33個めの石 傷ついた現代のための哲学

著者 :
  • 春秋社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393332917

感想・レビュー・書評

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  • もし大切な誰かが理由もなく殺害されたら、あなたはその犯罪者を赦すことが出来るだろうか。
    復讐でもなく怨むのでもなく、「赦す」などということが可能なのだろうか。。。非常に難しいこの命題に正面から向き合うエッセイ集で、全23章。
    優しく語られている「気づき」の文章に浸っていると、エピローグで再びこの命題をつきつけられ、言葉を失う。私には、答えなど簡単に出せない。

    2007年4月16日、米国のバージニア工科大学で、学生による銃乱射事件がおき、32人の学生・教員が殺され乱射した学生は自殺した。
    「もしも他の学生も銃を持っていれば、これほど大量に学生が犠牲にならずに済んだだろう」という驚くような声も一般のアメリカ人から聞かれたという。
    しかし本書のテーマはここから。
    被害者の追悼集会がキャンパス内で行われたとき、死亡した学生の数と同じ33個の石が置かれ、そこに花が添えられたという。
    犯人によって殺害されたのは32人。
    33個目の石は、事件直後に自殺した犯人のため、ひとりの学生が置いたものだ。
    そこから、赦しの輪が静かに広がっていく。
    追悼集会に参加した学生の言葉が紹介されている。
    「犯人の家族も、他の家族たちと全く同じくらい深く悲しんでいるのです」

    銃社会・米国の希望を感じるような話だが、ことはそう簡単ではない。
    エピローグによれば、33個目の石は大学側によって取り除かれ、犠牲者の名が刻まれた墓石の数は32個であったという。

    哲学というにはあまりに口調が平易で優しく、ごく普通のエッセイとして読み過ごしてしまいそうな一冊だ。
    また著者の考え方のすべてに賛同できるわけでもない。
    むしろ、首を傾げてしまう部分も数々ある。
    だが、この命題はいまだに心に重くのしかかる。
    日本人の多くが無信仰で、既成宗教の枠に入りえない私のような者も、このような赦しを行うことが本当に可能なのか。
    怨みからは何も生まれないし、復讐は新たな火種を生むだけだ。
    もしも私が被害者だったら、苦しみ続ける家族にこう言うだろう。「もう忘れて、自分の人生を生きなさい」と。
    あるいは「この世」以外のところから答えは出るのだろうか。
    それを、ひとは宗教と呼ぶのだろうか。
    私はずっと、考え続けている。

    • strattonさん
      ワタシも読みました。なかなか深いですよね。
      ワタシも読みました。なかなか深いですよね。
      2020/08/26
    • nejidonさん
      strattonさん、こんにちは(^^♪
      この本の問いかけるものは難しいですね。
      考える機会には恵まれましたが、いまだに答えられません。...
      strattonさん、こんにちは(^^♪
      この本の問いかけるものは難しいですね。
      考える機会には恵まれましたが、いまだに答えられません。
      ところで、strattonさんのレビューを見て「本を売る技術」を読みました。
      今更ですが、ありがとうございました。
      2020/08/27
    • strattonさん
      参考になってよかったです(^^)/
      書店に行く楽しみが増えますよね。
      参考になってよかったです(^^)/
      書店に行く楽しみが増えますよね。
      2020/08/27
  • テーマごとに文章がまとめられているが、わたしにはそれが読みにくかった。多分毎回話が変わって頭がこんがらがるからだ。

    人工中絶のところが1番興味深かった

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    また、著者の「思考」だけでなく、「嗜好」も随所から感じ
    られた。何も隠していないことが伝わってきて好感度も高。

  • 哲学って何なんだろうか。。
    結局よくわかんないけど、きっと色んな視点で物事を見るということなのかな??

    当たり前にある世界をいろんな視点からみて、なるほどこんな考え方があるんだ。と、ふむふむと読んだ本でした。
    不思議な気持ちになった。
    33個目の石の話、エピローグは言い方変だけど心があたたまるというか、きちんと信念を持っている人がいて、すごいなーと思ってしまった。

    物事を、この生きている世界をもっとキチンと考えて、もっと向き合うとが大切。
    傍観者すぎる

  • 33個めの石にはなるほどと感銘をうけました。亡くなれば、平等に追悼するのはしごくあたりまえである。福知山脱線事故では
    運転手は追悼から外されたのは残念だ。赦すことの難しさを象徴的に感じられた。

  • 33個目の石、確かに考えさせられます。
    答えは一つでない。
    よりよくあるために考える。

  • 題名が秀逸。

  • 「無痛文明」という言葉を目にして著者にたどり着き、軽いものから探して読んでみた。短くまとまっていて読みやすい。殺人や戦争、生命倫理などの重い主題について、易しく、そして優しく述べられていた。

  • 1つの話題は2ページで終わるのでとてもあっさりしている.
    そのテーマについて掘り下げるというよりは、思いついたことをさらりとめもしてみたような文章.
    時折話題にのぼる未来においての科学的、医学的な問題はかなり著者のバイアスのかかった想像に基づいているのがやや気になった.
    哲学者だが、自身の情感、後ろめたさなどもたっぷりと記述しているところに好感がもてる.
    アメリカの大学での無差別殺人事件で犯人にも追悼の石(33個目の石)を置く人がいれば、取り除く人がいた.大学は犯人の墓石は作らなかったし、日本の福知山線脱線事故でも運転士の追悼がなされなかったエピソードなど、どちらもすっきり割り切れる問題ではないが心に引っかかるものがあった.

  • 33個目の石という話をご存じですか
    お金にならない事実はニュースにすらならないようです
    恨みつらみや癒しは手っ取り早くお金になりニュースになります
    しかし波立たない事実は興味を惹かず気休めにもならないので
    お金儲けになりにくいのでしょう

    33個目の石とは
    あの有名な無差別乱射事件
    バージニア工科大学で32人が殺された話です
    犯人もその場で自殺しました
    殺された32人の家族が供養のために石を32個並べたのだそうです
    最後に自殺した犯人のために置かれた石が
    33個目の石だったのです

    その後学校側で供養のモニュメントをつくったそうですが
    そのときは32個で設計されたということです
    人の集いを通り越して公的集団になると
    心がかたくなになるようです

    心を閉ざした悪魔の世界では悲惨な話を好み
    尾ひれを付けてお金を絡めて話題にしますが
    こんな静かな事実はお金にむすび付かず喜べないので
    ニュースにもならないわけです

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著者プロフィール

1958年高知県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学。大阪府立大学にて、博士(人間科学)。東京大学、国際日本文化研究センター、大阪府立大学現代システム科学域を経て、早稲田大学人間科学部教授。哲学、倫理学、生命学を中心に、学術書からエッセイまで幅広い執筆活動を行なう。著書に、『生命学に何ができるか――脳死・フェミニズム・優生思想』(勁草書房)、『増補決定版 脳死の人』『完全版 宗教なき時代を生きるために』(法藏館)、『無痛文明論』(トランスビュー)、『決定版 感じない男』『自分と向き合う「知」の方法』(ちくま文庫)、『生命観を問いなおす――エコロジーから脳死まで』(ちくま新書)、『草食系男子の恋愛学』(MF文庫ダ・ヴィンチ)、『33個めの石――傷ついた現代のための哲学』(角川文庫)、『生者と死者をつなぐ――鎮魂と再生のための哲学』(春秋社)、『まんが 哲学入門――生きるって何だろう?』(講談社現代新書)、『生まれてこないほうが良かったのか?』(筑摩選書)ほか多数。

「2022年 『人生相談を哲学する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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