ストレスと適応障害 つらい時期を乗り越える技術 (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983052

作品紹介・あらすじ

うつの患者は百万人以上いるが、実はその多くは「適応障害」である。環境の変化になじめなかったり、対人関係がうまくいかずに生じる心のトラブルで、自信や意欲がなくなったり、体調不良、不登校、出社困難、依存症などの問題として表れる。過敏な人だけでなく、人一倍前向きな人もかかる、もっとも身近な精神疾患だ。「うつ病」と誤診されて治療すると余計に悪化し、長引く場合も。ではどうすれば改善するのか?どうにもならない問題や悩みを抱え込んだとき、いかに対処すればいいのか。すぐに実践できる方法を、百戦錬磨の専門医がわかりやすく紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 「適応障害」について、様々な人のタイプ別に対応策が述べられています。
    まず、第一に無理をしないこと。無理したり、やりたくないことをやっていると様々な症状で体が反乱を起こす。だから情報を制限し気分転換を図ることは意識的にやろうと思います。
    また、自分の場合は過去の失敗に自分特有のあやまちがあるのだろうと分析するあまり反芻的思考に陥ってしまいます。実はこれも捨てる方がよいと気づきました。全か無かのような二分法的な偏った考え方も気をつけたいところ。
    片寄った考え方や自分特有の認知パターンを知ることが大切だと思います。
    結局、適応障害はその人の特性にあった環境を整えていくことです。多様性ある社会となった今、個人だけでなく同僚も管理職もみんなで努力していくことだと思います。「根性で耐える」とか「忍従する」とか時代の進歩はそうしたことでは対処できないようになっていることを感じました。
    「奇跡が起きて問題が解決していました、あなたはどうかわるでしょう?、あなたはどう変化しますか?」という『ミラクルクエスチョン』は自分が何を目指しているのか、どんなことを一段階上の達成とするのか考える上でとても面白いと思いました。
    これだけ人間が価値観が多様化している。そこに普遍的なものはほとんどないということにも納得できました。

  • 全体的にかなりわかりやすく、適応障害と診断された人ならびにその周りの人たち(当事者以外)も理解できるような内容だった。
    「適応障害」って知らない人多いのかな。

    この本に書いてあることはある種の事実だと思う一方で気休めと捉えることもできる。
    「悩みの尺度は本人がどれだけ辛いかだけだから他の誰にもわからない」とは思う。
    それでも
    当事者は、決して一人ではないことと周りが理解しようとしてくれるありがたさを
    周りの人たちは、当事者にならなければわからないということを理解することとそれでも寄り添うことの大切さを
    学ぶことができるという意味で、この本は素晴らしいものだと感じた。

  • 適応障害とは、居場所がない、あるいはプライドを傷つけられら心が折れかかった状態である。
    この段階ではまだ復元力があり、不適応を起こしている環境から離れたりストレスが減ると、速やかに回復するのが大きな特徴である。
    しかし、そのままにしておくと心がポキっと折れ、すぐには元に戻らない状態になってしまう。
    そのため、早い段階で対処することが大切である。

    ✏適応障害は、元々適応力がとぼしい人ばかりがなるのではない。全く逆に、人一倍前向きで、適応力にも優れていると自他共に認めるような人でも、適応障害になる。
    適応力のある人、忍耐呂のある人は、少々過酷な環境でも自分なら耐えられるという過信があり、弱音を吐かずに歯を食いしばって、なんとか乗り越えようとするからである。

    ✏小さい子どもの適応障害は、外向きに行動化し、問題行動という形で現れることも多い
    ここでの問題行動は、うつや不安が強まることに対して、自分の身を守ろうとする代償的行動だと言える。やり返すことで、どうにか自分のプライドと心の均衡を保とうとしているのだ。

    ✏ストレスや逆境に強いプライドの持ち方とはどんなものだろうか。それは、自分が最善の信じる行動にプライドをもつことだ。
    相手の評価や物事の結果は様々な要素によって左右されるが、自分が最善と信じる行動をとることは、自分の信念や努力によるものだから、何者にも左右されない。

  • 【239冊目】自分が危ういと思い、読んだ本。結果として、すごく視界がクリアになった。自分自身と付き合っていく上で、また、ストレスを感じている友人や同僚と向き合い、上司として人事マネジメントをする上でも、読んでおいて良かった。

    適応障害になった友人が以前、「人事管理してる人が、うつと適応障害の違いも分からないくせに、とりあえず自分をメンタルクリニックに送っておけば良いという雑な扱いをしてくる」といっていた言葉がすごく印象に残っている。自分がその縁に立ってみて、やっと学ぶことが出来て本当に良かった。

    「あなたは悪くない」みたいに一方的に甘やかすような内容だったら嫌だなと思っていたのだけど、そこはさすがに精神科医の方が書いた本だけあって、そこらへんに置いてあるヒーリング系甘やかすだけ本とは違った。

    基本的にはストレスへの対処は負荷、対処、支えの三要素で決まるとのこと。(p54)パーソナリティタイプ別の対処方法や、読者の適応力を測るような章もある。

    ただ、ぼくが印象に残ったのは、「安全基地を持つこと」「プライドや自分が大切にしていることを否定されないこと」「共感や応答してもらうこと」の大切さを繰り返し強調されていること。うん、これは覚えとこ。

    最後の最後に、ご自身のクリニックでの経験を振り返って筆者の岡田先生が「人が生きることの切なさ、不可思議さ、そして素晴らしさを、改めて思わない日はない」と書いてるのを読んで、自分まで肯定されたような感じがし、心地よかった。

  • 結局、適応とは、その人がその人らしく生きるということになるのではないだろうか。

    「おわりに」に記載されていたこの一言が全て。

  • 適応障害について理解が不足している事に大いに気づかされた1冊。適応障害になりやすいパーソナリティについて、世間でよく出会う事例と合わせて紹介されておりとてもわかりやすい。適応障害を「心の病気」と安直に捉えるのではなく、その形成過程や自助努力の大切さを学ばせてもらった。適応障害は社会のどのような形であれ組織に属して生きていくうえで自分自身や他者も陥る可能性があるものと理解できただけに、再びどこかのタイミングで再読したいと思った。

  • 環境の変化や対人関係が原因で生じる心のトラブル「適応障害」は、どうすれば改善するのか? また、どうにもならない問題や悩みを抱え込んだとき、いかに対処すればいいのか? すぐに実践できる方法をわかりやすく紹介する。

    参考にはなるが,実践の方法が分かりにくい。

  • レジリアンス(心のバネ、メンタルの強さ)を左右する要素は、否定的認知、完璧主義、固執性、過敏性、共感性、情動制御、安全基地の七項目の要素が相互に絡まり合っている。まずは自覚し、どこを修正するか。具体例と共に適応障害とは何であるかについて理解し、症状の根底にある課題としての障害について理解する。そして人間が何かの障壁にぶつかった時、いかにしてその試練を乗り越えていくかについての極意書として精神医学の立場からエッセンスを練りこんだ作品。
    ・ピカソも埋もれたまま劣等感にまみれ落後者か犯罪者となって人生を終えていたかもしれない。
    ・適応障害は合わない環境、その子が活かされない環境に無理やり居続けさせれば、適応障害を起こし、劣等感を植え付けられ、何のとりえもない人間として自分をみなし、パッとしない人生を歩むということになりがちだ。
    しかしその子の特性を活かし、才能を伸ばそうとする周囲の環境が整っていれば人生には大きな可能性が開ける。
    ・容量オーバー型の適応障害やうつを予防する上で大事なのは情報入力を少しでも減らす努力をすること。脳が容量オーバーを起こしているうえ遅くまで情報負荷をかけると悪化させ、集中力や能力低下、判断力の鈍さ、対人関係が面倒、電話も億劫、しなければならないことの後回し、などの症状が起こる。合間合間に5分程度の休憩をはさむだけでもぶっ続けで仕事をこなすよりかなり違ってくる。
    ・容量オーバーが起こりやすい状況の一つに環境や担当が変わった時だ。対人面、仕事面、課題面で勝手がわからず大したことをしていなくても気づかいが増え、ストレスが数倍負荷がかかり、疲労が起こりやすい。不慣れなことを担当するとペースをつかむまで容量オーバーが起こりやすい。
    ・容量オーバー型の適応障害を避けるためには自分にかかっている負荷の容量が適正なものか自己管理を常に行い監視しておく必要がある。そのためには厳格なスケジュール管理、自己管理を行い、どんぶり勘定で何とかなるという仕事の請け負いはしないこと。ほんの少しの無理がかななったことで結局うつに追い込まれることになるのだ。
    ・鬱になり、脳の委縮が起こり、回復に何カ月も時間がかる状態になったところで誰も面倒は見てくれないのだ。家族は生活に困り、永久に消えない心の傷と悲惨な体験を味わうことになりかねない。
    ・鬱にならないための分かれ道は無理をしてまで仕事を受けないということができるかどうかである。無理をして仕事を受けると必ず仕事の質が低下する。すると自分自身の仕事の評価が結局は中長期的に下がってしまう。時には致命的失敗につながることもある。
    ・質を落とさずこなせる仕事の量をきっちり管理すること。はっきり無理を無理と拒絶すること。
    ・人は意味のあるストレスならばたとえそれが少々大きくても絶えられるが、逆にどんなに小さなストレスでもそれが無意味なものならばひどく苦痛に感じる
    ・方向性を示し、働きや努力の意味のあるものだという感覚、苦労し外のあるものだという意識を持てるようにすることが大事。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「無意味なものならばひどく苦痛に感じる」
      人間ってデリケート。。。

      苦労し外のある→苦労し甲斐のある
      「無意味なものならばひどく苦痛に感じる」
      人間ってデリケート。。。

      苦労し外のある→苦労し甲斐のある
      2014/04/23
  • 非常に参考になりました。

  • 自分らしくありたいという気持ちと集団に所属してうまくやりたいという気持ちと、
    その狭間で摩擦が大きくなるのが適応障害だということがわかった。

    偏った認知が摩擦を生む原因になったりするので、そういった認知を修正し訓練しながら自我の強度を高めていくことが必要そうだ。

    コロナ禍で人と会わず孤立した生活をしていると、自分の認知が歪んでくるような気もしているので、社会的な人とのつながりを大切に、周りの人たちに認知の修正を手伝ってもらいながら、たくさん本を読んで、心を大切にして生活していきたいと思う。

    この本にも書いてあるように、環境になじむことが第一ではなく、見切りをつけて向いてないことは止めて新しいことに挑戦した方が幸せになれることもあるようだ。適応障害に悩む子供にも大人にも、その人らしい幸せな道が見つかることを心から祈る。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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