白バラ: 反ナチ抵抗運動の学生たち (センチュリーブックス 人と思想 124)
- 清水書院 (1995年1月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
- / ISBN・EAN: 9784389411244
感想・レビュー・書評
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(2006.02.17読了)(2006.02.10購入)
副題「反ナチ抵抗運動の学生たち」
ナチス独裁政権の下で、「白バラ」と題するビラを印刷し、ナチス政権に対する抵抗運動を呼びかけた人々の物語です。
昨年、「白バラは散らず」を読んだ時期に、書店で「白バラ」を見つけました。最近「白バラの祈り」という映画が上映されているのを知ったので、「白バラ」を買って読むことにしました。1982年には、「白バラは死なず」という映画が製作・公開されているそうです。
●始まり(8頁)
1942年6月中旬、ミュンヘン大学で、謄写器で刷ったビラが学生たちに渡された。
6月末には、ミュンヘン在住の教師、医師、法曹、公務員、旅館・飲食店の主人らにそのビラが郵送された。
ビラの製作者は、二人のミュンヘン大学医学部学生、ハンス=ショルとアレクサンダー=シュモレルである。
ビラは、「無責任な暗い衝動に身を委ねた支配者の徒党に、抵抗もせずに統治を許すことほど、文化民族にとってふさわしからぬことはない」と書き始められている。
「このビラをできる限り多く複写して広く配布されんことをお願いする!」という要請を以て閉じられる。
●ビラ第二号(15頁)
「ナチズムは非精神的であるがゆえに、これと精神的に対決する事はできない」と書き始められる。「ポーランド占領以来この国において30万のユダヤ人が残忍きわまるやり方で殺害された・・・。ここに我々は、人間の尊厳に対して加えられた最も恐ろしい犯罪を見る。」「数年前から完全に我々の目が開かれて、我々の相手は誰かが分かってきた今、この褐色の一味(ナチ党員)を根絶やしにする、ぎりぎりの時なのだ。」
7月下旬までに三号、四号が配布され、終了する。抵抗運動の学生たちが東部戦線に送られたためである。
●ゾフィー=ショル(56頁)
「軍人に求められるものが、忠実で正直で謙虚で純粋であることというのなら、そんな事は実行できるはずがない。だって、命令を受けたら、それをいいと思おうが思うまいが、実行しなければならないのですものね。」
「常に正義が、他のどんな、しばしばセンチメンタルな愛着よりも高位にある、と私には思える。人間が戦いに際して、自分が正しいと思った側につくことができれば、そのほうがいいのではないかしら。例えば、先生が子供を罰した時なんか、父親がすっかり子どもの側に立つのを、私はいつも、間違っていると思っていた。」
●ロシア戦線(58頁)
1941年から42年にかけての冬に、国民は国防軍に暖かいウールの衣類を寄付することを求められた。ドイツ軍はレニングラードとモスクワの前面に布陣していたが、冬の供えを持たなかった。ゾフィーは、「私たちは何も寄付しない」という立場を守った。
●五番目のビラ(124頁)
ドイツ人よ!諸君と諸君の子供たちは、ユダヤ人を襲ったのと同じ運命に甘んずるつもりなのか!諸君は、諸君の誘惑者どもと同じ尺度で計られることを望むのか?我々は永久に、世界中から嫌われ、のけ者にされる民族でいなければならないのか?否!それならば、ナチの非人間どもから絶縁せよ!行為によって、諸君の考えが違うことを実証せよ!
●最後のビラ(152頁)
清算の日は来た。ドイツの青年が、わが国がかつて味わったことのない、憎みて余りある独裁制を清算すべき日が。ドイツの青年の名において、我々はアドルフ=ヒトラーの国家に、個人の自由を返せと要求する。ドイツ人にとって最も貴重なこの財産を、我々はまことに惨めにも騙し取られたのである。
●1943年2月18日(157頁)
ショル兄妹(ハンスとゾフィー)は、ミュンヘン大学構内でビラをまき逮捕された。
ハンスは、ゲシュタポに追われており、逮捕が間近だということを知らされていたための行動だったのだろうか。
2月22日、ショル兄妹に死刑が宣告され、即日執行された。
☆関連図書
「白バラは散らず」インゲ・ショル著・内垣啓一訳、未来社、1964.10.30
「フェニキア人」ゲハルト・ヘルム著・関楠生訳、河出書房新社、1976.04.15
著者 関 楠生(せき くすお)
1924年 静岡生まれ
東京大学文学部ドイツ文学科卒業
東京大学名誉教授
(「MARC」データベースより)amazon
作製したビラの名が「白バラ」であったことから、「白バラグループ」とよばれ、ナチ体制下に抵抗運動を展開した学生たち。刑死することでその幕を閉じた彼らの運動の歴史的、政治的意義について考える。詳細をみるコメント0件をすべて表示