漱石まちをゆく: 建築家になろうとした作家

著者 :
  • 彰国社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784395006861

感想・レビュー・書評

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  • (01)
    漱石作品の空間論である.が,文体と空間の関係,シークエンスの問題,遠近感や対象との距離などを論じていない点で,不備も多い立論ではある.大きくは西洋的なものと東洋的なものの対比を漱石の時間軸に持ち込んでの議論となっているが,やや図式的すぎるきらいがあり,近代における漱石作品の特異性に迫ることなく,その空間認識の近代性が社会のどの程度まで及んでいたかは本書(*02)からは知ることはできない.
    最終章では西洋と東洋の文明の違いだけでなく,似ているところまで言及し,漱石のモダニズムの特徴を捉えようとしているが,説得性があるかどうかは分からない.また,「洋風」という様式がそのうちでも一様でないのと同様に,「南画」も決してひとくくりではないが,東洋の文や画への理解によりこの議論はもう少し違った方向へと導かれたかもしれない.

    (02)
    建築家になろうとした,とあるが,建築家に「も」なろうとしたという漱石が研究されてもよいだろう.漱石作品の魅力は,この何にでもなれるが何にもなれないという離人感によっても語られるものと考えられる.

著者プロフィール

1947年台湾生まれ。
東京工業大学建築学科卒業、同大博士課程修了。工学博士。
1974年入社の久米設計を経て名古屋工業大学教授。
米国カリフォルニア大学バークレー校、コロンビア大学客員研究員。
現在、中京大学客員教授、名古屋工業大学名誉教授。
専門は建築学・都市論・文化論。
著書は『建築へ向かう旅』、『組み立てる文化の国』、『「家」と「やど」― 建築からの文化論』、『漱石まちをゆく――建築家になろうとした作家』、『建築家と小説家――近代文学の住まい』『アイドルはどこから』など。2016年に『オリンピックとデザインの政治学』(森山明子との共著)を郎文堂より刊行。

「2020年 『寡黙なる饒舌 建築が語る東京秘史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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