アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門 (幻冬舎新書)

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著者 : 藤井厳喜
  • 幻冬舎 (2013年7月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983137

アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門 (幻冬舎新書)の感想・レビュー・書評

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  • 読了した本がたまっています・・・

    付箋部分を抜粋します

    ・脱税が多くなりすぎてしまえば、確かに世の中がおかしくなるが、グレーゾーンがなくなってしまえば
     世の中は官僚主義となり、社会からは活力が喪失してしまう(p14)

    ・いわば世界経済のど真ん中に、タックスヘイブンというコントロール不可能な巨大なブラックホールが
     存在しているのである(p32)

    ・企業利益は増大しても、本国アメリカにおける雇用を増やそうとしないのが、コーポレートランドの
     もう1つの特徴である(p43)

    ・ケイマン諸島に本部を置く会社に勤めるアメリカ人は、解雇された時に失業保険やその他のいかなる
     手当ても受ける権利がない(p44)

    ・脱税は一見、殺人よりも軽い罪と見られがちである。しかし、公的権力から見れば必ずしもそうではない。
     国家の運営を支えているのは税金である(p70)

    ・日本でも、アメリカのような巨額の報奨金を伴う内部告発法を制定したらどうだろうか。もっとも、日本人の
     倫理観にそぐわないかもしれないが・・・(p145)

    ・貧困が、犯罪組織の温床となることは、世界的な傾向であるが、これはイタリアについても真実である(p167)

    ・しかし国家や国際機関が提供する「安全」をはじめとする様々な公共サービスは、税金なしでは成り立たない。
     税金を回避する人々が増えれば、文明社会は成立しなくなる(p254)

  • はじめに 経済の裏と表
    第1章 裏側から見た世界経済
    第2章 アメリカというタックスへイブン
    第3章 イギリスのタックスへイブン
    第4章 追い込まれる世界最大のタックスへイブン、スイス
    第5章 イタリアのアングラマネー
    エピローグ キプロス、ドイツ、そしてヴァーチャル・マネーへ

  • 世界各国の税収が極端に減少する現代経済社会。
    税金は表の経済にしか、課税し、徴収するしかない。
    しかしながら、タックスヘイブン(租税回避地)やシャドーバンキング(影の銀行)を使った、いわゆる脱税や資産隠し、麻薬や売春や賭博によって生まれ蓄えられた金をアングラマネーと呼称している。
    闇に流れ、動く金は想像を絶する額に達している。
    もはや中央銀行やIMFも制御できない闇資金の還流が世界経済を揺さぶっている。
    その歴史と仕組みなどについて、詳細に述べられた著作である。
    アメリカ、イギリスのタックスヘイブンの歴史、仕組み、イタリアのアングラマネー、特にバチカンのアングラマネーとマフィアとの歴史的な展開、最後に、ドイツ経済も、実は、アングラマネーの世界にどっぷりつかっている。
    財政赤字などに悩まされているアメリカという一応世界経済の中心国が、上記のような闇の世界に立ち向かおうとしている現在、おひざ元のアメリカ自体も大いなる矛盾を抱えているが、ここは、世界の良識を信じ、少しでも、表の経済が立ち行くような方向に向いてほしいものである。

  • アングラマネーとタックスヘイブン(租税回避地)について説明した本。なかなか詳しい。大企業や一流の金融機関の名前も普通に登場する。アメリカ、バミューダ、ロンドンのシティ、香港、マカオ、スイス、リヒテンシュタイン、ケイマン諸島、キプロス、カタール、イタリア。西側各国の大金持ちや企業だけでなく、ロシアマネーにチャイナマネー、そしてアラブのお金も加わり、そこで動く資金は膨大である。

    例えば、グーグル。同社の利益から払われた法人税はたったの2.4%のみ。堂々と行われているその手口は本書の中で図付きで解説されているが、アイルランド、バミューダ、オランダを通じた巧妙なもの。やはり米国を代表する大企業のゼネラル・エレクトリックにいたっては、2010年に140億ドルもの利益を上げながらアメリカに納めた法人税は何とゼロ。アップルもこれらを真似て節税に励み批判を浴びている。このようなやり方が広まったこともあり、アメリカの税収に占める法人税の割合は、1950年代は23.2%だったのに、2010年にはたったの7.2%になってしまったという。

    アメリカは国内にもタックスヘイブンを抱える。人口91万人の小さなデラウェア州には、全米上場企業の半数、フォーチューン500のうちの2/3、全部で94万以上の企業登記が集中している。ネバタ州やマイアミも有名。そもそも、アメリカは出て行くお金には厳しいが、入ってくるお金には比較的寛容。海外に溜まった利益を本国に送還した場合はわずか5%の法人税率しか課さないという期限つき特例を打ち出したこともある。

    金融の聖地であるシティと大英帝国時代の旧植民地を結んだイギリスのハブ&スポーク型ネットワークも凄い。マグナ・カルタ以前からの歴史的な背景がある上に、金融を産業の中心にする国家戦略がそれに加わり、金融自由化が拍車をかけ、悪徳会計士と甘い会計監査たちが後押し。オフショアとオンショアの区別も無くなり、いろいろなマネーが集中するようになる。金融分野の競争力確保のため、アメリカもIBFによってこれに追随する。最近、シティはチャイナマネーの取り込みに必死で、香港ドルの発券銀行でもある2大銀行(HSBCとスタンチャート)を香港に抱えている強みを活かしてもいるという。

    プライベートバンキングの長い歴史を持つスイスには秋風が吹いている。国際的な圧力の高まりでアメリカ富裕層の預金者名簿の提出を余儀なくされ、さらにLIBOR不正など次々不祥事が発覚したUBSは苦境に陥っている。ただし、カタールを中心とするアラブ世界に逃げ道を確保したりもしている。

    地下経済が占める比率がGDPの35%と先進国の中で突出しているイタリア。マフィア経済に、近年は中国系移民の富が加わり、さらにローマ法王直轄で外部からはうかがい知ることができないバチカン銀行の存在も大きいようだ。

    2001年の9.11のテロと2008年の金融危機をきっかけとして、テロ資金を含むアングラマネーの取り締まりや金融業界に対する締め付けは強くなり、透明性確保や規制のためにG20などを通じて国際的な合意形成や協力も行われるようになってきた。最近はネットを使った新たな方法も台頭しているが、アングラマネーやタックスヘイブンへの締め付けが厳しくなる流れは当面続くだろうということだ。前半ではかつて本人確認がゆるかった時代に郵便貯金の口座が様々な用途で利用されたことにも触れている。世界経済を考えるとき、アングラマネーとタックスヘイブンの存在は無視できないものであることを実感した。

    *****************************

     2013年の本。著者は、国際政治学者・未来学者を名乗る方である。
     曰く・・・
     911以降、アメリカは国際テロリストの資金源となっているアングラマネーの取り締まりを強化する。国際的コンセンサスを得た規制強化は奏効し、2006年ごろからオフショアのタックスヘイブンからアメリカの金融市場へ流入していた資金の流れが急速に枯渇する。これがアメリカの住宅バブル崩壊の引き金を引き、更にリーマン・ショックにつながった。もともと、金融ブームの原動力となっていた住宅バブルを支えていたのは、海外のタックスヘイブンから流入してくる出処の怪しいマネーだった。すべてが違法資金というわけではないが、節税資金も含めた全体的には黒に近い灰色資金。
     世界経済の年間総生産は約70兆ドルだが、その4分の1はタックスヘイブンに吸収される。タックスヘイブンに存在する預金の総額は32兆ドルといわれる。世界のシャドーバンキングの規模は約67兆ドルといわれる。中央銀行やIMFなどがコントロールできない闇の資金の流れが世界経済を揺さぶる。それゆえに、各国はその規制強化に必死になる。
     タックスヘイブンとは、税率が非常に低く、企業活動への規制も緩く、外国政府に対して企業や銀行の情報提供を拒否し(不透明)、非居住者の資金を大量に流入させているところ、と定義できる。タックスヘイブンの根幹は守秘法域であること。タックスヘイブン=守秘法域と定義する人もいるくらい。
     アメリカはFACTAとよばれる法規制を施行し、アメリカの納税者の有する5万ドル以上の海外資産についてIRS(内国歳入庁)への報告をするよう外国金融機関に義務付けた。アメリカの個人や法人はこれにより原理的には外国金融機関を使った脱税ができなくなる。
     アメリカの会社がフィリピンのバナナを日本に売る場合、フィリピンの子会社Aがバナナをタックスヘイブンの子会社Bに低価格で販売する。そして、子会社Bは高値で日本の子会社Cに売る。そうすれば、税金の安い子会社Bに利益を蓄積できる。タックスヘイブンに蓄積した膨大な資金をアメリカに持ち込むと課税される。ブッシュ・ジュニア政権は、オフショアに蓄積した利益を本国に送還した場合、法人税率を大幅に優遇するという政策を行なう。このチャンスで3600億ドルもの資金がアメリカに戻ってくる。アングラマネーを洗い出すための政策であり、この巨額資金は景気浮揚効果をもたらした。
     ロンドンの中にあるシティは、ロンドン市からもイギリス政府からも独立した自治体。バチカンのような独立国ではないが、自由都市の伝統のもと、国家から独立した法体系を維持している。イギリスのタックスヘイブン・ネットワークは、シティが中核にあり、第2層として本土近海に存在する王室属領があり、第3層としてケイマン島などのイギリス海外領土があり、第4層としてシンガポールやバハマ、香港など独立国ではあるがシティと深い関係にある小国がある。イギリス系のタックスヘイブンのグループ全体で、全世界の銀行資産の3分の1以上を占有している。
     シティ・オブ・ロンドンにはロードメイヤーとよばれる独自の市長がおり、イギリス国会で作られる法律は一部適用されるものの、法律の多くがシティを完全または部分的に除外している。シティはイギリス国内のオフショアであり、税金も独自に徴収する。
     シティの人口は昼間は35万人だが、居住者は1万1000人にすぎない。シティの議会であるコモン・カウンシルに選ばれる議員の80%は企業の代表者であり住民の代表者はたった20%。シティは完全な企業都市であり、金融産業によって支配される自治体。
     サウジアラビアの王族の一人がロンドンに居住し、永住地をイギリスの海外領土として届け出て、すべての所得をイギリス国外で計上するとする。彼はイギリスに住んでいながらイギリスではほとんど税金を払う必要がなくなる。イギリスにはこんな人が6万人くらい住んでいる。
     イギリスはHSBC(香港上海銀行)とスタンダードチャータード銀行を擁しているが、この2つの銀行は香港ドルの発券銀行でもある。
     中国共産党の幹部は、違法ビジネスなどで蓄積したアングラマネーを香港にもちこみ、そこから海外の銀行口座に送金する。マカオもマネーロンダリングの中心地。マカオのカジノは、賭博で儲かった人に証明書を発行する。この証明書を買ってしまえば、ダーティーマネーをクリーンマネーにできる。その資金をマカオから香港に移し、そこから海外に逃避させる。
     バチカンもマネーロンダリングを行なうのに最適な場所。マフィアはバチカン銀行にお金をもちこめば、イタリアの警察はその出所を追えなくなる。バチカン銀行から別の口座に資金を移転すれば、マネーロンダリングは完了する。バチカン銀行は宗教事業のための銀行だが、マフィアはバチカン内部の人間になんらかの報酬を与えることでバチカン銀行を利用する。
     イタリアの犯罪組織は、シチリア州のマフィア(コーザノストラ)、カラブリア州のンドランゲータ、カンパーニャ州のカモッラ、ブーリア州のサクラ・コローナ・ウニータの4つがメイン。いずれも南イタリア。南イタリアは貧しく、外国の侵略を多く受けてきたため地元住民は外国の支配者に対抗するために自衛組織を作る伝統がある。政府は常に外来のもので権力者は信用ならない、という感情がマフィアを形成する。シチリア人はみずからをイタリア人とは思っていないし、シチリアでは今でもイタリア語を自由に話せない人が26%もいる。
     政治家はシチリア・マフィアに補助金や公共事業などを与えることでマフィア系企業を優遇し、マフィアは政治献金や対抗馬への選挙妨害などで政治家に利益を与える。ギブアンドテイクの関係がある。
     コーザノストラはアングラマネーをバチカン銀行に入金する。表面上は、個人からカトリック系慈善団体への寄付。カトリック教会は世界中で宗教施設を運営するため建設・修復に資金が必要。そこで、アングラマネーを持ち込んだ人物に関係する建設会社に仕事を発注する。こうしてアングラマネーは洗浄されて建設業者に収入として戻ってくる。

  • 税金払え! 貧乏人は節税のすべも知らずにお上の言う通りなす術もなく納付しています。早く総背番号導入しましょう。まいりました。

  • 勉強になりました!

  • いやぁ〜、こんなことが起きていたとは。
    世界史的にも面白い。イギリスのシティとスイスの大きな闇を知らなかったのは私の怠慢。グローバル化した社会で色の付いてないお金は黒く染まって白くなる。
    UBS社員が国外に出れないとはね…

  • 数字と経営学を独学したユダヤ人?マフィアの話は面白かった。他は志賀 櫻氏のタックスヘイブンの刷り直しみたいな内容。

  • 読了。

  • アングラマネーとタックスヘイブン(租税回避地)の本。Googleやアップルが利用しているダブル・アイリッシュ & ダッチ・サンドイッチのスキームを知りたくて読んだが、よくわからんやった。

    但し、Googleの利益から払われた法人税は2.4%。米国のGEは、2010年に140億ドルもの利益を上げながらアメリカに納めた法人税はゼロというショッキングな事実を書いている。

    2001年9.11でテロ被害を受けたアメリカはテロ資金根絶のためアングラ・マネー取締に乗り出したが、この結果2006年春頃からタックスヘブンからアメリカの金融市場に流れていた資金が急激に枯渇し、それがサププライム・ローン崩壊の引き金となった。換言すると金融ブームの原動力となった住宅バブルを支えていたのは海外のタックス・ヘブンから流入している極めて出処の怪しい金であったという記載には驚いた。

    国家とグローバル企業の戦いは、今後とも続いていくのだろう。

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世界各国の税収が極端に減少している。税金は表の経済にしか、かけられないからだ。タックスヘイブン(租税回避地)やシャドーバンキング(影の銀行)を使った、いわゆる脱税や資産隠し、麻薬や売春や賭博によって生まれ蓄えられた金をアングラマネーと呼ぶ。世界の年間総生産70兆ドルの約25%がタックスヘイブンに流れ、シャドーバンキングの規模は約67兆ドルにまで拡大。もはや中央銀行やIMFも制御できない闇資金の還流が世界経済を揺さぶっている。その歴史と仕組み、各国最新事情を詳細に解説した画期的な書。

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