ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

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著者 : 古屋晋一
  • 春秋社 (2012年1月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393935637

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズムの感想・レビュー・書評

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  • 左右10本の指を驚くほどのスピードで動かし、華麗な調べで観客を魅了する一流ピアニストたち。彼らと凡人を隔てるものは何か。

    ピアノは比較的身近な楽器であり、小さい頃、ピアノを習っていたという人はかなりの数に上るだろう。だがその中から一流のピアニストになるのはほんの一握り。多くの人は途中で脱落していく。
    本書では、その違いを「才能があるから」とか「努力をしたから」とか抽象的な話で片付けず、科学的に見たらどこが違うのかという視点で探っている。
    非常におもしろい本である。

    指を鍛えるとはどういうことか。脱力が大切なのはなぜか。音楽教育は本当に早いうちに始めたほうがよいのか。などなど、話題は多岐。
    MRIや指につける測定装置を駆使して、ピアニストとアマチュアの違いを探り、その理由に迫っていく。
    どのような仮説をたてて何を立証していくのかを見ていくだけでも楽しい。
    音楽家の脳について、意外と多くの研究がなされているのを知ったのも新鮮だった。巻末に参考文献一覧あり。
    研究のために高級ピアノのスタインウェイを一度分解してセンサーを埋め込んだなんてぶっ飛んだ話もある。ほか、ピアニストに多い疾患があるとか、同じ交響曲を聴いていても音楽家は自分の楽器の音によく反応している(=ピアニストとバイオリニストでは聴いている音楽が微妙に違う)とか、裏話も楽しい。

    ・・・但し、非常に残念なことに、本書が自分にとってどのように役に立つのか、結局よくわからず仕舞い。おもしろかったので、よいといえばよいのだが。ピアニストを本気で目指す人は読んで損はないのでは。

    この分野、まだまだ可能性があると思う。さらなる発展を遠巻きに応援したい。


    *自分も子どもの頃、ピアノを習っていた1人。脱力しろってよくいわれたけど、こういうことだったのかーと今更思う。あと、最後の発表会でドビュッシーの「月の光」を弾いて、それなりに弾けたじゃんと思ったけど、その頃来日したスタニスラフ・ブーニンが同じ曲を弾いているのを聴いて、ああとんでもなく違うわとがっくりきたことなんかを思い出しました・・・(^^;)。

  • 出来る人にとっては当たり前のこと、すなわちノウハウ、を言語化するということは実は非常に重要なこと。
    いかにも外国で研究されて日本ではお金がつかない研究に思えるが、こういったテーマにきちんと向き合う研究者が日本にもいて、わかりやすい一般書籍を出してくれることに有難みを感じる。
    是非続けて欲しいし最新の知見を加えて続編を出して欲しい。
    モーションキャプチャを使用して特殊技能を解析する技術は実は宝の山なのかもしれない。

  • 読み物、というよりも論文のような内容で、ピアニストの脳と身体がどのような働きをしているのか、音楽家でない人との違いは何かなどが、豊富なエビデンスと共に述べられている。論文として見ると、ピアニストの脳と身体についての研究分野を切り開く意欲的な作品なのかもしれないが、読み物としてみると、脳の仕組みを解明した、という点にとどまって、読者への示唆やメッセージが乏しいという不満は残る。
    あえて本書を一般化して、自分へのメッセージを吸い上げるとすると、「結局は練習量がものを言う」ということと、「無駄な力を使わない(そしてそれは非常に難しい)」という2点だろうか。膨大な練習量によって脳がここまで進化できるということ、プロだからこそ分かっている力の抜きどころ、この2点を身をもって感じられるという点で、自己啓発に役立てることもできると思う。

  • -

    2012年6月に実施した学生選書企画で学生の皆さんによって選ばれ購入した本です。
    配架場所、貸出状況はこちら:http://libopac.josai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&place=&bibid=2000057988

    【選書理由・おすすめコメント】
    いま話題の脳科学。ピアニストはなぜあんなに器用に弾けるのか?この本を読むことによって自分もピアニストのようになれるかもしれない。(マネジメント総合学科2年)

  • フォーム改造中だし、すぐ疲れるし、というわけで非常にためになります。体感を裏打ちする部分はこのままでいいなと思えたし、そうでないところは改善の余地ありかなと思う。タッチで音色が変わるのは科学的にも証明されているとか、小さい音が大きくなることには敏感だけど逆には鈍感だとか、覚えておきたいポイントがいくつもある。

  • 自分も楽器を演奏するので、どうしたらもっと「巧く」演奏出来るようになれるのだろうと、いつも考えている。その点で、プロの演奏家と普通の人はいったい何が違うのか。それを脳の働きや筋肉の働きなどから、科学的に解き明かそうとした本。こういった研究はこれまであまりなされてなかったらしいが、色々な研究事例を引いて分かりやすく説明している。結局、巧くなるには練習しかないんだが、例えば歳をとってから楽器を始めたら、頑張って練習しても巧くならないんじゃないか、とか、やっぱり気になってしまう。余計なことを考える暇があったら、とっとと練習すべきなんだろうが、そういうモヤモヤがちょっとすっきりする本。良本です。

  • <閲覧スタッフより>
    “ピアニストが演奏している間、脳の中は一体どうなっているのか?”世界中の研究者も注目の領域に、脳科学・身体運動学の分野から、数々の研究成果報告をもとに著者が分析しています。身体に関する事(脳・耳・指の動き・身体の故障)だけでなくピアノを弾く人にまつわるテーマを数多く取り上げ、目からウロコの発見をさせてくれます。ピアニストは特別な脳を持って生まれてくるのでは?と思われがちですが、実はそうではないことが本書で明かされています。
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    所在番号:763.2||フル
    資料番号:10213110
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  • 音楽、その中でも、主としてピアノ演奏と、演奏時の脳神経学的ありようについて科学のメスを入れ、分析結果を開陳する書。ただの演奏時のみではなく、疾病、つまり身体的・末梢神経的・脳機能的障害のため、ピアノ演奏が困難になった場面についても解説を加える。上手なピアノ演奏は、経験的に見て、脱力と演奏における適度なゆらぎに基づくとされているが、その具体的な意味が感得できる。言われてみればそのとおりと思わざるを得ない内容ではあるが、文章は明快で読みやすく、一方、対象は広範な良書である。

  • 著者の古屋晋一氏は、上智大学理工学部准教授、音楽医科学研究センター・センター長、ハノーファー音楽演劇大学客員教授などを務める“音楽演奏科学者”。ピアニストを夢見た時期もあるという経験を基に、「ピアノ演奏の巧みさと不自由さを解明・支援する」ことを目指した研究を続けている。
    本書では、普通の人間には驚くばかりの超絶技巧を可能にするピアニストの脳と身体について、様々な実験・研究をもとに、以下のような特徴を明らかにしている。
    ◆他の人との決定的な違いは脳にある。幼少期からの訓練により、手指を動かす脳部位が大きくなっており、かつ少ない神経細胞の活動で指を動かすことができる。左右の手指で違った動きをすることが可能なのは、訓練により左右の脳の間に架かる脳梁が大きくなっていることによると考えられる。
    ◆音を聞くとき、音を聞くための神経細胞だけでなく、指を動かすために働く脳部位の神経細胞も活動している。また、人が演奏している動きを見るだけで、頭の中で音が聞こえている。
    ◆幼少期からの訓練により、音を聞いたときに働く聴覚野の神経細胞が増え、優れた働きをするようになっており、それにより音の様々な特徴を正確に処理したり、音の様々な表情を聴き分けたりすることができる。
    ◆訓練により楽譜を見るだけで音符に対応した指を自動的に動かすことができるような脳の回路をつくる。音を画像で記憶したり、複数の音を1つのグループとして記憶することにより、膨大な楽譜を覚えている。初見演奏は、複数の音符を記憶する、目が複数の音符の情報を一度に読み取る、適切な指使いを瞬時に選択することにより可能となる。
    ◆ピアニストの3大疾病の一つであるフォーカル・ジストニアは、ピアノを弾こうとすると、意図せずに手指の筋肉が固まってしまったり、他の指が動いたりする病気(ゴルフのイップスと似ている)で、原因は脳に起こった変化と考えられている。
    ◆長時間の演奏を可能にするために、重力やしなりを利用して打鍵したり、手指の動きを工夫して打鍵の衝撃を逃がしたり、様々な「省エネ」技術を使っている。
    ◆腕のしならせ方を変えることでタッチを使い分けるなど、身体の様々な動きを変えることによって音や音楽の表情を多彩に変化させ、自らの感性や感情を表現している。
    全くピアノの弾けない私にとって、ピアノを弾く人(著名なピアニストでなくても)は憧れであるとともに、その能力は漠然と不思議なものに映っていたが、本書により、様々な能力が統合されて成り立っていることがよくわかった。また、人間の能力には、訓練によって驚くような変化をする可能性があるということを改めて認識した。
    (2016年6月了)

  • 2016.1.24市立図書館
    ピアニストというのはイメージと違って、ある意味体育会系なのだと感じた。それも短距離走ではなく長距離走。筋力やエネルギーを効率的に使って長時間疲れずに安定したパフォーマンスができるようになればいいが、闇雲な反復練習や長時間の練習がときには仇になり故障につながる危険もあるのだから、科学的な検証を経たトレーニング方法を知ることは必須だと感じた。この本はピアノにフォーカスしているけれど、手先を酷使するほかの楽器やタイピング、調理やゲームなどでもおなじことは言えるのだろう。ピアノはこどものときに習ったきりだけれど、ここで覚えたことを意識しながらもう一度練習してみようかな、という気持ちになった。
    また、演奏と感動の関係についても、機会的に正確に演奏したときと感情を込めて演奏をしたときの、演奏者自身の心拍数の差や聞き手の受け止めかたの差など、興味深いと思った。これは舞踊やフィギュアスケートなどほかの分野の芸術にも応用できそう。
    手先だけ鍛えるよりも重力やしなりなどの物理的な力をうまくとりいれられるように肩から肘など腕全体をうまく使ったほうがいいとか、正確なパフォーマンスを維持するには平均して毎日4時間弱の練習が必要、など、ピアノ以外にも応用の効きそうな知識がいろいろ得られた。

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ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズムの作品紹介

脳科学・身体運動学からひもとく音楽する脳と身体の神秘。

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズムはこんな本です

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズムのKindle版

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