鯨会議のタフネゴシエーターとして世界に名を馳せた著者が、あまりに世界から立ち遅れた日本漁業の惨状を指摘。マグロだけじゃない!サバ、イワシ、タラはいつまで食べられるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 確かに日常的に寿司を食べられるようになったのは最近だよなあ。魚を大量に消費することが普通になっていたけど、そのことによる歪みは考えていなかった。

    ま、ともあれ水産物の持続的な活用についての計画は絶対に必要。これだけ多方面から指摘されているのに、なんとかならんもんなのか。

  • 元水産庁の筆者による。
    今の日本人の魚の趣向や世界各国との比較が分かりやすい。魚好きを謳う国でありながら実際は輸入ものの特定の魚種ばかりが好まれる日本。水産資源の管理の甘さ。獲ったもの勝ち早いもの勝ちの日本。また、漁業権のルーツが秀吉の海賊対策であったことには驚いた。
    魚にもっと関心をもつこと、安さではなく産地や品質に敏感になること。国も漁業者も消費者も皆で日本の魚を守っていく必要があると感じた。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  日本の食卓から魚が消える?
    第2章  日本の漁業は倒産状態
    第3章  マグロはいつまで食べられるのか?
    第4章  この魚は大丈夫?
    第5章  魚は国民の共有財産

    <内容>
    『あんなに大きかったホッケが…』を読んで、この本に進んだ。日本の行政(官僚)のいい加減さ、企業のわがままさがはっきりする内容。著者は水産庁の出身。ちゃんとした公務員はいるのに、こういう人は追い出されるんだね…。ともかく、漁業資源を、とくに小さな魚をとらないようにしないと、われわれは近い将来魚が食べられなくなる可能性が大!それを防ぐには、消費者のわれわれが、企業、それの片棒を担ぐマスコミや役人の陰謀に踊らされず、賢く異議を申し立て(商品を買わない、おかしいと指摘する)、政治家を動かしていくことだろう…。横須賀市図書館

  • 日本の漁業の将来に警鐘を鳴らす本でした。
    行政と漁業従事者と消費者の間の連携や風通しの悪さ、縦割り行政の弊害、持続的な漁業よりも目先の利益を追求してしまう漁業従事者、消費者のエゴ…と将来が不安になることばかりでした。

    消費者の立場としては国内養殖の魚の餌の多くは輸入品(しかも発ガン性物質であるエトキシキンが添付されている)、輸入魚のダイオキシン濃度の高さ等、知らない事実が色々とあったことがショックでした。

  • 問題は正しいのかもしれないが、問題提起が下手すぎる。自給率の向上を謳いながら乱獲を嘆き、水揚げが減っているのをデータも示さず、即資源の枯渇によるものと断定する。憤りは十分に感じるが、理想とするシステムが描けていない。これでは漁業は事業維持のために拡大すべきなのか、資源保護のために縮小すべきなのかわからない。そして自身の意見に煽られて感情的になり、後半にいくほど予断が増える。「最近、ヨーロッパではノルウェーのサケを食べずに中国で加工された日本のサケを買う国が多いが、それも理由はダイオキシン類だと思われる。」「何年も養殖ばかり食べてきたせいで、それが旨いと感じるように慣らされてしまったのだろうと私は思っている。」 こうなっては、例え正しい意見が部分的にあったとしても、信じようがない。
    「最近のマスコミは〜」なんてセリフはもはやネット世界では定番だが、マスコミや漁業従事者そのものを叩いてもしょうがない。それぞれには今までそれで上手くいってきたシステムがあるんだから、そのシステムがある限り、その中で利益を最大化しようと働くのは当然。「偏向報道をやめろ」だの「漁獲制限をしろ」だの叫ぶよりも、そうじゃないことで利益を得られるシステムを構築しないと、なんの意味もないただのガヤでしかない。
    この辺の問題は観測が難しい領域だけに、まだまだ政治層・宗教層の論争から抜け出せていない部分が多いように見える。早く物理層において冷静な問題認識と対応がなされることを祈る。残された時間は見えていない。

  • 日本と世界の漁業の現状や資源量について学ぶために読んだ。著者は、水産庁で働き、IWCなどの国際会議に出席していた人。本書も、建前はほとんど感じられず、個人的な主張を交えたざっくばらんな語り口で書かれている。ただ、内容は表面的な印象が強かった。

    30〜50年周期の魚種交代について説明し、マイワシやマサバを食べるのをやめて、カタクチイワシやサンマ、ゴマサバ、ホッケを食べることを勧めている。

    ・親潮が強かったときに豊富だった魚種:マイワシ、マサバ、スケソウダラ
    ・1990年以降、親潮が弱くなってから豊富になった魚種:カタクチイワシ、サンマ、カツオ、ホッケ
    ・カツオ:もっとも赤道の近くに生息しているマグロ類。資源量は多い。
    ・メバチマグロとキハダマグロ(熱帯性)の資源量は減少している。
    ・地中海の養殖クロマグロには、ダイオキシン類が国産の天然マグロの50倍含まれている。
    ・ノルウェーの養殖サケも、国産の天然シロザケよりダイオキシン類が12倍高い。
    ・親潮が弱い環境のため、暖水系のゴマサバが多く、マサバは少ない。
    ・サンマの現在の資源量は高位。
    ・キンキ(キチジ):底引き網漁によって減少。
    ・ブリ:養殖物が65〜70%を占める。天然物は晩秋から冬に入荷する。漁獲量が増えているのは巻き網漁で若齢魚が増えているため。
    ・甘エビ:北海道西部と日本海で獲れるホッコクアカエビ。資源量は安定。
    ・クジラの中で資源が枯渇・悪化しているのは、シロナガスクジラ、ホッキョククジラ、一部のコククジラのみ。日本が捕鯨再開を求めているのは、ミンククジラ、ニタリクジラ。

  • 昔「日経ビジネス」で取り上げられてて読んでみようと思ってた本。
    イーブックオフで買い。
    以下、へえーと思ったところをメモ。

    ・養殖業に置けるエサの依存度が高まりつつあり、「国産」といえる魚は少ない(p42)

    ・湾港整備や漁船の建造などに総合政策がない(p55)
     →・よい漁場が近くにある塩釜港に十分な加工能力がない
      ・漁港の水深が浅くて漁船が入れない

    ・東京湾は豊穣の海(p74)
     →長屋に住んでいた江戸っ子の三分の一は漁師か魚屋だった

    ・テトラポッドの効果は疑わしい(p76)

    ・地中海の養殖マグロのダイオキシン濃度は高い(p93)

    ・漁獲可能な水準(p120)
     ・科学的な水準(ABC = Acceptable Biological Catch 生物学的漁獲許容量)
     ・実際の漁業者への割当量(TAC = Total Allowable Catch 総漁獲可能量)

    ・行政庁はABCもふまえつつ社会経済要因に配慮してTACを設定し、漁業者に割り当てる(自然界よりも漁業者重視?)(p123)

    ・日本ではTAC設定後は早い者勝ちのオリンピック方式→乱獲に。 対して世界の主流はIQ方式とITQ方式。(p177)

  • 「多くの漁師が、たくさんいる魚を獲ろうとせず、わざわざあまりいない魚を獲りに行こうとするケースが多い。彼らが求めているのは『簡単に獲れる魚』ではなく『高く売れる魚』だからだ」。恐らくこの考えが日本の漁業を荒廃させた原因だと思います。

    著者は水産庁を経て、現在は独立行政法人水産総合研究センター理事を務める、小松正之氏。様々なデータを提示しながら、日本の水産業の現状について警鐘を鳴らす。

    ・ピーク時の1982年には全体で3兆円近くあった日本の漁業生産額は2005年には1兆6000億と半減。
    ・1964年には113%だった日本の食用魚介類の自給率は2005年には57%に落ち込む。
    ・1949年の段階で約109万人いた日本の漁業者は、2007年現在22万人しかいない。そのうち半分のおよそ10万人が60歳以上の高齢者。
    ・世界の漁業生産量1980年代後半から現在にかけて9000万トン前後で推移。一方に日本の漁獲量はピーク時の1280万トン(1984年)から572万トン(2007年)まで落ち込んだ。

    著者は日本の漁業生産量が減った主たる理由は①乱獲、②沿岸域が埋め立てや汚染などによって荒らされたこと、③クジラの増加だと指摘します。我が故郷の山口県の下関の漁港でも40年前のピーク時が25万トンの水揚げがあったにもかかわらず、2007年現在は1万6000トンしかありません。

    本文中では、漁業者の既得権益である漁業権を、上からの改革で上手くコントロールしない限り、日本の漁業の状況は変わらないと筆者は指摘します。

    日本の漁業の状況を把握するには良い一冊だと思います。

  • ★魚の名前も多く手ごろな水産政策入門★岩手出身の元農水官僚による入門書。マグロが安く食べられるようになったのはつい最近の話、取れる魚を食べろ、(このペースで減れば)22年後には漁師がいなくなるなど個別の魚をテーマに日本の水産の現状を分かりやすく説明する。日本の水産予算(2600億円)は米欧に見劣りしないが、日本は予算の3分の2が漁港整備を中心とした公共事業に使われる。諸外国は漁船の整備にも3割ほどかける(日本は7%)。東日本大震災からの復興に絡み、民間企業にも漁業権を与える宮城県の特区構想に漁民が大反対しているが、10年もすればそうした人すらいなくなってしまうのでは。漁港と漁民の集約・企業化は避けられないと思うが、現場を知らない意見なのだろうか。

  • [ 内容 ]
    マグロが回転寿司やスーパーからなくなる、世界的シーフード・ブームで日本の業者が魚を買いつけられなくなる等、連日報じられる魚をめぐる危機。
    しかし事態はもっと深刻だ。
    このまま手をこまねいていれば、多くの魚が日本人の口に入らなくなる日は遠くない。
    国際捕鯨会議のタフネゴシエーターとして世界に名を馳せた著者が、あまりに世界から立ち遅れた日本漁業の惨状を指摘。
    マグロだけじゃない!
    サバ、イワシ、タラはいつまで食べられるのか。

    [ 目次 ]
    第1章 日本の食卓から魚が消える?(二〇四八年、海から魚が消える? 七五パーセントは、もう獲ってはいけない魚 ほか)
    第2章 日本の漁業は倒産状態(三〇年以上前から始まっていた凋落 増えている養殖も実質は外国産 ほか)
    第3章 マグロはいつまで食べられるのか?(世界の高級マグロの八割を食べる日本人 五〇年間で一五倍に激増した漁獲量 ほか)
    第4章 この魚はいつまで大丈夫?(今や高級魚になったマイワシ マサバとゴマサバ、好まれるのは? ほか)
    第5章 魚は国民の共有財産(日本の食卓から魚が消える日 早い者勝ち方式が乱獲を招いた ほか)

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著者プロフィール

農学博士。独立行政法人水産総合研究センター理事。
東北大学卒。77年農林省入省。米国エール大学院卒。農学博士(東京大学)。
IWC日本政府代表代理、FAO水産委員会議長、水産庁漁場資源課長等を経て、05年より現職。
[主要著書]
さかなはいつまで食べられる

「2007年 『さかなはいつまで食べられる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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