擬 MODOKI: 「世」あるいは別様の可能性

著者 :
  • 春秋社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393333549

作品紹介・あらすじ

現代思想の雄、松岡正剛が超ジャンル的思索をベースに、現代の捉えがたい「世界」と「世間」をめぐって、縦横無尽に論を展開、来たるべき「世」を見据え、展望する。蕪村からミトコンドリア、アーリア主義からヒッグス粒子まで! 松岡正剛の乾坤一擲!

感想・レビュー・書評

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  •  ミトコンドリアは、母系遺伝か。
    "理性"は少年の夢、消されますよ。

  • ひとことでは説明できかねる複雑さを持った本、としか自分にはいえない。

  •  松岡正剛さんが77歳のお誕生日を迎えられたそうです。ここまで、大病もなさったようですが、喜寿なのですね。ファンとしては松岡さんの長寿を寿ぐ気持ちはだれにも負けない(ちょっと大げさ!)つもりなのですが、心配もひとしおです。
     本書は、これが松岡正剛!とでも言いたい「カギ言葉」、「擬もどき」を繰り出し、千夜千冊で開陳された膨大な書物の群れを読み解く道筋の一つを思想史のストーリーとしてまとめにかかった好著だと思いました。
     展開が刺激的なのはいつもと同じではあるのですが、興味深く引き込まれ、新しい読書へと促される読書でした。が、何よりも、松岡正剛の今後に期待し、彼の長寿を祈る気持ちでページを閉じました。
    ブログにも感想を書きました。覗いていただけると嬉しいです。
       https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202104060000/
     

  • 松岡正剛「擬」読了。昨今何かにつけ二元論で語られることが多い。例えば、善悪、文系理系、メリットデメリット等。しかし、著者はそれらの間の曖昧さ「擬」こそが重要であるはずだと説く。確かに科学や文化はそのような中から形成されると思う。世の中の見方に別の角度がある事を教えてもらった

  •  客が去って、また客が来るあいだの牡丹。または、散った後の牡丹。
    「桑田はどんな歌詞もダブルミーニングすると確信した」(P26)
     これは何かをあらわしているし、これから何かがあらわれてくる。
     模倣は社会活動の基礎。
     破壊の悪魔を飼い慣らすための英雄譚や昔話。
     交換、お裾分けとか、ちょっと分ける感覚。
     ラップバトルでいえば、死ねとかいう言葉を別の仕方で韻で包み込むようなものか。

     日本に革命せよといっても、ローマ教皇に革命せよといってるようなもの。さらに、仁義のあるものが君子になるのではなく、日本のトップは最初から神の末裔であり、中国とは国の形が違う。天から見放されることもない。また、日本の古代の天皇が「仁義」をのべ、万葉や古事記に、仁義エピソード伝説が残っているだろうか。ヤマトタケルをみてわかるように、戦うことが嫌になって嘆き悲しむドラマである。また、そもそも島国で、小さく、中国ほどの凄まじい全滅と悪政がないのではないか。香具山なんてほとんど丘みたいだし、大戦争をしているようで、戦場が狭かったりとかあるのではないか。

     面影は二項同体にこそ出所する。鬼子母神が慈愛と人食いがまぜこぜになっている。椎名林檎のポップソングの一節にも面影が起動する。

     凧(いかのぼり)きのふの空のありどころ

     擬装すること、ものまねすること。世の中をものまねすること。ものまねするということは、本物がくっついてきている。どっかに本物が背後霊のようにいる。それが面影。そして、背後霊にまた背後霊がいる。
     歌い手はオリジナルではない。何かを物まねしている。オリジナル(過去)とオリジナル(未来)のあいだに挟まれているにせもの。それが私達なのだ。宇宙のはじまりからしてそうである。宇宙も何かの物まねである。
    「井上陽水・桑田佳祐・椎名林檎らに起爆したポップソング」は、「世」の本質。もどきの本質とは、昔話や童話にある、不思議な部分、物語作者だったら校正して無くす部分、起承転結にしてキレイにおさまらないところ、そこが大事だ。表象された物語性の中に多様な擬態がコンティンジェントに併存している。
     音楽、ライブを楽しむ人間はそれを自分のものまねとして、おもがけをみて楽しむ。ぶちあがるのかもしれない。

  • そういえば、沖縄で読了

    ほんと、と、つもり、にはあんまり差がないようなところに擬の方法があって、見立てや本歌取りとして技術になっていく
    そこにはコンティンジェンシーがある
    他のようにもありうる、ということがある

  • 社会の継ぎ目があって、この継ぎ目にかかわるところには人知をめぐるゆるみというものがあり、手続きの具合というものがある。この継ぎ目に首尾一貫を持ち込みすぎると、社会は次から次へと責任問題の所在判定とその処罰とで埋め尽くされていく。

  • 真似は悪いことなのか。オリジナルとは。

  •  芸術や芸能にとっては予想ほど不必要なものはない。芸術や芸能は「予想を裏切ってナンボ」なのである。世阿弥は「舞に目前心後といふこと」がある、目は前を見ても心は後ろに置いておきなさいと言い、「離見の見」に徹することを奨めた。すぐ前にあることばかりを見るのではなく、離れてみなさいと説いた。能仕舞があんなに省略が効いた所作と象徴の美に徹することができるのは、離見の見のせいだ。(p.51)

     そもそも「歴史はこういうものだ」と言い出したのは、キケロからランケに及ぶヨーロッパの歴史家だ。かれらはヨーロッパの記述というより世界の記述をしているいう自負をもっていた。そのぶんお膝下をどう俯瞰しているかというと、イデオロギッシュになりすぎてきた。それでも、われわれはそのような歴史観を「世界史」として教えられてきたわけだ。(p.100)

     ナチスのユダヤ人ホロコーストは、ゴルドンの優生学がアーリア主義にもとづく断種になだれこんだものである。この悪夢、誰ひとりとして止められなかった。ボリアコフは、次のように書いている。「ヒトラーやムッソリーニが神話を捏造したのではない。1500年にわたるアーリア・ゲルマン神話の過剰を、人文主義者や啓蒙思想家が食い止めなかったことが問題である」と。(p.121)

     本を書くという行為には、古来のオーサリング・ステージから貰ってきたスタイルやコンテクストがいろいろ混じっている。その「混じり」を排除することは不可能である。なにより言葉や概念を使うということ自体がオリジナルな行為ではありえない。本というもの、「借りもの」でいっぱいなのである。(p.168)

     面影が見えるとは、たんに記憶が再生されるのではない。たんなる思い出がよみがえっているものでもない。思い浮かべられた景色にこそ面影が見える。(p.219)

     世界にも世間にも確定不能や予想不能なことがあるのは当たり前で、ちぐはぐになったりあべこべになったりするからといって鬼の首を取った気になるなと言いたかったのだ。世の中はカント的にはできてはいない。サンデル的にも片付かない。世界と世間を「かわる」と「がわる」のあいだに見ることで、そこに面影が出入りすることを景色にするほうが、ずっと大事ではないかと綴ってきたわけだ。(p.220)

     発見や創発は偶発なのではない。偶発的に見えたとしても、そこには「隠れたもの」が内在していたわけだから、創発には偶発性ではなくて「偶有性」というべきものがひそんでいたことになる。この情報的偶有性のことを、この用語がとても重要なのだが、ぼくはある時期からもっぱら「コンティンジェンシー」として理解してきた。(p.257)

  • 「千夜千冊」の人の著作。
    読売朝刊2017.11.28特集記事。模倣を大事にしないと、創造は生まれないが主旨。やや詩的すぎる副題がネックかも。

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著者プロフィール

一九四四年、京都府生まれ。編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。一九七〇年代、工作舎を設立し『遊』を創刊。一九八〇年代、人間の思想や創造性に関わる総合的な方法論として″編集工学〟を提唱し、現在まで、日本・経済・物語文化、自然・生命科学、宇宙物理、デザイン、意匠図像、文字世界等の研究を深め、その成果をプロジェクトの監修や総合演出、企画構成、メディアプロデュース等で展開。二〇〇〇年、ブックアーカイブ「千夜千冊」の執筆をスタート、古今東西の知を紹介する。同時に、編集工学をカリキュラム化した「イシス編集学校」を創設。二〇〇九~一二年、丸善店内にショップ・イン・ショップ「松丸本舗」をプロデュース、読者体験の可能性を広げる″ブックウエア構想〟を実践する。近著に『松丸本舗主義』『連塾方法日本1~3』『意身伝心』。

「2016年 『アートエリアB1 5周年記念記録集 上方遊歩46景』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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