家族のゆくえは金しだい

著者 :
  • 春秋社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393366417

作品紹介・あらすじ

安泰で幸福であってこそ、家族――。
広く信じられてきたこのイメージは、もはや幻想である。そのことは、親子、夫婦、兄弟姉妹の関係で悩む人が多い事実からも言えるだろう。
「絆」や「愛」だけでは解決しない。私たちは、そろそろ、この現実と向き合わなくてはならない。

無職の子どもと、親。「持てる世代」の親と墓守娘。引きこもりや依存症。経済的DV、離婚……。家族問題と長年とりくんできた臨床心理士の著者は、家族問題をとく鍵は、「お金」だと指摘する。
本書において、豊富な事例とともに、問題の根幹、現代社会の影響を浮かび上がらせ、具体的な提言もこころみる。

「信頼関係がなくなったとき家族の権力・支配構造があらわになる。そうであるなら、むしろそれを駆使し、活用して信頼関係の再構築ができないだろうか。お金の出し方を工夫し、操作して、息子や娘の回復を図る。その工夫を説明しているのが本書の特徴だ」

とことんリアルな事例とともに、ありうべき展望を描く、信田さよ子の決定版家族論。

感想・レビュー・書評

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  • Eテレの番組で信田さよこ先生を拝見する機会があり(「こんな方なんだ~」と思いました)、なかなか実際にお会いする機会もないので、妙に嬉しかったり?しました。
    何とか、自分の配偶者は(結果的に私が無意識にカウンセリングのようなことをしていたようで)良い方向に向かうことができたと思っているのですが、本来は信田先生のようなプロ(「公認心理士」)の方と相談できれば良かったなと思っています。おそらく、本来はカウンセリングが有効な人ほどカウンセリングから一番遠い場所にいるのかもしれません。
    「知識はメガネ」(歴史的社会変動)、「『まず離れましょう』という提案」など、私には納得の内容でした、
    バブル期以降に社会人となった私の配偶者も、経済的に親から自立していたおかげで、最終的には自身の両親の介護問題の犠牲にならずに済みました(離れることができました)。
    お金が全てとは思っていませんが、経済的自立がこんなにも自分の人生を自由にできるものなのだと(配偶者を通して)つくづく感じました。

  • 為になるけど救いがたい。これが日本の現実と思うと暗くなる。政治はこの30年何をしてたんだ?と怒りがこみ上げます

  • お金を出さない=愛情がないという資本主義社会の論理が家族に適用していることや、父親の努力こそが人生の基本という思考が自分の豊かさもあり後ろめたさがあることなど、気をつけないといけない思考の背景が客観視できた。様々な事例も時代背景、関係性の背景など、参考になった。

  • とても面白かった。

    依存症になることを可能にしたのは何か。
    依存症の継続は何によって支えられているか。
    という捉え方(イネーブリングenabling)

    特殊詐欺集団が最初に目をつけたのは「親子の情」。

    父親たちへのグループカウンセリング
    「子供が困ればお金を出すというのは社会の常識です。不況の中、親くらいは援助してやろうと考えることはむしろ「温かい親心」の発露だったのです。
    一方で、新しい視点を提示してみましょう。愛情を示すこととお金を出すことは必ずしも一致しません。「あなたを大事に思ってるけど、お金は出せません」とはっきり伝えることが重要になる場合もあるのです。
    親のお金によって、成人した子供が自分の行為の責任を取らずに済むことは多々あります。親のお金で暮らすことができれば、人間関係をつくる努力をしなくてもなんとかなります。」

    家族を巡るキーワードは、絆や愛情ではない。お金と権力。この2つの視点を持たないと、家族の様々な問題は見えてこない。

    ■同じ明治時代でも、初期と日清戦争後では家族に対する考え方も大きく異なる。家父長制の完備(明治5年)で、男と女の地位は大きく変わった。メガネは時代によって大きく変わる。
    ■方向性は2つ。1つは、諦めて子供の言いなりになる方向(親の子殺しがいくら起ころうが、多数派に支持される)。もう1つは、親が子供(成人)と距離を取ること。
    ■家族は歴史的につくられたのもの。なら、変えることができる。
    ■よかれと思ってやった行為が、〇〇(飲酒等)を促してしまう。動機における善意や愛情が、結果として相手を窮地に陥れるというパラドクスを生み出す。それがイネーブリング。

  • カウンセラーの方のお話なので、リアル感はありました。家族といえどもお金の話と向き合うことが、大事ですね。

  • お金の問題が家族を狂わせることもある。夫から妻への経済的DVは、その顕著な例だ。家族とお金の生々しい問題を解決していくことで、先に進め、救われる人も出てくる。家族とはなんなのか、考えさせられる。

  • 依存症になるひとは資金源がある。

  • 家族をめぐるキーワードとはなんだろう。愛や絆ではない、お金と権力である。(本文より)

    それらの問題の裏にある、お金によって出来る支配関係を解説している。

    やっぱり気づきにくいけど、近いと関係だからこそそこが曖昧になってドロドロしたものになる。家庭裁判所も同様に、第三者が介入しないと解決しない問題がある。

    ある一例の中で、自分がこうなった(うまくいかない人生)のは、母親(の育児)が原因だと主張し、母親にお金をせびる息子が出てくる。母親も母親で「罪悪感」を抱えお金を渡す。勝手に自分で育ってきたみたいな考え方は、自分勝手すぎる。なんで母親だけがそんな風に思われなければならないのだろうか、モヤモヤする。

  • ウェブで連載されていた記事を読むのを楽しみにしていたので、単行本化されたことを知り図書館で借りた。
    実例はほとんど読んだことがあったけれど、後半に追記された考察も興味深く、お金と家族のあり方について考えさせられた。特に依存症の子供が親から金を引き出すために、子供が親を責めてその罪悪感を煽って謝罪要求したり、時には自殺をほのめかして脅したりしつつ金銭を要求する様がリアルで印象的だった。富める親世代と貧困化する子世代の世代間格差と振り込め詐欺との関連についても、改めて興味深く考えさせられた。

  • お金がもたらす 力関係を無視して
    現代の家族を語れない
    という姿勢には はっとさせられました

    少し前なら
    自立しないなら 放り出しちゃえ
    という考えが主流でしたが
    今じゃ 年金世代のほうが
    安定収入なんですからね・・・
    放り出しちゃったら
    死んじゃう人もいるよね

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著者プロフィール

公認心理師・臨床心理士、原宿カウンセリングセンター顧問、公益社団法人日本公認心理師協会会長。1946年生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長を経て、1995年原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ひきこもりに悩む人やその家族、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、性暴力、各種ハラスメントの加害者・被害者へのカウンセリングを行ってきた。著書に、『母が重くてたまらない』『さよなら、お母さん』『家族のゆくえは金しだい』(いずれも春秋社)、『カウンセラーは何を見ているか』(医学書院)、『アダルト・チルドレン』(学芸みらい社)、『家族と国家は共謀する』(角川新書)、『タフラブ 絆を手放す生き方』(dZERO)、『共依存』(朝日文庫)などがある。

「2023年 『家族と厄災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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