日本文化論のインチキ (幻冬舎新書 こ 6-3)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981669

作品紹介・あらすじ

「日本語は曖昧で非論理的」「日本人は無宗教」「罪ではなく恥の文化」…わが民族の独自性を説いたいわゆる日本文化論本は、何年かに一度「名著」が出現し、時としてベストセラーとなる。著者はある時、それらの学問的にデタラメな構造を発見した。要は比較対象が西洋だけ、対象となる日本人は常にエリート、歴史的変遷を一切無視している、のだ-。国内外の日本論に通じる著者が『武士道』に始まる100冊余を一挙紹介、かつ真偽を一刀両断。有名なウソの言説のネタ本はこれだ。

感想・レビュー・書評

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  •  江戸に幻想を抱く著名人、歴史に法則を見出すヘーゲル哲学など、あらゆる面で、著者は徹底的に批判する。意外な点をいくつか挙げると、佐賀藩の山本常朝『葉隠』は、徳川時代では知られておらず、武士の規範から大きく離れていることから、禁書扱いであった。遊女に関しても、中世と近世で意味合いが違うこと、フランスで女性に参政権が与えられたのは、1945年であることなど、本書は教科書には記載されていない面に触れる。

  • 巷で話題になった日本文化論の非学問性を批判した評論で、ロジックや著者の考え方は分かりやすい反面、引用・紹介される本や論文がやや専門的なものに寄っていて、原典を知らないことによって実感としてピンと来ない部分があるというのが正直なところ。だからこそ、プロ倫やオリエンタリズム等の読んだことのある本への批判は受け入れやすく、納得。

  • なぜ人は「日本文化論」を求めるのか?それは、敗戦国である日本の自信を取り戻したいか、逆にもっと強烈に反省したいという気持ちがあるからだという。なら、その目的に適合するような形でインチキ本も出るのかもしれない。ただし、史料批判をやって実証主義的に論じたとしても限界はあり、残るは解釈次第という事になってしまう。そうなるとインチキと思えても、それは解釈の違いという事でしかなくなってしまう。日本文化論がアカデミズムの世界では相手にされていないというのが事実であるなら、そもそも学問的ではなく、一般人向けの娯楽本という事になるのだろうが。

  •  たしか東大の比較文化で学んでいらしたはずの著者による、「日本文化論のここがダメ」本。(船曳本レベルを期待したが)やや肩透かし。

     わたし的には、
    ・2010年刊行にしては、先行研究に比べて情報が更新されていない。新奇性が薄い。
    ・とりあげた日本文化論のセレクトがイマイチ(新書なのに)。
    の二点がマイナスでした。

     余計なことを付け加えると、敢えて露悪的な言い回しをし、(セールスポイント作りというよりも)鎧にしている印象を受けました。著者は名も売れてるライターなので、「平凡に」書けると思うのですが(著者は相変わらず中国のことをシナと読んでいます)。

    【簡易目次】
    序文 [003-007]
    目次 [009-014]

    第1章 西洋とだけ比較されてきたという問題――『「甘え」の構造』『ものぐさ精神分析』など 015
    第2章 「本質」とか「法則性」の胡散臭さについて――それはヘーゲルの『歴史哲学』から始まった 051
    第3章 日本文化論の“名著”解体――『陰翳礼讃』『タテ社会の人間関係』『風上』など 089
    第4章 「恋愛輸入品説」との長き闘い――『「色」と「愛」の比較文化史』批判 121
    第5章 「日本人は裸体に鈍感」論との闘い――『逝きし世の面影』批判 172
    第6章 天皇制とラフカディオ・ハーン――日本文化論の背景を探る 183
    終章 結論を求める心理 219

  • とりあえず読了。笑

  • ベストセラーなどでよく見る日本文化論本についての批評。『日本は海外のと比べてああだこうだ』と主張する本を学問的な厳密さからみて作者の無知や思い込みや意図からのおかしさを指摘する。著者のほかの本と重複するところがある。「恋愛輸入品説との闘い」(恋愛は明治期に輸入されたのでそれ以前には存在しなかったという俗説への論駁)や小泉八雲の実像と評価などが後半中心。かれの新書にしては良いほうだと感じた。それでもサービス精神なのか余計な雑談のような散漫な部分や個人的な感情がむき出しの部分が多いのはいつものことだが。

  • 社会科学及び学問のあり方から,従来の『日本文化論』を批判する。

    まず,『歴史は一定方向に向かって進歩する』と主張して歴史に法則性を見いだそうとしたヘーゲルが「インチキ文化論」の源泉であると指摘し,「地道な実証」に「おかしな意味づけ」をすることで「非学問的」な議論が発生していることを批判する。

    さらに,マックス・ウェーバーについて,「何でもかんでも宗教で説明」しようとする態度,「理念型」を用いた無理な議論の運び及び文献にあたる地道な作業の懈怠によって「学問をねじ曲げるのに貢献した」(65頁)と批判する。
    ただし,詳細な論証は省略されており,小谷野氏の他の著作へのリファレンスもないのが残念(新書だから仕方が
    ない。)。

    このほか,『日本語は非論理的な言語である』という主張に根拠がないこと,恋愛及び女性裸体は西洋から輸入されたとする主張への批判にも重点が置かれ,皇室と小泉八雲についても言及されている。

    批評の対象とする論者の思想的背景を批判する手法を採っている点と,攻撃的(偽悪的?)な文体は好き嫌いが分かれると思われる。

  • 途中で止める

  • 日本文化論の入門書になるかなと思ったけど、日本文化論を知ってる人、その世界を知っている人じゃないと面白くない気がする。ただ、今後いろんな本を読む上で、参考にはなったかなー…という感じです

  • 読了。相変わらず著者の膨大な読書量を背景とした蘊蓄を堪能。日本文化論、日本人論の名著とされる著書や著者がバッサバサと切られるのは壮観。
    ただし私が好きな小谷野節は少なめ(田中優子女史への突っかかりが唯一か)。

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著者プロフィール

小谷野 敦(こやの・あつし):1962年茨城県生まれ。東京大学文学部大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士。大阪大学助教授、東大非常勤講師などを経て、作家、文筆家。著書に『もてない男』『宗教に関心がなければいけないのか』『大相撲40年史』(ちくま新書)、『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『現代文学論争』(筑摩選書)、『谷崎潤一郎伝』『里見弴伝』『久米正雄伝』『川端康成伝』(以上、中央公論新社)ほか多数。小説に『悲望』(幻冬舎文庫)、『母子寮前』(文藝春秋)など。

「2023年 『直木賞をとれなかった名作たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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