ルポ 中年童貞 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344983724

作品紹介・あらすじ

性交渉未経験の男性がこの20年間、増え続けている。いまや30歳以上未婚男性の4人に1人が童貞だ。オタクが集うシェアハウスで理想の女の子の絵を描き続ける32歳、容姿への自信のなさから同性愛を選択した36歳、AV男優に採用されたが女優に嫌がられセックスできないまま自殺した33歳-。彼らに共通するのは、過剰なプライドの高さ、コミュニケーション不全、潔癖な女性観だ。童貞というコンプレックスは彼らの社会的な自立をも阻害する。性にまつわる取材を続ける著者がえぐる日本社会の不健全さ。衝撃のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

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  • いや~読みながら思ったんだけど…
    この本って自分の中の結論ありきで書いてるような…

    『”強くて、かっこよくて、高収入で、コミュニケーション能力にたけてる男性”しか女性は選ばない…残酷だ~!』
    みたいなことを著者は書かれてるけど…

    女性側から見たら「はあ~?」って感じかな
    なんかこれって…スタートからズレてないかい?

    興味深かったのは
    AV監督の二村さんのインタビュー
    「北欧は税金が高いけど、その税金は福祉に使われていて、収入が少なくても働こうと頑張っている人は救おうとしているシステムがある。でもって、酒税が安くて水よりお酒の方が安いから、アル中になって住むところがなくて、もうどうしようもないやっていう人は冬が越せない…。」的な話から始まるキレる中年童貞と凍死の話

    著者は「中年童貞が増えているのは日本社会が不健全なせいだ~!」って言ってるけど…
    うむむ…なんだかな~

  • 著者の取材や分析能力は低く、論旨は的外れだが、内容としては興味深い。
    というのも因果が逆なのだ。著者がくり返し言及する「坂口(仮)」のごとき人物は、中年にして童貞だからそのような「困ったちゃん」なのではない。そんなどうしようもない人間だから、(男性からと同様に)女性に(も)受け入れられず、当然の帰結として童貞であるにすぎない。
    本書のタイトルを正しく付け直すなら、「ルポ中年クズ男」だろう。男性の中には一定数、このようなどうしようもない性悪がおり、彼らはしばしば能力も低く、社会の底辺にあって、同僚となる「運や能力に恵まれずとも懸命に働く善男善女」に多大な迷惑をかけ続けている。そして介護に代表される、(現在の)待遇は悪くとも社会に不可欠な産業を蝕み、崩壊せしめ、ひいては上から下まで幅広い層にとって有害な存在となるのだ。
    そういったクズ人間のありように、童貞かどうかは関係ない。それはいみじくも、ついでのようにほんのわずか触れられている「中年処女」たちのありさまに——著者は意図せぬまま——描き出されている。生まれや育ちに困難があったところまでは同じでも、その結果として彼女たちはあきらめなくてもいいところであきらめ(ありえない高望みを並べる中年童貞とは真逆)、他者を攻撃することはけしてない(これも真逆)。中年童貞と違って、中年処女は静かだ…と著者が話を聞いた、数多の中年童貞および処女を見続けてきた識者は証言する。中年童貞たちの問題が「童貞」にあるのではないことは、この一点を取ってみても明らかではないか。
    にもかかわらず、男女ともにあてはまる「性体験の有無」という属性に原因をこじつけ、さらに「オンナどもが金持ち・チャラ男・ワルに群がる馬鹿(とまでは著者は明言していないが、言っているも同然である)だから、あぶれた男が童貞をこじらせる」と、その責任を女性になすりつけている。本書のレビューを見たところ、「自分の偏見ひとつで童貞男性を貶めすぎ!」というものが多かったが、貶められているのはむしろ女性のほうだろう。そこはまるきり問題にされず、男性の被る害ばかりが声高に批判されるさまは、いかにもいつもの「男尊女卑ニッポン」である。

    ところで、男性が必ず主張する「オンナは善良な地味男よりも金持ち・チャラ男・ワルに群がる」というのは何なのだろうか? 私も女をやって長いが、自分自身は言うに及ばず家族・親族・友人、さらにそれらのそのまた友人知人を辿っても、そのような実例に接したためしがない。
    考えてもみてほしい。女性のセックスには不可避的に、妊娠のリスクがつきまとう。そしてひとたび孕んでしまったら、平均たった3万円の養育費すら、支払い率はわずか2割。しかもそれをバックレた男性へのペナルティは何もなく、女性ばかりが「自己責任」と叩かれる…私たちが生きているのはそういう、恋愛が破れてしまった場合(に限らないが)、極端に女性に不利な社会なのだ。そんな状況下で、好きこのんで「より不実」な男を選ぶ女性が、そんなに大勢いるだろうか?
    これは知能程度の問題ではない、自己防衛本能の話である。生物としてそこまで「壊れて」しまっている個体が、はたしてそんなに大多数、そんなに長く生き延びることがありえるだろうか…?
    ことほどさように、「オンナが金持ち・チャラ男・ワルを選ぶから悪い!」という主張には根拠がない。

    ただ前述したように、この社会に一定数いる「困ったちゃん男」がどうしようもなく有害であることを、はっきりと可視化してみせた。超高齢化社会を目前にした今、この指摘はとても意味があるものだと思う。
    こういった「困ったちゃん男」を作り出さないこと——そして、どうしても一定数生まれてしまう「困ったちゃん男」にいかに対処するか(ベーシックインカムから酒瓶まで…)。
    それを考えていくことばかりは、確かに著者が言うとおり、これからの社会の急務であろう。

    2018/2/4読了

  • 本業のフリーライターに将来的な不安を抱えていた著者の中村淳彦氏が、副業として介護事業をしていたことがあった。その時、深刻な問題であると中年童貞の存在に気づいた、とある。

    常識に欠けており、世間から徹底的にズレている。コミュニケーション下手で、自分を客観視できない。幼い頃から、勉強、スポーツ、恋愛などに成功体験がない。女性に対して潔癖を求める。という共通点を持つ。(高学歴中年童貞は勉強以外)

    そのため、彼らは時勢に流されて、スキル不要な職業を転々とする。現在は介護業界である。注意すれば逆ギレし、新人が入ればイジメをし、老人を虐待する。真面目で優秀な職員は疲弊し、施設全体が壊れていく。

    そんな暗澹たる状況ながら、数少ない解決策として、怖い親父のような存在に、きちんと怒られる経験の必要性というのがあった。その具体例は、最終章にあるネトウヨの宮田氏だけであった。この問題の根深さを考えたら、たった1例だけでも良しとしなければならないだろう。

    中年童貞の存在を、その言葉と共に世に知らしめた中村氏の力作だと思う。

  • いまや30歳以上未婚男性の4人に1人が童貞だとか・・・そんでそーゆー人たちに共通するのは、過剰なプライドの高さ、コミュニケーション不全、潔癖な女性観、らしい。
    童貞というコンプレックスは彼らの社会的な自立をも阻害する。

    もちろん、みんながみんなそうではないのだろうけど、読んでみると「あ、なるほどなー」と思うことも、しばしば。

    やっぱ、ちょっと変わった人たちだから、女性にも敬遠されちゃうのかなー?
    容姿が悪いからって思いこんでる人もいるみたいだけど、そこじゃないんだよね。容姿がフツーでも、童貞の人はいるもんねぇ・・・女性に対する期待が高すぎたりするのかな?

    それとも童貞でいる理由をそのへんに持ってってるだけなのかもだけど。

    なんか福祉関係に多いとかなんとか。しかも、トラブルメーカーだったりするらしい。自己肯定がクセになってるのかも?んで、空気読めないっつーね。。。

    とりあえず「体験」って大事よねー、ってことかな?

    なかなか、いろいろ考えさせられるルポだったのだー!

  • 日本を、プライドがだめにする。

    暑いし光熱費を節約するために涼しいところで本を読もう、と気になっていた初めて行く図書館へ。

    結果、読みたい本を読まずに開架で見つけた本を読みふけってしまうというあるある。

    人目に付きながら、キャッチーなタイトルなこちらの本を。

    すごいですよ、長野県の人口と同等の人数が、30歳以上の中年童貞であると、最初のページで提示されます。何たるインパクト。

    第一章から出るわ出るわ、社会とうまくコミュニケーションの取れないおっさんたちが。

    こういった人たちのタイプとして、自分に自信のないタイプと 自己を過大評価してしまうタイプとが挙げられています。

    ああ、いるいるこんな人たちと職場で見かける困ったさんの事を思いながら読み進めていきました。

    過大評価タイプの共通項がどうも「プライド」だと思うんですよね。

    このいらんプライドが、他者との交流を邪魔して、更なる負のスパイラルへ墜ちていく図式を完成させるのだと、こういった本を読むと感じます。

    そんな中、第六章でにわかにおお!と私のテンションが高まります。

    こちらでも紹介させていただいております田房永子さんが登場するじゃないですか。

    (これ、出たいなぁ。田房さんに分析・コメント頂きたい 「うちの母ってヘンですか?」田房永子 秋田書店)

    こういった日本の問題点は、田房さんのテーマとリンクするのだなぁと。そして私もそういうつながりのある本を選んでしまうのだなぁと。

    母と娘の問題を投じる田房さんが論じる母と息子。

    そちらの方が、残酷だなぁと、ぐさぐさと突き刺さる思いになりました。

    毒親に対し、女性は耐えられなくなり、病んで気づいて逃げ出す事もできるが 男は一生母親の保護の元、社会を母親の用水だと思って終えられる。

    まさにその通りだと、我が身を持って感じます。

    私は家を出て、今は数年に1度しか家に戻らず、男兄弟は大学卒業後定職に就かず親にパラサイトして30歳を迎えようとしている。

    さらに、そこから小川氏(仮名)、二村 ヒトシ氏へのインタビューで「父親」へと話題が移ります。

    団塊の世代が父親になる力がなく、それ以下の世代の男に子供を育てられない。
    ああ、まさにそれもその通り!と叫びたくなるような言葉。

    そういった中必要とされるのが父親的存在を持っていう人の存在。
    血のつながりはなくとも、会社や、コミュニティで絶対的な権力の中で再教育が必要であると。
    翻ってそれが現代社会の中でどれだけ困難なことかということを考え、最終的にため息をつくことに。

    文中でもあったように、邪魔なプライドが高く、コミュニケーション能力の低いこういった人たちは、北欧の凍死する人たちのように、淘汰されるほかないのか。

    女性の社会進出に伴い、確かに私も、自分一人を養うことはできる生活を送れていて、そこで収入も低くコミュニケーション能力も低いのにプライドだけが高い男と関わる必要は無いと感じてしまいますからね。

    危機的な人工減とそれに伴う困難を目の当たりにしない限り、どんどん日本の人口が減っていくんだろうなと思った次第です。

    中村さん名前のない女たちか職業としてのAV女優とか、以前から気になる本の作者さんでした。

    是非、読みたいな。

  • 童貞の中年の恐ろしさがよくわかる。とにかく客観視できない彼らは、他人と会話ができない。実は、結婚し家庭をもち、そこそこの企業でそこそこの役職についた中年でも似たような傾向が見受けられる。男性特有の悪徳なのか。

  • 運良く自分の世界で交わらないだけで、本当にいるんだろうな、書かれている登場人物救いなさすぎる

    以下、パンチライン。

    私が介護現場で目撃した中年童貞たちは、自己完結して閉じ籠もっているだけでなく、他人を攻撃したり、常識を逸脱したり、周囲にも迷惑をかけている人たちだった。

    女性との性交を望んでいるのに逃避する彼ら

  • 介護事業を携わるようになった著者が、混沌とした現場で「中年童貞」を目の当たりにしたことをきっかけに始まった連載をまとめた書籍。プライベートな恋愛や人間関係で女性と性行体験がない30歳以上の男性を「中年童貞」と定義し、その本人たちや性産業に関わる人に話を聞きに行く。

    登場する「中年童貞」のほとんどは、精神的にバランスを崩してしまった人ばかりで、コンプレックスや人間関係のつまづきなどで性格がねじ曲がり、客観性を失って自尊心が肥大していった結果、オタクコンテンツに極端にのめり込んだり、10年以上も前の想い出に浸ったり、ネトウヨに走ったり、部下へ攻撃をするようになる。

    また、介護業界は圧倒的な人手不足なため採用のハードルが低く、「中年童貞」を含む「なにもできない人」が集まりやすくなって混沌とした状況となっているという。パートナーを見つけるための婚活パーティーも年齢、外見、収入でシビアに査定されるため、「中年童貞」に付け入る余地はない。

    おそらく「中年童貞」をとりまく状況のひとつの側面、極端な例にすぎないのであろうが、非常に厳しい内容で読んでいて暗澹とした気分になる。読書会に参加して自ら交友関係を広げようとしている宮田氏や、この人の言うことだったら聞いてもいいというお父さん的存在が必要だと説くAV男優の小川氏がわずかな希望を抱かせてくれる。

    「中年童貞」はパーソナルな問題ではなく、社会の個人化、少子化、婚姻率の低下、雇用の非正規化、関係性の貧困など、社会的要因が重なって生まれた存在である。自身が「中年童貞」であるかどうかにかかわらず、宮田氏のように自分の弱点すらも笑える明るさと、居場所を見つけて積極的に他者とかかわっていくことが重要だと再確認させられた。

  • 読み物としてこれを面白いと感じていいのか疑問に思うほど"中年童貞"というテーマに肉薄した、薄暗い温度感を纏っている作品。ルポとしては素晴らしい。
    ただ日本の恋愛観の特色をあまりに"歪み"として捉えて取り上げすぎなのかな?とは思った。その分裏付けるような凄惨な事例が揃ってしまってるから何も言えはしないけど。

  • 童貞が悪いとは思わないし事情も人それぞれだと思う。
    が、客観的に魅力的でない人物にいつかは無いだろうと思った
    選ばれる理由がない

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著者プロフィール

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

「2020年 『日本が壊れる前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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