- Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
- / ISBN・EAN: 9784393323359
作品紹介・あらすじ
オーストラリアの哲学者フランク・ジャクソンが考案した「メアリーの部屋」の思考実験は、物理学的知識に属さない知識の存在を証明し、物理主義を否定するように見える。はたして物理主義は間違っているのか?錯綜した議論を整理し、哲学者たちの論理を明確にしたうえで、知識論証に隠されたトリックを暴き、物理主義を擁護、さらにメアリーが得たとされる新しい知識の正体を明らかにするスリリングな論考。
感想・レビュー・書評
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フランク・ジャクソンによって提起された知識論証の含意とその問題点を検討し、物理主義的な立場から問題の解決を試みている本です。
本書がとりあげているのは、白黒の世界しか目にすることなく人間の視覚にかんするあらゆる知識を身につけた天才少女メアリーは、色のある世界をはじめて目撃したときに新たな知識を獲得したということができるのか、という問題です。著者は、この問題に対するさまざまな論者たちの応答を紹介し、メアリーにもたらされることになった「どのようなことかの知」は、「主観的事実」の存在を要請するものではないとして、物理主義の立場を放棄する必要はないと結論づけます。さらに著者は、ルイスの議論を参照しつつ「どのようなことかの知」を能力とみなすことができると主張し、晩年のジャクソンの「表象主義」の立場を形而上学的に補強する試みをおこなっています。
本書は心の哲学と呼ばれる分野における一つの問題をあつかっており、とりわけジャクソンの知識論証をめぐる錯綜した議論をていねいに解きほぐしていますが、知識論や形而上学の知見も参照されており、途中むずかしいと感じるところもありましたが、全体を通じておもしろく読むことができました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【選書者コメント】メアリーの部屋の思考実験は最初に聞いたときからうさんくさいな、と感じたので。
[請求記号]1100:564