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- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784395006861
感想・レビュー・書評
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(01)
漱石作品の空間論である.が,文体と空間の関係,シークエンスの問題,遠近感や対象との距離などを論じていない点で,不備も多い立論ではある.大きくは西洋的なものと東洋的なものの対比を漱石の時間軸に持ち込んでの議論となっているが,やや図式的すぎるきらいがあり,近代における漱石作品の特異性に迫ることなく,その空間認識の近代性が社会のどの程度まで及んでいたかは本書(*02)からは知ることはできない.
最終章では西洋と東洋の文明の違いだけでなく,似ているところまで言及し,漱石のモダニズムの特徴を捉えようとしているが,説得性があるかどうかは分からない.また,「洋風」という様式がそのうちでも一様でないのと同様に,「南画」も決してひとくくりではないが,東洋の文や画への理解によりこの議論はもう少し違った方向へと導かれたかもしれない.
(02)
建築家になろうとした,とあるが,建築家に「も」なろうとしたという漱石が研究されてもよいだろう.漱石作品の魅力は,この何にでもなれるが何にもなれないという離人感によっても語られるものと考えられる.詳細をみるコメント0件をすべて表示