なぜ、いまヘイト・スピーチなのか ―差別、暴力、脅迫、迫害―

  • 三一書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784380130090

作品紹介・あらすじ

私たちが生きる日本社会を、悪意と暴力に満ちた社会にしないために-「ヘイト・スピーチ」を克服する思想を鍛えるためのガイドブック!

感想・レビュー・書評

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  • 全く理解できない価値観を
    抱いている人間を理解しようとするのは
    至難の業である
    それでも、その言動から、その事象から
    「なんでだろう」と考える糸口は
    つかんでおきたい

    自分がされて嫌なことは
    他者にもするな!
    に収まりきらない
    「なぜ、いま」を
    考え続けている

  • ヘイトスピーチはマイノリティの心身、生活、生命に申告な害悪をもたらし、また社会にも差別と暴力を蔓延させ諸民族間の平等を前提とする平和的な友好関係を破壊し、戦争やジェノサイドを誘引する害悪をもたらす。そのような申告な法益進学を阻止する必要性、緊急性を直視すれば、法規制の必要性は明らか。

  • 正鵠を得、誤解の余地を残さないための文体ってこういうものか、と思いました。これをもうちょっと生の感情に訴える文章にすると「ヘイトスピーチってなに? レイシズムってどんなこと? (のりこえブックス)」になる気がします。

  • 前田朗編『なぜ、いまヘイト・スピーチなのか 差別、暴力、脅迫、迫害』三一書房、読了。「憎悪言論」と訳されるように言論・表現の自由のうちで理解されがちだが、果たしてそうなのか。http://31shobo.com/2013/08/13/%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%80%81%E3%81%84%E3%81%BE%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%81%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B/ 本書は最良の「ヘイト・スピーチを克服する思想を鍛えるためのガイドブック」。

    1「なぜいまヘイト・スピーチなのか」、2「憎悪犯罪の被害と対応」、3「ヘイト・スピーチ規制の法と政策」の順に、問題の所在、応答、展望する構成。ヘイト・スピーチは単なる言論ではなく歴史的構造的に生成された「ヘイト・クライム」であることを明らかにする。



    積極的に差別を容認しないが憲法学は「表現の自由」のうちが多数説。しかし事柄を表現の自由の問題と誤解し、被害には目を瞑り、規制反対の代換案を提示できない解説の現状は識者が「差別放置知識人」として機能しているとの指摘に瞠目する。




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    日本国憲法に基づいた処罰

     ヘイト・スピーチ処罰の世界的動向を紹介してきました。それでも一部の法律家やジャーナリストは「表現の自由が大切だからヘイト・スピーチ処罰をしてはならない」と強弁します。表現の自由の意味を理解していないからです。
     第一に、日本国憲法二一条は「一切の表現の自由」を保障しているという理解です。日本国憲法第二一条一項は「集会、結社及び言論その他一切の表現の自由は、これを保障する」としています。「その他一切」とは、集会、結社及び言論、表現と並列して記されているもので、表現手段の差異を問わないという趣旨です。何でもありの無責任な表現の自由を保障する趣旨ではありません。そのような解釈は憲法第一一条と第九七条を無視するものです。
     第二に、歴史的教訓です。国際人権法や欧州の立法は、二つの歴史的経験に学んでいます。一つは、ファシズムが表現の自由を抑圧して、戦争と差別をもたらしたことことです。もう一つは、ナチス・ドイツのユダヤ人迫害のように、表現の自由を濫用して戦争と差別がもたされたことです。両方を反省しているから、国際自由権規約第一九条は表現の自由を規定し、同二〇条が戦争宣伝と差別の唱道を禁止しているのです。日本では、前者ばかり強調し、後者の反省を踏まえようとしません。
     第三に、表現の自由の理論的根拠です。一般に表現の自由は、人格権と民主主義を根拠とされます。それでは新大久保に大勢で押し掛けて「朝鮮人を叩き殺せ」と叫ぶことは、誰の、いかなる人格権に由来するのでしょうか。日本国憲法第一三条は人格権の規定と理解されています。第一三条を否定するような殺人煽動を保障することが憲法第二一条の要請と考えるのは矛盾しています。第二一条よりも第一三条が優先するべきです。民主主義についても同じです。「朝鮮人を叩き出せ」と追放や迫害の主張をすることは、欧州では人道に対する罪の文脈で語られる犯罪です。これこそ民主主義に対する挑戦です。
     第四に、法の下の平等を規定する憲法一四条を無視してはなりません。「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とする第一四条は、日本国籍者だけではなく、日本社会構成員に適用される非差別の法理です。第一四条が第二一条より優先することも言うまでもありません。
     日本国憲法は、人格権、民主主義、法の下の平等、表現の自由を保障していますが、その具体的内容はそれらの合理的バランスの下に保障する趣旨です。人格権、民主主義、法の下の平等を全否定する「差別表現の自由」が保障されるはずもないのです。
    前田朗「ヘイト・スピーチ処罰は世界の常識」、前田朗編『なぜ、いまヘイト・スピーチなのか 差別、暴力、脅迫、迫害』三一書房、2013年、181-182頁。

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    本書は部落、アイヌや沖縄に対するヘイト・スピーチの現状も報告。お勧めの一冊です。

    エリック・ブライシュ『ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか』(明石書店)も読み始めた。 http://www.akashi.co.jp/book/b165564.html 「我々は自由を愛し、レイシズムを憎む。しかし、そうした価値が衝突したとき、我々はどうすればよいのだろうか」。自由と規制の軌跡を描く1冊

  • ヘイトスピーチの特徴
    ・インターネットを駆使
    ・若者の参加
    ・主張に合理性と一貫性がない
    ・右翼政治家と繋がっている

    ヘイトスピーチは今にも暴力に繋がる

    「憲法学の多数説は「表現の自由からヘイトスピーチを処罰できない」としています。」

    法規制反対論者は、差別と迫害の被害に目を向けていない

    在日朝鮮人に対しては、戦後ずっと同化政策が行われているといえる

    民事訴訟では限界→ヘイトスピーチに対する抑止力にならない

    「人権差別撤廃条約」に加入しているが、国内法ない
    国連からも再三勧告されている

    ヘイトスピーチ自体は最近の言葉であるが、在日朝鮮人らマイノリティーへの差別的意識は昔からあった

    「「差別を犯罪と見做さない」社会」

    「言論には言論で立ち向かう」べきと言われるが、あまりにもひどい差別的発言を受けると何も言えなくなる。反論しても、相手は全く合理的な意見でない以上意味がない

    朝鮮学校の児童に対して、「普段は人権や国際理解を唱える京都市や市教委は何のケアもし」なかった

    民事訴訟すれば、よりネット右翼などに傷つけられる危険性高まる

    「根拠なく他人の名誉を傷つける表現は、表現の自由の許容範囲を逸脱しています。」

    現行法(侮辱罪や名誉棄損罪)では、ヘイトスピーチの人種差別的な背景や、波及効果が量刑に反映されていない

    「学校の前でまだ学校に関連する事項について言動をしたからかろうじて犯罪となった」

    「表現の自由が万能の権利ではないことは名誉棄損罪・侮辱罪による制限から既知のこと」

    人種差別撤廃条約の第4条(a)、(b)を日本国内で適用できないことが、ヘイトスピーチ対策に対する障害。



    「表現の自由を口実に人種差別や戦争宣伝が行われ、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害や侵略戦争を許してしまった」

    京都朝鮮学校襲撃事件
    警察積極的に止めず
    威力業務妨害、侮辱罪等で有罪
    抑止力に足る十分な刑罰とは言えない
    裁判所が重視したのは、以後業務妨害等の物理的な侵害行為を繰り返すか、否か
    「本件の悪質性、被告人らの反省、そして被害の深刻さが反映されない結論」

    仲間を集めるために過激に

    イギリス
    「人種的憎悪(皮膚の色、人種、国政又は民族的国民的出身によって定義づけられる集団に対する憎悪)を扇動する意図をもって侮辱的又は口汚い言葉や動作を用いたり、出版することを犯罪としています。」

    欧州のほとんどの国に何らかのヘイトスピーチ規制法がある

    日本はナチス・ドイツのユダヤ人迫害のように、表現の自由を濫用して戦争と差別がもたらされたことを考慮していない

    「外国人及び民族的マイノリティの生活全般及び差別の実態についてのデータが必要」
    →ヘイトスピーチ規制法の後押しに

    緊急性の面を鑑みて、まずは民事規制法で対処すべきではないか?

    歴史等、人種差別撤廃教育を行う必要がある

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著者プロフィール

一九五五年札幌生れ。朝鮮大学校法律学科講師。日本民主法律家協会理事、日本友和会理事、救援連絡センター運営委員。著書に『軍隊のない国家』(日本評論社)『旅する平和学』(彩流社)非国民シリーズ3部作『非国民がやってきた!』『国民を殺す国家』『パロディのパロディ――井上ひさし再入門』(以上耕文社)『ヘイト・スピーチ法研究序説』『ヘイト・スピーチ法研究原論』『ヘイト・スピーチ法研究要綱』『黙秘権と取調拒否権』『憲法9条再入門』(以上三一書房)『500冊の死刑』(インパクト出版会)、共編著に『思想の廃墟から』(彩流社)『思想はいまなにを語るべきか』『新にっぽん診断』(三一書房)等。

「2022年 『令和から共和へ 天皇制不要論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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