加害者家族 (幻冬舎新書 す 4-2)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981942

感想・レビュー・書評

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  • 排他的で偏見に満ちた思想、鬱屈した社会のストレスの捌け口、日本人の心の余裕のなさを感じた。
    アメリカでは高校で銃乱射事件をおこした犯人の母親の元に電話やダンボール2箱分の手紙が届き、その内容はどれも加害者遺族を激励するものだったそうである。
    日本も見習うべき、とまでは言わないが、国民性でここまで違うと言うのは非常に興味深い。
    殺人事件で旦那が逮捕され、小学校低学年の息子を守るため、転校を繰り返させなければならない妻。友達にさよならを言わせることすらできない。
    最後に学校を見たいと言った息子を真夜中の小学校の校庭で遊ばせる描写に心が痛んだ。
    また、家族間で殺人が起こった場合には加害者、被害者両方の家族になってしまうという。夫が借金を苦に自殺を図ったが、失敗して植物状態となった。維持するには一日に30万円かかる。絶望する妻に夫の母は何も心配しなくていいと言い、そして、実の息子を殺害した。本書で主に挙げられている凶悪犯罪とは違う重苦しさがあった。
    ただ、もうひとつ思うのだが、本書で挙げられた加害者家族はどれもひどく反省して、世の中からの批判を当然のものとして、自分を責める、という家族ばかりだったが、開き直って反省しい、逆ギレするような人間もいるのではないだろうか?

  • 加害者家族支援に関する本を連読。先に読んだのが支援団体の立場、こちらは取材者としての立場からですが、ともに前提としているのが被害者支援でして、それにかかわりながらも加害者家族ひいては加害者に関心を持ってしまうのは、私の愚禿さゆえなのか考えてしまいます。

  • 犯罪による被害者とその家族は報道などによって二次被害を受ける。それは加害者家族も同じだ。とはいえ、被害者側を保護するのは当然という世論に比べ、加害者側を保護すべきかと言うことに対して、賛否ある。

    著者は殺人事件を犯した者の妻へ取材する。妻は「夫の犯した罪なのだから、私や子どもには関係がない」という気持ちを持ち続け、被害者へ謝罪をしていない。しかし、事件のことを考える日々で自分が夫の気持ちに気づかなかったことに反省するようになる。果たして、こうした形で加害者家族が責任を感じるのが被害者にとって、良いことなんだろうか。

    また、宮崎勤の父親は自殺し、仕事を辞めた家族もいれば、婚約を破棄した家族もいた。

    加害者家族を加害者本人と別々に考えるというのは難しいが、彼らを不幸にすることに意味があるのかと考えさせられる。ただ、こうした論議において「被害者の気持ちを考えると・・・」という考えというのは排除すべきだと思う。

  • 加害者家族への支援が必要であると強く思わせる本。
    他のレビューにもあったが、加害者家族への攻撃が事件とは何も関係のない人からも向けられる社会では加害者家族へも支援が必要かと思う。
    動画サイトでコロンバイン乱射事件の犯人の母親の講演を見た。非常に興味深かった。加害者を責めても被害者は戻ってこないし、どのようにすればよかったかも多分本当には分からない。でも考え続けることをやめてはいけない。

    だがもし家族などどうでもいい、と思ってしまったら、犯罪への抑止にはならないのではないだろうか。

  • NHKの報道番組ディレクターが、2010年4月初めに放送された『クローズアップ現代』「犯罪?加害者?家族たちの告白」の取材をもとにまとめたもの。未成年者の親がある程度の責任を問われるのは仕方がないと思うが、加害者の家族や親類縁者を自殺にまで追い込むのはどうかと思う。無関係の第三者が匿名で嫌がらせするというその心根が理解できない。

  • 犯罪加害者家族も、近所や勤務先や学校を追われ、メディアによる追求、匿名の世間によるバッシングに晒される。

    被害者・加害者双方への対応ノウハウが普通になるほどの頻度ではない、というのは良いことなのだろうし、少ないから注目の対象になるのだろうけど。

  • 今までこの視点から書かれた本は少なかったと思う。
    仕事柄、加害者側の家族と出会うことが多い。加害者家族にも責任があると感じた事件は少ないように思う。
    今でも昔担当した加害者の家族と付き合いがある。親がいない加害者の兄弟とは今でもご飯に行くし、加害者自身とも友達のような付き合いをしている。
    罪を犯した以上、それなりの罰は受けるべきだとは思うけれど、社会復帰ができる環境には置かせてあげたい。それが加害者家族ならなおさらそう思う。
    加害者家族に対する攻撃は、想像力の欠如だとしか言いようがない。

    #読書 #読書記録 #読書倶楽部
    #加害者家族
    #鈴木伸元
    #2017年21冊目

  • 宮崎勤,神戸の少年A,林眞須美,畠山鈴香,彼ら彼女らには当然ながら家族がいる。彼らはどんな状況に追い込まれるのか。「ニュースが怖い」「加害者の家族は一瞬でも幸せを感じてはいけない」。世間から偏見の目で見られ疎外され攻撃される被害者家族。逃げ回り困窮しときには死を選ぶ…,加害者以上に辛い加害者の家族がたどる悲惨なその後を取材したノンフィクション。加害者になんぞなるものではない,そう思いました。

  • 犯罪の数だけ、その被害に苦しみ、悲しみ、絶望する被害者やその家族がいる。その痛みは半端なものではない。その一方で、同じ数だけその犯罪に苦しむ加害者家族の存在は忘れてはいけない。

    被害者に申し訳なく思う気持ち、犯罪を止められなかった自責の念、だが、自分はその犯罪に関係ないと思う気持ち、そして大事な家族が同様に辛い思いをするのではないかという恐れ。

    加害者の家族にはまるで人権がないかのような社会的制裁をくらう。
    加害者家族は笑っても泣いてもいけないのか。

    被害者の権利擁護と同時に加害者家族の権利擁護も非常に重要な論点だと思う。

    「加害者の家族は、罪を犯した本人よりも苦しむことがある」
    本人は刑務所に入ってある意味では周りから保護されるが、その家族、親族は被害者やその家族への謝罪と社会からの悪意によって苦しむ。
    みんながその絶望の中でも生き抜く強さがあるわけではない。
    加害者家族の自殺を「現実からの逃避」だという批判は、不適切ではないだろうか。

    「法律上無実であると理屈の上ではわかっていても、いったん逮捕された人間は世間が許さないのだ。世間では理屈が通用しない。世間では人権や権利が通用しない」
    いかに群集心理が愚かであるかがわかる。多数決の絶対的優位の視点は危険だと思う。自分がどう思うか、考えるか。

    誰もが犯罪の被害者やその家族になりうるし、また加害者やその家族にもなりうる。加害者を(家族)を支援するのは被害者(家族)をないがしろにしているという批判は容易に想像できるが、
    被害者対加害者の立場に立つのではなく、別の次元でそれぞれの支援が、双方にとって社会的生活のサポートにつながるのではないだろうか。社会的に孤立させて自暴自棄になってしまえば、自殺や犯罪の連鎖につながる。

  • 悲しかった。
    読みながら、自分が加害者家族になる場合もあるかもしれない、と思ったり、
    子供を、2度転校させる親心を切ない気持ちで読みながら泣きそうになった。

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著者プロフィール

1996年東京大学教養学部卒業。同年NHK入局。報道局、スペシャル番組センターなどを経て、現在報道局報道番組センター社会番組部チーフ・プロデューサー。「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」などを担当。ギャラクシー賞奨励賞を2度受賞。著書に『新聞消滅大国アメリカ』『加害者家族』『性犯罪者の頭の中』(いずれも幻冬舎新書)がある。

「2015年 『反骨の知将 帝国陸軍少将・小沼治夫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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