神道いのちを伝える

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  • 春秋社
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393299142

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  • 日本経済新聞社小中大
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    紀文食品社長 堤裕氏
    逆境で教わった生き方
    2021/11/6付日本経済新聞 朝刊
    本をよく読むようになったのは40代、順風だったサラリーマン人生が「冬の時代」に差し掛かったときだ。



    入社3年で地域分社の課長、4年目にマーケティング室長になり、自信満々で仕事をしていた。転機になったのが39歳の時、沖縄の海洋食品への出向だった。紀文50%、沖縄資本50%の共同出資会社で、肩書は取締役だった。いずれ本社に戻り、経営陣に加わる前提で勉強してこいと送り出された。営業部門の統括、新規開発、紀文本社との折衝など、多忙だが充実していた。

    5年目に工場の拡張計画で思惑が外れ、大赤字を出した。風向きが変わった。何をやってもうまくいかない。はんぺんの現地CMでも不手際があり、社長の逆鱗(げきりん)に触れた。ほどなく東京本社に呼び戻された。肩書はマーケティング部の課長。あきらかな降格人事だった。そのとき出合ったのが、『神道 〈いのち〉を伝える』だ。実家は曹洞宗で神道とは縁もゆかりもなかったが、書店でたまたま目に入った。

    それまで自分勝手に仕事をしてきた私はこの本を読んで、仕事は周囲の支えがあってできるものだと初めて悟った。二十数年働いて、ようやくこんな心境にたどり着いた。同時期に読んだ『なぜ春はこない?』も心にしみた。人生の冬の時代には冬なりの生き方や仕事の仕方がある。今までの自分がやってこなかったこと。後輩の話を聞き、育てることも仕事なのだと知った。

    地道に働くうち、風向きが変わってきた。1年後、営業本部の管理部長に。その後、商品開発部長、マーケティング部長、総務副本部長と順調にキャリアを重ねた。そんなころ読んだのが『豊臣秀長』だ。兄の秀吉に比べ知名度は低いが、補佐役の秀長なしに秀吉はなかった。副本部長の私の心境にぴったり寄り添う1冊で、本社ビル移転、今年実現した株式公開という会社の大イベントを補佐役として推進した。

    回り道をしたが50歳で取締役に。会社全体について考えるようになった。

    食を通じて社会に貢献すること、これが紀文の存在意義だ。ただ商品を作るだけでなく、食べて喜んでもらえる、幸福を感じてもらえることが大事だと日々考えるようになった。食に関する本を読むようになり、「婚活食堂」シリーズはそのころ出合った。

    2巻におでんの話が出てくるが、紀文は出てこない。なんでだと思いつつ、あまりの面白さに一気読みした。登場する料理のレシピも載っており、楽しめる。これをきっかけに女性著者の本も読むようになった。職場には女性も多い。女性の気持ちや考えを知るには、女性の手による本を読むといい。そもそも紀文のお客様の多くは主婦ら女性だ。経営者として、女性がどう思うかという視点は欠かせない。

    読書は通勤時間が多い。電車で往復1時間、片道60ページほど、1日で120ページ読む。だいたい2日に1冊くらいのペースで読破している。ここ数年は年間150~200冊くらい、コロナ禍で家にいる時間が長かった昨年は読み返しも含めて300冊近く読んだ。週末に書店やインターネットでまとめ買いする。電子書籍も読むが、やはり手に取った時の紙の感触が好きだ。

    読後は日付や書名、役に立ちそうな項目などをノートにまとめている。

    感想や面白かった点などを自宅では妻に、会社では部下や秘書に話す。インプットした情報は、書いたり話したり、アウトプットすることで整理され、定着する。妻から薦められた女性作家の本を手にすることも増えた。

    子供のころから本を読むのは嫌いではなかった。世界の名作100選シリーズを父親が買ってくれた。中学時代は北杜夫さんの「どくとるマンボウ」シリーズが好きだった。基本は多読だが、気に入った本は繰り返し10回くらい読む。ここぞと思うページには付箋を貼る。読み返すたびに付箋が増えるので、『神道 〈いのち〉を伝える』はボロボロな上に、付箋だらけだ。

    大学時代はマージャンに明け暮れまったく本を読まず、イケイケだったサラリーマン人生最初の20年間は、本を読む必要性を感じなかった。40代で迎えた逆境が本と向き合う日々を呼び起こしてくれた。

    (聞き手は編集委員 鈴木亮)

    【私の読書遍歴】

    《座右の書》

    『神道 <いのち>を伝える』(葉室頼昭著、春秋社)

     

    《その他愛読書など》

    (1)『なぜ春はこない?』(神田昌典著、実業之日本社)
    (2)『運転者』(喜多川泰著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。運は転じるもので、良いも悪いもない。良いことを重ねていれば運はたまるものだと知った。
    (3)「婚活食堂」シリーズ(山口恵以子著、PHP文芸文庫)
    (4)『「貞観政要」に学ぶリーダー哲学』(竹内良雄・川崎享著、東洋経済新報社)
    (5)『豊臣秀長』(堺屋太一著、PHP文庫)
    (6)『人の心が手に取るように見えてくる』(出口光著、中経出版)。同僚や後輩にも目を向け、気を配るきっかけになった1冊。
    (7)『新釈古事記伝』(全7巻、阿部國治著、致知出版社)
    (8)『少しだけ、無理をして生きる』(城山三郎著、新潮文庫)
    (9)『土中環境』(高田宏臣著、建築資料研究社)
    つつみ・ひろし 1956年生まれ。80年慶応大経済学部卒、紀文食品入社。2007年取締役、16年取締役兼専務執行役員、17年より現職。

  • あまりの感動に近くの神社にお参りに行った。いじけた自分をどうにかしたいという行動の現れでもある。(HPの日記より)
    ※2001.9購入@読書のすすめ
     2001.9.26読書開始
     2001.9.30読了
     2011.12.11売却済み

  • 良い本です。

  • 資料として買ったものの、とても勉強になりました。

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著者プロフィール

葉室 頼昭[ハムロ ヨリアキ]
昭和2年、東京に生まれる。学習院初・中・高等科を経て、昭和28年、大阪大学医学部卒業。昭和33年、医学博士号取得。昭和38年、大阪市大野外科病院長、昭和43年、葉室形成外科病院を開業。昭和57年、大阪国学院通信教育部入学。平成3年、神職階位・明階を取得。平成4年、枚岡神社宮司、平成6年、春日大社宮司。平成11年、神職階位・浄階、神職身分1級を授けられる。平成21年1月逝去。日本人の根底に流れる神道の世界を説いた著書多数。

「2016年 『日本人の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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