新明解国語辞典 第5版

制作 : 金田一 京助 
  • 三省堂
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本棚登録 : 117
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (1557ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784385130996

作品紹介・あらすじ

昭和47年刊行の「新明解国語辞典」の最新第5版。収録語をさらに追加、7万3千語を収録、重要語3439語にはマークをつけて区別してある。巻頭に漢字索引が付く。

感想・レビュー・書評

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  • 本屋大賞コンプリートプロジェクトのために「舟を編む」を読んでいると主人公馬締(まじめ)さんが、有名な新明解国語辞典について意義を挟む場面があった。つい、古本市場で探してしまった。年初めの幸運か、小説と同じ「第5版」が見つかり買い求める。

    有名な「恋愛」項目は以下のように書かれている。
    れんあい【恋愛】-する 特定の異性に特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いながら常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて歓喜したりする状態に身を置くこと。「ー結婚」「ー関係」

    馬締は「個性的な語釈ではありますが、恋愛の対象を『特定の異性』に限ってしまうのは妥当でしょうか」と考え込む。「舟を編む」の刊行は2011年、まだ第七版の頃である。実はネットで調べました。語釈自体は独特のままでしたが、問題の箇所は『特定の異性』のままでした。ところが、2020年発行の『第八版』において、ここが「議論の末」差し替えられています。つまり「特定の異性」→「特定の相手」へ。

    この一事は、新明解が第四世代に移ったぐらいのインパクトがあるのではないかと思う。新明解は、金田一京助が主導した第一世代、山田忠雄の第二世代、その後の柴田武主導の第三世代へと移ったと評価されている。現代が誰の主導か知らないが、そういうことなのかもしれない。

    実は「舟」という言葉は、この「新明解国語辞典」で既に扱われている。「第五版序」において編集委員会代表の柴田武氏が以下のように述べている。

    本辞典が個性的であると言われる、その個性は、主幹 山田忠雄の資質から生まれたものである。その主幹をわれわれは昨年(1996年)2月に失ってしまった。船頭がいなくなった舟の中に取り残されたわれわれは、どうすべきか茫然とした。同年の秋に第五版を出す予定で進めていた編集作業がストップした。しかし、関係者が相寄って態勢の立て直しを図り、ここに第五版を送ることができた。(1p)
    ←ずっと「舟を編む」という題名に違和感があった。確かに言葉の世界を海に例え、辞書を舟に例えるのは秀逸ではあるが、小説が有名になりすぎて「舟とは辞書のことだ」ということが人口に膾炙しすぎたように感じていた。おそらく三浦しをんは、「ここから」題名を発想したと思う。だとしたら一般的な言葉にすることは慎まねばならない。ちなみに新明解で「船」の項目に語釈はなんと、6つも紹介されているが、辞書という意味は一切ない。

    私も辞書を紐解き、言葉の海をむやみやたらに泳いでみる。幾つかの発見があった。

    私はブクログに載せる「感想」のことを、「感想」と書くのはダサくて嫌で、「書評」と書くのは堅苦しくてできるだけ避けることにしていた。最近は主に「レビュー」と書いてきた。マイリストに「Bestレビュー」と書くのはそのためである。そこで「レビュー」を新明解で引いてみた。
    レビュー①(review)評論。「ブックー(=書評)」②(フrevue)ダンス・音楽を主とし、寸劇などをはさんで、場面を次々に変えて行く、はなやかなショー。
    ‥‥書評は、「ブックレビュー」が正しいのであった!ちなみに「書評」語釈に「レビュー」は載っていなかった。ネットを見ても、ブックレビューはあるが、レビュー単体で書評とはなっていなかった。‥‥どうしよう。私は変えた方がいいんだろうか。

    ちなみに、「読書」について、新明解さんは以下のように丁寧に説明している。そこまで定義していいものだろうか?とふと思うが、私としてはこれに賛意を表したい。

    どくしょ【読書】ーする  (研究調査や受験勉強の時などと違って)一時(いっとき)現実の世界を離れ、精神を未知の世界に遊ばせたり、人生観を確固不動のものたらしめたりするために、(時間の束縛を受けることなく)本を読むこと。(寝転がって漫画を見たり電車の中で週刊誌を読んだりすることは、勝義の読書に含まれない)
    ‥‥因みに「勝義」とは、「その言葉の持つ本質的な意味・用法」だそうです。 
    おそらく赤瀬川原平「新解さんの謎」でも取り上げられていたから、かなり議論を読んだ箇所と思う。寝転がって漫画を読むのがどうして読書ではないんだ!当然の疑問です。でも、この語釈の勝義はそこではない!

    ブックレビューが長くなった。
    探せばいくらでも、光り輝く「言葉」は見つかるだろう。
    その時々でどうしても載せたいのがあれば、ここに載せていきたい。このブックレビューのみは、ここに載せて終わりではない。ここから「改訂」という新たな作業が始まる。

    2023年1月9日記入

    レビューを上げて一か月以上経ったので、改訂第1版を載せます。
    ・先ず「レビュー」問題に決着がつきました。レビューの語釈の中に「書評」はないが、ブクログで使われる「レビュー」は、ほとんど書評なので、使っても問題ない。
    ・おに【鬼】は名詞以外に接頭語の意味がある。①鬼の顔をした②きびしくて、こわい③同類の中では大形に属する。という使い方であるが、私は近年「とっても」「最高の」の使い方も多くなっていることを指摘したい。
    ・しそう【思想】語釈は載っているが、しそうか【思想家】は用例としてしか載っていなかった。しかし、私は独立した項目で語釈を載せるべきと考える。何故ならば、世の中、似非思想家が跋扈しているから。私説としては、【思想家】生涯その人が思想的統一感を保持し、尚且つ世の中に思想的影響力をもつ人間。と規定したい。
    ・ひっきょう【畢竟】(副)途中の経過には紆余曲折があっても最終的には一つの結論に到達することを表す。
    ‥‥畢竟「結局」とほぼ同じ意味。

    2023年2月11日記入

    • misachi68さん
      【読書】についての説明にグッときました。
      いつも未知の世界で遊んでることを肯定的に言葉にされるって嬉しいです。
      何でもネットで検索するクセを...
      【読書】についての説明にグッときました。
      いつも未知の世界で遊んでることを肯定的に言葉にされるって嬉しいです。
      何でもネットで検索するクセを元に戻してたまに辞書引きたくなります。

      今年もよろしくお願いします。
      2023/01/10
    • kuma0504さん
      misachi68さん、こんにちは。

      この【読書】はかなり「攻めている」と思うんですね。
      おそらく山田忠雄主幹が書いたと思われる語釈と思わ...
      misachi68さん、こんにちは。

      この【読書】はかなり「攻めている」と思うんですね。
      おそらく山田忠雄主幹が書いたと思われる語釈と思われますが、ずいぶん主観が入っていると思われながら「そうだよな」と思わせる説得力もあります。
      でも、昔からかなり論議のある語釈で、去年も「言い過ぎでは?」という意見はありました。私は新明解は版を重ねるごとに語釈は無難なものになってきたと聞いていたので、これは既に変わっていると思っていました。そしたら、ネットで調べる限りは、最後の文だけは〈寝ころがって漫画本を見たり電車の中で週刊誌を読んだりすることは、本来の読書には含まれない〉と難しい「勝義」という言葉を柔らかくしているだけで、少なくとも七版まではそのままでした。

      これは山田忠雄が思いつきで書いたのではなくて、かなりの覚悟を持ち、編集部の合意をもとに書いたことを示しています。八版も、今探している限りでは変えたということを聞いていません。

      本来の読書はこうなのだ。
      私も襟を正して読んでいきたいと思います。
      2023/01/10
  • 辞書はやっぱり新解さんでしょう。高校時代からずっとこれ使ってます。

  • 無人島に持ってくかって?そりゃもう!

  • 四版はたからものです。

  • 無人島に持って行きたい本はこれ。

  • バイブル的存在の第5版。―おいしい。とか解説してある素晴らしい辞書(笑)

  • 世界最高の日本語(国語)辞典。版を重ねるごとにエスカレートしていく「明快な解釈」がすごい。【恋愛】なんて「合体」まで説明するんですから。初版編著はわが母校(盛岡一高)の先輩、金田一京助なので贔屓目になるが、いや、編集主幹・山田忠雄先生の「主観」が反映されているからこそ面白いのだ。山田家の人々まで用例に登場するし、ね。

  • このデジタルな時代に分厚い辞書なんて・・・って思うなかれ。とりあえず本棚には辞書でしょう!ちなみに私が愛してやまないのは「四」です。

  • やっぱ辞典は新解さん!

  • その名の通り、辞書です。けれど、読みものとして十分楽しめるものでもあります。例えば、動物園。新明解と他の辞書で引き比べをしてみてください。

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