句会で遊ぼう (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344982796

作品紹介・あらすじ

「俳句でもやろうか」。メンバーは毎度の飲み仲間。軽いノリで句会を開いたら、これが滅法おもしろい。○を獲得したときの天にも昇る喜び。×を食らったときの激しい落ち込み。容赦ない酷評と爆笑が飛び交う講評タイム-もともと「座の文芸」と言われ、仲間が集い、一巻の作品を完成させることからはじまった俳句。肩書き抜きで知的コミュニケーションをたのしめる句会は、中高年には格好の遊びである。知識不要、先生不要。ともかくはじめてしまえばいい。「一回だけのつもりが早八年」の体験を通して綴る、素人句会のすすめ。

感想・レビュー・書評

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  • 句会で遊ぶというより、苦会でのたうつ恐怖《赤松正雄の読書録ブログ》

     俳句ブームだという。私の身の周りにも、実弟や義母がたしなんでいる。中でも、義母は23年ほど前に東京から姫路に家族共々引っ越してきて以来、ずっと俳句をやっている。数年前に学ぶ側から教える側に回った。大正14年末に生まれて、初めて東京を離れたのが昭和の終り。昭和の64年ほどを東京で、平成になってずっと姫路で過ごしていることになる。文字通り西も東も分からぬ関西の地であったのに、俳句のお陰で今や家族の中で誰よりも景勝の地に詳しくなったし、親しい友人も少なくない。

     休みのたびに吟行に出かけるし、句会にもいそいそと。来月で87歳になるがお陰様で寝込むこともなく元気だ。そういった彼女の姿を見ていて、俳句に興味を多少もった。小高賢『句会で遊ぼう』を新聞の書評で知り、読んだ。サブタイトルに「世にも自由な俳句入門」とある。いやはや面白い。こんなことを俳句を愛する人たちはやってるのか、と目からうろこ(近眼にコンタクト)だった。義母に見せたらたちどころに読了(これにも驚いた)。「私たちのはこんな立派な句会じゃないよ」と言いつつも、私が俳句に興味を持ったことに満更でもなさそう。

     この本は俳句を全くやったことのないド素人たち―といっても和歌の名人始め大学教授、新聞、雑誌の編集者ら皆さん粒よりの知識人―が「俳句でもやろうか」と集まって始めた句会の一部始終の実況中継である。中心人物がかの小泉武夫先生とくるから、おおよその見当は読む前から察しがつく。何しろ天下の食道楽、酒好きだから。ときおり、同氏を囲んで彼らは、うまいものを食べつつ、酒を飲む会をやっていた。それがいつの頃か、「でもやろうか」ということになったという。俳句もさることながら、遊び心の塊のような人たちのいわば隠居学直伝の趣もあり、楽しいこと限りなく、つい誘い込まれた。

     長年、言葉をあやつる仕事をしてきた身として、五七五という超短文の世界には憧れというよりも畏敬の念を持ってきた。芭蕉や一茶、子規らの俳句にはいつも感心する。いつの日か奥の細道紀行をやって見たいと思うのは私だけではあるまい。しかし、短いといってもその奥行きの深さに恐れをなし、食わず嫌いだった。この本を読んで多少食ってみるかとの気分にはなったが、句会で遊ぶと言うよりも、苦会でのたうつことへの恐怖が先立つ。

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著者プロフィール

1944年、東京の下町に生まれる。慶應義塾大学卒業。編集者として馬場あき子に出会い、78年「かりん」創刊に参加。現在、「かりん」選歌委員。『本所両国』で第五回若山牧水賞受賞。著書に歌集『耳の伝説』『家長』『太郎坂』『本所両国』(雁書館)、『小高賢歌集』(現代短歌文庫20)『怪鳥の尾』(砂子屋書房)、『液状化』(ながらみ書房)、『小高賢作品集』(柊書房)、『眼中のひと』(角川書店)、批評『宮柊二とその時代』(御柳書院)、『転換期と批評』(柊書房)、入門書『現代短歌作法』(新書館)、編著『現代短歌の鑑賞101』『近代短歌の鑑賞77』(新書館)などがある。

「2009年 『この一身は努めたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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