カラヤン帝国興亡史: 史上最高の指揮者の栄光と挫折 (幻冬舎新書 な 1-3)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980747

感想・レビュー・書評

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  • 【要約】


    【ノート】
    ・幻冬舎の紹介チラシで

  • 前作「カラヤンとフルトヴェングラー」ではフルトヴェングラーに嫉妬されながらも成長していくカラヤンを描く。
    そして、カラヤンがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者になったところで前作は終わった。

    本著はその後のヘルベルト・フォン・カラヤンがクラシックの帝国を築き、死の直前に凋落していく様子を描く。

    自分で楽器を演奏できない指揮者は、最高の楽器を求める。
    その楽器こそがオーケストラ・管弦楽団であり、最高のオケを求めることは権力を求めることと重なった。

    「帝国」と表現するといかにも独裁者然とした人格を思い描くが、実際は後進の指導も行う善人格だったように思う。

    膨大な音源を残したカラヤン。
    録音とコンサートについて裏側がよく分かった。

    管弦楽団はリハーサルをすることを嫌うとのこと。
    だがリハーサル無くして良いコンサートはあり得ない。
    そこでカラヤンはリハーサルの代わりにレコード録音を行った。
    録音なので楽団員は本気の演奏をせざるを得ない。
    カラヤンは録音で80%までもっていき、本番のコンサートでは100%の結果を残したとのこと。

    今残されているカラヤンの音源は80%ということになるが、あれで力をセーブしているのであればコンサートの音は一体どのくらい素晴らしかったのであろう。

    今は亡きカラヤンのコンサート音源をこれから探してみようと思う。

  • 玄人にとっては面白くないでしょう。しかし、僕のような素人には素直に面白い。

  • 「カラヤンとフルトヴェングラー」の続編にあたる時代を扱っています。フルトヴェングラー亡きあと、ベルリン・フィルを手中に収めたカラヤンは、ウィーン国立歌劇場、ザルツブルク音楽祭をもその手に握ることに成功。更にいくつもの歌劇場やオーケストラを掌握し、ヨーロッパ音楽会に「帝国」を作り上げました。

    自らの処理能力を超える数の歌劇場やオーケストラを、支配下に置こうとしたのはなぜか。 録音という新しい技術を最大限利用し、クラシック音楽を大衆化したこと。音楽祭を創始してまでも、最高のオペラを上演することを求めたこと。「全て」を初めから手に入れ、その権力を維持してゆくテクニック。クラシックを民主化した、といいながら、ヨーロッパ音楽会に帝国を築いたという逆説。一体何が、カラヤンを突き動かしていたのでしょうか。

    やがて帝国の歯車も、少しづつきしみ始めます。アメリカからやってきた、まったくタイプの違うライバル、バーンスタイン。 企画した指揮者コンクールも成功とは言えず、人事問題を起点として、ベルリンフィルとの間にも隙間風が吹き始めます。 発展し続ける音楽との間に少しづつ拡がっていく隙間と、渇れてゆく創作意欲。 ベルリンの壁が崩れる4ヶ月前、ソニーの大賀社長らとの商談中に苦しみ出したカラヤンは、最後はフリーの指揮者として、81歳の生涯を閉じました。

    好むと好まざるとを限らず、20世紀の音楽界に最も影響を与えたカラヤンという音楽家は、どういう存在であったのか。その足取りを追い、彼が成したこと、成したかったことを考え直してみることが必要な時期なのかも知れません。 クラシック音楽の危機が囁かれ、また情報の伝わり方が大きく変わりつつある、今の時代だからこそ。

  • [ 内容 ]
    巨匠フルトヴェングラー亡き後、音楽界の頂点、ベルリン・フィル首席指揮者の四代目の座を掴んだ男、ヘルベルト・フォン・カラヤン。
    彼は類い稀なる才能と権謀術数を駆使し、ザルツブルク音楽祭、ウィーン国立歌劇場他、名オーケストラの実権を次々掌握、前代未聞の世界制覇を成し遂げる。
    何が彼をかくも壮大な争覇の駆け引きに向かわせたのか?
    盤石だったはずの帝国に迫る脅威とは?
    二十世紀音楽界ですべてを手にした最高権力者の栄華と喪失の物語。

    [ 目次 ]
    第1章 帝国の建設(三方面作戦;ザルツブルク陥落;ベルリンとの駆け引き;ウィーンの陰謀劇;拠点としてのロンドン。ミラノ;帝王の誕生)
    第2章 栄光と翳り(ロンドンとの離別;首都陥落;失われたイタリア;新たなる祝祭)
    第3章 落日(潰えた世界戦略;ベルリンの叛乱;最後の日々)

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 音楽界の帝王と呼ばれた指揮者は難しい人間だった。
    巨匠フルトヴェングラー亡き後、音楽界の頂点、ベルリン・フィル首席指揮者の四代目の座を掴んだ男、ヘルベルト・フォン・カラヤン。彼は類い稀なる才能と権謀術数を駆使し、ザルツブルク音楽祭、ウィーン国立歌劇場他、名オーケストラの実権を次々掌握、前代未聞の世界制覇を成し遂げる。何が彼をかくも壮大な争覇の駆け引きに向かわせたのか?盤石だったはずの帝国に迫る脅威とは?二十世紀音楽界ですべてを手にした最高権力者の栄華と喪失の物語。

    中学生の頃、初めてカラヤンのレコードを買った時には、遂に一流の指揮者による演奏を手に入れたと感激したものでした。それはベートーヴェンの交響曲第7番で(「のだめ」でよく聞く音楽です)、家にあったモジュラーステレオで何度も聞いた覚えがあります。レコードには、暗黒の空間に目を瞑って指揮棒を握るカラヤンのポスターがオマケで付いてきて、自分の部屋にカラヤンを飾る喜びを感じたものでした。この本によると、カラヤンは本番のコンサートの前のリハーサルでレコードの為の録音を行っていたそうで、私が聞いた素晴らしい演奏は、ベルリンフィルの能力の80%ほどの力しか発揮していないそうです。今となっては、本番の演奏はどれほど素晴らしかったのか知る由もありませんが、、。
    この本では、カラヤンが戦後の音楽界を席巻し挫折するまでの歴史を紹介しています。若干年代が前後して読みにくい部分がありますが、当時の音楽界と人間関係、その中でカラヤンがいかに帝王として君臨したかがよく判ります。
    カラヤンに興味のある方には面白い内容だと思いますが、もう少し日本との関わりについて詳細な記述があると良かったかもしれません。

  • カラヤンとフルトベングラーの続き。
    勉強になります。

  • うーんカラヤン。いい。

  • 20代のクラシックファンにとっての指揮者カラヤンというのは、それより上の世代のクラシックファンとは違って、なんとも言えない複雑なことになっている気がする。伝説のスーパー指揮者というイメージはありつつも、どういうわけか上の世代の反応は二手に別れるし、実際のところ今の耳で聞くと、確かに良いことは良いのだが、他の巨匠を圧倒する程の「何か」を持っていわけでもない。なんだか名前だけがやたら先行している巨匠というのが率直な感想である。そんなカラヤンがクラシック界の帝王になり得た理由が本書に語られている。

  • カラヤンって何者?

    ベルリンフィルとカラヤンの音楽に親しんだ日本人のひとりです。

    芸術家?それとも野望家?

    不思議な人間です。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。「カメラジャーナル」「クラシックジャーナル」を創刊し、同誌のほか、ドイツ、アメリカ等の出版社と提携して音楽家や文学者の評伝や写真集などを編集・出版。クラシック音楽、歌舞伎、映画、漫画などの分野で執筆活動を行っている。

「2019年 『阪神タイガース1985-2003』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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