小さい“つ”が消えた日

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制作 : 岩田 明子  岩田 明子  小林 多恵  小林 多恵  トルステン・クロケンブリンク 
  • 三修社 (2008年10月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784384055146

小さい“つ”が消えた日の感想・レビュー・書評

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  •  日本語に最近興味津々の奥さんが図書館で借りて来てた本。絵本か童話のような小作品だけど実に味わい深い! 良書ですね。

     大筋は、日本語のひらがなの文字を擬人化。それぞれにキャラがあり、五十音村で楽しく暮らしている。とある日、「あ」が自慢話をはじめたことから、それぞれが、あーだこーだと言い始める。そのうち小さい「っ」は、発音されないってことで馬鹿にされ、翌朝「っ」は村を出て行ってしまう。
     すると、さぁ大変、今までその存在を軽視していたが「っ」が居なくなったことで日本語の世界にどんな騒動が巻き起こるかをユーモアたっぷりに描くもの。

     作者はドイツ人。20代のころから日本語を学び、外国人ならではの視点で日本語を捉えているところが面白い。日本人なら「っ」と「つ」が別人格とか思わないし、「っ」は口がきけない(音がない)なんてキャラ付けはしなかったかもしれない、と感心する。著者は、まずは母語で書いて、自分で日本語訳し、日本人に監修してもらったそうだ。織り込まれたエピソードの数々は、どこまで彼が思いついたものだろう。

     弁護士とクライアントとの会話が面白い。
    「どうしましょうか?訴えますか?それとも訴えませんか?あなたからOKがあれば、訴えますよ」
    と言いたいところ、小さい「っ」がないとこうなる。
    「どうしましょうか?歌えますか?それとも歌えませんか?あなたカラオケがあれば、歌えますよ」
    (ふざけた奴だと、弁護士は依頼を断られるわけだ)

     著者は日本語を勉強しながら、小さい「っ」が入る入らないで意味が全く異なる似たような言葉に驚いたのだろうな。そんな体験から生まれたのかなあと思いを馳せながら読み進む。

     このお話が、そうした日本語の再発見になるだけでなく、小さい「っ」を追い出した五十音村のほかの文字たちのように、普段、見落としがちな価値に気づくことの大切さを教えているところ。どんな個性にもちゃんと存在価値があることを示唆していること。村人たちが再び小さい「っ」を迎えいれるときの言葉は非常に深い。

    「沈黙と言う瞬間を作り出す君がいるから、音が聞こえる。影があるから光が見えるように。谷があるから山がある。黒があるから、白が見える。」

     さらには、村を追い出された小さい「っ」にしても、自分の村という小さな世界では知りえなかった新たな発見、自分と同じような言葉は発しないけど素敵な存在を知ることで成長していくところか。それゆえ、村人に再び迎えられて、自分に酷くあたった村人たちの謝罪を大きなこころで受け入れられるようになる。そんな成長譚でもあるところが素晴らしい。

     そんな大きなストーリーの他に、随所に配された、ひらがなの個性、キャラ付けにニンマリしながら、あるいは「そうかな~」と日本語ネイティブの自分と、外から見た日本語の視点を持つ著者の持つイメージの違いを味わいながら興味深く読めるのも面白い点。著者は、小さい「っ」というキャラを見出して、それをスケープゴートにしてストーリーを組み立てたけど、たとえば「を」なんかが、「お」のニセモノとの誹りを受けて村を追い出されたら?とか、小さい者同士「ゃ」「ゅ」「ょ」と結託して村を出たらどうなったとか、いろいろ想像が働いてしまう。

     挿絵もかわいらしくて、いいね。この挿絵も日本人が書いたんじゃないってところが、日本語を扱った物語なのにどこか異国情緒あふれるお話になっているところも面白いところだ。

     この話を元に、芝居の舞台もあるそうな。それはそれで面白い作品が出来上がりそうだ。脚本家も腕の見せどころ、本書に出てくる弁護士の言葉以外に、他にどんな気の利いた、あるいは時代性と取り入れた例を生み出せるか、日本語のプロとしての楽しみもあるのではないかと想像する。

     短い話なので30分もあれば読めてしまう。
     大人も、子どもも楽しめるお話でした(ちょっと政治家批判が多いのだけど・苦笑)。

  • とっても、とっても、いい本です。
    温かくて、深くて。
    いろんな人に読んでほしい。

  • 文字が愛しくなる物語。
    小さい「っ」は、単独では存在し得ないけれど、けれどもなくてはならない存在。
    普段は意識しないけれども大切なもののことを考える、よいきっかけになりました。

  • 小さい「つ」が家出から帰ってきておかえりなさいパーティーで50音村のみんなが休んでその1日はしゃべれないと書いてあって、それを想像すると面白かった。

  • 井上ひさしとか阪田寛夫とかまどみちおとか、日本語の手練れが書いた言葉遊びの文章とは違って、ドイツ人が書いているので、日本語の言葉遊びとしてすごいとは思えないが、それだけに軽く読むことができる。「同じように一文字抜けると全く意味がちがってしまう文章を作ってみよう」とか、授業で応用もできる。しかもメッセージがまたわかりやすい。小さくて目立たないものにも、じつは大きな価値があるんだよ、っていう。学校の先生が好きそうな。
     すらすら読めるので、読むのが苦手な人にも薦めやすい。

  • 懐にいれておきたくなるような、かわいい、愛しい、一冊。

  • 発音されなくても必要なことば。

    なるほど。

    これを日本人じゃない方が書いてるのがすごい。

  • 音読によさそう。

  • 以前にも薦められていたが、先延ばしにして読んでいなかった本。改めて違う人から薦められたのえ読んでみた。
    五十音村という設定からして大変可愛らしく、イラストもかなり好み。もっと早く読めばよかった。しかし、内容は可愛らしいだけでないところがさらにいい。日本語が母国語でないひとが書いたとはとても思えない。・・・むしろ母国語でないゆえか?
    新鮮な気持ちで日本語に向き合えるような一冊である。

  • 字を擬人化するアイデアはありそうだし、小さい「つ」が抜ける話は、おとしものしちゃた(中山千夏・文/長新太)で経験済みだけど、これを母国が日本語じゃないドイツ人が書いたということが、なんとなくおもしろい。母国じゃないからこそ、こういう視点で書けたのかもしれない。「ダーリンは外国人」のトニー・ラズロみたいな感じか。
    にしても作者は相当エリートだね。
    英語で書いたものを本人が日本語訳し、さらに日本人に日本語を監修してもらい…というけっこう手間かかった作り。

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小さい"つ"はみんなの笑い者。「自分は必要ない…」と家出をしたから、さあ大変。五十音村にすむ言葉の妖精たちの物語。

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