ペトロ (センチュリーブックス 人と思想 187)

著者 :
  • 清水書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784389411879

作品紹介・あらすじ

パレスチナの北部、ガリラヤ湖の漁師であったペトロは、イエスの招きに応え、弟子となってイエスに従う。ローマ帝国のくびきからの同胞の解放とメシア王国の実現をイエスに期待したからであろう。愛と苦しみに満ちた十字架への道を歩むイエスを理解できず、イエスが逮捕されると、師との関係を否認してしまう。このペトロにとって、復活のイエスの顕現は否認の罪の赦し、驚くべき愛の啓示を意味したにちがいない。今やイエスの十字架の死は贖罪の死、その復活は死者を永遠の命に復活させる神の終末時の出来事としてとらえられた。ペトロは使徒としてこの出来事を同胞だけではなく、ユダヤ教律法の枠を越えて異邦人にも告げ知らせ、初期キリスト教の成立と発展の歴史において無比の役割を演じた。その道は人間の強さと弱さのなかでイエスを愛し、イエスに従う戦いの道であった。それはローマにおける殉教をもって終わる。新約聖書諸文書が呈する多様なペトロ像の背後に、このようなペトロの姿が見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 【後編 イエス路程】
     言わずと知れたイエスの一番弟子、第一使徒であるペテロです。カトリックではペトロという呼び方をしますね。ピーターもピエトロもピエールも、このケパことシモン=ペテロの呼び方です。ペテロの生涯は原理的にはどのあたりに当てはまるかというと、イエス路程、同時性のローマ帝国迫害時代、それとキリスト論でしょうか。ペテロと言えば改悛の物語が一番の肝ですから、そう言う意味ではキリスト論において一番語られるべきではないかとも思います。

     福音書、特にヨハネ伝と使徒行伝がペテロの歩みを知るには詳しいですね。イエスとともにあちこち歩き回っていた時代はまさに大愚という感じですが、イエスの受難を境にその人生が急加速していきます。洗足からゲッセマネでの居眠り、逆上、そして逃避。引かれていく師を追い大祭司官邸に紛れ込むも、3度の裏切り、鶏鳴による背信の自覚。最後にはイエスからの一瞥で一度の生涯は終わりました。
     十字架で師を失った、それ以上にその師を裏切った自身を抱えたまま、寂しさの中で故郷に戻り、他の使徒達と漁師稼業に戻ろうとガリラヤ湖に網を打つ中で、死んだはずの師との再開とその赦しを通じ完全に悔悛に至ります。
     その後のペテロは強き伝道者として、異邦人の国をめぐり最後にはネロの治めていたローマにて殉教を遂げました。十字架に掛かるに際し、師を裏切り殺した自分が、師と同じ十字架で死ぬのは申し訳ないと、逆さ十字架を自ら申し出、その上で死んでいったペテロ。死ぬことの美学は置いておいて、その悔悛の中心にあったものはなんだったのか、心は求めてやみません。
     清水書院の人と思想シリーズはおすすめです。200ページほどの容量に学としての思想がしっかりと結論づけられています。取り上げる人物に夜部分もありますが、結構私にとっての人物のインデックスになっています。このペテロに関しては、上ではペテロの生涯を多く書きましたが、この書においてはその後のキリスト教においてのペテロの立ち位置、捉え方が多く語られています。初代教皇その人ですからね。そう言う意味ではシェンケービチの『クォバディス』、遠藤周作の『キリストの誕生』のほうが、信仰的な情感を呼び起こすものがあります。この辺も合わせて読んでみてください。

  • 言わずとしれたイエスの一番弟子であり、カトリックの初代教皇ペトロ。遠藤周作のキリストの誕生において使徒、特にペトロに対して深く興味を持ち、自身の内面を探りつつ過ごした年月。ペトロとは個人としての人格を越えた、多くの弱き人々の象徴。ユダとは一線を画す、最も尊きものを傷つけながらも、改悛をを遂げ、尊きものの人生を生きたそのものである。私にとってペトロとはそれ以外の何者でもない。
     今回の人と思想は歴史的な初代キリスト教内のペトロの立ち位置等についての言及が大半で、私の思いに叶わなかった。基礎的な知識は押さえておくべきか。読んで無駄ではなかったが。

    12/4/7

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著者プロフィール

1934年生まれ。青山学院大学大学院博士課程満期退学(聖書神学思想専攻)、ユニオン神学校(ニューヨーク)大学院修士課程修了、エアランゲン大学(ドイツ)留学(Dr.theol)。
青山学院大学専任講師、日本聖書神学校教授、東洋英和女学院大学教授、同人間科学部長、日本基督教団青戸教会牧師を経て、現在、同教団隠退教師。
著書 『十字架への道イエス』『総説新約聖書』『ペトロ』『聖書における食物規定』ほか。

「2020年 『キリストとローマ皇帝たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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