職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982642

作品紹介・あらすじ

業界の低迷で、100万円も珍しくなかった最盛期の日当は、現在は3万円以下というケースもあるAV女優の仕事。それでも自ら志願する女性は増える一方だ。かつては、「早く足を洗いたい」女性が大半だったが、現在は「長く続けたい」とみな願っている。収入よりも、誰かに必要とされ、褒められることが生きがいになっているからだ。カラダを売る仕事は、なぜ普通の女性が選択する普通の仕事になったのか?長年、女優へのインタビューを続ける著者が収入、労働環境、意識の変化をレポート。求人誌に載らない職業案内。

感想・レビュー・書評

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  • AV女優を職業として考えてみる。ハローワークには登録されることのない仕事だが、求人募集は頻繁。労働時間は1日だけの拘束。携わるスタッフは、後で警察や弁護士の世話にならないようコンプライアンスを徹底した労働環境を作り出す。

    また、働く本人にとって、なにはともあれ「女優」の仕事だ。注目を浴びて、誰かを喜ばせて、ほめられる。そんな満足感、高揚感を得られるという仕事はなかなか存在しない。

    そう考えると、同じ裸をさらすなら、風俗よりはマシと思える。著者曰く、意外と就職希望者は多いらしい。本書でインタビューに応じる関係者も、AV女優業について比較的ポジティブな意見が多い。

    が、それはかつての話だ。就職希望者が増え、AV女優の賃金は下落。レンタルビデオ店の減少とともに活動の場も少なくなり、とりあえず事務所に名前を登録しただけの自称AV女優がほとんどらしい。当然ながら反社会的な事件に巻き込まれることもある。

    ではこれから、AV女優は仕事に対してどう向き合うべきか。いつまで勤められるのか。退職後の人生設計はどうなっているのか。

    結局、AV女優業はなくなることがなく、一定の需要はあるだろう。経験を退職後の人生に活かす元AV女優もいる。が、それはかなり狭き門。著者の結論としては、就職すべき職業ではない、だ。

  • 競争が激しいAV女優の世界。撮影環境の治安は良くなってきたが...

    ●感想
     一つの職業としてAV女優を取り上げる。AV女優も資本主義的構造になっており興味深い。AV女優はアイドル業界、芸能界と同じく競争が激しくなっている。昔のように簡単に稼げる職業ではなくなった。多くの新人が毎年登場し、たくさんの人が消えていく。恵比寿マスカッツのような、一般人にも認知されるようなAV女優は皆「単体女優」と言われるトップ層。むろん、その地位まで上り詰められるAV女優は少ない。撮影環境の安全性が上がった分、応募も増えているのだろうか。SNS等インターネット系メディアの発達によってAV女優の活躍をよく目にするようになり、一見キラキラした職のようにも見える。だがそれは他の芸能系稼業と同じく、レッドオーシャン。死屍累々の上に立っている者だけが世間一般認知されるのだ。


    ●本書を読みながら気になった記述・コト
    *AV女優が所属するモデルプロダクションは裏稼業のような雰囲気を持つ。AV女優という職は法律的にはグレーゾーンになる。そのため、その管理、運営を行うプロダクションの人柄も裏稼業から流れてきている場合が多い。
    *AV女優になるきっかけは経済的理由が多い。地方出身で上京してきたが、生活が苦しく、より高い収入を求めてAV女優に応募するケースが多い
    *AV女優は人気職業となった。誰もがラクして稼げる時代は終わった。全体の応募数のうち、実際に撮影まで到達できるのは2割ほどになっている
    *世間に認知されているAV女優は「単体女優」とうカテゴリで、トップ層に位置する。誰もが単体女優になれるわけではなく、ルックスが求められる。大半は単体女優にはなれず、消えていく
    *AV女優とは賞味期限が短い。毎年大量の新人が登場し、多くの女優が消えていく。それを理解できずに生活水準をコントールできない人物が、AV出演によって生活を狂わせていく
    *行き過ぎた演出によって、女優が大けがを負ったり、PTSDを発症する撮影もあった
    →現在は大分改善されている。ナンパモノなど野外での企画撮影も、条例の改定などによって撮影ができなくなってきた。撮影空間の治安は良くなっている

  • いまの時代、体を売るという(私からすれば)最終手段を選んでも、たいしてお金にならないという現実を知る。
    かならずしもネガティブな面ばかりではない
    (承認欲求が満たされる、表社会に不適合でも、うまく生きていける場所ができる、やめてからもそういう経験を生かしたり受け入れてくれる環境はある…)にしても、非常にリスクの高そうな選択をしても高収入とは限らないし、ましてや願っても仕事にありつけない人もいるって厳しい世界。

    そうとう顔とルックスと性的魅力とが優れていないかぎり生きていけず(売れないしヒエラルキーの上位にいられない)、
    そして絶対に時間の経過とともに価値は下がる。

    いろいろな現実を知ってもする、と決める人はなにかしらの結果を出すのだろうけれど、自分には向かないし生きていけない世界だと思った。
    AV製作の歴史を追っていって過去の凄惨な事故(事件か?)を読んだら寒気がするくらい怖かったし。たとえ現在はそんなひどい扱いは減っているとわかったとしても。

  • AV女優の個人的な境遇ではなく、AV女優という職業に焦点を当てたのは面白い。単体、企画単体、企画ごとの収入モデルケースがていじされてたりたなかなかに興味深い。それ以外にも物珍しい話が詰まっていて面白い(ビデ倫て今はもうないんだねー)。まあ深い考察なんてのはあまりないが。
    気になったのは、売春を貧困女性のセーフティネットとして積極活用しようというNPOが存在するという記述。さらっと書かれていたのだが、これってけっこう微妙な問題じゃないのか。セーフティネットとしての効果の有無だけでなくて、精神的・肉体的リスク、法的位置づけ、そして倫理の問題など考えなくてはいけないことは多い。

  • AV女優は、なり手が増えすぎて、合格率14%、しかもそのうちのごく一部しか仕事が無い。売れっ子AV女優は、超エリート職業になってしまっている。

  • 最後まで読んで初めて知ったのですが

    >本書はAV女優でもしようかな?と思っている女性や、娘を持つ親たちに読んでほしい。たとえアルバイト気分でも、職業は現実を知ってから選ぶべきである。

    なのだそうです。

    言われてみると、「どのような方法でAV女優になるか」「意外に狭き門で、なってからもなかなか仕事のない人もいる」「仕事の種類」「収入」「歴史(黒船も登場する)」「トラブル」「引退後の生活」など、就活としてこの業界を知りたい人には大変良いガイドブックかもしれません。

    大成功するのはやはり元々の有名人。元AKBと言われると、私でも見てみようかと思います。著者の予想では「次に出る有名人は高○○○では?」と。彼女が5本も出演すれば10年ぐらいはなにもしなくても生活に困ることがないくらいは稼げるのではないかと言います。

    著者は多少いいことも言いながら、結局あまり薦めてはいません。でもこの女優さんたちを取材することを仕事としている彼にとっては、なくなったら困る職種なのではないかしら?

    読みながら思い出したのですが、私が短大に入ってすぐのころ、渋谷をぶらぶらしていたら大学生のお兄さんに声をかけられ、近くの事務所に連れて行かれ、待ち構えていた雄弁な女性とそのお兄さんに挟まれ、サインしてお金(たいしたことないけど、当時の私には痛かった)を払ってしまいました。帰宅して母に言ったらものすごくおこられました。でもその経験のおかげで、その後自分は「甘い誘惑にきっぱり断れる人」になることができました。小さい失敗はしたほうがいいのです。

    でももしも、かろうじて一個ひっかかった短大に通う、勉強がいやでたまらない18歳の私が、地方出身ひとり暮らしでお金がない状態で東京でスカウトに声をかけられうまくおだてられたら…。「火曜サスペンスドラマの脇役だよ」といわれて行ってみたら実はAVで、すでに準備ができているところに一人立たされたら…。

    就職活動しているかたへ。人前で堂々と言える仕事につきましょう。

  • 毎年4000〜6000人が入れ替わり、出演料が3万円〜という様なAV女優についての情報も書かれているが、読み進めていくと、この本はAV業界をモチーフにしたビジネス書であることが分かる。

    一般のビジネス書に書かれている、コモディティ化、環境与件の変化、破壊的イノベーション、ブルーオーシャン戦略、マズローの欲求5段階、労使関係、派遣問題、リスクマネジメント、セカンドキャリア...etc.多岐に渡る内容が一冊に凝縮されている。

    AVの裏側に垣間見ることができる現状が、他のビジネスと共通しているところが面白い。いや、逆か。最古のビジネスとされるこの業界にこそ学ぶべき事があるのかも知れない。
    一般企業が「理念」をうたい社員のベクトルを合わせようと必死なのに比べて、この業界は「理念」など敢えて掲げる必要などない。ひたすらに厳しい生存競争を繰り広げるリアルなドキュメントでもある。

  • 殿方であれば気になるアイテム、AVビデオ。
    AVがあったからこそビデオデッキが、これほどまでに普及したという伝説もありますが、、、

    そのAV業界の内幕を描いた異色作。
    過去は落ちるとこまで、落ちた女性のセーフティーネットだったという。
    振り返って現在は。「倫理観」も薄れAVへの応募者激増中。
    しかし衰退中の業界にあるだけに、狭き門となっているとか。
    しかも、「単体」を頂点としたヒエラルキーが存在し、そのヒエラルキーも
    数年で崩れ去り新しいヒエラルキーが、、、の繰り返し。

    AV業界の裏側を知るだけでも、ムダな知識として吸収出来た気がする。
    AV業界に飛び込むには、ある程度の勇気と相当の「客観性」が必要なんだなぁ。引退後の生活を鑑みて、、、その両立は難しいとは思いますが。

  • 広い意味での「売春」の倫理性を問う。という視点はまったく無くて、広い意味でのブラック企業の解説本である。約15年間、700人ものAV女優のインタビューをこなしてきた著者だからこそ書けるその実態。この20年間の労働実態の変遷もよくわかった。

    内容(「BOOK」データベースより)
    業界の低迷で、100万円も珍しくなかった最盛期の日当は、現在は3万円以下というケースもあるAV女優の仕事。それでも自ら志願する女性は増える一方だ。かつては、「早く足を洗いたい」女性が大半だったが、現在は「長く続けたい」とみな願っている。収入よりも、誰かに必要とされ、褒められることが生きがいになっているからだ。カラダを売る仕事は、なぜ普通の女性が選択する普通の仕事になったのか?長年、女優へのインタビューを続ける著者が収入、労働環境、意識の変化をレポート。求人誌に載らない職業案内。

    かつて「北の国から」で宮沢りえが演じた「元AV女優」というイメージは少数派になっている。むしろ、「最高の離婚」で尾野真千子がふらふらとAV撮影旅行に行きかけたのが今の実態をよく掴んでいたのだと思う。
    2013年5月15日読了

  • 出版された頃、読売新聞の読書欄の紹介されていたことで気になって読んでみた。

    SODの登場以降、AVがかなりオープンに語られるような風潮になったと思いますが、未だに法的にはかなりグレーな部分が多いのですね。
    著者に言わせれば、それでもAV業界の方が、芸能界よりも反社会勢力との関わりは浅いらしいです。
    少しだけしか書かれていませんが、「売春を貧困女性のセーフティネットに」という考えの元、NPOがこういった業種に参入してくる可能性があることも驚き。
    90年以降の歴史を書いた第3章が面白かった。

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著者プロフィール

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

「2020年 『日本が壊れる前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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