宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書 む 2-1)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981881

感想・レビュー・書評

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  • 夜空の星も一段と輝く冬になりました。
    冬は星座観察に絶好のシーズンだとか。
    北斗七星、オリオン座、ウメ星(梅干し)、ニ星(煮干し)、オットセイ
    ダ星(惰性)、ヤク座、ギョウ座、銀座、明治座、便座、ガク星、綺羅星?
    星の名前はホント、星の数ほどあります。
    名前のない星を発見したら、あなたは新聞に載ります。

    そんな星の大好きの方に、すばらしい本を紹介しましょう。
    「宇宙は何でできているのか」(村山 斉 幻冬舎新書)です。
    今、新書版のベストセラーになっているので、
    すでに読まれた方もたくさんおられるかもしれません。

    この本はおもしろいですよ!
    兎に角、大変読みやすい、わかりやすい(わかった気にさせてくれる)。
    しかし科学的な内容は超高度です。
    最先端の科学者達が今、何を考え、何を目標に研究しているのか、
    垣間見ることができます。
    私はこうした本が大好きでこれまで何冊か読んできましたけど、
    むずかしい数式や図が多く、ほとんど途中で匙を投げだしてきました。
    R・P・ファインマン博士の本と同じように、
    おそらく講演会の口述記録ではないでしょうか?
    でも、こちらの方がもっとわかりやすい、それにレトリックが巧みだ
    「本当にわきまえたプロほどやさしく語ることが出来る」
    のではないでしょうか?


    さて、地球は時速10万8,000㎞で太陽の周りを回っている。
    さらに、太陽系そのものは何と!時速約80万㎞で動いている。
    想像できます? 新幹線より早いですよ、宇宙ロケットよりも断然早い!
    鉄腕アトムと比べたら、さて、どうでしょうか??

    その『太陽系も天の川銀河全体の重力に引っ張られています。
    銀河系から離れてさまようことはないので、どうぞご安心を
    (ただし天の川銀河系自体が隣のアンドロメダ銀河と
    45億年後に衝突する予定なので、
    それまでに脱出計画を立てなければいけません) 
    《中略》
    ところが、不思議なことがわかりました。
    天の川銀河全体の星やブラックホールなどをすべて集めても、
    太陽系を引き留めておけるほどの重力にならないのです。
    《中略》
    しかし現実に、私たちは天の川銀河の一員としてそこに留まっています。
    では、何の重力が太陽系をここに引き留めているのか。
    それが、暗黒物質です。』

    さて、その暗黒物質ですが、
    実はその物質は宇宙全体の重さ(=エネルギー)の23%を占めるそうです。
    しかし、この暗黒物質のことはまだよくわからないのだそうです。
    でも存在することは間違いないのだそうです。

    それでは、太陽系の星や銀河など全宇宙の星の重さを
    全部合計するとどうなるか?
    なんとわずか0.5%にしかならないそうです。
    では、残りはどうなっているのか?
    それが、この表です。
    R0012601_edited-1_convert_20101216225108.jpg
    (申し訳ございません、無断で使用させていただきました)

    「暗黒エネルギー」なる名前も聞いたことない物質が
    実に73%も占めているそうです。

    でも、でも、この「暗黒エネルギー」も
    どのような物なのかわからないそうです。
    現代科学では『正体不明でも、
    それが「ある」ことはわかっています』のだそうです。
    星を否、雲をつかむ様な話でしょ?

    自然科学ではこうした例は多いそうです。例えば…
    湯川博士がいろいろ計算し、理論的に考えれば考えるほど、
    どうしても、原子核の中に「中間子」というものがなくてはならない。
    それがなくして原子核は成り立たないという説を立てたそうです。
    そして後日、他の研究者の実験観察等によって、湯川博士の説通り、
    「中間子」があることが確認され、
    ノーベル賞を受けることができたのだそうです。

    ここで、ちょっと話の次元が変わりますが、
    家内が居間の匂いを感知し、
    「あなたはこの部屋でたばこを吸ったでしょう!」との説をたて、
    やがて床に落ちている灰を発見し、彼女の説の正しいさが
    確認されたという例と少し似ていますか?

    ここで、この本にある面白いエピソードを一つ紹介しましょう。
    著者の村山博士はカリフォルニア大学バークレー校の教授です。
    その「バークレー校」には
    何と!ノーベル賞受賞者専用の駐車場があるんですって!
    では、この大学にはノーベル賞受賞者が何人いるのでしょう?
    ネットで調べました。
    同校には過去41人(~2009年)ものノーベル賞受賞者がいます。
    (勿論、御存命の方は少し減るでしょうけども)

    因みに、マサチューセッツ工科大学(MIT)は63人(~2006年)。
    この大学にも専用駐車場があるかもしれませんね。
    さて、日本にこんな大学があるのでしょうか?

    先日、NHK・BS放送でノーベル賞受賞者・小柴昌俊博士が
    高校生相手の授業の中で、
    生徒の「ニュートリノの研究は何の役にたつのですか?」
    という質問にたいして、「何のためにという事より、
    どうしてそうなるのか知りたいと思うこと、
    これが大切なのだ。基礎科学はそのためにある。」
    と語っておられます。
    本当にそうですね。

    さて、私も宇宙船「探究号」に乗って、
    まだ半分読み残しているこの本を辿りながら、
    わくわくするような未知の世界にわけいってみたいと思います。

  • 一生懸命、頭のいい人がわかりやすく伝えようとしてくれている感じがひしひしと伝わって来たけど
    やっぱり表現のしかたや比喩が、一般のそれとは違っているところが面白い。
    たとえば例えで出す大きさの概念だって、もともと持ってる基礎知識が違うのに、これは当然知ってるだろうという前提で書かれているものもあって
    いやいやそれ専門の人だけにわかる笑いだから!とつっこみたくなるところもあったり。
    それがすごく微笑ましくて、楽しく読めました。
    たかーい処にいる人が一生懸命降りてきてくれてるんだけど
    やっぱり降りきれてないところが楽しかった。

  •  数物連携宇宙研究機構(IPMU)機構長の村山斉が書いた宇宙論の一般書。CP対称性の破れから、最近話題のヒッグス粒子まで、宇宙論に関する様々な話題をカバーしている。

     村山氏はかつてU.C.Berkeleyに所属していたが、東大前総長の、小宮山宏氏が引き抜いてきた。しかも、東大の教授にしたら給料をあまり高くできない、という理由から、新しく外部の研究機構をつくって、そこの機構長にすることで給料を高くする、ということにしたらしい。それぐらい優れた人物なのだろう。ちなみに、IPMUの建物自体は東大柏キャンパスにある。

     文章は語り口調で実に平易である。とはいうものの、内容は最新の宇宙論や素粒子論に関することなので、一回読んだだけではなかなか実感がわかなかった。将来的にはWeinbergとかの専門書も読んでみたいものだ。

  • 2012年4冊目。

    苦手意識を持っていた理系の本だが、滅多にないほどの感動を受けた本。
    数値的に62桁もの差がある「宇宙」と「素粒子」を結びつけ、
    限りなく小さくて大きな物語を描いている。
    科学的に証明された事実そのものにも驚愕するが、
    科学者たちの研究に取り組む姿勢や、
    日々の生活に応用できる多くの教訓に感動した。
    自分がここに存在すること自体が奇跡だと思えて、
    あまりにも未知な世界に触れることによって謙虚な心が生まれる。
    文系・理系問わず、とてもおすすめしたい本です。

  • 最新の素粒子物理学の解説。数式をほとんど使わず、図と言葉のたとえだけで説明しているので読みやすい。ただし、ほんとか?と思っても、証明に関する説明はないので、ひとまずそんなもんだと受け入れるしかない(その先は、より詳しい本を読んでね、ということなのだろう)
    ま、半分も理解できなかったが(;´∀`)

  • 久々の星5つをつけた。筆者は、極めて広範によく理解している。しかしながら一般の人にわかりやすく解説している。端折るところ端折り、議論が難しくなる前に(読者が眠くなる前に)ささっと結論を見せて、次のテーマに展開していく。推理小説を書いても、きっと面白い作品を著すに違いないと思ったが、本書自体が実は推理小説なみに面白い。執筆年が新しいので最新の成果をとりまぜて、過去の研究の歴史から解説していてわかりやすい。人物史的風に語られているのもよい。幻冬社さん、いい筆者をみつけましたね。品川区図書館に蔵書がある。

  • タイトルからとても難しいのではないかと、読むのを気後れしていた作品です。本棚に置いておくだけのももったいないので夏休みなに読んでみました。数物や素粒子の話などをとてもわかりやすく書いてくださっていて理数が苦手な方もスラスラ読めちゃいます。

  • 2011/4/11読了。
    宇宙論と素粒子論を中心に、その基礎となる幅広い分野の物理学の知識が詰め込まれている。その説明は分かりやすく、難解で日常の感覚では理解が難しい分野にも関わらず、だいぶイメージを掴むことが出来た。これだけの内容をたったこれだけの分量で、さらにユーモアを交えて面白く書いたものは滅多にない。
    時間を見つけて再読し、物理学への理解をさらに深めたくなるような1冊。

  • 今読み始めたばかりだけど、読みやすくてとても面白い。
    実際の距離等の比較が、解りやすくて数学が
    ベースにあると理解を助けてくれると実感する本。
    日頃から不思議だと思っていることと、高校時代に学んだことが
    ぴったり出会った印象です。

  • #2806―101

著者プロフィール

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)教授、カリフォルニア大学バークレー校Mac Adams冠教授。
1964年東京都生まれ。1991年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。東北大学助手などを経て、2007年から2018年10月までKavli IPMUの初代機構長を務めた。専門は素粒子論・宇宙論。『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)はじめ著作多数。メディアを通して研究成果を伝えることにも力を入れる。難解な素粒子論・宇宙論をわかりやすい言葉で語る。

「2020年 『そうたいせいりろん for babies』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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