日本の軍歌 国民的音楽の歴史 (幻冬舎新書 つ 3-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983533

作品紹介・あらすじ

軍歌は、日本史上、最も国民の心を掴んだ音楽だ。初めての軍歌「来れや来れ」が登場した一八八五年から終戦の一九四五年までに作られた曲は一万超。軍歌は、政府にとって国民を戦争に動員するための道具であり、国民には最も身近な娯楽、レコード会社・新聞社・出版社には、確実に儲かる商品だった。誕生から末路まで、史上最大の大衆音楽の引力に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 辻田真佐憲 著「日本の軍歌 国民的音楽の歴史」、2014.7発行。私には次の三つが浮き彫りになりました。①国民の軍歌「抜刀隊」。西南戦争、田原坂で活躍した。敵の大将は西郷隆盛、朝敵は薩軍。~我は官軍我が敵は 天地容れざる朝敵ぞ~♪ ②破格の軍歌「元寇」~四百余州を挙る十万余騎の敵 国難ここに見る 弘安四年夏の頃~♪ ③官庁が懸賞募集、ミリオンセラー「愛国行進曲」~見よ東海の空明けて 旭日高く輝けば~♪ 1984年、米国留学時、ミャンマーの友人が私の前でこの歌を歌った時の驚き、昨日の事のようです。

  • 軍歌は明治~昭和初期の国民のエンターテインメントだった。最初の軍歌は、タイトルそのままの「軍歌」。その後、歴史や故事に因むものや兵隊の応援、戦況を伝えるもの等様々なタイプの多くの軍歌が作られた。
    メディアが発達していなかった当時、戦況を伝える軍歌は、国民に情報を届ける手段でもあったらしい。曲は短く、歌詞は簡潔で覚えやすい。娯楽が制限されていた時代に、軍歌は国民の楽しみだったようだ。著者は軍歌マニアで、多くの軍歌を収集して分類し、軍歌の持つ意味を考察している。戦史や兵器の軍事マニアは沢山いるが、軍歌収集は歴史的な価値も含めて、大変面白いテーマだと思う。内容も真面目でとても良い本だ。
    自分の経験だが、奄美大島に住んでいた小学生の頃、近所の年上の友達から軍歌を教えてもらった。
    奄美はテレビの民放が無く、アニメや子供向けの番組が放送されていなかったので、テーマソング等は全く知らなかった。歌と言えば童謡か、大人が歌っていた軍歌。
    1曲15-30秒、同じメロディの繰り返し、誰でも簡単に覚えられる軍歌を友達と歌うのが楽しかった。
    好きな歌は、永井建子の元寇、広瀬中佐、日本海海戦、轟沈、海行かば。海軍の軍歌が好きで、高校の遠足バスの中で、何か歌えと言われて軍歌を歌ったら大顰蹙だった。喜んでいたのは、戦中生まれの先生だけ。
    軍歌は、親たちの世代が歌う暗い曲というイメージだったので、当時の若者に受けるはずもなく、その後、中年になるまで封印した。でも何事にも寛容な今の若者に、シンプルな軍歌は意外に受けるかもしれない。

  • たかが軍歌、されど軍歌

  • 音楽
    歴史
    社会
    ノンフィクション

  • <閲覧スタッフより>
    軍歌はどのようにして人々に浸透、日本を超えて外国まで拡散していったのか。そんな軍歌の変遷を辿ります。エリート作曲者だけでなく森鷗外などの文学者や、天皇、国民といった様々な人が国を挙げての政策として軍歌作成に携わっていたとされています。耐え難い言葉や、戦時中に活躍した人物が歌に込められており、時代の象徴ともいえる軍歌を知っておくべきだと感じさせられます。
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    所在番号:新書||767.6||ツシ
    資料番号:20102586
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  • 軍歌というと軍部から押しつけられたものというイメージがあったが、実際は大衆が求めたエンタメでもあった。

    北原白秋、島崎藤村、山田耕筰など有名な作家、作曲家も自ら競って軍歌を作った。

    毎日新聞が「露営の歌(♪勝ってくるぞと勇ましく)」朝日新聞が「父よあなたは強かった」を公募して作るなど、メディアが部数拡大のために軍歌を利用した側面もあった。

    有名な「同期の桜」は先に「二輪の桜」という元歌があり、その替え歌だった。「二輪の桜」は(♪君と僕とは二輪の桜…昼は並んで夜は抱き合うて、同じ夢見る弾丸のなか)という、今でいうボーイズラブものの歌詞だった。売れるためにはBLも萌えありという、今の出版状況とそれほど変わりは無い。

    軍歌といえども、広まるためには大衆に支持されなければならない。そのために為政者はあれやこれやと策を巡らす。現代に軍歌がよみがえるなら、AKBが歌うだろうという著者の指摘はするどい。

    膨大に知識を背景に著者が独自の論を展開するこの本は面白いが、文体は硬く、やや読みづらかった。

  • 軍歌っていうと何か特殊な時代の特殊な世界の気がするけど、実はそうではなく、当時には広く受け入れられていたエンタメだったんだねえ。
    まったく縁のない世界だったんで知らないことばかりで面白かった。

    ただ、著者の文章になんか違和感があるんだよね。読みづらい。文章が下手ってのも違うような気がして、端的に「僕と合わない」だと思う。最終章の考察はかなりすんなりと読めたんだけど。

  • 日本の軍歌の誕生から終焉に到るまでの歴史を描いた本であるが、単にオタク本にとどまらず、日本の軍歌を軍歌たらしめる歴史的な背景、軍歌が戦争遂行に果たした役割にも言及。

    フランスの「ラ・マルセイエーズ」ドイツの「ラインの護り」などを意識して作られた明治初期の軍歌は知識人、エリート層の創作であったが、やがて大衆化し、国民的エンターテイメントとなる。新聞社がコンペを催し、当然にレコード会社は売れ筋路線として軍歌を量産する。

    戦時中、軍歌はニュース報道の役割も果たし、広瀬中佐に代表されるキャラクター軍歌を生み出す。

    かくして軍歌は政治的エンタメとして戦争遂行の空気づくりの中核を担うことになる。軍部の強制ではなくマスコミ、メディア、文化人がメディアミックスで場を盛り上げていく。こうなると政府は引くに引けない。ひょっとして軍部だって引くに引かなかったのではなかろうか。

    現代においても、たとえば北朝鮮は軍歌を政治的エンタメとしてうまく活用している。中国においても同様である。歌のもつ情緒が論理を打ち消すのである。

    何故日本は、日本人は戦争に走ったのかという理由の一側面がこのあたりにありそうではないか。

  • 軍歌で振り返る近代日本戦争史。

    「軍神」「歌う国民」「軍国美談と教科書」「理想だらけの戦時下日本」参照。

    以下、引用省略

  • 軍歌が好きなのでもっと、軍歌を極めようと思い読んだ。軍歌の歌詞というのはその時代を映しだす鏡のような気もする。現代の音楽より軍歌を聞いてる方が良いとも思う。

  • 軍歌の話も良かったけど、個人的には「政治とエンタメ」の話に興味がいった。私もニコニコ超会議に変な違和感を感じたので、これからの著作も多いに期待しています。

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著者プロフィール

辻田真佐憲(つじた・まさのり)
1984年大阪府生まれ。文筆家、近現代史研究者。慶應義塾大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科中退。
2011年より執筆活動を開始し、現在、政治・戦争と文化芸術の関わりを研究テーマとしている。著書に『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』、『ふしぎな君が代』『大本営発表』『天皇のお言葉 明治・大正・昭和・平成』(以上、幻冬舎新書)、『空気の検閲~大日本帝国の表現規制~』(光文社新書)『愛国とレコード 幻の大名古屋軍歌とアサヒ蓄音器商会』(えにし書房)、『たのしいプロパガンダ』(イースト新書Q)などがある。歴史資料の復刻にも取り組んでおり、監修CDに『日本の軍歌アーカイブス』(ビクターエンタテインメント)、『出征兵士を送る歌 これが軍歌だ!』(キングレコード)、『日本の軍歌・軍国歌謡全集』(ぐらもくらぶ)、『古関裕而の昭和史 国民を背負った作曲家』 (文春新書) などがある。

「2021年 『新プロパガンダ論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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