- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784384055146
感想・レビュー・書評
-
登場人物は「文字」たち
活版印刷所のおじいさんに会いにいくことが好きだった「私」は、ある日、文字の片づけを手伝いながらおじいさんに尋ねた。「もし、小さい“つ”に音がないのなら、なくてもいいんじゃないの?」。おじいさんは「いやいや」と答え、私に、小さい「つ」が消えてしまった数日間の話をしてくれた。
ーーー
それぞれの文字たちには性格があって、いいやつも悪いやつもいるし、強みもあれば弱点もある、という作者の発見に引き込まれた。
「あ」さんは、自慢好きのおじさん。あいうえお順でもアルファベットでもいちばん初めにくる。つまり偉いと思っている。
「を」さんはいつも文字と文字の間に自分を置き、中立的な立場をくずさない。
「か」さんは優柔不断。「やろうか? それとも、やめておこうか?」と、いつも悩んでいる。
「は」「ほ」「ひ」「へ」「ふ」さんは、みんな笑うことが大好き。「ははは」「ほほほ」「ひひひ」「へへへ」「ふふふ」って笑い出す。
というように。
ある日文字たちが「だれがいちばんえらいか」で言い争うのだけど、なかなか決まらない。そんなときに誰かが叫ぶ。「誰が一番えらいかはわからないけど、誰が一番えらくないかは知ってるぞ。それは小さい“つ”さ。だって、彼は音を出さないからな。そんなの文字でもなんでもないさ」
悲しくなった小さい「つ」は家出をし、新聞、雑誌、本、手紙、ノート、ポスター、人の会話からも小さい「つ」が完全に消えてしまう。このときの人間たちや文字たちの混乱ぶりがとてもユーモラスでおもしろい。
文字はどれ一つとして欠けてはならない大切な存在だということがすごくわかりやすく伝わってくる物語だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
沈黙がいかに重要で会話に欠かすことのできない存在か。
この物語が、日本語を母語としない著者から生まれたのがすごい。 -
ビブリオ大会で高校生が紹介していた一冊。
-
子が買った本が
面白そうで
読んじゃった。
ビックリしたのが
作者が
日本人じゃないって事。
なかなか
面白い本でした。 -
sg
発想が面白い。
一度自分で日本語訳したのすごい -
私が読んだのは新風舎から2006年に刊行されたもの。
(2008年に倒産したのね…)
さまざまな文字たちが住んでいる五十音村で、音をもたない小さい「つ」は、ほかの文字たちからバカにされていました。そんなある日「つ」は村を飛び出してしまいます。すると新聞やテレビから小さい「つ」が消えてしまって…。
『唯一困らなかったのは、国会で朝から晩まで演説しかしていない政治家だけだった。彼らはいつものようにしゃべり続けた。政治家も、それを聞いている人たちも、彼らの演説の筋が通っていないことにはまったく気づかなかった。
ある政治評論家によれば、それは政治家の演説にはもともとほとんど意味がないから、日本語がおかしくなっても、意味が通じないことに変わりがない、ということだった。』
ってのが面白かった(笑)
書いたのは外国の人なのに舞台は日本で五十音の話?よく見たら訳者もいない!(監修者はいる)と思ってたら、、
著者は日本語・ドイツ語・英語・フランス語・イタリア語が堪能なんだそうな。 -
すごい可愛かった(o^-^o)
普段は見ないようなもの。でも消えたら困る。
そういうものってありますよね^^
(日本人の私から見た)外国の方が書くお話って、ユーモアがあって好きです。 -
”ある日、小さい“っ”が世の中からいなくなったら何が起こるのか…。
誰にもその人にしかできない役割があり、そのことで世界が成り立っていることを教えてくれる素敵な寓話。日本語をモチーフとした話ながら、著者がドイツの方であることに驚く(かわいい挿絵も同じくドイツ生まれの生物学者の方の筆によるもの)。ジャパネットたかたの高田社長が全社員にオススメされた一冊。
<読書メモ>
・小さい“つ”がいつもしていたこと。それは、寝る前にその日を思い返して、学んだことを数えることでした。それを私もやってみようと思います。
まず一つ目は、どんなに小さくても人によいことをすれば、した以上のことが返ってくるっていうこと。それが知らない人であろうと関係ない。
二つ目は、どんなことでもやる前からあきらめたりしないこと。ちっぽけに思えることでも、そこからどんな大きなことが始まるかわからない。
三つ目は、その時は意味がないと思われることでも、後々、それが本当は大切なことだったと気づくことがあるということ。
(「復刻版によせて」より。作者ステファン・フォン・ローさんの言葉から)
<きっかけ>
ジャパネットの高田さんが紹介していた一冊。誰にもその人にしかできない役割がある、ということ。” -
言葉の大切さを考える心あたたまる物語。