はじめての唯識

著者 :
  • 春秋社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393135044

感想・レビュー・書評

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  • 唯識3冊目。全2冊の知識があったからか、一番理解が進んだ。
    非常に平易な表現ででまとまてくれているし、阿頼耶識、末那識、意識、前五識を順序立てて、専門用語も絶妙に効果的に散りばめており、文章構成がとてもお上手。難しい専門用語にはフリガナついてるし、大事な点はくどくならない程度に繰り返し説明してくれているし。そもそもこの本が非常に良書なんだろう、おすすめ。

    阿頼耶識は過去から連綿と受け継いでいる知ることや認識することができない核なるもの(種子)で、種子→現行→薫習→種子というサイクルによって後天的にも営まれる。
    この本を読んで、末那識についての理解が一番深まったかな。阿頼耶識は諸行無常、無我なるものなのに対し、利己的なフィルターで認識してしまう無意識領域なのだ、という個人的理解。人は実際のものを本質的に理解・認識していないのだとうプロセスも、三能変という段階を経ているのだと具体的に提示してくれており、こちらの理解もぐっと深まった気分。

    成仏の域を目指し仏道入ろうとかは考えていないけど、現代に生きる上での人生観・指針という観点で唯識の考えを知っているのと知らないのでは、世の中の見え方が広がり多面的になるのでは、リベラルアーツですな。ははは。

  • 2021.03 『世界の古典 必読の名作・傑作200冊』より
    http://naokis.doorblog.jp/archives/Koten_SatoMasaru.html

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(佐藤優選)9
    宗教・哲学についての知識で、人間の本質を探究する
    多川俊英師は、奈良の興福寺貫首であるとともに優れた仏教学者。ユング心理学にも通じる唯識思想を穂わかりやすく説明する。
    心理学に関心がある人は本書に是非目を通してほしい。

  • 2011.02.03-09
    ◆本質と影像との関係
    ○三類境(さんるいきょう)?
    *性境:本質にもとづいて変現された影像。
    *独影境:本質にかかわりなく、作意の力で映し出された影像(幻覚)
    *帯質境:本質を根拠にするが、正しく認識できなかった影像(錯覚、誤認)

    ◆認識作用
    ○能変の心?
    *初能変の心・・・阿頼耶識
    *第二能変・・・末那識
    *第三能変・・・了別作用(意識・前五識)

    ◆縁起観
    ○唯識の四縁?
    *ものごとの生起の原因
    *因縁、等無間縁、所縁縁、増上縁

    ○因縁?
    *直接的な原因。
    *種子因縁、現行因縁

    ○等無間縁(とうむけんねん)?
    *一定の心のはたらき(心王・心所)が続いて起こる場合、先行する心王・心所が後続の心王・心所の縁になること。
    *果と同等の縁
    *縁と果の間に中間に異なるものが入らない

    ○所縁縁(しょえんねん)?
    *認識の対象(相分)が縁になる
    *本質(ほんぜつ)もここに含まれる。

    ○増上縁(ぞうじょうえん)?
    *上記以外に作用する助縁
    *協力(与力増上縁)、見守る(不障増上縁)

    ○心法と色法の成立?
    *心法(精神的なもの)は、四縁によって生起
    *色法(物質的なもの)は、因縁、増上縁の二縁によって生起

    ○刹那滅(せつなめつ)?
    *種子は、たえず生滅変化する。

    ○果倶有(かぐうゆう)?
    *種子は、現行を同時に有する。

    ○恒随転(こうずいてん)?
    *種子は、ときれることなく相続する。

    ○性決定(しょうけつじょう)?
    *種子は、現行と性質(善・悪・無記)が同じ。

    ○待衆縁(たいしゆえん)?
    *種子は、いろいろな縁(条件)を待って現行する。

    ○引自果(いんじか)?
    *種子は、自分と同"種類"の結果を生む。
    *種類とは、心法、色法、不相応行法。
    *心法→心法 色法→色法 不相応行法→不相応行法

    ◆前五識
    ○前五識の特徴
    *それぞれの対象をただそのままに知るだけ。
    *ただ現在を認識するだけ。
    *かならず第六・意識とともに起きる。

    ○根?
    *感覚器官。五識に対して五根。
    *扶塵根(ふじんこん)と勝義根(しょうぎこん)に二つにわかれる。
    *扶塵根:感覚器官(体)
    *勝義根:感覚機能(用)

    ○勝義根?
    *生物学的な制約を受ける。ex.犬の嗅覚は人間の6000倍 ・・・U^ェ^U
    *個体によって違う。ex.微妙な音階を聞き分ける人 ・・・(^^♪

    ○前五識の心理作用
    *遍行:作意, 触, 受, 想, 思
    *別境:欲, 勝解, 念, 定, 慧
    *善:信, 慚, 愧, 無貪, 無瞋, 無癡, 勤, 軽安, 不放逸, 行捨, 不害
    *煩悩:貪, 瞋, 癡
    *中随煩悩:無慚, 無
    *大随煩悩:掉挙, 昏沈, 不信, 懈怠, 放逸, 失念, 散乱, 不正知

    ○反対に前五識の心理作用でないものは?
    *煩悩:慢, 疑, 悪見
    *小随煩悩:忿, 恨, 覆, 悩, 嫉, 慳, 誑, 諂, 害, 驕
    *不定 :悪作, 睡眠, 尋, 伺

    これらは意識だけでコントロールできるのかな。・・・(^-^)V

  • ユング心理学に通じる唯識論

  • 興福寺の南円堂の売店で購入しました。『唯識十章』の改題・増補・新装版ですが、これほど分かりやすい本はないと思いました。

  • 唯識についての入門書。

    ことば

    私たちの日常生活における認識もまた、わが心によって変現されたものを、その対象としている。

    積み重ねられた行為・行動の数々は、その種子をわが心の深みに植え
    つけますから、結局その総体の阿頼耶識とは、過去の行為の一切を内容とする自己そのものであります。つまり、人は、自己の行為によってつくられるということに他なりません。

  • この本で、仏教の心理学的要素に初めて触れました。
    難解な唯識を、理解しやすい形で説いています。
    もっとも「理解しやすい」といっても、しっかりと理解するには
    自分の心の考察、随観ができていないと本当の理解とは言えない
    と思いますが。

    唯識三年 倶舎八年


    「東洋思想の前に、西洋の心理学が色褪せてしまった」という
    ユングの気持ちが、なんとなくわかりました。
    私も長らくフロイト以降の心理学を学んできましたが、
    東洋的な心の考察の前にしたら、「今まで何を勉強してきたんだろう。」と
    呆然としてしまいました。
    西洋の心理学ももちろん、素晴らしい理論や発見を持ち合わせていますが、東洋の古来から伝承されてきた理論は、真に深遠です。

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著者プロフィール

興福寺寺務老院。1947年生まれ。奈良市出身。立命館大学哲学科(心理学専攻)卒業後、興福寺に入寺。執事や副住職を務め、89年、興福寺貫首に就任。中金堂の再建などに尽力した。また唯識仏教や仏教文化論に関わる執筆や講演活動を長年行っている。2019年に貫主を退き現職に就任。著書に『貞慶「愚迷発心集」を読む』『唯識入門』(以上、春秋社)、『旅の途中』(日本経済新聞出版社)、『合掌のカタチ』(平凡社)など多数。

「2022年 『NHK宗教の時間 唯識 (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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