イスラム金融入門: 世界マネーの新潮流 (幻冬舎新書 か 5-2)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980792

作品紹介・あらすじ

サブプライム・ショックでアメリカ型経済システムへの信頼が失墜するなか、「イスラム金融」の存在感が高まっている。イスラム金融とはイスラム教の戒律シャリーアに従った金融の仕組み。最大の特徴は「利子」がないことにある。いまイスラム金融市場には中東の巨額なオイルマネーが流入、急拡大する市場に参入すべく、非イスラム教国も商品開発・インフラ整備に乗り出した。イスラム金融は世界金融市場を制するのか?日本は乗り遅れていないのか?注目の金融システムのすべてが分かる。

感想・レビュー・書評

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  • イスラム金融入門
    著:門倉 貴史
    幻冬舎新書

    イスラムに金利がないとは聞いていたが、イスラム金融という体系があるのは本書で知りました。

    イスラム金融というのは、シャリーアというイスラム法の規則に従った金融取引のことである

    ヒヤルという方法がある。ヒヤルとは実質的には利子を伴う金融取引を、物の取引に見せかける行為である
    ヒヤルの1つに、モハトラ契約というのがある。商品を掛けで高く売って、それを安い価格でただちに買い戻す行為を指す

    イスラム教の教義に反することがないように、利子のつかない当座預金にお金を預けたり、普通預金で預金する場合であっても、元本についてる金利の部分を寄付に回していたりした

    IRTI,IFSBというイスラム金融の専門機関の推定によると、イスラム金融の総資産額は、2005年時点で、8050億ドルに上がる
    2001年9月11日の同時多発テロの影響で、米国の金融機関などに預けられていた膨大なムスリムの金融資産がいつ凍結されるかもわからないという状況になり、ムスリムが自分たちの金融資産を先進国の市場から引き上げるという動きがでるようになった。
    そして、引き上げられたお金、イスラム金融のほうへと向かったのである

    イスラム金融とは、一言でいえば、利子の取引がない金融である

    イスラム金融は、イスラム教徒以外の人が利用することもできる
    コーラン(声を出して読むべきもの)と、ハーディス(伝承)の教えに基づいて作られた法律が、シャリーア、と呼ばれるイスラム法である
    イスラム金融は、このシャリーアの中にある、ムアラートで、定められた金融活動の規範に適合した金融取引のことである
    シャリーアには、すべての国やムスリムに通用するようないわゆる、グローバルスタンダード(国際標準)は存在しない

    イスラム金融は、4種
     ①ムラーバハ 銀行がお客様の代わりに商品を購入して、その商品に一定ノマージンをのせてお客様に販売する仕組みである
     ②イジャーラ 賃貸借契約の意、リース形態
     ③ムダーラバ 銀行が投資家からお金を預かって、そのお金を事業に投資する ベンチャーキャピタルに近い 銀行は経営には口を出さない
     ④ムシャーラガ 銀行と投資家が手を結んで、事業の共同経営を行う 銀行は経営に口を出してくる
    イスラム金融債 スクーク イジャーラやムシャーラカをベースにつくられた金融商品
    イスラムの金融保険 タカフル
     ①ファミリー・タカフル 生命保険
     ②ジェネラル・タカフル 損害保険

    イスラム金融を専門とする、イスラム専門銀行と、一般金融を兼務するイスラミック・ウィンドウがある
    ハラワ 非公式の国際送金システム、手軽、手数料が安い ⇒ アングラマネー

    イスラム金融のポストBRICs
     VISTA ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンの5カ国
      ■インドネシア 世界最大のイスラム教徒国
      ■トルコ 親日国 財閥(サバンジュ、コチ、ゾール、オヤック)、政教分離はケマル・パシャ以来の伝統
     MEDUSA マレーシア(M)、エジプト(E)、UAE(U)のドバイ首長国(D),サウジアラビア(SA)
      ■マレーシア イスラム銀行が急増、プミプロラ政策
      ■エジプト 観光収入、スエズ運河の収入、原油天然ガス、海外からの直接投資 で急成長
      ■UAE 7首長国 アブダビ、ドバイ、シャルジャ、ウム・アル・カイワイン、アジュマン、フジャイラ、ラスアルハイマ
      ■サウジアラビア 世界最大の産油国 経済特区(SEZ)、メガ経済都市構想

    イスラム諸国のイスラム金融事情
     ■ブルネイ BIBD:イスラム・ブルネイ・ダルサラーム銀行
     ■バーレーン イスラム法のグローバル・スタンダードをつくろう
     ■シンガポール IBアジア:イスラミック・バンク・オブ・アジア
     ■香港 イスラム金融債、イスラム投資ファンド
     ■UK 英国金融サービス機構:FSA イスラミック・バンク・オブ・ブリテン
     ■イラン すべての金融システムが、イスラム金融 
     ■スーダン すべての金融システムが、イスラム金融 ダルフール紛争
     ■パキスタン ネクストイレブン
     ■インド タタ財閥がバングラディッシュに投資 ムスリムは1億5千万人、全人口の13.4%
     ■ナイジェリア 銀行・保険の金融セクター
     ■クウェート 12のイスラム銀行、2つのイスラム保険会社
     ■ヨルダン 全方位距離外交
     ■シリア 社会主義国家
     ■新疆ウイグル自治区、ウィグル、カザフ、キルギスの民族は、イスラム教徒
     ■日本 
     ・三菱東京UFJ,三井住友、みずほ がGCCへ進出
     ・ドバイの政府系投資会社がソニー株を多量購入
     ・シャリーア適合の日本株指数「S&P TOPIX150シャリーア指数」

    目次

    プロローグ 金融市場の新たな勢力
    第1章 イスラム金融、これだけ知れば大丈夫
    第2章 有力グループ、MEDUSAのパワー
    第3章 目が離せない、あの国この国
    第4章 インフラ投資にイスラムマネーを

    ISBN:9784344980792
    出版社:幻冬舎
    判型:新書
    ページ数:224ページ
    定価:740円(本体)
    発売日:2008年05月30日第1刷

  • イスラム金融に対して各国がどういったアプローチをしているかが分かる。同時にオイルマネーの大きさを感じるし、宗教がビジネスに占める割合がこんなにも大きいんだと思う。イスラム金融だとバブルが起こりにくいという話はなるほどと思った。

  • イスラム金融といっても、グラミン銀行位で、一般の金融と大した違いはないと思っていたが、大違いだった。利子を取らないイスラム金融が商売として成り立つ4つの仕組みが分かりやすく解説されている。また、ドバイを始めとするUAEの状況も、中々得られえない情報で面白かった。



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】
    ・新書がベスト
    ・¥200

  • ◆不労所得を許さぬ戒律から利子収入が禁じられ、故に金融が発展しなかったイスラム圏。しかし、それはもはや「今は昔」であり、イスラム金融は現代国際金融・国際経済の重要なプレイヤー。本書はその実を開陳していく◆

    2008年刊。
    著者はBRICs経済研究所代表。

     戒律上、不労所得が許されず、それ故、利子収入が禁止されてきたイスラム圏。
     しかし、現実との必要性と、与信の方法論の多様性の観点から、現実にはイスラム圏でも金融は存在する。そして、それはオイルマネーの拡大に伴い、世界経済における重要性を否が応にも増す結果となっている。
     本書は、そのイスラム金融の概要を提示した後、それを利用する各国の21世紀の経済、その発展模様を素描する。

     ここで印象的なのは、何よりイスラム金融の規模である。
     05年段階で、オランダの経済規模を超える8000余億ドル。成長率は年10~15%であり、10年には1兆6000億ドルと見込まれ、07年の世界中のヘッジファンドの預かり資産総額に匹敵するとのこと。現在から見ても、その予想は概ね妥当しているようであり、その規模の巨大さは、世界経済の撹乱要因であり、基底要因であることを明示していよう。

     また、同時多発テロの発生のため、イスラム金融の従来の流入先であったアメリカが、その資産凍結を実施する危険があり、これを回避するため、潤沢なオイルマネーがイスラム金融を必要としている。このあたりも、アメリカ経済の重要な構成要素の動きとして眼を離せないだろう。健在の経済システムの肝が、石油ドル兌換体制であれば尚更だ。

     そして、イスラム金融の利用と、原油価格高騰に伴うイスラム圏各国の旺盛なインフラ(電力・交通・各種産業)需要。そして、これに投資する資金需要の高さ。これを支えるイスラム金融という構図も、中東ナショナリズム・イスラム紐帯という観点から見逃せない。

  • もう書かれている内容は数年前の話になってるかな。TVに出たときの門倉さん面白くて、たまたまReaderStoreで100円だったから試しに読んでみた。イスラム法に合わせた金融の説明と、世界の国々のイスラム金融の状況について書いてあります。

  • イスラム教について学び、そして金融についても学ぼうと思い購入。

    イスラム独特の考え方。

  • [ 内容 ]
    サブプライム・ショックでアメリカ型経済システムへの信頼が失墜するなか、「イスラム金融」の存在感が高まっている。
    イスラム金融とはイスラム教の戒律シャリーアに従った金融の仕組み。
    最大の特徴は「利子」がないことにある。
    いまイスラム金融市場には中東の巨額なオイルマネーが流入、急拡大する市場に参入すべく、非イスラム教国も商品開発・インフラ整備に乗り出した。
    イスラム金融は世界金融市場を制するのか?
    日本は乗り遅れていないのか?
    注目の金融システムのすべてが分かる。

    [ 目次 ]
    プロローグ 金融市場の新たな勢力
    第1章 イスラム金融、これだけ知れば大丈夫
    第2章 有力グループ、MEDUSAのパワー
    第3章 目が離せない、あの国この国
    第4章 インフラ投資にイスラムマネーを!
    エピローグ 日本経済とイスラム金融

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    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • シャリーアの考え方を含むイスラム金融システムについて若干の説明のあと、各イスラム国家またはイスラム系の人たちが多い国の紹介。総じて言えることは、イスラムは、三大宗教の一つでもあり、人口が今でも多い。が、教義で避妊を禁じているのでその意味でも今後の増加が見込める。金融を言うものをイスラムに取り込みやっと「お金」を使いはじめてきたので、イスラム金融に今後取り組むべきである。という本。

  • 全然知らなかった、イスラム金融について学ぶための良本。イスラム金融はシャーリアという教本により形作られている。まず、驚くべきはイスラム金融には利子が禁止されていること。まぁ、利子に代わりる仕組みはあるが、それもモノの価値とリンクしているため、金が金を生む利子との違いは興味深い。他にも、保険の禁止や、投機の禁止など、えっと驚くルールが満載。複雑で世界中への影響力をます、イスラム金融を学ぼう。

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著者プロフィール

神奈川県立横須賀高等学校出身。慶應義塾大学経済学部卒業。浜銀総合研究所入社。1999年日本経済研究センターへ出向。2000年シンガポールの東南アジア研究所(ISEAS)へ出向。2005年6月まで第一生命経済研究所経済調査部主任エコノミスト。2005年7月からBRICs経済研究所代表。2007年同志社大学大学院非常勤講師。日本で初めて地下経済の研究に取り組み、地下経済に関する著作も多数発表している。またワーキングプアの啓蒙書も多数発表。BRICsに続く経済発展が見込まれる国々として、ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチンを総称したVISTAという造語を提唱した。

「2018年 『日本の「地下経済」最新白書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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