菊と刀: 定訳 (現代教養文庫 A 501)

  • 社会思想社
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784390105002

感想・レビュー・書評

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  • 「もう一度視点を変えて学ぶ日本史」と副題をつけたくなる本。古代から戦後まで広く日本人の精神性を扱っていて深くから日本人を理解できる(ところどころ誤解と思われる場所もあるけれど)
    アメリカ人類学者の視点から見た日本人ということで、暗黙の価値観が掘り起こされるという構図がなんだか新鮮かつ少し居心地が悪かった。
     「義理」「忠孝」「身分」などいざ説明を求められたら返答に困るだろうテーマを扱っていた。海外に出る前に自分=日本人がどのように見られているのかということを知っておくためにも読んでおくべき本だといえる。
     「刀」はともかく何故「菊」がタイトルにつけられているのが本文を読んで分かったときには、少し爽快な気分になれるかも知れない。

  • ・著者のルース・ベネディクトはアメリカ軍の依頼を受けて、日本人の文化的価値観の調査を行った。その結果をまとめたものが本書である。
    ・戦時中のため、著者は日本に行っていないが、各種の文献および、日系人からの聞き取り調査をもとに日本文化の分析を行っている。
    ・日本では「各々其ノ所ヲ得」ことが大事=各人にふさわしい肩書を与え、その肩書に従って行動することを求める。例えその人の能力・人格に見合わない肩書であっても、肩書が優先される。→つまり、リーダーにふさわしくない人でも、肩書さえあればリーダーとして扱うことを要求され、結果として無能なリーダーがはびこることになる。
    ・「恩」は他人に対する負債として返済を求められる。
    ・日本人は「善と悪」の二項対立で物事をを考えない。人の本質は善であり、努力を行ることで善性が鈍るだけであると考える。→禅宗のような考え方である
    ・日本においてま「まこと」は「独立した徳ではなくて、狂信者の自らの教義に対する熱狂である」

  • 言わずと知れた日本文化論の古典。終戦後の出版だから、現代の感覚だと「?」がつく記述も少なくないが、日本に行ったことのない筆者の論とは思えないほど日本人の心情を正しく分析しているのには驚かされる。
    現代になってどこまで相互理解は進んだのだろうか。

  • (2003.10.11読了)(1997.08.15購入)
    <アメリカの人類学者の書いた日本論の古典>
    日本経済新聞10月10日夕刊コラム『明日への話題』で、小椋佳が次のように書いています。『日本人は「恥」の文化だと指摘されたのは、戦後すぐに出たルース・ベネディクトの著書『菊と刀』においてだった。神との関係における罪の意識が行動の基となっている西洋人に対し、日本人のそれは人(他人)との関係における恥の意識だと見抜いたのは、確かに卓見と評価されてしかるべきであろう。』
    また、どこで読んだか忘れてしまったが、最近の小学校の運動会で、手をつないで走らせて順位をつけないようにしていることを例に挙げて、戦後教育の悪平等主義を非難している人に対して、『菊と刀』の中の一節『競争は小学校でも、家庭でも、できるだけ避けるようにされており、ほとんど無きに等しい状態になっている。』(320頁)を引用して、反論しているのがありました。
    あちこちで引用されていると、いつかは、読んでおかなければと思います。
    やっと今回読みました。
    『菊と刀』は、アメリカの敵国である日本を研究するために1944年6月に開始され1946年に出版されたものです。日本語訳は、1948年に出版されています。
    日本人のいろんな生活の場面における考え方について書かれています。

    ・『各人が自分にふさわしい位置を占める』ということの意味について
    江戸時代、百姓一揆で、訴えが認められたとしても、首謀者は罰せられてしまう。

    ・恩について
    小学校2年生の教科書に載っている『忠犬ハチ公』の話を例に引いて説明しています。
    『ありがとう』や『すみません』『かたじけない』についても元々の意味を説明しています。

    ・義理について
    これに相当する言葉は英語には全く見当たらない。
    日本語辞書でさえも満足にこの語の定義を下すことができない。
    世間に対する「義理」は、大雑把に言えば、契約関係の履行ということができる。(これは、義理の母とか言う言い方からの説明になっている。)
    義経に尽くす弁慶の話も、義理の説明に使用している。

    ・風呂好きについて
    どんな貧乏な百姓でも、またどんなに賤しいしもべでも、富裕な貴族と全く変わりなく、毎日夕方に、非常に熱く沸かした湯につかることを日課の一つにしている。

    また、自淫、飲酒、同性愛について寛容であるといっています。

  • 第二次世界大戦終戦のアメリカ政府が対日戦争をどのように終結させるべきかを検討するべく、1944年に文化人類学者である作者に日本文化研究を依頼した研究内容。

    1.「物事は比較でしかその輪郭を正しく捉えることができない」
    戦時中の為研究対象への接触が難しい状況にあったにも関わらず、これ程の深い分析が出来た作者の研究能力が素晴らしい。
    日本軍捕虜や在米日本人という限られた情報や彼らの反応をもとに、歴史的文化的経緯から中国や西洋各国と比較することで、日本人である自分でも言語化できなかった気付かなかった習性や思考についてまで、より深い分析が可能になっている。
    この本を通して最も学んだことは、「物事はその中だけ知るのではなく、外も含めて他と比較することで始めて、その輪郭を正しく捉え正しく評価することができる」ということに尽きる。

    2.作者の一貫したニュートラルな視点
    当時日本は、アメリカからすれば戦争敵国であり文化的に劣っている国で、見下したり馬鹿にするような思考があって然るべき時代である。
    にも関わらず、作者の文章を見る限り、徹底して日本文化に尊重を置きつつニュートラルな視点で分析している。
    見下したニュアンスを少しも感じないのである。これはすごいことだと思う。
    このことから、何かを適切に評価し対処法を検討するには、常にその対象に対して誠実に、そしてフラットな視点で臨むべきである、ということを痛感した。

  • 留学中に読んだ、日本人として日本を客観視できる本。

  • 読んだのは第63刷。長いとても長い,この程度で長いとか言うなとか言われそうだが,普段から漫画しか読まないんだから長いもんは長い。戦時中の敵国である日本を日本人を知るために研究した内容で,アメリカの文化人類学者による有名な著書である。
    著者は日本に一度も訪れたことがなく,様々な文献や日本移民からの聞き取りなどで日本文化を紐解いたようで,それはないんじゃないかなぁ的なけったいな解釈もあれば(とはいえ現代の人間であり文化人類学も知らなければ歴史も詳しくない筆者にはけったいな解釈であるかどうかも分からないのだが……),的を射ている解釈もあるのでうなる。
    様々な“道”にみられるように,日本人はとても精神性を大事にしているように思える。最近ではその道を外れることも多いようだが,やはり精神論は根強い。
    義理や人情については……最近はそれほどでもないのではないかと,いや,人情は失ったまま義理は大事にするようでもある。義務については相変わらず大好きなようだが。
    アメリカが危惧した,降伏を受諾した日本の占領後の反発だが,予想に反しそれを全く受け付ける国及び国民に驚いたという,にわかに信じがたい彼らの言動行動にたいそう訝しがったようだが,そういうもんだと納得したとか。太古の昔より外部より新しいものを取り込み自分たちの中で消化し自分たちのモノにするのが得意だったからではなかろうかと思う。
    読む限りでは当時の日本人観から今の日本人はそう遠くかけ離れていはいないように思う,ちょっと否定できない面も多い。特にネトウヨと呼ばれる人のの中には悪い面だけが生き残り続けているような,そんな感想を持った。
    出来れば天皇制や時の権力者たちを徹底的に排除してくれていたら,今の馬鹿な日本にはなってなかったのではないか,とさえ思う。

  • 所々、間違った方向へ展開していっている部分もあるけれど、おおむね興味深い内容だった。
    戦後すぐぐらいまでの日本人的思考が良く考察されていると思う。恩や義理について、そこまで深く追求してみたことは無かったけれど、言われてみれば確かにそうだ、と首肯する内容だった。
    日本人として日本で生きていると、日本人的思考を当たり前のものとしてしまう傾向があるけれど、世界を見渡せば、日本人的思考は奇異でしかない文化もあるわけで、それは逆に、日本人にとって奇異に映る文化もあり、その差異を確認して、言葉で理解するよう努めることは大切なことだと思った。

  • 久しぶりに長い、とにかく長い、果てしなく長い本であった。

    文庫本サイズで400ページだからまあすぐ読めるだろと思って手にとってみたのだが内容が非常に濃かったためになかなかの文量に感じてしまった。

    元々、第二次世界大戦中にアメリカが「終戦後の日本統治の方法を考える」ということで文化人類学者に日本人・日本研究をさせたことが発端となって生まれた本書。俺個人の印象だが、天皇の戦争責任を問わなかったという歴史上実はものすごい出来事に対して大いにこの研究が参考にされたのではないかと思う。

    以下、読んでいて面白かったところ

    ・アメリカが物質の国であるのに対し、日本は精神の国である。アメリカとの圧倒的な物量差があったのに、戦争しかけてきたことに対する日本人一般の考えは「物量差が凄いのは前からわかってたこと。そんなの言い訳にならん。日本男子たる者、気合と根性があれば物量差なんてどうにでもなるでしょ?」筆者いわく「こんなことを割りとマジで日本人が本気で考えていたってことが凄い」

    ・自らの命を賭してまでアメリカと戦ったのに、終戦後は普通に笑顔でアメリカ人を迎えるという変わり身の速さ。基本天皇の言うことなら何でも聞くというスタンスで良くも悪くも主体性皆無。アメリカ兵いわく「歓迎されすぎてなんか逆に怖い」

    ・恩とか義理とか義務とかめっちゃ尊重する。恩に対する義理のために死ぬとかアメリカじゃ考えられん。

    ・日本人どいつもこいつも手淫し過ぎ。マジ、こいつら週平均何回手淫してんだよってくらい手淫してる。日本人の手淫のレパートリーと手淫専用道具の豊富さは西洋諸国とは比較にならない。

    ・アメリカは子供の頃のしつけが厳しくて、大人になるにつれて自由度が増していき、また老人になると若人にその座を譲らなくちゃいけないという社会だが、日本では子供時代と老人時代が人生における自由さが最高に達し、青年・中年時代が恩・義理・義務にがんじがらめにされて全く自由がないという珍しい社会。

    これに対する学者(日本人)の解説文
    第二次世界大戦中、日本は自国にとって都合の良い情報だけを流し、「鬼畜米英」なんて小学生並みの悪口言いながらアメリカと戦っていたのと同時期に、アメリカでは「対日戦はまあ勝つとして、どうやって統治するのが日本人気質・日本文化を考えた時に有効か」ということをここまで深く研究して考えていた。この圧倒的な考え方の差について日本人はもっと自分たちの言動を見つめなおさなくてはならない(戒め)

    結構難しい部分も多々あったが、上記に書いてあるとおり、戦後すぐに出版したとは思えないくらい(確か『菊と刀』が出たのは1947年)、日本社会・日本文化・日本人というものを鋭く捉えていて、今の日本人にもほぼほぼ当てはまるという凄さ。

    ちなみに筆者ベネディクトは生涯で一度も日本を訪れたことはない(驚愕)

  • 大学の時の何かの講義で使用された本。なかなか興味深く、日本を褒め称えた本であった気がしたけど内容は忘れてしまった。

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著者プロフィール

Ruth Benedict 1887―1948。アメリカの文化人類学者。ニューヨークに生まれ、コロンビア大学大学院でフランツ・ボアズに師事し、第二次世界大戦中は、合衆国政府の戦時情報局に勤務し、日本文化についての研究を深める。晩年にコロンビア大学の正教授に任じられる。主な著書に、『文化の型』『菊と刀―日本文化の型』など。


「2020年 『レイシズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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