人食い: クラウス・コルドン短編集

  • さ・え・ら書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784378007656

作品紹介・あらすじ

はじめて訪ねてきた父の恋人を、とまどいと不安でむかえるロニ。飛行機で飛ぶことは夢の夢、空港のそうじボーイ、オスマン。「人食い」と友が呼ぶ男を、さらに追いつめる元になったぼく。寝ているあいだにしばられて、声もだせずにいるマヌエル。人目をおそれて、外へ出たがる妹を行かせまいとするビョルン。お金をとったと疑われても、わたしじゃないと言えないクララ。みんな、小さな勇気と、少しのやさしさがほしい子どもたち。

感想・レビュー・書評

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  • 児童文学の短編集で良いものは少ないのだが、これは良かった。
    まだ、ドイツが東西に分かれていた頃の物語だが、今読んでも古臭くない。
    「飛んでみたいか?」では、トルコに住む貧しい少年の憧れと絶望と希望を鮮やかに描いている。オスマンは空港の掃除夫をしている少年。毎日外国へ行くエリートたちを横目で見ながら、いつか自分も外国(先進国)に行きたいと夢見ている。父も毎日の生活費を稼ぐので精一杯のタクシードライバー、飛行機で外国へ行くお金があるはずがない。しかし誕生日が近づいて、父が「お前も飛行機に乗ってみたいだろう」と言った言葉に期待を抱き始める。もしかして、自分の為にお金を貯めているのでは?と。それだけに、父の心のこもったプレゼントにガッカリを通り越して、自分の未来の希望が全て消えてしまったような絶望を抱く。この短編がいいのは、最後に救いがあること。現状に満足しているように見えた幼なじみの少女も同じように未来に希望を抱けずにいること、彼女の振る舞いで父に向けた感情の誤りに気付き、少女と心を通わせることで、未来への希望がよみがえる。これは少年が大人になる瞬間を描いた小説なのだ。はじめ少年は自分の将来が暗いことは父を含めた大人の責任で、自分は犠牲者だと感じている。しかし最後の場面では、自分の将来を自分で変えていこうとしている。こういうことを短い枚数でさらっと書けるのは、相当な腕だと思う。
    表題作、「一輪車のピエロ」も良かった。どれも深い余韻を残す作品で、こういう作品が教科書に載ったらいいのでは、と思った。読み飛ばさず、丁寧に読ませないと、普通の子どもには読み取りが難しいかもしれない。
    表紙絵、挿し絵が、良くない。これでは今どきの子どもは手に取らないなあ。

  • クラウス・コルドンという作者のことを全く知らなかったが、『人食い』という児童文学らしからぬタイトルに惹かれ、図書館で借りてみた。
    これが児童文学かと思うほどにレベルの高い作品だった。児童文学らしさは文字の大きさ以外には感じられなかった。
    ベルリン三部作なども読んでみようかと思う。

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著者プロフィール

著者 クラウス・コルドン(1943~)
ドイツのベルリン生まれ。旧東ドイツの東ベルリンで育つ。大学で経済学を学び、貿易商としてアフリカやアジア(特にインド)をよく訪れた。1972年、亡命を試みて失敗し、拘留される。73年に西ドイツ政府によって釈放され、その後、西ベルリンに移住。1977年、作家としてデビューし、児童書やYA作品を数多く手がける。本書でドイツ児童文学賞を受賞。代表作に『ベルリン1919 赤い水兵』『ベルリン1933 壁を背にして』『ベルリン1945 はじめての春』の〈ベルリン3部作〉などがある。

「2022年 『エーリッヒ・ケストナー こわれた時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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