屋根裏の散歩者 他六編 (江戸川乱歩文庫)

著者 :
  • 春陽堂書店
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784394301042

感想・レビュー・書評

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  • 子供向けの文庫で読んだような、テレビドラマで見たのを読んだと思ってるような…
    どちらにせよ、今回、初めてまともに意識して江戸川乱歩作品を読みました。
    やはり、今の時代に読んでも十分に面白いですね。
    むしろ、いろいろな制約が設けられている現代では、こういったお話は読めないんじゃないかな、と思います。
    北村薫先生の「街の灯」で、女学生が江戸川乱歩の小説を読む事は憚られる時代があった、というエピソードを思い出しました。
    その話に出てくる作品も、「屋根裏の散歩者」でしたが、
    私の中の江戸川乱歩作品は、もっとエログロナンセンス全開のイメージだったので、
    この程度の表現や内容で、社会的抑圧が降りかかるのか!と驚きました。
    ある程度は倒錯趣味に関して理解のある現代の感覚では、
    同じような内容の話を書いても、ここまで面白くはならないだろうと思います。

    この短編集の中でも、私が気に入ったのは『火星の運河』で、
    『鏡地獄』、『押し絵と旅する男』、と続いて並んでいるのが粋ですね。
    前衛芸術的でファンタジックな世界観が一服の清涼剤の役割を果たしていると思います。
    一読では全貌を見た気にならないのが、奥深くて素敵です。

  • 春陽堂から大正時代に刊行された江戸川乱歩短編集を文庫で復刊したものです。表紙も含め春陽堂版が一番雰囲気が出ていると思います。本短編集には、"屋根裏の散歩者(1925)""鑑地獄(1926)""押絵と旅する男(1926)""火星の運河(1926)""目羅博士の不思議な犯罪(1931)""虫(1929)""疑惑(1925)"の7篇を収録。表題作の"屋根裏~"は、ご存知 名探偵明智小五郎が登場する作品ですが、その他のものは人の狂気が垣間見える作品です。現代にも通じる変態趣味が満載です。

  • 表題作「屋根裏の散歩者」以外に「鏡地獄」「押絵と旅する男」「目羅博士の不思議な犯罪」など7編が収録されている。

    ★「屋根裏の散歩者」郷田三郎は何をしても面白くない日々を過ごしていた。ある日ふと思い立って、下宿の屋根裏に潜んで各部屋を覗いてみたらこれがおもしろい。ところがあきっぽい彼は三日ほどであきる。その後彼が思い付いた奇行は、屋根裏から毒薬をたらし誰かを殺害することだった。
     計画実行----完全犯罪と思われた彼の犯罪も名探偵・明智小五郎によってやぶられる。私は映画を先に見たが、この映画があまりにもエロすぎて倒れそうになった。三郎の完全犯罪よりも覗いている部屋で行われている変態プレイに重点が置かれている映画はおいとくとして、小説では探偵小説らしく彼の完全犯罪に重点が置かれている。お好みに応じて(?)映画を見るなり小説を読むなりしてもよさそうだ。

    ★「鏡地獄」内部を鏡で張り詰めた球体に入り込んだ青年が発狂する話。「だったらそんなところに入るなよ、最初から」と言いたくなる話だが(笑)彼の恐怖がまざまざと伝わってくるすごい作品。

    ★「押絵と旅する男」これも映画化されている(私はまだ見ていない)。押絵の美女に恋い焦がれた男がついに自分も押絵になると言う話。あらすじだけを聞くと「アホか」と言いたくなる話だが、作品を読むと「アホか」と言える雰囲気ではない。妖美な世界を堪能させてくれる。私は密かにお気に入り。

    ★「目羅博士の不思議な犯罪」これは単純に読んで楽しめる。といっても殺人の犯罪なので楽しむのは読むだけにしたいのだが。

  • こののぞき見の禁断の感覚、いいよー。
    それでいて、ぴたっと屋根裏の穴から口に合うわけがないとか、
    合理性が顔をのぞかせるとこがぞわぞわくる。
    押し絵と旅する男のマジックリアリズム的描写もするっと入って来た。
    映像化もよかったです。
    宮崎真純の令嬢が…

  • 同じ本を二冊も買ってしまった…。
    誰かにあげたいけど、
    こんな趣味の人、近くにはいない気がする。

    さすが江戸川乱歩なんですけど
    ★4にしとくかな。
    以前感じた「おおおおー」という感嘆が起きなかったので。

  • 08.06/18 08.06/20

  • 屋根裏の散歩者=屋根裏で思いついた完全犯罪。明智小五郎の活躍。乱歩が実際に屋根裏に入り考えついたらしい/鏡地獄=レンズや鏡に執着した男が迎えた地獄/押絵の旅する男=郷愁漂うファンタジー/火星の運河=意味不明/目羅博士の不思議な犯罪=幻想的トリック/虫=死体の腐乱が美しく感じられる/疑惑=父親殺しの動機は全員にあり

  • こんなこと、本当にやっちゃあいけません。

  • 乱歩は色々な版元から、さまざまな形態/編纂で作品が出されているが、文庫なら個人的に春陽堂版が気に入っている。現在は光文社で全集化しているが、背厚が苦手、、、

著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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