オバマのアメリカ: 大統領選挙と超大国のゆくえ (幻冬舎新書 わ 3-1)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981010

作品紹介・あらすじ

なぜ、オバマなのか。莫大な金と労力を注ぎ込み、予備選、党大会などを経て、一年近くもの時間をかけ、アメリカ人は元首を選ぶ。2008年、第四四代大統領になったのは、弱冠四七歳ハワイ生まれのアフリカ系だ。人種も経歴もこんな「変わり種」が、ベテランのヒラリー、マケインを抑えて大統領として迎えられた。選挙にこそ、アメリカの今が現れる。気鋭の若手研究者が現地での綿密なリサーチを元に浮き彫りにする超大国の内実。

感想・レビュー・書評

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  •  もともとアメリカで議員の鞄持ちや選挙事務所で集票の担当をしていた著者による、各政党がメディアをどう扱い、どのように票田を獲得していくかについて述べたもの。民主党の党大会の様子、オバマが大統領に選ばれる過程など、具体的に紹介される。
     同じ著者の『見えないアメリカ』は、アメリカ政治の複雑な様相が、実際に現場で働いたことのある人の目線で描かれており、良かった。この本も、現場にいた人にしか分からない、党大会や議員の動きなどが分かるのは面白いが、あまりに個別具体的過ぎて、読んでもあまりピンと来なかった。
     断片的に面白いと思ったところは、有料広告はクールにとらえられる一方で、「無料広告であるメディア報道には、受けては一転して甘くなる。ジャーナリズムだから、報道だから、ここで扱われている内容は『宣伝』ではないはずだと認識するくせがある。」(p.68)というのは納得だった。もっとも、ジャーナリズムの権威も変わろうとしているらしいけれども。あとは、「傾向として、若者はナイーブであるとともにシニカル」(p.86)で、「政治は敬意の対象でもなければ、世の中を変えるパワーでもない」(同)し、「政治は洒落で『消費』されるものになった。風刺は政治への『関心』や『知識』は高めても、『参加意欲』は必ずしも生まない」(同)というのが、分かりやすかった。だがYouTubeの出現でその状況は変わった、という話。あとは複雑な大統領選のシステム。数の多い州、スイング・ステートばっかりが注目を集めるのではなく、アイオワ州が怖い、という話が印象的だった。「小さな州から、『奇異なシステム』でスタートする醍醐味」(p.137)があるらしい。そして、オバマは「アイオワは大事。そして全米のどの小さな州もアイオワだ」(p.143)と言って、「小さな州をこつこつと集めた」(同)らしい。そして最後に、オバマがシカゴで失敗をしていたこと、「コミュニティ・オルガナイザー」という仕事をめぐって攻撃されたこと(「おなじ『政治言語』でも、都市と郊外や農村で全く異なる解釈をされるアメリカ特有の土壌」(p.196)のせいで)、というのも知らなかった事実だった。(16/08/28)

  • 実際アメリカ大統領選のスタッフとして活躍した筆者が、オバマ大統領が選ばれた理由などを解説。どのくらい革命的だったかがわかる。201407

  • オバマさんがアメリカの大統領になりました、日本から見ると当事者ではないので、よく分かりませんが、どうして今まで無名であったオバマ氏が選ばれたのかが良く分かりません。共和党が続いたのでアメリカ国民が飽きたのでしょうか。

    この本を読んで、オバマ氏は普通の黒人ではないこと、シカゴ上院議員になるまでに、黒人を敵に回してかなり苦労したことなどがわかりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・携帯とメールが当然のように議員が使うようになってから、スタッフは議員がだれとコミュニケーションしているのかが把握できにくくなった(p63)

    ・2008年1月に行われたフロリダ州共和党予備選では、全国的な知名度のあったジュリアーニ氏は3位に終わった(p109)

    ・アイオワ州において、白人が9割を占める(p118)

    ・シカゴは、人種・階層などによって住む区画が完全に分かれている(p146)

    ・オバマは過激な黒人至上主義やアフリカ中心主義とは距離をとっていた、黒人が主導した運動の中には、キング師のように人種や地域を超えて根付いたものがある(p151)

    ・オバマは西部カリフォルニアの小さな大学から、苦学してコロンビアへ編入した、トランスファーである(p165)

  • オバマ大統領の半生記というよりも、何故オバマが選出されたのか、という点でアメリカの政界事情を説いている本。
    政界の基本知識が乏しい私には少し難解…正直退屈でした。
    アメリカの政界に興味がある人には最適かもしれません。

  • 2008年の大統領選挙を通して、超大国を読み解くアメリカ入門書。「見えないアメリカ」に続く渡辺氏の著書。

    大統領選は地道さと先進性を兼ね備えた、マーケティング/PR合戦である。トップは選挙を通して、自国を嫌というほど理解する。個々の家に「現在の不満は?」インタビューを敢行するなんて、日本ではイメージできない。複雑怪奇な多様性と力学を分析し、探った共感ポイントを一貫性のある政策とストーリーにつむぐ。オバマが大統領になり得た理由は、様々なコミュニティに横断する自身のアイデンティティを、ひとつの融合体として「共存」させた、その経験そのものにあったといえる。

    2012選挙を視る、楽しみが。

    個人的には<ホーム>と<アウェイ>によって強固になる自己指針に関心があるので、オバマやミシェルにとても魅力を感じる。

  • 2011.7.8

  • [ 内容 ]
    なぜ、オバマなのか。
    莫大な金と労力を注ぎ込み、予備選、党大会などを経て、一年近くもの時間をかけ、アメリカ人は元首を選ぶ。
    2008年、第四四代大統領になったのは、弱冠四七歳ハワイ生まれのアフリカ系だ。
    人種も経歴もこんな「変わり種」が、ベテランのヒラリー、マケインを抑えて大統領として迎えられた。
    選挙にこそ、アメリカの今が現れる。
    気鋭の若手研究者が現地での綿密なリサーチを元に浮き彫りにする超大国の内実。

    [ 目次 ]
    第1章 メディアと政治―「見せる」場としての党大会(歴史的な党大会を目指したオバマ陣営 テレビの視聴率に一喜一憂 ほか)
    第2章 ネット時代のグラスルーツ革命―オバマ旋風の原動力(オバマが一斉発信した深夜三時のテキストメッセージ 「ブラックベリー」を愛用する議員たち ほか)
    第3章 地域政治の縮図―党員集会、予備選、そして党大会(州を拠点に動く党大会
    寿司で交流する民主党内の「異文化層」 ほか)
    第4章 「物語」の政治―オバマというケーススタディ(「サウスサイド・ガール」というストーリー 「経験」論争―観念か現実か、アメリカの二つの志向性 ほか)
    第5章 党内ポリティクス―多様性をめぐる共存のゲーム(二〇〇〇年大統領選挙でアル・ゴアを落選させたネーダー旋風 中道的な大統領よりも、信じるシングルイシューと「運動の政治」に殉じたい ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 大統領選挙について一考を得たかったので、アマゾンで購入。
    大統領選挙の構造を述べるというよりは、
    形態変化を遂げたメディア戦略、党大会の現実的な裏側、
    オバマがシカゴ大講師から大統領に駆け上がるストーリーなど、
    大統領選挙や上院選挙などで選挙スタッフを務めてきた著者が具体的に描いている。
    (オバマの部分は、やや推測も多いが)

    メディア戦略についての記述はかなり具体的で、
    日本の選挙との違いの大きさに感服します。
    ネットなど、媒体を選択し「見せるだけ」だった段階から
    HPやCMなど従来のものに加え、ユーチューブなどの動画サイトなど
    市民の自由参加度の高い広報媒体まで「コントロール」し、
    口コミの伝播まで戦略を練り、市民を巻き込んでいく。

    特に演説などを見ると、一見華やかに見える大統領選挙ですが、
    その裏側にある泥臭い広報戦略と駆け引きの現場が、
    レポートのように書かれていて面白いですが、
    その部分に比べると、
    オバマと黒人社会との関係や大統領選出までの物語はやや抽象部分が多くなり、
    一連のオバマ騒動でよく耳にした話しもチラホラ見受けられました。

  • 2009年8月23日読了

  • オバマの弱点はエリートなところ。黒人でエリートは一般黒人には受け入れにくい。
    アメリカ政治では、ブラックベリーが必需品になったそうだ。ヒラリーですらメールを使うようになったそうだ。

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著者プロフィール

広告業やアグリテックの分野で活動する機械学習エンジニア。2017年10月に株式会社iMindを設立。PythonよりもJuliaの方が好きですがあまり使う機会に恵まれません。

「2020年 『数式をプログラムするってつまりこういうこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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